司波家の長女は何をする?   作:孤独ボッチ

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 時間が掛かってしまいました…。
 そして、長くなってしまいました。
 
 それでは、お願いします。


九校戦編7

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 九校戦も三日目に突入しました。

 悪い話は、朝一で届けられた。

 爽やかな朝が、土砂降りの夜みないに見えるよ。神も仏もありゃしないよ。

 駄神は仕事しなよ。

 応援に来る筈だった退魔師が、消息不明になったのだ。

 風間天狗は、中止を提案してくれたようだけど、腐れ爺・九島烈が様子を見ましょうと、

どこぞのご隠居みたいな事をぬかし、続行になった。

 あの爺、基本、学生の事は二の次にしやがりますからね。

 この事は、直接被害を被る一校首脳陣に告げた。

 みんな顔色が土気色してましたよ。

 幹比古君にも告げなければならなかった。大層動揺してた。

 追加戦力は、なかなか派遣の目途が立たないらしい。

 戦力逐次投入は愚策だからね。

 仇はとるよ。機会を作って、必ずね。

 

 問題は、今日の出場者に要注意の参加者が、二人もいる点ですよ。

 まずは本命と疑われる渡辺お姉様、そして妖怪ぬりかべ…もとい十文字さんだ。

 この第一高校のキーパーソンは、間違いなく三巨頭だ。

 妨害があるとすれば、この三人が一番有力だと考えている。

 原作では邪魔されなかったのが、不思議なくらいだからね。

 十文字さんは邪魔したら殺されそうだけど。

 もしかして、原作・無頭竜(ノーヘッドドラゴン)ってビビったの!?

 まあ、下らない事はいいんだけど。

 私が渡辺お姉様監視で、達也が十文字さん監視に回って貰った。

 因みに深雪も達也の方へ行った。

 十文字さんはアイスピラーズブレイク出場だからだ。深雪も出る競技だしね。

 参考にはならないだろうけど。

 カンゾー君とキャノン先輩の試合は、私と達也、美月で分担してやる事にした。

 スケジュールの調整がタイトどころじゃありませんよ。

 応援している暇はありません。

 お二人共、私等の応援なんてどうでもいいだろうけど。

 

 そういう訳で、私は渡辺お姉様の試合に来ている。

 見学メンバーは、ほのかに雫、幹比古君と美月という顔触れです。

 ほのかは、本当なら達也のところに行きたかったろうが、出場競技という事もあり今回は

こちらに来ていた。

 結構、軽い対応してたから心境の変化があったのかと思ったけど、エリカは十文字さんの方に

行った。レオ君を連れて。まっ、いいか。

 成績の方は、皮算用スタッフの皮算用通りにほぼ進んでいるらしい。

 クラウドボールの痛手はあるけど。どうにか穴埋めできそうな感じらしい。

「もうすぐスタートですね」

 美月が私に話し掛ける。

 あっ、もう、そんな時間か。

 渡辺お姉様は、達也に自分の試合は見に来るんだろうな、といっていたらしいけど、彼氏が

いる女性としては、勘違い野郎を生む原因になり兼ねないですよ。

 噂では、達也が来ないと知って、少しイラッときていたらしい。

 今朝のニュースがあったのに余裕ですね。

 でも、修羅場は止めて下さいね。文字通り血の雨が降りそうだから。

「うん。美月、頼むよ。幹比古君もキッチリ護って上げてね」

「はい!」

「分かったよ!」

 二人は気合十分に頷いた。

 幹比古君は美月に心配掛けないように、表面上は取り繕えるようになっていた。

 男の子の意地だね。

 美月の周りには護符が張り巡らされており、美月の眼を保護している。

 美月は、もう眼鏡を外している。

 準決勝は三人で二レース行う。

 

 流石に準決勝となれば、全員がボードの上で立ったまま、いつでもいける状態だった。

 

 

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 :摩利視点

 

 私はいつでも飛び出せる状態のまま、隣をチラリと見ると、偶々目が合った。

 去年は、お互いに優勝を掛けて勝負した仲でもある。

 第七高校の水上。海の七校などといわれる学校だが、コイツは別格といっていい。

 間違いなく、これが事実上の決勝戦となる。

 視線を合わせたのは一瞬。それで十分。言葉など不要だ。

 今度も勝つ。今度こそは勝つ。お互い正しく相手のいいたい事を理解していた。

 一回目のブザーが鳴る。

 そして、二回目のブザーと共にスタートが告げられた。

 

 私は一気に先頭に躍り出る。

 様子見も、手加減もない。

 後ろを向かなくても分からる。水上が背後にピッタリと追走している。

 どのような魔法も難なくボードを操り対処する。更には、こちらの隙を伺っている。

 魔法だけなら自分の方が上だろう。だが、ボードの扱いに関してはあちらが上。

 振り切る事ができずに、鋭角のコーナーに差し掛かる。

 私はギリギリで減速に入ろうとした、が。

 減速しなかった。

 CADも全く反応しない。

 妨害工作の事を忘れた訳じゃなかった。

 だが、こんな事で慌てたりしない。

 口頭で呪文を唱える。大凡、呪文というイメージから掛け離れたものではあるけど。

 だが、次の瞬間に、腹から強烈な痛みで呪文が途切れた。

 何かが内臓を掴んでいるような感じだ!!

 痛みを激しさを増す。本能が危険を訴えていた。

 痛みに耐え、前を見た時には、コースの防護壁がすぐそこにあった。

 しまった!減速のタイミングが!と思っても遅い。

 私は目を固く閉じて、対ショックの態勢を取った。

 だが、衝撃はやってこなかった。

 目を恐る恐る開けると、防護壁の目の前で私は停止していた。

 審判が赤いフラッグを上げている。

 それは、失格を示すものだった。

 水上が苦虫を嚙み潰したよう顔で、横を通り過ぎて行った。

 どうも、私の様子がおかしいのを見て取って、距離をとったようだ。

 

 私が意識を保っていられたのは、そこまでだった。

 

  

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「流石は海の七校だね」

 幹比古君が感嘆の声を漏らす。

 原作でも競り合ってたけど、こっちじゃ後ろからプレッシャー掛けてるくらいだ。

 原作より、向こうの選手は実力が上がってるね。

 両者、そのまま鋭角のコーナーに差し掛かろうという時、美月が声を上げる。

「CADから火花みたいなのが!」

 私にも見えていたので頷く。

 原作じゃ七校選手に仕込んだけど、こっちじゃ直接狙いに来たか!

 おそらく、原作のような大会委員会の工作員の細工ではなく、直接CADに干渉したのだ

ろう。

 更に、嫌なものが眼に飛び込んでくる。

 水面から蟲のようなモノが、お姉様の腹に飛び付き身体に直接呪いを発動。

 途端にお姉様の顔が歪む。

 お姉様はCADをダメにされても、慌てず口頭で呪文を唱えて魔法を使おうとしたようだが、

蟲に阻まれて、魔法がキャンセルされる。

 誰も気付いている様子はない。当然だ。アレは…。

「まさか!?呪殺用の…」

 式神の類より、もう妖扱いしていいヤツだ。

 幹比古君が素早く立ち上がり、護符を構える。

「君!何やってる!?」

 警備の軍人が既に銃を構えて、幹比古君を威嚇していた。

 ほのかが銃に怯え、雫は宥めるように寄り添う。

「今はそれどころじゃ!!」

 このまま私が手を出さなければ、お姉様は大怪我をする。

 いや、あの呪殺を目的とした式神を放置すれば、死ぬかもしれない。

 そんな事を座視していい訳がない。

 失格させた事の罵倒は、甘んじて受ける。

 私は、まだ根源にアンインストールしていない精霊の眼(エレメンタルサイト)を起動する。

 どこから術を使ってる?

 巧妙に隠していても無駄だ。

 常人では気付けない頼りない糸を確認する。

 魔法の使用は術者とどうしても繋がりができてしまう。遠隔であっても。

 それが糸、場合によってはもっと濃く見える。

 精霊魔法なら誤魔化せるとでも思った?見付けた!!

 ここまで一瞬で読み取る。

 私は意を決して、お姉様のボードの運動エネルギーを切断する。

 冗談みたいにボードが防護壁の前で停止する。

 そして、式神の干渉を切断する。

 式神が戸惑ったように震える。私はそのまま式神を呪詛返しで術者に送り返した。

 古式魔法師が用いるような道具など、一切使わなかった。

 幹比古君が驚愕するのが分かったが、構っている暇はない。

「おっ!?」

 間の抜けた声が私の耳に入る。

 振り向き群衆の中から、あのマッチョのタンクトップを見付ける。

 アレだったか。

 私は刀を引っ掴むと、そのまま走り出した。

「先輩を頼むよ!!ほのかと雫はジッとしてて!!」

 二人は取り敢えず頷いてくれた。

 私はお姉様の様子を確認する事なく、追跡を開始する。

「柴田さん!ここを動かないで!!彼女を頼みます!!」

 幹比古君が、警備の軍人に無理矢理美月を押し付ける。

 銃構えてる相手に無謀な。

 お姉様のところには、いわれずとも軍人が向かっているようなので、よしとする。

 タンクトップは慌てた様子も見せずに立ち上がると、会場を出ようとしていた。

 逃がさない。

 スピードを上げて、タンクトップが入った通路に飛び込む。

 すると、警備の軍人が二人血塗れで倒れていた。

 響子さんも仕事はしてくれたようだけど、半端な事したな。気の毒に。

 それを見ても私は足を止めない。

 だが、前方で爆発音と衝撃波が伝わってきた。

 眼で確認すると、意外な人物がタンクトップの前に立ち塞がっていた。

 

 若様。せめて、残念参謀と警備の軍人くらい引き連れてきなよ。

 

 

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 :将輝視点

 

 もう俺の方の新人戦用CADの調整は済んでいる。

 エンジニア兼選手として忙しいジョージなら兎も角、俺には時間があった。

 手伝いたくとも、俺では足手纏いにしかならない。

 俺も自分のCADの調整くらいできるが、ジョージの足元にも及ばない。

 因みに奈津もエンジニアとして参加している。

 ジョージ程ではないが、なかなか巧みに調整する為、人手不足の解消の為メンバー入りした。

 みんなは初めての競技で、戦術面などを時間のある先輩やエンジニアに相談したり、自分で

検証して試したりしている。

 俺にはそれは必要のない事だ。もう、本番を待つばかりの状態だ。

 そんな訳で俺は、今日は一人だった。

 

 奈津が世話になっている先輩の試合があるので、応援に行けない奈津に代わって、応援に

行く事にする。

 といっても、悪いが俺はほぼ勝ちはないと思っている。

 バトルボードで第一高校の渡辺選手、七校の水上選手と同じレースだったからだ。

 流石に勝つのは厳しいだろう。

 七草さんの試合を思い出すと、また何かあるのではと嫌な予感も感じていた。

 だが、会場で彼女を見付けた。存外嫌な予感も気の所為かもしれない。

 やはり縁があるようだ。

 近くに行こうとしたが、真剣な様子でコースを見ているのを見て、考え直す。

 ここは何かあった時に備えて、フォローできる位置にいた方がいいだろう。

 全体を見渡せる後ろの席を探して座る。

 彼女の隣に座るチャンスを逃すのは断腸の思いだが、これまでいいところなしの現状から脱し

たいという気持ちもあった。

 

 レースが始まる。

 残念ながら予想通りの展開で、先輩が二人に引き離されていく。

 しかし、二人共見事なものだ。

 水流をどう流せばいいか、どうボードを操ればいいかよく知っている。

 相手に何をされても動揺する事なく、逆にそれを活かして進む。

 名勝負といっていいだろう。

 だが、それが突如破られる。

 渡辺選手が減速しないのだ。

 いや、できないのか!?しかも、表情が歪んでいる。何が起こっている!?

 情けない事だが彼女の方を窺うと、近くにいた男が立ち上がって護符を構えて、警備の軍人

に銃を向けられている。

 次の瞬間、信じられない事が起きた。

 防護壁に激突すると思われた渡辺選手が突然止まったのだ。

 なんだ、今のは!?

 冗談みたいに止まったかと思えば、魔法が渡辺選手に向かって放たれる。

 どうやら、彼女が何かやったようだ。

 審判が険しい表情で赤のフラッグを上げる。

 失格を示す旗だ。外部から魔法干渉を認めたからだろうが、事情を鑑みないのか!?

 渡辺選手の様子を見れば、助けるのが目的なのは明白なんだがな。

 こんな時にジョージがいれば、彼女が何をしたか教えて貰えたんだがな。

 それよりも、彼女の動きが劇的だった。

 すぐに振り返ると、ある男に視線を定め、走り出す。

 俺は彼女が敵を特定したのだと確信する。

 ここで待機した甲斐もあったというものだ。

 彼女より、俺の方が接触が早いだろう。

 すぐさま動き出す。近くの出口に飛び込む。

 自己加速で地面を蹴り、曲がる際は壁を蹴り加速する。

 男の断末魔の声が通路に響く。

 どうも犯人は、こちらに落ち着いた歩調で歩いている。

 どういう神経をしている!?

 俺はそこに辿り着くと、すぐに特化型CADを構えた。

「動くな!死にたくなければ投降しろ!」

 そこには返り血を浴びた大男が立っていた。

 特に驚いた風でもなく、大男は歪んだ笑みを浮かべた。

「やっぱり、俺にゃ小細工は向かねぇな。そう思うだろう?王子様よ」

 どうも俺の事を知っているようだ。

 次の瞬間、大男の姿が霞む。

 魔法の照準を外される。

 だが、こんな事は奈津や親父と模擬戦をすれば、よくある事だ。

 慌てる事なく、意識を接近戦に即座に切り替える。

 大男からは想像もできない程、しなやか動きで死角を取ると拳を繰り出す。

 拳が砲弾のように飛んでくるが、俺は片手で受け流すと、大男の肩に蹴りを見舞う。

 大したことがないと高を括っていたようだが、大男は体勢を崩し、驚愕の表情を浮かべる。

 CADをトンファーのように持ち替え、攻撃を繰り出す。

 大男は舌打ちして、スルリと攻撃を躱し距離を取った。

 すぐさま、俺はCADを持ち替えて、迷わず魔法を放つ。

 気体を魔法で膨張させ爆発を引き起こし、それに指向性を持たせ大男を吹き飛ばす。

 爆轟という名の魔法だ。これは一条家の固有の魔法ではないが、重宝している。

 完全に直撃したが、直感がヤツが普通ではない事を囁いていた。

 油断なくCADを構えたまま、警戒する。

「んだよ。王子様、なかなかやるじゃねぇかよ」

 案の定、傷一つない。

 あの妙な女も見た事のない魔法を行使していた。こいつにもそういった手段があると考える

べきだろう。まだ、出していない札が。

「砲撃戦が得意な魔法師だから接近戦に持ち込めば。とでも思ったか?」

「ああ。確かに侮ったわ。悪かったな」

 俺の言葉をアッサリと認めて、大男は獰猛に笑った。

 そのタイミングで、彼女が通路から姿を現した。 

  

 できれば、彼女が来る前に片付けたかったんだがな…。

 

 

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「お前は俺のペットを返してきた奴か。大切に育ててたのによぉ。」

 追いついた瞬間、タンクトップがそんな事をいった。

 ペット?蚤とかゴキブリとかをペットにしてる登場人物がいるドラマとか、映画があるそう

だけど、呪殺用の蟲毒をペットにしてる奴は初めて聞いたよ。悪趣味だね。

 呪詛を返されても、少し驚く程度でなんともないってのも呆れるけど。

 私はそれについて口では感想をいわずに、持っている刀を鞘から抜き放った。

「深景さん。ここは俺に…」

 若様が頼もしい事をいってくれるが、首を振る。

「お気持ちだけ受け取って置きます。こちらも仕留める理由があるので」

「では、加勢させて貰います。これは譲れません」

 私は思わず笑みを漏らした。

 女一人で立ち向かわせる事などできなかったんだろう。

 古い考えといえばそうだけど、嫌いじゃないよ。その考え方。

 一人じゃなきゃ、なおよかったんだけどね。万が一があったら困る。

 ここで幹比古君も追い付いてきて、護符を取り出す。

 目付きが険しい。

「んだよ。あの人が始末したっていってたのに、まだ残ってるじゃねぇか」

 タンクトップが呆れたようにいった。

 だが、その言葉は応援に来る筈だった人達の失踪に、自分達が関与していると白状した事を

意味する。

「殺したのか…」

 幹比古君の表情が消える。

「らしいぜ?」

 幹比古君がそれだけ聞くと、護符を放った。

 問答無用で全ての護符が、タンクトップに直撃し青白い炎を上げて燃え上がる。

 その炎が勢いを増して燃え上がった。

 若様がアシストしたのだ。

 並の奴なら骨も残らないだろう。

 だが、青白い炎から哄笑が響く。

「残念だったよな。このくらいじゃ、ビクともしねぇよ」

 炎吹き散らし、マッチョタンクトップの身体が膨張する。

 広く造られた通路が狭く感じる。

 タンクトップは人型から妖に姿を変えた。

「お、鬼!?」

 幹比古君が引き攣ったように呟く。

 

 ようやく、思い出した。

 

 こいつ、幽遊白書に出てきたヤツだ。

 確か、飛影と蔵馬とつるんで閻魔の宝を盗んでたヤツだ。名前までは忘れたけど…。

 なんでこんなのいるの!?なんか出てきちゃいけないヤツじゃないの!?世界観的に!!

 芋蔓式に思い出したけど、あの女も幽遊白書に出てきたヤツじゃなかったっけ!?

 ダメじゃん!!例えるなら、食戟のソーマに初期ラーメンマンが出てくるようなもんでしょ!?

 超人をラーメンにするなんて暴挙、料理漫画だからって許可できないでしょ!?

 

 取り乱しました。失礼。

 

 文句をいっても仕様がない。ここで倒す。

 こっちもチートだ。人類を舐めるんじゃありませんよ!!

 刀を手に滑るように鬼との間合いを詰める。

 巨体からは信じられないスピードと、身のこなしで鬼が拳を振るう。

 この体術…。既視感がありますよ。

 どうも、こいつ等、幽遊白書そのままって訳じゃなさそうですね。

 当たれば強化していようが私などボロ雑巾になる攻撃を、最小限の動きで掻い潜り、刀を

一閃する。

 途轍もなく硬い皮膚に阻まれ、斬り損ねる。

 金属のように皮膚から火花が散る。

「その歳で、大した一撃だな!!」

 振り抜いた事で隙ができたと見て、大胆に拳を振るう。

 こっちが斬れないと見切っての事だろうが、甘い。

 攻撃を難なく躱し、手首を返し、返す刀で隙が生じた鬼を斬り上げる。

「効かねぇっ…っ!?」

 更に斬り返し上段から斬り下ろす。

 鬼返の逆手。元ネタは我間乱である。一応秘奥に分類される技である。

 原作では関節を外して伸ばしたりしているが、私は柄の握りを変えて刀の長さを変えて

放っている。

 更に技としての斬鉄の要素を加え、斬り付けたのだ。

 全く同じ個所を二連撃した為、身体が中半まで切り裂かれる。

「こ…この!!」

「滅せよ!朱雀の焔!!」

 何かセリフをいおうとした鬼を遮り、幹比古君が新たな護符を叩き付けていた。

 血が噴き出す前に、聖獣の火が鬼を焼く。

 私は巻き込まれないように、後ろに跳んでいた。危ないな!もう!

 次の瞬間、鬼が真ん中から割れて爆発する。

 若様がお家芸を放ったようだ。

 若様がCADを構えたまま、残心。

 まあ、厄介なのは、ここからだからね。

 そんな事を考えていると、忍び笑いが床の残骸から聞こえる。

「「っ!?」」

 若様と幹比古君が驚愕する。

「こっちには専門家がいる。知っている事を話して貰うよ」

 私は驚く事なく、残骸にいう。

 もう、本体は身体じゃないからね。驚く事はないよ。

 残骸が嗤う。

「仮にそれが本当だとしても、無駄だな」

「どういう意味だ」

 鬼の言葉に、驚きを抑え込んだ若様が訊く。

「実戦経験があるっていっても、そんなもんかよ?可笑しな事を口走られる前に、どうにか

する手段があるに決まってんだろうがよ」

 残骸がそういうと、それを肯定するように金色の火が残骸に点火する。

「「っ!?」」

「ほらな?」

 パラサイトの本体まで金色の火は焼き尽くす。

 

 残骸は核が燃え尽きるまで、哄笑した。何がそんなに愉快なんだろうね、こいつ。

 

 

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 すっご~く、遅いご到着で軍人様がやってきた訳だけど。

 若様が事情説明をした。私等じゃ、埒が明かないもんだからね。

 警備の軍人にとって私等は、試合に横槍入れた酷い女とその仲間らしい。

 軍の連中は事情説明を聞いて、若様に礼をいっていた。

 私等二人はぽつーんですよ。

 表向き、民間人じゃないのか十師族。

 私達は若様に後事を託し、その場を立ち去る事にした。

 若様は何かいいたそうだったが、取り敢えず気付かないフリでいきます。悪しからず。

 埋め合わせは、いずれ精神的に。いや、問題か?このセリフ。

 

 お姉様は病院に運び込まれていた。

 精密検査をチャンとしてくれるようだ。呪詛を受けたんだから頼むよ。

 そこは幹比古君が専門家として、アドバイスをしてくれるそうだ。

 そして、予想はしてたがお姉様は失格になっていた。

 やっぱり、審判が気付かないとダメなのか。アイツ等のやり放題だね。鬱だ。

 駆け付けた閣下に私は頭を下げたが、逆に感謝された。

 首脳陣も私より、この期に及んで何もしない大会委員や軍に怒りを向けているのだとか。

 寧ろ、グルかと疑う程、何も動きがない。天狗様使えないですわ。

 確か、あの爺、パラサイトの軍事利用考えたりしたよね?

 まさか、この時期にもう結託してたりしないだろうね?

 明らかに、あの妖はおかしかった。

 自動的に証拠が消されるようになっているなんて、まるでイギリススパイものみたいだよ。

 響子さんには悪いけど、探ってもらうかな…。いや、身内だからな…。

 自分で探りますか。

 

 そして、閣下の口からとんでもない事を聞かされたのだった。

 

 

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 :達也視点

 

 姉さんが病院に来る前。

 十文字会頭の試合まで時間は遡る。

 

 俺は十文字先輩の試合を監視する事になった。

 姉さんの予測では、渡辺委員長と十文字会頭が最も狙われる可能性が高いという事だった

からだ。俺もその意見に賛成だ。

 会長を含めた三巨頭は、一校の要といっていい。

 一校を優勝させないなら、俺でもこの三人を狙う。

 決勝までは問題なく勝ち進んだ。

 妨害するなら、ここが今日最後の機会になる。

「でも、十文字会頭ってブルドーザーみたいよね。全部、一度で更地にする!みたいな」

 エリカがいい得て妙な感想を口にする。

 どんな防御もものともせずに圧し潰すのだから、対戦相手にとっては悪夢だろう。

「いや、お前、喩えが失礼だからな」

 レオが真っ当なツッコミを入れる。

 深雪も苦笑い気味だ。否定する材料がないので、困っているのだろう。

 そして、いよいよ決勝戦の選手が登場する。

「それにしても、十文字会頭…なんで態々あんな格好をしているのでしょうか…」

 深雪が、どこか遠い目で十文字会頭の格好にコメントする。

 それには、俺もコメントに困る。俺にもあの人の思考は理解できないのだから。

 十文字会頭は、戦国時代の武将のように甲冑姿だった。

 やたらと似合うが、ピラーズブレイクに出る選手としては、どうなんだろうか。

 まあ、相手選手も、一瞬腰が引けたようだし効果はあるのか?

 そうこうしているうちに開始のブザーが鳴る。

 決勝に残っている選手だけあって、対戦相手も大したものだが、十文字会頭の相手をする

には力量不足のようだ。

 必死に防御しているが、もう前列のピラーが圧し潰されている。

 このまま押し切ると思いきや、十文字会頭が突然よろめいた。

 会場から悲鳴が上がる。

 あの人に限って熱中症というオチはないだろう。

 俺は精霊の眼(エレメンタルサイト)で、十文字会頭を調べる。

 魔法が暴走し、魔法演算領域に多大な負荷が掛かっている。

 このままでは、魔法師生命が絶たれかねない。

 相手選手は戸惑ったようだが、そこは決勝に残った選手。

 魔法が弱まった隙に攻めに転ずる。

 十文字会頭のピラーが、ドンドン崩れていく。

 術者はどこだ?精霊の眼(エレメンタルサイト)で探すが、魔法と術者の繋がりが見えない。

 より深く探る事で、ようやく繋がる糸が薄っすらと映る。

 これでよく強力な効果を得られるものだ。

 これでは機器も審判も妨害と判断できないだろう。

 そして、糸を辿り、術者を見付け出した。

「っ!!」

 俺は術者を見付けた瞬間に察した。

 これを殺すには手段を選んでいられない。そういう相手だと。

 ここでやり合えば、甚大な被害が出るだろう。深雪も巻き込む事になるだろう。

 しかも、術者はこちらを見ていた。

 視線があったまま、身動きが取れない。

 深雪や友人達は、俺の様子に気付き俺が見ている視線の先を見る。

 その時、試合終了のブザーが鳴り、糸が消える。何かが倒れる音と悲鳴が会場に溢れる。

 十文字会頭を最初に見た時も、巌のような人だと感じたが、術者の男は長身で鍛えられている

ようだが、細身で十文字会頭のような体格ではない。

 その筈なのに、あの男は古の伝説に語られる巨人のように感じた。

 男がニヤリと笑い、自分の喉の辺りをトントンと指で叩いた。

 深雪が息を呑むのが分かる。

 エリカも、知らず知らずのうちに冷や汗を流している。

 あの物怖じしないレオも小刻みに震えている。

 俺は、深雪の肩を抱く。

「大丈夫だ。倒さなければならないなら()()()()()()()()()()()

 深雪が驚いたように俺の顔を見た。

 そう、俺はいざとなれば戦略級魔法を使用してもアレを倒す。そういったのだ。

 深雪や姉さんに危害を加えるなら、どれだけ周りに被害が出ようが、俺はやる。

 男を睨み付けると、これ見よがしにゆっくり立ち上がると、会場を去って行った。

 脅威は去った。見逃されたというのが正しいだろうが。

「何…あれ」

「まさか犯罪組織って、アイツかよ!シャレにならねぇぞ」

 エリカとレオが呪縛が解けたように口を開いた。

「お兄様…」

 俺は深雪を安心させるように、微笑んだ。

「十文字会頭が気になる。行こう」

 俺は三人を促して、歩き出した。

 

 あれは人間にできる魔法じゃない。自信たっぷりになるのも頷ける。

 だが、今度はこうはならない。

 

 

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「はぁ!?十文字さん準優勝!?」

 閣下はええ、と言葉少なく返事した。

 病院の廊下にも関わらず、大声を上げてしまった。それ程、衝撃的だった。

 あっちには達也が付いていたのにだ。

「それで十文字さんは、大丈夫なんですか?」

 私の質問に、閣下が頷く。

「ええ。自分で暴走を抑え込んだみたいだから。でも、暫くは安静にしていないといけない

けどね」

 深刻な後遺症なども大丈夫だったようだ。

 ホッとする。

 聞けば、達也は術者を特定したようだが、周りの被害を考えて挑めなかったそうだ。

 具体的にいえば深雪を巻き込みそうだったって事ね。

 達也が戦うのに二の足を踏む相手とはね。

 どんな化け物なのかね。やっぱり、幽遊白書ネタからのご出演かなぁ。

 幽遊白書っていえば、戸愚呂だけど。

 お願いします!あれは勘弁して下さい!

 

 カメラに写っているだろうから、要チェックだね…。

 因みに、十文字さんの試合も妨害行為が確認できないとかで、判定は覆らなかったそうな。

 

 

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 :戸愚呂視点

 

「世話になりました」

 私は通信機を手にホテルの一室にいた。

 部下の一人、剛鬼のフォローをして貰った関係で、協力者に礼をいわなければならなかった。

 戦っての戦死なら、ヤツも本望だろう。

 欲をいえば、もっと上手く仕事をしてほしかったがね。

『いや、問題ないよ。第一高校の渡辺君だったか。彼女の時のような事はこれっきりにして

ほしいがね』

 精霊魔法に類する魔法は視認が困難とはいえ、あれは流石にあからさまにおかしいと思われた

みたいだしねぇ。物凄い抗議やら問い合わせがきたらしいねぇ。

 その為の協力者だ。頑張って貰いたいねぇ。

 もう少し誤魔化せって苦言も分かるけどねぇ。

 こっちにもいいたい事がある。

「こちらも人員を勝手に動かすような真似は、止めて貰えますかね」

 兄者の件で釘を刺しておく。

 おそらく、邪魔な退魔師を処分させる為に、兄者に情報を流したんだろうがね。

 向こうは、こっちの性能を確認したがっていたからねぇ。

『君なら兎も角、君の部下が大勢犠牲になるかもしれんと、気を遣ったつもりだったんだがね』

 アンタにも火の粉が掛かるかもしれないんですがね。

 溜息一つ吐いて、話題を変えようとしたが、あちらが違う話題を振ってきた。

『君がそうなったのが、残念であり、天の配剤であるとも思うよ。君達はこの国の国防に重要な

存在だよ。見返りを期待していると、伊集院君に伝えておいてくれ』

 通信が切れる。

 まあ、これ以上急ぐ案件もないからいいがね。

 それにしても、あの食わせ者が残念か…。

 考えても仕様がない事を頭から追い出す。

 

 それにしても、あの男、司波達也とかいったかねぇ。

 あれは伸びる。まだまだ。もう一人の方も期待できそうだねぇ。

 あの殺気の籠った眼。若者の成長に貢献してやるとしよう。

 知らないうちに私は笑みを浮かべていた。

 

 

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 :響子視点

 

 達也君からの情報提供で、十文字家次期当主殿の妨害を行った存在を追っていた。

 防犯カメラの映像とサイオンセンサーとを精査していく。

 そして、手が止まった。

 有り得ない…。

 そこに映っている該当者は、私がよく知る人物だったからだ。

 もう、この世にいない筈の人…。

 

「どうして…貴方が……」

 

 

 

 

 

 

 




 これだけ書いて、ハーフを折り返したところとは…。
 すみませんが、九校戦編まだまだ終わりません。
 
 文章の改行がおかしいとのご指摘を頂きました。
 時間を見付けて、考えて修正していけたらと思って
 います。

 難しいものですね。文章書くって…。
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