もう少し短く纏めたいところですが、できない…。
では、お願いします。
1
閣下の不調は、各方面に伝染しているみたいです。
特に男子は、閣下の件(という事にしておく)で酷かったとか。
会議の時は触れなかったのは、優しさという事で。
今、生徒会メンバー(女)+α(女)が閣下の部屋に集合していた。
結構ラフな格好でね。もうすぐ就寝時間だし。
きわどいセクシーさを演出している人は、一人もいませんので悪しからず。
「スピードシューティングは男子も優勝したけど…。結構ギリギリだったわね」
それでも優勝したんだから、御の字ですよ。結果よければ全てよし。来年?知りませんよ。
閣下は自分が不調をバラ撒いている事を自覚しているのか、表情が優れない。
「服部もあわや、という感じだったしな」
バトルボードは、苦戦どころの話ではなかったらしい。
カメラ判定での辛勝だったらしい。
「CADの調整が合っていなかったようです。試合の後ずっと、木下君と調整し直してましたね」
市原さんは淡々としているけど、少し眉間に皺ができている。
「まだ、終わってないみたいですけど…」
CADオタが微妙な顔で、とんでもない事実を暴露した。
終わってどのくらい経ってると思ってるの!?掛かり過ぎでしょ!?
「木下君も下手ではないんですが…」
「残念ながら名手ではないな」
市原さんがフォローしようとするが、お姉様がバッサリと切り捨てる。
まあ、下手なんだろうね。ここまでくると。
それともカンゾー君が納得しないだけか。こっちもありそうだね。
「あの…木下先輩だけの所為じゃないと思いますよ?服部君、動揺してましたし…」
まあ、確かにね。敬愛する会長閣下が標的になったのは、効いたようだけどね。
「厳しい事をいうが、それも含めてアジャストするのがエンジニアの役目だろう」
何いってるの。
「それは当然ですが、選手も競技に臨むに当たって、ベストの状態にする義務がありますよ」
私の冷ややかな言葉に、お姉様がたじろぐ。
こっちもフォローはするけど、競技をするは結局のところは選手なんだよ。
女房役にも限界がありますよ。
掛けた言葉が耳に入らないなら、無理に聞かせても煩わしく感じてしまうだけだ。
CADオタが、思わずうんうん頷いてお姉様に睨まれていた。
「まあ、幸いハンゾー君は明日オフだし、気の済むまでやらせてあげるしかないんじゃない?」
閣下がとりなすようにいう。
「問題は明日の木下君の担当ですね」
市原さんが端末を見ながらいう。
「木下君は女子クラウドボールのサブエンジニアですね。抜けても大丈夫そうですが…」
「和泉一人に任せるのもキツイんじゃないのか?二試合・三試合同時に面倒見る事になるぞ?」
市原さんの言葉にお姉様が問題点を指摘する。
そういう事態を回避する為のサブだしね。
「男子のサブの石田君に兼任して貰いますか?」
「それだと、石田君に負担が掛かり過ぎよ」
市原さんの提案に閣下が難色を示す。
「それでは、明日、明後日とオフの司波君か深景さんに頼むというのは?」
「いいわね!それ!じゃあ、深景さん!お願いね!」
閣下。全然よくないよ、私は。
深雪。ここで声を上げてくれていいんだよ。ニコニコしてないで、いってやってよ。
私、監視業務もあるんですが?
仕方がないので、達也と美月に頑張って貰う事にした。
応援に幹比古君を送り込むよ。体調が悪い?却下じゃ。
2
九校戦二日目。
クラウドボールの競技場に来ております。
護衛も兼ねるので、刀も持ち込みですよ。
因みに、刀は通路に隠してたという噴飯ものの嘘を押し通しました。
そして、予想通りでしたよ。技術スタッフに嫌な顔されたよ。
「もしかして、不機嫌?」
「いいえ。仕事ですから」
閣下の言葉に、私は答えにならない返答をする。
取り付く島もない私の態度に、閣下が苦笑いする。
「何か用事が?」
「ええ、様子見にきたのよ。データは頭に入ってる?」
あれから大急ぎに叩き込みましたよ。
前世と違ってお頭のできは悪くないのが、幸いだよ。
私は素っ気なく入っていると告げると驚かれた。
いやいや。貴女方がやれといったんですがね。なんで驚くかな。
「全員分!?」
全員入ってないと意味ないでしょうが。
私は端末を弄りながら頷く。
「達也君がそういう事ができるっていうのは、知っていたけど。深景さんも凄いのね!それって
瞬間記憶とか完全記憶とかいわない?」
いや、違うと思いますよ。達也はその域に達していると思うけど。
私は地道にやったよ。今も確認中ですし。
閣下が私の前でストレッチを始める。
閣下はご機嫌麗しいご様子。
私は、閣下の特化型CADに異常がないか確認中。
「深景さん。ちょっと手を貸してくれない?」
ああ、原作で達也にお願いしてたヤツですね。
ここはお約束通り、全体重掛けてプレスするとこですよね?
まあ、この人には無意味か。普通にペタンと身体と脚がくっつくますもんね。
今生じゃ、私もそうだけど。
何回か繰り返し、ストレッチ終了。
閣下から手を差し出される。いやいや、貴女、自分で立ち上がりましょうよ。
無言で見詰め合っていても、仕様がないので手を取って立たせて上げる。
「ありがとう」
そういって微笑む閣下。
不調は引き摺らない。結構な事です。
「はいはい」
ここで閣下が微笑みから笑いに変換する。何?
「なんか新鮮ね!」
どこら辺がですかね?
「深景さんって、遠慮しないでしょ?摩利だろうと私だろうと意見をいう時はいうし」
これでもいいたい事は、セーブしているんですがね。
「そうですかね?」
私は無難に返す事にした。
さて、別の選手を見に行きたいところだけど…。
「七草……それに、司波さん。貴女は七草を見ていて。他は私が見るから結構よ」
やって来るなりそれですか。
和泉先輩はツカツカやってくるなり、異議は認めないとばかりの命令口調でいった。
「あら、イズミん」
和泉先輩の顔が引き攣ったけど、なんとか持ち直す。
もう訂正しても無駄と悟ったようですね。今更ですけど。
「了解です」
まあ、こういう人と喧嘩しても仕様がないからね。
素直に頷いておいた。
原作のズレで、私が他の人のCADを見るなんて展開にならないか心配で、データ
を覚えただけだし。
「それじゃ、宜しく」
和泉先輩はそういい捨てて去って行った。
「悪い子じゃないんだけどね…」
いい子でもないですよね?
さて、妨害されないように、私の魔法特性を生かすとしますか。
3
:真由美視点
クラウドボールの試合が始まる。
選手がコートに入る。
私は実は不安だった。前回みたいに成す術なくやられてしまうんじゃないかって。
深景さんがサブを引き受けてくれたのは、よかった。
何度か助けて貰ったから、安心できる。
勿論、あの後、お礼はいったわよ?
イズミんは、なんにもいわなかったからね。
それにしても、なんで一条の御曹司が一緒だったのかしら?
試合開始の合図でボールが排出される。
二十秒ごとに次々とボールが追加されていく。その数九つ。
ブザーがセット終了を告げるまで、ボールを休む間もなく追いかける事になる。
だけど、私は違う。
開始から動いていない。
飛んできたボールは、悉く運動方向を変えて対戦相手のコートに飛んでいく。
妨害の兆しすらない。
何かに護られているような気すらする。
真剣な眼差しが私の背中に注がれている。
胸の奥が温かくなる。彼女には前回の事件、今回の妨害と二度も助けて貰っている。
だからだと思うけど、私も意外に単純みたいね。
彼女が見守ってくれている限り、負ける気がしない。
ブザーと共に相手選手が膝を突いた。
インターバルに入ったので、ベンチに戻る。
彼女が無言でタオルを差し出してくる。
「ありがとう」
受け取って、汗を拭く。そんなに汗掻いてないけど。
次はドリンクを渡される。
「次の試合に備えてCADをチェックしましょう」
彼女が頂戴とばかりに手を出す。
その前に、まだ試合終わってないわよ?
私がそれを指摘すると、彼女は表情も変えずに私の勝ちだといった。
「どういう事?」
「サイオンの枯渇ですね。次のセットをやっても、途中で倒れます。真面な判断力が
あれば、棄権しますよ」
「よく分かるわね…」
なんでも、サイオンの消耗特有の症状が、相手選手に顕著に出ていたらしい。
私だけ見てた訳じゃないのね…。
褒めるべき事だと分かっていても、別の子に注意を向けていた事が、面白くないと感じていた。
突然むくれた私を、彼女は不思議そうに一瞥した。
「計測した方がいい?」
何か話して欲しくて、私は口を開く。
「プログラムを弄ったとして、試す時間が取れません。中身を綺麗に掃除するだけに止めますよ」
中身の掃除?
私が疑問を口にするより早く、彼女はCADのチェックを終えて私に返してきた。
そして、彼女の読み通り相手選手の棄権が告げられた。
第二試合。
私絶好調!
第一試合の棄権のお陰で、休憩が長めに取れた事もあるし、何よりCADの調子がいい。
流石に疲労を少し感じてきたが、効率が上がっている為、問題にならない。
セット終了のブザーが鳴る。
私は効率アップの秘密を訊いておく事にした。
ベンチに戻ると早速彼女に訊いてみる。
「効率が上がったのって、やっぱり、さっきやった中身の掃除のお陰?」
思い当たるのは、それくらいよね。
「ええ、アップデート前のシステムって残骸として残る場合があるんですよ。それを掃除
したからでしょう。効率も多少は上がりますから、もしかして、気になりました?」
彼女が若干申し訳なさそうにしたので、私は慌てて否定した。
「そうじゃないのよ!調子がよくなった秘密を知りたいなって思っただけだから!」
不満なんてない事を全力で伝えると、彼女は優しい笑顔を向ける。
頬が熱くなるのが分かる。
「後で、その掃除…教えてくれる?」
私は照れ隠しにそっぽを向いて、それだけいった。
「いいですよ。取り敢えず、今は勝ちましょう」
「当然よ!」
疲れなんか吹き飛んだからね!
その後、私は無失点ストレート勝ちで、クラウドボールの優勝をもぎ取った。
これで、みんなの調子も戻ってくれるといいんだけど…。
4
アイスピラーズブレイク予選二回戦。
いわずもがな、魔法を使った棒倒し…もとい、氷柱倒しです。
氷柱十二本を先に倒した方が勝ち。シンプルなゲームだが、疲れる。
私達は地震娘さん千代田キャノン先輩の応援に来ている。
私達といっても、司波家一同と雫しかいなかったりする。
エリカとレオ君は、桐原兄貴の試合の応援に馳せ参じていた。
絶対、兄貴が望む応援は、紗耶香さんだけだよね。
なのに、エリカが付き添いと称して参加し、レオ君が巻き添えになっている。
お邪魔虫はいかんよ。
美月は幹比古君ガードの元、監視業務。
達也も地震娘さんの試合の監視を兼ねて、この場にいる。ついでに私も。
雫は先輩の試合を見て置こうという気持ちで、ここにいる。
雫は達也の解説染みた話を聞きながら、真剣に頷いている。
雫のピラーズブレイクの担当は相変わらず達也だけど、深雪との対戦の時だけは私が準備した
CADと戦術を使う事になっている。原作通りにいけば対戦する事になると思う。
いよいよ、キャノン先輩がステージに上がる。
この競技、ファッションショー染みた側面もあるそうですけど、二年ともなると落ち着いた
ものですね。両選手共にカジュアルな格好ですよ。
これから、魔法を使った派手な氷柱倒しが始まる。
それから、五十里先輩とスタッフ用のモニタールームに向かった。
キャノン先輩の調子は原作通り、好調らしい。
五十里先輩からは、自信有りの雰囲気。
「まあ、
一転して五十里先輩が真剣な声音でいった。
達也と私は頷いた。それだけで、どういう意味か先輩には分かったようだ。
そんなトラブル起こさせませんよ。
先輩は少しホッとした顔をした。
雫もトラブルという言葉に反応したけど、表向き動揺は見えない。
試合開始のブザーと共に地震が局地的に発生。千代田家の地雷源。
正確には、爆発的振動らしいけど、別にどっちでもいいよね。
多分、この人、一年生の時も同じ戦法で戦ったよね?
誰も対策してないのかな?素直にガタガタやられてるけど。
キャノン先輩もブレないようだ。
必殺・倒される前に倒しちゃえ☆戦法で、見事勝利していた。
妨害の兆しすらなかったね。
どうも無暗矢鱈に妨害する気はないみたいね。
的を絞っている。となると、次はお姉様かな、やっぱり…。
5
キャノン先輩が、ピラーズブレイク三回戦突破を決めて、一校天幕へ凱旋したけど、天幕内
はオドロ線が支配していた。入ったら、おおぅっ!って感じだったよ。
話ができそうな市原さんに、五十里先輩が代表して何があったか訊く。
「男子クラウドボールの結果が悪かったのです」
「悪かったというと?」
淡々と答える市原さんに、五十里先輩が更に踏み込む。
「一回戦敗退、三回戦敗退です」
ええと、詰まりは二人一回戦負け、一人三回戦負けといった内訳ですか。
「まだ分かりませんが、来年のエントリー枠が減るかもしれません」
結構できる人が参加してた筈だけど、運が悪かったね。
対戦相手をチェックすると、悉く他校の有力選手とぶつかっている。
兄貴は三校のエースと三回戦で激突している。
こりゃ、落ち込んでるね…。紗耶香さん、あとは頼みます。
「新人戦は予測困難ですが、女子バトルボード、男子ピラーズブレイク、ミラージバット、
モノリスコードで優勝すれば安全圏ですね」
作戦スタッフの二年生が、とんでもない事をいい放った。
原作読んだ時も思ったけど、作戦スタッフって皮算用するのが仕事じゃないと思うんだよね。
勝てる作戦を話し合いなさいな。それが作戦スタッフでしょ。
妖だけでも頭痛いのに、勘弁してほしい。
6
偶々立ち寄ったラウンジで、バッタリ兄貴と紗耶香さんに会ってしまった。
ヤバい。私がお邪魔虫だよ。
ここでエンカウントするの達也じゃなかったっけ?
さあ、どうする。
対象とバッチリ目が合ってしまった以上、離脱は薄情かな。
「どうも、お疲れ様です」
「ああ、司波姉かよ…」
この人もオドロ線背負ってるよ。当然だけどさ。
紗耶香さんは心配そうですね。いい彼女ゲットしましたね、兄貴。
「三回戦で惨敗だぜ…」
これは放置して大丈夫ですか?
紗耶香さんに視線で訊ねる。
紗耶香さんも視線で何かいって上げて?とでもいいたげに見ている。
OKです!!ここはマイブラザーの手法を取りましょう!!
「結果を確認しましたが、惜敗じゃありませんか。よく三校のエース相手に、あれだけ戦った
と思いますよ。向こうも消耗していて準決勝で敗れていますし、痛み分けですね」
かなりの接戦だったみたいですからね。
競技に適した魔法特性をもった人相手に、魔法特性なしでよく食い下がったよ。
本来なら三校エースのぶっちぎり優勝だった筈だ。
うちの皮算用作戦スタッフも、二位か三位狙いでしたし。
「愛ですね」
恋人二人が真っ赤になって硬直する。
彼女に優勝を捧げようと気張ったからこそでしょう。
「お、おまっ…何をっ!!」
兄貴、呼吸困難みたいになってますが、大丈夫ですか?
「何、恥ずかしい事いってんだよ!!」
「ん?事実ですよね?」
真顔でいってやると、兄貴が諦めたように盛大に溜息を吐いた。
「落ち込んでる奴に、普通いうか?そんな事」
「まあ、荒療治的な?」
紗耶香さん苦笑い。
兄貴がガックリと頭を下げた。
「こういう場合は、気まずそうな顔で見ないフリして、通り過ぎんだよ」
「おお!そんな手が!?やり直します?」
「要らねぇよ!!」
うん。元気になってよかったよかった。
でも、おかしいな。痛み分けに反応されなかったよ?
7
:達也視点
明後日から始まる新人戦の技術スタッフとして、担当選手のコンディションとCADの
チェックなどを済ませ、ホテルのフロントに向かう。
そこで俺宛ての荷物を受け取る。
先日、渡辺先輩が見せた硬化魔法の使用法を見て、思い付いた玩具の設計図とプラグラム
を牛山さんに送っていたのだ。それが驚くべきスピードで送り返されてきた。
何かのついででいいと書いたんだがな。無理してないだろうな。
牛山さんなら、こんな玩具は朝飯前か…。
そう思い直して、割り当てられた部屋に戻る。
時刻はまだ夕食前。
この時間を使って玩具のテストしたいと考えていた。
姉弟だから問題ないと考えられたのか、姉さんと同室だ。
姉さんの方は、雫と何か打ち合わせをしていた。
後からくるだろう。
ダイヤルロックのハードケースを開けると、そこには注文通りの物が入っていた。
形状は、剣の柄が付いた平べったい棍棒といったところだ。
武装一体型CADだ。
軽く動作を確認すると、全く問題なく作動した。
このままテストまでいってしまうか…。
そう考えた途端にドアがノックされた。
友人達が押し掛けてきたのが分かる。
寧ろ、丁度いいのかもしれない。このCADはアイツ向きだろう。
扉がこちらが返事する前に開かれる。
「ただいま。今、戻ったよー。深雪と友達連れて」
姉さんがそういいながら入ってくる。
そして、言葉通り深雪と友人達がゾロゾロと後に続く。
一気に部屋が手狭になった。
レオは、目敏く机に置かれている武装一体型CADに、興味を示している。
意外だな。エリカも興味を持つと思ったが…。
いや、エリカは姉さんの持っている刀の方に興味がいっていて、気付かなかったようだ。
「ねえ、深景。その刀、見せて貰ってもいい?」
案の定、エリカが入るなり、口を開いた。
「ああ、これか……まっいいか」
姉さんは少し考えてエリカに鞘ごと渡す。
エリカは神妙に受け取ると、口にハンカチを咥えて鞘から抜き放った。
刀の目利きのように見る。
そして、最後にサイオンを流した。
刀の内部に刻まれた刻印や魔法陣が、浮かび上がる。
相変わらず、どうやって鍛えているのか分からない。
これで刀としても名刀の域にある。
姉さんが女だと知っても、刀や魔道具を造って貰いたいと依頼する人間が多いのも頷ける。
姉さんが刀を鍛えられるのは、長期の休みのみだ。今はどうにかなっているようだが。
エリカはというと、魅入られたように刀身を見詰めている。
「しっかし、スゲェな。刀なんて全然分からねぇ俺でも、スゲェもんだって分かるぜ」
レオが感心したように刀を見ていた。
「ええ、とっても綺麗です」
美月が呟くようにいった。
みんなが同意するように頷いた。
参ったな。俺のCADが霞んでいる。
エリカは存分に見たのか、刀を鞘に納めた。
「これ、誰が鍛えたの?」
「私だけど?」
姉さんが事もなげに答える。
「「「「「「ええ!!?」」」」」」
友人達が悲鳴のような驚愕の声を上げる。
まさか、自分で鍛えているとは思わないだろうからな。仕方のない反応だ。
みんながポカンとしている間に、姉さんが刀を取り戻す。
正気に戻ると、友人達がどういう事か問い詰めていた。
姉さん自身隠す気はあまりないようなので、アッサリと自分が九字光虎だ
と告げていた。
最も、分かったのはエリカしかいなかったが…。
エリカは暫くは呆然としていた。
そこからは、ようやく俺のCADの話題に移った。
あまりにもエリカが衝撃を受けているので、レオが気を利かせたからだ。
まあ、レオ自身も興味があったからだろうが。
そこで俺も都合がよかったので、乗ってやる。
ハードケースを投げ渡してやった。
危ないとか文句をいっているが、顔が笑っている。
「試したくないか?」
「仕様がなねぇ。実験台になってやるよ!」
俺の言葉にレオがニヤリと笑っていった。
テストは、正気に戻ったエリカのコネで、場所を提供して貰った。
テストは上手くいったとだけいっておく。
8
:退魔師視点
嘗てない程の力を持つパラサイトが現れたという話を聞き、急ぎ準備を整えたが、随分と
時間を食ってしまった。
吉田家の話が本当なら、我々も覚悟を決めなければならない。
刺し違えてでもこの世界から叩き出す。
深夜も車を走らせる。
もうじき、到着できるだろう。
連絡は既に入れてある。
カーブを曲がった時、ヘッドライトに人の姿が突如浮かび上がる。
慌ててハンドルを切り、ブレーキを踏む。
後続もどうやら轢く事なく回避したようだった。
私は窓を開け、立っていた人物に声を掛ける。
「大丈夫ですか!?」
立っていたのは病的に痩せた小男だった。長髪の所為で顔がよく見えない。
立ったまま返事もしない。
私は仲間と顔を見合わせ、車を降りる事にする。
近寄っていくと、小男はニヤニヤと笑っている事が分かった。
ちっ!悪戯か。
「大丈夫みたいですね。こんなところで立っていると危ないですよ」
私は冷ややかに注意だけして、車に戻ろうとする。
「ああ。確かに危ないな」
小男は笑いながらいった。
流石にムッとして振り返ったところで、何かが突き刺さった。
見ると、私の胸に何か長いものが刺さっていた。
「こんな時間に車を走らせるのは、危ないな。夜は俺達の時間だぞ?」
私の意識はここで途切れた。
9
:戸愚呂視点
七草真由美の調子が戻ったようだが、不調は一校に居座っている。
けどねぇ。
ここらで、一人くらい退場して貰うかね。
そんな事を考えていると、端末に通信が入った。
通信に出ると、よく知る存在だった。
『よぅ。弟よ。慢心はいけないな。退魔師の応援が結構な人数来ていたぞ?』
兄者だった。
今の言葉で大凡何があったか分かったが、一応確認しておく。
「兄者。それでどうしたんです?」
『弟の仕事の邪魔はよくないからな。皆殺しにしたよ。安心しろ。死体は灰も残さず、
燃やしたよ』
溜息を堪えて、どうもと返事を返す。
『何、いいさ。暇だったからな』
「それじゃ、左京さんの事を頼みますよ」
『クックック。分かっているさ。これで帰るよ』
別に無理にこの仕事を成功させたい訳じゃないが、何故どいつもこいつもストレスが
溜まるような真似をするのかねぇ。
10
:風間視点
警備体制の打ち合わせに、私も参加させられる事になった。
七草嬢の件が原因だ。
アドバイザー程度の参加だが。
すると、打ち合わせ中にも関わらず、藤林が入って来る。
どうも厄介な事が起きたらしい。
私に耳打ちする。
「吉田家の派遣した退魔師が、消息を絶ちました」
私は黙って頷いた。
これ程の厄介事とはな。
すぐさま、捜索隊を組織する事を提案しないとな。
結果からいえば、退魔師は車ごと行方不明になり、見付かる事はなかった。
なかなか進まない。
そして、どんどん長くなる文章。
なんとかしないとな、と思うんですが。
月の投稿回数が減る事になりました。
集中して書く時間が取れない為です。
しかし、チョコチョコ書いていますので。
次回も気長にお待ち頂けると幸いです。