司波家の長女は何をする?   作:孤独ボッチ

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 戸愚呂の件について。
 確か、本人が下戸だっていってましたね。
 しかし、修正はしません。
 何故なら、捏造設定では名前だけで、完全な別人に
 なったからです(爆)。
 能力はそのまま…の筈です。

 では、お願いします。


九校戦編4

               1

 

 お偉いさんの講演会みたいな懇親会が終了し、私は一校の九校戦首脳会議に出席していた。

 といっても、私は説明するだけだけど。

 因みに、専門家として達也に幹比古君を拉致して貰っている。

 彼は達也の隣で硬直している。大丈夫?

 深雪?深雪は選手だし部屋で待機して貰ってるよ。

「つまり、古式の人達がいうところのパラサイトがいたって事で、いいのね?」

 私の説明を聞き終えて、閣下が纏める。

「正確には精霊寄りの雑鬼の類ですけどね」

 強力な存在と共にこっちに来て、腰巾着みたいに纏わり付いているヤツだ。

 それでもずっとくっ付いている訳ではない。

 お気に入りの負の感情を見付けると、少し浮気してフラフラ付いていったりする。

 といっても、それ程離れる事はない。

 だから、強力な存在の探索の手掛かりになるくらいだ。

 あの金髪さん、深雪を見下してたしね。それに惹かれたんでしょ。

「でも、彼等がいるという事は、強力な個体が近くにいるという事です。だとすれば、少し

軍の護衛では心許ないかもしれません」

 さっきまで硬直していた幹比古君は、得意分野の話題で復活を遂げていた。

 物理・魔法では頼もしい存在だけど、精霊魔法を使える軍人は少ない。

 今の主流じゃないしね。

「軍にも警告して、実家から術者を数人派遣して貰おうと思いますが…」

 幹比古君が首脳陣を伺うように言葉を切った。

「軍には、俺から話そう」

 十文字さんが重々しくそうコメントした。

 閣下は頷く。

「吉田君。どれくらいで到着しそうか、分かったら教えてくれる?」

「はい。勿論です」

 幹比古君が力強く頷く。

 閣下は深刻な表情で溜息を吐く。

「それでは、各自でできるだけ注意して貰ってくれる?」

 首脳陣全員が苦い顔である。

 文字通り人外が敵かもなんて、私でも嫌になるよ。

 

「でも、そんな強力な存在を制御できるかな?」

 幹比古君が考え込みながら、ポツリと呟いた。

 歴史的に見て、肉体を持った上位の妖は真正の化け物だ。

 肉体を与えた直後に術者は死亡しているというのが、古式術者の定説だからね。

 例を挙げると、九尾の狐だね。

 あれは術者が意図した行動じゃないのは、間違いないそうだし。

 文献を見ると、楽しんでいたみたいだ。

 とても術者に縛られていたとは思えない。

 となると、今回は相手の目的に沿い過ぎている気がする。

 まだ、何も起きていないから、断定は禁物だけど。

 でも、これだけいっとくかな。

「別に制御する必要はないかもしれないけどね」

 幹比古君が不思議そうに私の方を見た。

「え?どうして?」

「餌場を用意して招待するだけなら、制御なんていらないでしょ」

「馬鹿な…!」

 幹比古君が衝撃を受けた顔で、硬直した。

 首脳陣の表情も険しくなる。

 そう、あの運命0でいってた事だよね。

 

 幹比古君は、応援到着まで気休めにしかならないけど、魔除の護符の作成に入るといって、

慌てて出ていき、会議は解散になった。

 まあ、警戒はするに越した事はない。

 これが大間違いで、真実は私の想定斜め上どころか、突き抜けていた事が分かるのは、

もう少し時間を要する。

 

 ココみたいに、何故かいたりしない?

 鬼太郎とか、鬼切丸とか、薬売りさんとか。

 おっと、年齢が…。ええと、新しいのは腹巻した猫だっけ?

 ともあれ、私の知らないところで片付けてくれないかな。無理か。

 皆々様の真と理、お聞かせ願いたく候、とかいって出てきてくれないかな…。

 

 

               2

 

 :深雪視点

 

 みんなの表情は、明るいとは決していえるものではなかった。

 けれど、新人戦への情熱は失っていないようで、安心する。

「新人戦、緊張するなぁ」

 ほのかが枕を抱き締めて、少し強張った顔でいった。

 ほのかの性格なら、今回の騒動での参加は恐ろしいだろうに、よく耐えている。

「まだ早いわよ。私達の新人戦は大会四日目からよ?」

 緊張しているのは、新人戦だけではないと分かっているけれど、ほのかに合わせて、宥める

ように、新人戦のみに言及した。

 雫も珍しく微かに微笑みながら、頷いた。

 ほのかが顔を赤らめる。

「そ、そうよね、早過ぎるわよね!」

 そういい終えると、顔を隠すように持っていた枕に顔を埋めた。

 部屋にノックがされる。

 ほのかが枕を退ける。

「私が出るよ!」

 そういうと、ほのかがドアに向かう。

 私はCADを持って、ほのかの後を追った。

 軍施設だから、平気だとは思うが念の為だ。

 ほのかがドアを開けると、エイミィが顔を覗かせる。

「こんばんわ!みんなで温泉行かない?」

 エイミィが唐突にいった。

「え!?温泉!?」

 ほのかが目を白黒させている。

「うん!温泉!」

 このままだと、ずっとループしそうだったので、助け船を出す事にする。

「確かここ、人工の温泉があったわね」

「そうなの!」

 でも、軍施設よね?勝手に入っていいのかしら?

 それを訊くと、エイミィは抜かりなくそれを訊いてきたらしく、大丈夫

という返事を貰っているらしい。

 それならばと、みんなで入りに行く事になった。

「ああ!少し待って貰える?お姉様もお誘いしたいの!」

 もう話し合いも終わった頃だ。折角だし、久しぶりに一緒に温泉に入りたい。

 みんな意外に抵抗はないらしい。

 お兄様もお姉様も、やはり本当に凄い人は認められるものよね!

 特にお姉様は、エイミィと友人になっていた。

 この調子で、周りの頭の固い人達も認めてくれるといいのだけど。

 部屋の内線電話でお姉様をお誘いすると、少し考えるような間があってから、OKの返事が

貰えた。

 

 みんなの支度は素早かった。

 そんなに楽しみだったのかしら?

 私も温泉に入るなんて、久しぶりだし、お姉様と一緒だし、楽しみだけれど、そこまで早く

支度できないわよ?

 残ったのは、私とお姉様だけになってしまった。

 念入りに汗を流さなくては。

 そんなに汗は掻いていないけど、お姉様に汗臭い妹だなんて思われたら、私は自殺する。

 私がシャワー室を出ると、お姉様も出て来た。

 私はホゥと溜息を吐く。

 どうして誰もお姉様を称えないのでしょう?

 湯着姿でも見事なスタイル。お姉様の力は強いけど、決して筋肉質という訳ではない。

 寧ろ、筋肉が付いているとは信じられない程で、寧ろ引き締まっているだけで筋肉はそれ程

目立たない。

 それに肌は輝くばかりの美しさだ。まるで真珠のようだ。

 お姉様は鍛冶の仕事をなさっているけど、火傷等一切ない。

 ご本人は、気を付けているだけと仰っているけど、それだけでない事は明らかだ。

 おそらくは、魔法の影響だとお兄様も仰っていた。

 今は髪をアップにして纏めているけど、私は鴉の濡れ羽色の艶やかな髪だと知っている。

 容姿だって美しい。今は流石にお姉様も眼鏡を外している。

 どうも私の影響とお姉様の眼鏡が原因で、印象が薄くなっているようだ。

 それが悔しいような、ホッとするような複雑な思いがある。

 でも、分からなくていいのかもしれない。

「それじゃ、行こうか?」

「はい!」

 笑顔で答える私に、お姉様が手を差し伸べてくれる。

 お姉様の美しさは、私達兄妹だけが知っていればいい。

 私はお姉様のエスコートで温泉に向かった。

 

 中が随分騒がしい。

 どうしたのかしら?

「何を騒いでいるのかしら?」

 お姉様と入っていくと、私に視線が集中する。

「な、何?」

 何か魅入られたような危ない視線が、私から離れない。

 こんな事で怯んでしまう私は、まだ未熟なのだろう。

「これ以上、深雪を変な目で見ると氷風呂に入る事になるよ!!」

 ほのかの鋭い警告に、全員がハッと我に返った。

 ほのかはどうしてか、少し怒っているようだった。

「いや、失敬失敬。つい見惚れてしまったよ」

 スバルが気取った感じでいった。

 彼女は魔法特性の関係で、こういう芝居がかった物言いになるらしい。

 困って隣のお姉様を見ると、肩を竦めただけだった。

「まあ、警告はほのかがしてくれた訳だし、入ろうよ。ここで突っ立ってても仕様がないし」

 お姉様の言葉に、ほのか以外の全員がビクッと反応したけれど、見なかった事にした。

 そういえば、雫はどこにいったのかしら?

 いつも、ほのかの傍にいるのに。

 それから、暫くして雫がサウナから戻ってきた。

 雫がいない間に、何かあったらしいけど、訊かない方がいいわね。

 

 ここからは男性の好みの話に移っていった。

 曰く。

「バーテンの小父様が素敵だった」

「五十里先輩、包容力があって素敵!」

「十文字会頭は頼もしいよね!」

 等々。

 正直、私はどうなるか分からない。恋愛に今のところ興味は…ない。抱いても仕方がない。

 そういう点では、みんなが羨ましかった。

「そういえばさ!三校に一条の御曹司がいたよね!」

 滝川さんが興奮していう。

 一条君か。どこにいたかも分からない。

「うん!いい男だったよね!」

 エイミィが応える。

「でも、なんか彼は上の空っていう感じで、誰か探してたようだけど」

 スバルもコメントする。スバルもチェックしてたのね。

「深雪でも探してたんじゃない?あそこで深雪以上の女の子なんていなかったもの」

 ほのかがそういうと、みんな若干納得できなさそうにしていたけど、最後には頷いた。

「まあ、それが妥当…なのかな?深雪はもしかして知り合いだったりするの?」

 エイミィが、興味深々といった感じで訊いてくる。

「深雪、どう?」

 雫も興味があるのか訊いてくる。

 私は素直に、写真でしか見た事がない事と、どこにいたのかも分からないと告げる。

 全員が何故か鼻白んだ。

「じゃあ、好みのタイプはどんな人?」

 エイミィはただ一人、素早く立ち直り質問してきた。

「やっぱりお兄さんみたいな人?」

 エイミィは本当に物怖じしない子だ。逆に感心してしまった程だ。

「お兄様みたいな男性がいたらいいとは思うけれど、無理な相談でしょうね。強いて

いうなら、精神的に大人な男性ね」

 そう私が答えると、みんなが何故かおお~と歓声を上げた。

 お姉様も何故か少し微笑んだようだった。

「じゃあさ、深景は?どんな人が好み?」

 私は反射的にお姉様を伺った。

 

 お姉様は結局はぐらかしてお答えにならなかった。

 その様子に私は秘かにホッとした。

 

 

               3

 

 魔法を学ぶ若者とはいえ、普通の女の子だねぇ。

 好みの男性のタイプとは。

 まあ、実際好きになる人なんて、好み通りとは限らないと知ってるからね。

 好みなんてお天気みたいなもの。

 そんな事をいっていた小説があったけど、その通りだと思う。

 晴れた日が好きであっても、雨の日にいい事がある時もある。

 それで雨の日が好きになるかもしれない。

 それに私の好みの具体例なんて誰得ですか?

 流石に前世がオタ女でも、アニメキャラは上げませんよ?

 

 それより、深雪が頑なに兄妹だからを強調しなかった事が嬉しい。

 変な力を入れてない証拠のようなものだから。

 ヘタレ王子君、チャンスですよ? 

 

 

               4

 

 九校戦開会式が始まったのを、私達は一校待機用テントでモニターで見ていた。

 そう、選手しか参加できないんですよ。当然といえば当然ですけどね。

 それにしても、今解説してる人、軍の広報の人の筈だけど、やたら慣れてるの何故?

 DJポリスならぬDJアーミーですか?

 第一高校が優勝を勝ち取るのか、第三高校が連覇を阻止するのか!?なんて煽っている。

 

 そして、響子さん。

 貴女、何やってるんですか?DJアーミーと一緒に今回の見どころなんかを話している。

 お仕事、遂に放棄したんですか?ちょっと、会ったら訊いてみようと思う。

 

 

               5

 

 :戸愚呂視点

 

 態々チケットまで黄は手配してくれたので、会場入りして一校生を眺めていた。

 是非、こういう手助けだけにして貰いたいねぇ、今後は。

 お供は蛭江と魅由鬼だ。他のメンツは人間の姿でも固まっていると目立つ為、ホテルに

置いてきた。

『で?どう攻略します?』

 隣に座っている魅由鬼が思念を送ってくる。

『優勝のキーはやっぱりあの三人だね。まずはあの三人が惜しいところで敗退ってシナリオ

でいきたいねぇ。あとは状況を見て、適当に星を落として貰うってところかね』

 魅由鬼がニヤリと隣で嗤う。

『それじゃ、七草真由美は任せて貰っても?嫌いなんですよね。恵まれ過ぎた女って』

 まあ、女の敵は女って事にしとこうかね。

 蛭江が忍び笑いを漏らすのを、魅由鬼が鋭く睨み付ける。

 蛭江はお道化た仕草で、両手を小さく上げて降参のポーズを取った。

『あくまで、優勝させない事が第一だと忘れなければ構わない』

『了解しました』

 魅由鬼は小さく頷いた。

『蛭江。女の試合ばかり見ていると目立つから、注意してほしいんだがね』

 蛭江は女好きで、放って置くと女子の試合にばかり行きそうだ。

 外見が外見だから、不審者扱いされたら目も当てられない。

『分かってますって』

 蛭江がお道化て返事を返す。

 コイツが一番、人間だった時の癖が抜けているのかもしれない。

 これから、各自別行動で妨害の機会を窺う事になる。

『ホテル待機組も、そろそろ開会式が終わる。話は聞いていたな?』

 全員から肯定が返ってくる。

『最優先で妨害するのは、七草真由美、十文字克人、渡辺摩利の三人だ。ここぞという時

以外手を出すなよ?』

 こういうのは、狙い澄ましてやるもんだ。

 雑魚の勝ち星はある程度無視していい。

 あまり勝ち過ぎるなら、調子を落として貰うがね。

『あまり固まるなよ。では、定時連絡を怠らないように。現時刻をもって行動を開始する』

『『『『『了解』』』』』

 

 人間だった時の癖ってのは抜けないものだねぇ。

 開会式で見どころを語る声を聞きながら、溜息を一つ吐いた。

 

 

               6

 

 競技が厳戒態勢で開始された。

 軍にも妖の話は通っている筈だが、どういう対策を取る積もりなのか風間天狗に訊いて

置きたいところだ。

 吉田家の伝手で呼ばれた応援は、装備を整える時間も含めて二日後になるらしい。

 幹比古君は、夜なべして魔除の護符を大量生産し配った。お疲れ様です。

 

 一日目はスピードシューティング男女・予選・決勝まで。

 そして、バトルボード男女・予選となる。

 本戦だから、一年に出番などある訳もなく、観戦モードです。

 純粋に楽しめないのは、非常に残念なんだけどね。

 

 まずは閣下の試合から観戦。

 勿論、あの人はスピードシューティングですよ。

 まあ、魔法使ったクレー射撃ですね、これ。

 観客席に行くと、エリカ達が席を取って置いてくれた。

 流石にエリカ達は、分かっているので最前列に陣取ったりしていない。

 最前列は…青少年の群れが会長を凝視している。

 女の子は…大歓声。所謂、お姉様素敵!の人達ですね。

「うっわ!嘆かわしいったらないわね」

 エリカの皮肉が炸裂した。

「まあ、そういうな。確かにアレは近くで見る価値があるかもしれん。別人みたいだしな」

 達也が何気に酷い事をいい放った。

 エリカがそれを聞いて、私と深雪に浮気だなんだと騒いだが、苦笑いも出ません。

 深雪は苦笑いしてたけど。

「会長、エルフィン・スナイパーっていわれてるんだよね?」

「本人は嫌っているって話だから、会長にはいわない方がいいぞ」

 ほのかが若干興奮気味にいうのを、達也が釘を刺した。

 ほのかがそれを聞いて、気まずそうに気を付けますと答えていた。

 素直で結構。

「会長をネタに同人誌作っている人もいますしね」

 美月がいきなり爆弾をブチ込んできた。

 その破壊力は凄まじく、全員が沈黙した。

 アニメなら兎も角、あの人で同人誌作るとか勇者がいるね。

 まあ、エッチなヤツじゃないんだろうけど…。

「…初耳ね」

 あのエリカが突っ込みに、ここまで時間を要するとは。恐ろしいネタだ。

「一つ確認して置きたいのだけど、貴女、それをどうして知っているの?場合によっては

友情を見直したいんだけど」

 エリカの言葉に、美月が慌てて関与を否定していた。

「始まるぞ」

 達也の言葉で二人がお口にチャックした。

 命拾いしたね、美月。

 

 閣下は一発も外す事なく、ドライアイス弾をクレーに叩き込みパーフェクトで、予選を

通過した。まあ、順当で面白くもなんともない。いい結果だけど。

 

 達也に視線を送ったが、妨害の気配はなかった。

 雑鬼も見えない。まあ、幹比古君印の護符が貼ってあるからってのもあるけど。

 

 

               7

 

 そして、お次に登場するは渡辺お姉様です。

 バトルボード予選ですね。

「女子にはかなりきつい競技だ。ほのかは大丈夫か?」

 達也がほのかに体調を尋ねる。

 ほのかは達也のアドバイスに忠実に従っていた。

 だからこそ…。

「ほのか、随分と筋肉が付いてきたんですよ」

 まあ、私も見せて貰ったけど、当初プニプニだったからね。

 魔法競技でも筋肉が要らない訳じゃないからね。よかったよ。

「そのいい方だと、マッチョになったみたいじゃない!止めてよ!」

 珍しく達也がそれを聞いて、噴き出していた。

 ほのかのスタイル維持の為にも、筋肉はある程度必要だよ?

「ほら!達也さんに笑われっちゃったじゃない!」

「ほのかのいい方が可笑しかったからだよ」

 雫が隣から鋭い突っ込みを入れる。

 雫にまでいわれて、ほのかは完全にいじけています。

 そこから、自分だけ達也の担当が少ないとこぼし始め、達也のフォローも逆効果。

 仕舞には、達也は女性陣から鈍いとか朴念仁だとか、集中砲火を浴びていた。

 助けを求めるような視線を達也から向けられたけど無視した。

 君もこういう経験をして、勉強し給えよ。

 

 そんな事をしている間に、お姉様の出陣のお時間です。

 たった一人だけ、ボードの上にお立ちになっていらっしゃる。

 主に女の子からの黄色い声に、手を振る余裕まである。

 なんか一人別世界にいらっしゃいますよ。

「うわっ!ないわ」

 エリカが渡辺お姉様の人気に物申す。

 でも、それは原作のような鬱屈は感じなかった。なんか軽いな。

 エリカにも心境の変化があったのかな?

 

 渡辺お姉様が出走した。

 それを見ながら、達也が解説を加えていく。

 硬化魔法のところでレオ君が食い付いていた。

 だけど、私の耳には入っていなかった。

 興味なかったのも理由の一つだけど、それより嫌な視線が渡辺お姉様に向けられている

のに気付いたからだ。

 何気なく、周囲を探るとタンクトップのマッチョが目に入る。

 あれ?あのマッチョ、どこかでみたような…みないような?

 う~ん、どこで見たんだっけ?主要キャラじゃないだろうけど…。

 

 結局は渡辺お姉様は、随分な余裕を持って予選を通過した。

 

 

               8

 

 午後にスピードシューティング・準決勝・決勝戦が行われる。

 けど、その前に重要な仕事が一つ。

 お偉いさんにまたしてもお呼ばれです。

 今度は国防軍の方ですよ。

 私の場合は、達也と違って軍事物資を作り出した人間としての保護だった筈なのに、

何故か国防に参加させられているんですが?

 この理不尽、納得できないんですけど。

 まあ、訊きたい事もあったので、いいんですけどね。

 

 という訳で、ホテルの高級士官用の客室の前に、私と達也は立っていた。

 私達を案内してくれた警備の兵士が、扉を開けてくれる。

 入るとそこには、公務員としては納得いかない豪華な部屋。

「来たか。まあ、掛けろ」

 風間天狗がいうが、そう簡単に座れない。立場的な話で。

「二人共。今日は君達を戦略級魔法師・大黒竜也特尉、戦術級魔法師・白崎蒼空(ソラ)特尉

として呼んだんじゃない。友人として招いたんだ。遠慮は無用だよ」

 真田大尉が穏やかにいった。

 白崎蒼空というのが、独立魔装大隊での私の名前だ。

 達也の大黒の反対という事で、白崎。

 竜也の関連で竜は空にいるものって事で、蒼空って訳。

 ネーミングセンスが…なんて思うなかれ。適当ですよ、偽名なんて。

 戦術級なのは、乖離剣使用時の話。って事になってます。

「それに立ったままだと、話し辛いだろう」

 これは柳大尉。

 ここまでいわれれば、いいでしょ。

 私と達也は着席する。

 独立魔装大隊には、ティータイムでの掟として円卓でやるという謎な決まりが存在する。

 イギリスなら分かるけどね。なんで日本でティータイムの決まりなんてあるんだろう?

 しかも、この円卓、態々持ち込んだものらしい。どんだけ拘ってるんですか。

「お久しぶりね。ティーカップだけど乾杯といきましょう」

 響子さんが紅茶を運んでくる。

 私と達也もティーカップを受け取る。

「そういえば、なんで開会式で解説なんてしてたんですか?」

 私はティータイム開始前に響子さんに疑問をぶつけてみる。

 響子さんは苦笑い。

「ほら、私、九校戦で二校の優勝に大きく貢献した事になってるでしょ?その関連で出て

くれっていわれたのよ。あれだけよ。もう解説の真似事なんてしないわ」

「いやいや、なかなか様になっていたよ」

 響子さんの言葉に、真田大尉が穏やかな声のまま揶揄う。

 響子さんが睨むと、真田大尉が視線を逸らす。

「まあ、この前に達也君と会ったから、久しぶりって事はないけど、ここは藤林君の顔を

立てようか」

 真田大尉はそんな事をいって誤魔化す。

 そして、酒飲み軍医・山中少佐が、ブランデーを紅茶にドバドバ入れている。

 真昼間から何やってんの、この熊軍医。

 

 それなりに雑談という名の、どんな状況でも軍事機密指定の魔法使うんじゃないぞ、

という釘差しが終わり、私は本題を口にする。

「で、パラサイト対策ってどうなってますか?」

 気になる事を訊いておく。

「正直、古式魔法師、それもパラサイトに対応できる魔法師となると、滅多にいないのが

現状だ。俺も柳も、藤林にしてもそういった方面は不得手だからな」

 風間天狗がぼやくようにいった。

 で?言い訳は要らんですよ。対策カモン!

「監視カメラのサイオンセンサーから、不自然な反応を拾うように強化している」

 風間天狗の言葉に響子さんが頷く。

 響子さんがやってるんですか。

 あとは、幹比古君印の護符を会場中に貼る事を認めさせたそうだ。

 術者の受け入れも、問題なく段取りしてくれているとか。

「そうですか。それでは申し訳ないんですけど、調べて頂きたい人物がいるんですけど」

 私は、渡辺お姉様に嫌な視線を送っていたマッチョの特徴を説明する。

「そう、ちょっと追ってみるわ」

 響子さんは部下を使って調べてくれるらしい。

 

 それでは丸投げさせて頂きます。

 

 

               9

 

 私達は仲間達と別れ、閣下の試合会場に向かう事にする。

 会場に近付くにつれて、人が増える。

 流石、閣下の試合。人が多いな。

「あっ!君!」

 突然、背中に声が掛かる。

 うん?この声は。

 振り返るとそこには、何故かヘタレ王子と残念参謀、それに見た事のない女の子がいた。

「ああ…。一条さん。どうも」

 取り敢えず無難な返事をしておく。

「知っていましたか」

 ヘタレ王子は照れたようにいった。

 そりゃ、有名人ですから。リアルに雑誌とかに取り上げられてる人なんだよ。

 知らん訳ありませんよ。

「偶々、見掛けたものだから、失礼かと思いましたが、声を掛けさせて貰いました」

 そして、自分の袖を見せるヘタレ王子。

「これのお礼を迂闊にもいっていなかったので」

 おお!律儀ですね。お姉さんそういうの嫌いじゃないよ。

「姉さん。これは?」

 達也が怪訝な顔で私を見る。

 そうか、いってなかったか。

「ちょっと困ってたみたいだから、手助けしたんだよ」

 簡潔に説明する。

「そうか…」

 達也はそれだけいって黙った。

 でも、弟よ。視線が若干鋭いのは気のせいじゃないよね?

「改めて、一条将輝です。ありがとう。助かったよ」

 君、妖に憑りつかれた訳じゃないよね?

 初対面の挙動不審が全くないんですけど。

「よかったら、君の名前を教えてくれないかな?」

 なんか距離近いですよ。

 なんかグイッと距離詰めてきましたよ?

 面食らっていると、達也がスッと手でヘタレ王子を制した。

「プリンス。少し不躾じゃないか」

 ヘタレ王子を私から離してくれる。

 ありがとう、弟よ。

「失礼した」

 ヘタレ王子も少し詰め過ぎたと思ったらしく、素直に謝罪した。

 なんか隣にいる女の子が、耳打ちしてるよ。

「私は司波深景です。ご覧の通りの第一高校の生徒です」

 なんかズルズル遣り取りが延びそうだったので、早々に自己紹介する。

「深景さんですか…」

 なんか隣から不快!っていう空気が流れてきてるから、締めに入らねば。

「制服、気を付けて下さいね。では…」

 撤収!

 

「あの!よかったら一緒に観戦しませんか?」

 彼の顔付きを見て、心の中で驚愕する。

 え?これ、もしかしたら、もしかするの?

 深雪のお相手候補、略奪しちゃった!?まさか!?

 あれか、袖か袖なのか!?あれで墜ちるとか、チョロ過ぎんでしょ!!

 なんか、雰囲気が()()同じなんだけどよね。

 前世で、初めて付き合った彼氏にさ。

 ホント、オタ女だった私のどこを気に入ったのか、告白してくれた彼。

 違ってたら、イタイ女だけど…。

 

 駄神よ。この展開は貴様の差し金か。

 

 

               10

 

 :真由美視点

 

 準決勝までは順調。

 調子だっていい。妨害は心配だけど、気にしてもどう仕様もない。

 なら、自分のベストと尽くすだけ。

「七草。CADの調子はどう?」

 三年の技術スタッフで和泉理佳。通称・イズミん。

 九校戦では二年の時から専属のようなものだ。

 その彼女に笑顔で応える。

「問題なしよ!イズミん!」

 深景さんの調整を経験しちゃうと、正直ちょっと物足りないけど。

 口には出さない。

「普通に呼んで頂戴、頼むから」

 頭痛を堪えるようにイズミんが、呻くような声でいう。

 普通に呼んだら詰まらないじゃない。

「それじゃ、行ってくるね!」

 嫌がっているのは知っている。でも、これは私なりの親愛の証。

 うん、直す必要なし。

「頑張ってきて頂戴ね」

 重い溜息を吐いてイズミんは答えた。

 試合前なんだから、もうちょっと明るく送り出してよ!

 

 控室を出て、真っすぐ自分の立つステージを目指す。

 外の光が眩しい。

 手を翳して、外に出た。

 

 つもりだった。

 

 何故か、私は控室前に立っていた。

 白昼夢!?いえ、そんな訳がない。

 小走りに外へ。

 でも、気付くと私は控室の前に立っていた。

 

「まさか!?…妨害なの!?」

 控室の前の通路に私の声が、虚しく響いた。

 

 

 

 




 将輝君が挙動不審じゃなかった理由は、次回の将輝君視点
 にて説明されます。
 本当は将輝君視点までやろうと思いましたが、これ以上は
 と思いとどまりました。

 エリカの心情変化も次兄上の登場時に説明します。

 妨害開始です。

 次回も気長に待って頂ければ。
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