司波家の長女は何をする?   作:孤独ボッチ

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 随分と時間が掛かってしまい申し訳ありません。
 言い訳はするまいと思います。

 では、お願いいたします。



九校戦編9

               1

 

 注目の三校選手・命知らずその二と雫が姿を現す。

 同時に出てきたよ。

 私はといえば、次の試合の準備を終えてエイミィ、滝川さんと一緒にモニター見物している。

 次は二人の出番だしね。

 普通は百家相手じゃ、終わりと諦めるところだけど、達也が調整し戦術を組み立ててサポート

した雫が敗退する事は考えられない。雫も学年二位の実力は伊達じゃない。

だから、リラックス観戦モードですよ。

 開始のブザーが鳴り響くと同時に、雫が能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)を発動する。

 命知らずその二は、CADを構えるのみ。

 

 はてさて、どこまでやれるかお手並み拝見っと。

 

 雫は準々決勝同様に相手の撃つべきクレーを逸らし、自分のクレーを砕いていくが、向こうも

簡単にやられない。

 クレーが逸らされているにも関わらず、砕かれた破片がビリヤードのように連鎖して次々と

クレーを砕いている。

 かなりの接戦だね。本当なら手に汗握る展開だろうけど…。

「雫…大丈夫かな?」

 エイミィがちょっと心配そうにいった。

 まだ、接戦なんだから、心配いらないよ。

「雫の実力は勿論だけど、雫には達也が付いてるんだよ?このままな訳ないでしょ?」

 私は二人に自信ありげに笑ってみせた。

 実際大丈夫だしね。

 

 そして、命知らずその二の計算が狂った。

 

 クレーの破片が次のクレーに当たらなかったのだ。

 すぐさま修正したけどね。

 

 もう勝ったね、これ。

 

 

               2

 

 :真紅郎視点

 

 ポイントだけなら、今はこっちが有利だ。

 それで、見学にきた同級生達が勝てると騒いでいるが、僕の顔は強張っていた。

 同じく見学に来ていた将輝も同じだった。

 流石に将輝は気付いている。

 天秤が傾き出している事に。

「不味いぞ。ジョージ」

 将輝の言葉に僕は返す言葉がなかった。

 あれは…あのCADは当然、特化型だと思い込んでいた。

 研究者である身には、あるまじき失態だった。

 先入観に囚われ、事ここに至るまで真実に気付けなかった。

 よく相手のCADを見れば、一目瞭然だったのに!

 使われる魔法にばかり目がいって、CADの観察を怠るなんて!

 どこかで天才だなんだと、おだてあげられて気の緩みがあった。

 学生レベルの大会なんて敵はいないと。

 

 北山選手のCADは特化型じゃない。()()()だ!

 

 ドイツで発表されたお粗末な一体型。

 FLTで発表された一般サイズより大きいがキチンとした一体型のCAD。

 前例があったのに僕は見逃していた。

 あまりにレアだ、などという言い訳はするまい。

 照準補助が付いていた。ただそれだけで決めつけてしまった。

「うん。これは僕のミスだ。見事に嵌められたよ」

 僕は漸くそれだけ将輝にいった。

「嵌められた?」

「元々あれだけの起動式を、特化型が格納できる訳がない。照準補助の汎用型は実例がある以上、

警戒すべきだった!ご丁寧にあちらは、敢えて出力を抑えて態と少ない起動式で戦っていたんだ。

 こちらの誤認を誘う為にね。特化型に劣らぬ精度と速度は、選手の魔法力なしに実現しない。

 まさに自分の技術力と、選手の実力を信頼した見事な策だ!」

 一方、僕はといえば、選手を補佐する立場でありながら、それを怠った。

 これは間違いなく僕のミスだ。

「そうか…。前回と同じ数の起動式に対応するように調整してたからな」

「そうだ。あれだけ起動式を増やされたら明らかにオーバーワークだ。対応できないよ」

 将輝の言葉を引き継ぐように僕が結論を告げる。

 僕達の予想通り、連鎖はどんどん途切れていき、ポイントの差は開いていく一方だった。

 

 そして、遂に最後のショットも連鎖に繋げられず、十七夜さんは敗退した。

 それと同時に僕の敗北でもあった。

 

  

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 結局のところ、エイミィと滝川さんの試合は、エイミィの勝利となった。

 魔法の性能としては、滝川さんの方が上だけど、扱いに関してはエイミィの方が上だったのだ。

 決勝は雫VSエイミィになったが、流石にエイミィは負けてしまった。

 作戦で一応結構いいとこまでいったんだけどなぁ。やっぱり一体型はチートだね。

 じゃあ、自分でも造ればよかったって?弟の見せ場は奪えないでしょ。

 三位決定戦に関しては、命知らずその二が棄権した為、滝川さんの不戦勝。

 これで、一校は一位・二位・三位を独占する事になった。

 

「凄いじゃない!深景さん!達也君!これは快挙よ!」

 一校天幕では閣下のテンションが可笑しくなっていた。

 私達の背中を叩きまくっている。

 あの…そろそろ止めて貰っていいですかね?

 この時の私達の顔は、悟りを開いたような顔になっていたと思う。

「会長。落ち着いて下さい」

 市原さんの冷静なツッコミで、漸く叩くのを止めてくれた。

 有難いけど、もう少し早く助けてほしかったです、先輩。

「もしかして、嫌だった…?」

 閣下が私を覗き込むように見てくる。

 なんとなく潤んだ眼。おいおい、そういう表情は男に見せなさいな。

 ほら!周囲もなんだか空気が可笑しいぞ。

「いえ。喜んで頂いているのは分かりますから」

 仕方なく私はそう口にした。

 さっきの潤みが嘘のように消え去る。おい。

「でも、ホントに凄いわ!一位・二位・三位を独占なんて!」

 さっきの遣り取りが、なかった事になったようだ。

 閣下が笑顔で一同を見渡すと、可笑しな空気が霧散していく。

 私は今、恐怖政治を見た。皆さん、革命なら陰ながら声援を送りますよ?

「優勝したのも、準優勝したのも、三位に入ったのも俺や姉さんじゃなく、選手ですよ」

 達也も流れに乗る事にしたようだ。

「勿論、北山さんも明智さんも滝川さんも、よくやってくれました!」

 それを真っ先に選手に、いってあげるべきだったと思うよ。

 三人共、あまり生徒会と接点がない為、緊張していたようだが、さっきの遣り取りで脱力した

のか苦笑い気味だった。それでも声を揃えてありがとうございますといっていた。

「まあ、真由美の反応は兎も角、君達の功績は凄いものだ。間違いなく快挙だよ」

 渡辺お姉様がそういって称賛してくれた。

 だがしかし!貴女安静にしてなきゃダメでしょうが、本来は。

 なんか当たり前みたいにいるけど、ダメだからね、本当は!

「ありがとうございます」

 達也はどこまでも素っ気なかった。

 雫も普段は表さない程、熱く達也の手腕を褒め称えた。

 私が担当した二人も、お世辞をいってくれた。

「三人の使用した魔法に関しては、大学からインデックスに正式採用したいと打診があった程

ですから」

 珍しく微笑んで市原さんがいった。

 達也の能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)は、分かっていたけど、私のもか。

 普通なら大喜びするとこだけどね…。

「そうですか。では…」

「お断りしといて下さい。達也のもです」

 私は達也のセリフを遮っていった。

「「「はぁ!?」」」

 閣下、お姉様、市原さんが驚きの声を上げる。

 そりゃそうだよね。魔法研究者としてはインデックスに登録されるのは、到達点の一つだしね。

 一年生は声もなく固まっている。

 達也も軽く目を瞠っている。

「ちょ、ちょっと待って!断る!?冗談でしょ!?」

 閣下が錯乱気味に詰め寄って来る。

 顔近いです。

 私は手で閣下の顔を押さえると、グイグイ押し返した。

「そんな事したら、もうインデックスに登録できなくなるかもしれないんだぞ!!」

 お姉様も大慌てでいった。

 まあ、あれ半強制みたいな感じだから、断ったらどうなるか分かってんだろうな!?的なとこ

ありますよね。

「弟なら、向こうから頭を下げてくるぐらいのものを考えると確信しています。私に関しては、

登録できなくなっても別に構いませんし」

 私は顔色一つ変えずにいった。

「…それだけですか?」

 市原さんは流石なもので、逸早く立ち直ったようだ。

「理由はあと二つですね。一つは、いずれも応用すれば戦術級以上の魔法になる可能性がある

からです」

 私は冷静な声でそういった。

「そんなの使う側の問題じゃない!」

 閣下が正論をいう。正論が正しいとは限らないんだな、これが。

「開発された時、そして使用された時、魔法大学が身を挺して私達を庇ってくれると思います?

それとも十師族…いえ、ナンバーズが総出で庇ってでもくれるんですか?」

 そうなれば、連中は庇うどころか下手すればスケープゴートにでもしかねないよね?

 非魔法師に何かいわれれば、下手に出るのが魔法師だ。

 魔法使えない人間見下してる癖にね。

 十師族でさえそうなのだ。魔法大学が庇ってくれたとしても、大して役にも立たない。

 だったら、自分で身を護るしかないじゃない。

 実のところ、原作での出来事を覚えていてのセリフだけどね。

 だから、私達が新しく造った魔法は、徹底して競技用にした。

 達也に口出ししたのは、この部分だったりする。

「今回使用した魔法も、九校戦が終わったら完全にCADごと潰して破却します」

 今回は勝つ為に使ったけど、次回から使わないという意思表示でもある。

 私の強い口調に全員が黙り込む。

「あと一つは家の事情です」

「姉さん!!」

 達也が鋭い声で制止するが、私は片手を上げて頷いて見せる。分かってるよ。

「深雪は兎も角、私達が目立つ事をすると、うちの素晴らしい両親がハッスルするんですよ」

 それだけでみんなが疑問を差し挟まなかった。

 魔法師の家系って例外はあるけど、基本歪んでるからね。特にうちは酷いもんだよ。

 色々と愉快な想像を掻き立てた筈だ。

 最終的にこれが決定打になり、納得してくれた。

 

 この事は、閣下から魔法大学に返事をしてくれる事になった。

 渋々だったけどね。

 

 

               4

 

 :将輝視点

 

 まるでお通夜のような有様だな。

 スピードシューティングで上位を独占され、緊急会議をする事になったが、みんな一様に

意気消沈といった感じだ。

 隣に座るジョージは流石に頭の切り替えが済んでいるようで、今は平然としている。

 奈津は俺の後に従者のように立っている。

 別に座っていいんだがな。いっても聞かなかったんだ。

 俺は誰も口を開かないので、先頭を切って話す事にする。

 話題は当然ながら、一校の戦力分析についてだ。ジョージの受け売りだけどな。

「それじゃあ、一校は彼女達の個人技能で上位独占を果たした訳じゃないんだな?」

 同級生の一人が漸く口を開く。

 俺は全員を見渡してから頷いた。

「確かに、北山選手の魔法力は卓越していた。だが、他の二人はいい腕ではあっても、そこ

まで脅威には感じなかった。魔法力だけなら、あの結果にならない筈だ」

「それにバトルボードは今のところ、うちが有利。今年の一年が特別優れてるとは思えないよ」

 俺の言葉にジョージが付け加えるようにいう。

「選手のレベルでは負けていないとすれば、他に要因がある」

 俺の言葉に今まで口を利いた事のない人間が声を上げた。

「では、二人はなんだと思うのですか?」

 一色愛梨だ。

 大抵は三人で一緒だが、今日は十七夜がいない。

 余程ショックだったのか、三位決定戦にも出られなかった。この場にもいない。

 ハッキリいって、試合には出てほしかったけどな。

 俺は驚きを顔に出さずに、ジョージに視線を送る。

「エンジニアだね。スピードシューティングに付いたエンジニアが凄腕だったんだよ」

 俺は、ジョージの意見に頷く。

「エンジニアが凄腕だからって!」

「一色さんは、北山選手のCADを見たかい?」

 一色のセリフを遮って、ジョージが訊く。

「CADですって?特化型だったというくらいは…」

 一色はあまり見ていないようだ。

「あれは汎用型だよ。車載用汎用型セントールシリーズだった」

 ジョージは淡々と正解を告げた。

 俺を除いた全員が驚愕する。

「そんな!?照準補助が付いていたのくらいは見ているわよ!!」

 一色が抗議するように声を上げる。

 俺達にいわれても困るがな。

 ここで、集まった同級生達がFLTのヤツか!?とか、レギュレーション違反だ!とか、

騒ぎ出した。

「あれは自作ものだよ。あのエンジニア…司波達也がレギュレーション違反なんて初歩的なミス

はしないだろうね。チェックも通っている訳だし」

 ジョージの淡々とした声が、騒いでいた同級生達を黙らせた。

 漸く気付いたようだ。俺達がどんな化け物を相手にしなければならないのか。

「今回、北山選手が使用したCADは特化型と変わらない精度と速度、系統の異なる起動式を

処理する汎用型の長所を兼ね備えたものだった。間違いなく高校生レベルじゃない。一種の

化け物だ」

 俺はみんなの考えを肯定するように、ダメ押しのセリフを口にする。

「一人のエンジニアが、全ての競技を担当するのは不可能だけど…」

「司波達也が担当する競技は、苦戦を免れないだろう。少なくともCADで二・三世代分の

ハンデがあると考えるべきだ」

 ジョージのセリフを引き継ぐように、俺が言葉を続けた。

 向こうも外部に敵を抱え込んでいるから、キツイ立場だろうがな。

 

 俺達以外は、重い沈黙に包まれていた。

 このまま、会議はお開きになった。

 

 

               5

 折角のお祝いムードを台無しにしてしまったので、天幕に居辛くてフラフラしていた。

 何も考えずに歩いていたら、いつの間にやら別の学校のいる区画に来てしまったようだ。

 いかんいかん。戻らないと。

 背を向けた瞬間に、後ろから声が聞こえてきた。

「栞!聞こえているんでしょ!?返事して頂戴!」

 うん?なんかあった?

 何か困ってるなら、手を貸せそうなら貸そうか。

 だが、私も日々成長している。

 曲がり角から、そっと覗いてみる。

 そこには命知らずその一、その三がいた。

 この面子がいるという事は、部屋の中にいるのはその二かな?

 三位決定戦に出てこないと思ったら、引き籠ってたのか。

 ショックなのは分からないとはいわないけどさ。どうかと思うよ。

 フラグが立つ前に去るとしますか。

 アッサリと手を貸す事を止める私。

「一人にしておいて…私、もうダメだから、私の残りの競技は代役を立てて…」

 微かな声だけど、私には不幸な事に聞こえてしまった。

 静まり返っているからというのもあるし、私の耳がよかったというのもある。

 勿論、事情はあるんでしょうね。彼女にも。

 でも、私は正直に白状するとムカついてしまった。

 命知らずその二に対してだ。

 スピードシューティングを投げただけじゃ飽き足らず、他の競技も止める?もうダメ?

 その程度で潰れるヤツが深雪に喧嘩を売ったの?

 ふざけるな。

 何やらその一がゴチャゴチャいっていたけど、私は引き返してしまった。

 命知らずがいる方へと。

「?ちょっと貴女、何の用なの?」

「おお!予感はこれじゃったか」

 その一と三がそれぞれ喋るが、私は無視して通過すると、扉の前に立った。

「ちょっと!なんなのですか!」

 その一が私の肩を掴むのを振り払い、私は足を振り上げた。

 次の瞬間、扉が勢いよく壁に激突する。

 簡単な話、扉を蹴破ったんだよ。某BAU捜査官が得意としていたヤツだ。

 (注:勝手な個人の言い分です)

「おお!」

 なにやらその三が感嘆の声を上げる。

 なにやら喚き散らしているその一を無視して、部屋に踏み込んでいく。

 部屋は真っ暗で、入ってきた私をその二が虚ろな目で見ていた。

「アンタ、百家でしょ。負けたぐらいでギブアップできるとでも思ってるの?」

「だからこそよ。負けた人間に価値なんてないわ…」

 その二が視線も向けずにボソボソとそういった。

「価値ならあるでしょ。勝者を称えなさい。あの百家を打ち負かした人間に」

「なんでそんな事しなきゃいけないのよ!!」

 漸くその二がこっちを見た。

 私はその憎悪すら篭った視線を、平然と受け止める。

「それがナンバーズの義務だと、私は思うからよ」

「「何ですって!?」」

 奇しくもその一とその二が同時に激昂する。

「じゃあ、なんの為にいるの?アンタ等ナンバーズって」

 私は原作を読んでいた時から思っていた事を問う。

 特権を与えられ、国から優遇される。その実力を維持し、向上させないといけない。

 いうなればナンバーズは相撲に例えると、三役だと思う。

 強いのは当たり前、下の挑戦には真っ向から勝負を受けないといけない。

 それに下が勝てば金星だ。負けた側は次はもっと強くなると決意を新たにする。

 そうする事で切磋琢磨していく事で、実力が上がっていく。

 それが正しい姿だと思う。

 なのに負けると、みっともないくらいに連中は体裁を気にする。

 決して下にいた者を称えない。負けた人間を恥だという。

 勿論、これは私の勝手な意見だ。何か政治的な理由やらが存在してるんだろう。

 でも、納得いかない。ガキだって?結構だよ。

 魔法業界を牽引するといいつつ、伸びようとする人間の頭を押さえつける。

 選ばれ引き上げられる人間もいるが、それはごく稀なケースだ。

「それにダメなんてのはね。最後まで戦った人間が初めて口にしていい言葉よ」

「こんなので!!最後まで恥を晒せっていうの!?」

 震える手を私に突き出して、その二が叫ぶ。

 その手を私は掴んだ。

「そうよ。光に向かって一歩でも前に踏み出そうとする限り、人間の魂に真の敗北はない!!」

 血界戦線のクラウスの言葉だ。

 …少し違うかもだけど。いい言葉だよね。

「恥にするか、勇気にするか、それは貴女の気持ち次第でしょ。投げ出すのはいつでもできる。

戦わずに引き籠る方が私は恥だと思うけどね」

「っ!!?」

 虚ろな目よりはマシになったかな。

「悔いが残らないように全力でやれば?親や親族がなんといおうと」

 例え、家のみんなが罵倒しようと、ここで引けば彼女は一生戦えない。

 重要なのは自分自身の気持ちだ。

 それができるだけアンタはマシなんだよ。

 

 部屋が静まり返る。

 一人ニコニコしてる人がいるけど。

 ああ!!ガラにもない事いいまくったよ!!サッサと帰る!! 

 偉そうな事いえる人間じゃないのにさ!!黒歴史確定!!

 

 いつの間にか入り口にはギャラリーが一杯いた。

 ヒィィィィーー。

 掻き分けて外に出る。

 

 日々成長してるっていったけど、あれは嘘だ。

 

 

               6

  

 羞恥心で足早に三校区画を立ち去る。

 ああああああ!!記憶抹消したいですよーーーー!!

 覆水盆に返らずだけどさ!

 扉?大丈夫だよ。軍には現在進行形で迷惑しか被ってないから!

 修理代くらいタダにしてくれるよ!いざとなれば、風間天狗のポケットマネーで宜しく!

「もし!ちょっと待ってくれんかの!」

 後から妙な口調で呼び止められた。

 ガバっと振り返ると、そこにはちんまい命知らずその三がいた。

「お友達はいいの?」

「大分目に力が戻っておったからの。大丈夫じゃろう」

 それだけが救いかな。

「まあ、なんとなく予感はしておったが、随分な荒療治じゃったな」

「正直、ただムカついただけだから。治そうと思った訳じゃないよ」

 四葉の直系として育てられた深雪。

 才能もないのに無理矢理魔法師にされた達也。

 深雪は幼い頃から魔法漬けだった。愛情など与えられず育ち、魔法師しか生きる道を許され

ない子だった。魔法技術向上の為、何度も容赦なく叩きのめされていた。勿論、泣こうが喚こう

が許されない。幼い深雪はいつも泣いて嫌がっていた。

 達也は精神構造を弄り回され、感情が殆ど動かなくなってしまった。理不尽と感じようと、

耐え得る精神に改造されてしまった。

 訓練は種類は違えど、二人共地獄だった筈だ。それに耐えて今がある。

 だからこそムカついたんだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 かくいう私も地獄の研鑽を積んだ。チートというのも磨かないと光らないんだよ。

 あの時の私はサッサと家を出ていきたくて、自活できる技術や火の粉を払う方法の習得に必死

だった。だから、無視していた。自分の弟を妹を。

 結局のところ、その二にやった事は、ただの八つ当たりに近いものがあったと思う。

「それでも、感謝する。ワシ等はあやつの事情を知っておるからの。こういう時、どうも上手く

いってやれん」

 命知らずその三が苦い顔でいう。

「こっちも、勝手に乱入して勝手な事いってごめんね」

 私は素直に頭を下げた。

 少しは頭が冷えたからだ。

「いやいや。よいのさ。結果オーライというヤツよ」

 そういってその三が笑った。感情豊かな人だな。

「まあ、今更ではあるが、自己紹介しようかの。ワシは四十九院沓子じゃ!」

「司波深景です」

 

 話してみると気が合うね、この子。

 古式に精通している事も分かった。

 話しているうちに、いつの間にか友達になってたよ。

 メアドや通信ナンバーも交換してしまった。

「ほう!深景は古式術具が専門なのか!」

「うん。だから九校戦のCADはできなくはないって感じかな」

「できなくはないでアレか。お主もやるな」

 背が小っちゃいから同級生とは思えないね。

 難しい顔して眉寄せてる姿が、なんか可愛い。

「おお!そうじゃ!ワシの術具も造ってくれんか?」

 まあ、いいけど。大丈夫なの?百家ともなると専属がいるでしょ。

 私の表情からいいたい事を察したのか、沓子が二ッと笑う。

「心配いらん。ワシに専属で頼んでおる者はおらん。どうも合わんでな」

 沓子が苦笑いしていった。

 ふ~ん。じゃあ今度データでも送って貰うか。

 私は沓子の術具の製作を請け負った。

 沓子もデータにして送るといった。

「それではの。これから試合じゃ」

 

 おおい!試合前にこんな話込んでよかったんかい!

 CADの確認とかあるでしょ!?

 私も気付かなかったよ!

 沓子がお気楽に走り出そうとした時、視界に漂っている人物を発見した。

 

「ほのか。何やってんの?」

 

 

               7

 

 ほのかは、はわわとかあわわとかいってそうな感じで、フラフラと廊下を漂っていた。

 プレッシャーに弱いにも程ってもんがあるでしょ。

「ふむ。お主の友か」

 私は苦笑い気味に頷いた。

 沓子が一つ頷くとトコトコほのかに近寄っていった。

 いや、試合にいかないと間に合わないよ?

 沓子はほのかの前に立つと、顔を下から覗き込むようにして見た。

 そこまでされると、流石にほのかは気付いたが、随分邪推しているのか警戒するように

身構えた。

「まあ、そう警戒するな!()()なら起きぬよ」

 ほのかが固まる。

「お主がそこまで緊張する事もあるまい。予選などお主の実力なら余裕じゃ」

「え?ええ!?」

 沓子は背丈的に肩に手が届かず、ほのかの腕をポンと叩いて走り出した。

「深景ぇ~。それでは、またのぅ~!」

 沓子は背を向けて、それだけいうと走っていってしまった。

 

 慌ただしいというか、なんというか…。

 あと、ほのか、不思議そうな顔してるけど、全部顔に出てたから。

 

 

               8

 

 :ほのか視点

 

 バトルボードの一校の待機場所に達也さんが訪ねてきた。

 約束を守ってくれたんだ!嬉しい!

 あの後、深景さんに拉致されてエンジニアの中条先輩のところに連れていかれたけど、その時

にはもう緊張は綺麗さっぱりなくなっていた。

 いい事が続くのは嬉しい。

 でも、来るのが早いような…。

「司波君。どうしたんですか?」

 中条先輩が真っ先に疑問を口にする。

うん。やっぱり少し早いよね…。

「居心地が悪くて避難させて貰えないかと…」

 その言葉で私にも察しが付いた。

 達也さんが二科生であるだけで、敵視している人達が原因だと。

 達也さんは、どうして二科生なのか分からないくらい凄い人なんだから、素直に認めればいい

のに、男子スピードシューティングのメンバーが対抗意識剥き出しにしてた。

 でも、そのお陰で達也さんが早く来てくれたんだから、今回は感謝しなきゃいけないかな?

「ああ…そういう事ですか」

 中条先輩も事情を察したのか、納得してた。

「ええ…。ですので何かお手伝いできないかと」

「それじゃあ、他の選手も見ておきたいので、司波君が一緒にいて上げてくれますか?すぐに

戻りますから」

 中条先輩がそういって踵を返す。

 でも、私はハッキリと見た。先輩が私に微笑んだのを。ありがとうございます!先輩!!

 二人っきりだ!!って何を話せば!?

「試合まで一時間はあるな」

 達也さんが時計を見て呟く。

「そうなんですよ!」

 達也さんはちょっと考えて口を開く。

「なら、他の選手の試合をチェックしに行こう」

 そういうと達也さんは、私を促して歩き出した。

 試合の観戦といっても、二人っきり!中条先輩から頼まれたからっていうのが、残念だけど。

 人混みから守るように私を連れて行ってくれる。

「丁度、時間的にほのかがマークすべき相手が出る」

 うん?マークする?

 観客席に出ると丁度出走間近だった。

「第三高校・四十九院沓子選手だ」

 達也さんの視線の先には、さっきの深景さんと一緒にいた小さい女の子がいた。

「あっ!さっきの…」

「知り合いか?」

「いえ、さっき声掛けられただけですけど、深景さんは親しそうでしたよ?」

「姉さんが?」

 達也さんが何故か溜息を吐いた。

「今は姉さんの事は置いておこう。俺が師匠筋から聞いた話だが、四十九院家は由緒正しい

神道系古式魔法を受け継ぎ、ルーツは白川家に行き着くらしい」

 白川家というのは神道の大家で水に関する魔法を使う家系なんだって、達也さんが説明して

くれた。

 でも、それってもしかして…。

 私の表情から、気付いた事を察した達也さんが頷く。

「そう。()()()()()()()

 その言葉と同時にスタートのブザーが鳴り響く。

 真っ先に飛び出したのは、あの四十九院さん。

 追い付こうとすると、ボードが止まったり、流されたりして全く四十九院さんに近付けない。

 圧倒的な大差で彼女はトップでゴールした。

 

 ええ!?あの子と競うの!?

 

  

 

 

 

 




 深景は小さい頃、苦しんでいた妹を放置していました。
 勿論、性格的にまだ深雪が、攻撃的だった所為もあります。
 今はそれを後悔しています。
 だからこそ、一度負けただけでダメ発言は、深景にはムカ
 つきました。事情があったとしても、いわずにいられない
 事でした。でも、介入すべきじゃない事も、深景も承知し
 ています。だから八つ当たりと称しています。
(因みに、十七夜さんは漫画では三位決定戦に出ている事は
 承知しています。今回敢えてです)

 クラウスのセリフについては敢えて調べませんでした。
 なので、少し違っていてもOKとして下さい。
 記憶なので少し違うくらいが丁度いいでしょう。

 しかし、全然、話し進んでませんね。すいません。

 次回も気長にお待ち頂ければ。


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