司波家の長女は何をする?   作:孤独ボッチ

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 これだけ長い間、投稿しないとは、さては折れたな?
 と思った方。すいません。
 メイン投稿が上手くいかず、苦戦しているうちに
 御無沙汰しておりました。

 まだ、折れていません。
 そして、まだ九校戦が終わらない。

 それではお願いいたします。


九校戦編11

               1

 

 アイスピラーズブレイク。

 遂に真打登場です。

 マイシスターです。

 胡散臭い巫女服です。

 達也よ。魔法儀式の装束として…なんていっているなら、何故あんな花の飾りが付いている?

 髪飾りじゃないよ、帯だよ帯!

 それとも私が無知なだけで、ああいうのもどっかの地方に存在してるのか!?

 マイシスターのカリスマよりそっちが気になってしまった。

 これが、私の悪い癖…。

 みなマイシスターの美しさに見惚れている。

 登場の瞬間、リアルで会場から溜息が漏れるとか、我が妹ながら恐ろしい子!

 女が僻んだり、嫉妬しないレベル…に近い。

 

 そして、試合開始。

 

 終了。

 

 蹂躙とは、まさにこの事か。

 相手選手、ほぼ何もさせて貰えなかったよ。

 勿論、抵抗はしてたけど、意味をなさなかった。

 

 相手選手の心の冥福を祈った。

 

 

               2

 

 :真紅郎視点

 

「まさに一蹴だな」

 モニターに映る圧倒的な魔法力を将輝はそう評した。

 まさに十師族直系並の魔法力だ。

 これで、ナンバーズの有力な家系と血縁がない?

 大体、どの魔法関係の家も、ルーツはどこも盛っているものだけど、彼女の場合は検索可能な

範囲で、ナンバーズと繋がりが確認できない。

 そしてエンジニアは、司波達也。

 魔法師業界では、稀有な兄妹だ。

 信じられない。

 一般の家系から、あれだけの魔法師が出てくるなんて…。

 流石に自信家の一色さんの顔色も優れない。

 それでも、彼女の顔には闘志が宿っていた。

 流石、言わざるを得ない。

 十七夜さんも比較的落ち着いている。

「いや、凄いものじゃな。一度、手合わせ願いたいわ」

 のんびりとした声がする。四十九院さんだった。

「対戦したいの?」

 十七夜さんが、少し驚いたようにいう。

「それはそうじゃ。あれ程の者と安全に競い合うこと等、そうそうあるまい」

 四十九院さんが満面の笑みでいい切って見せた。

 やはり、彼女達も口には出さなくても、司波深雪が自分達を負かす力があると認めている。

 いや、勝つことは難しいと分かっているんだ。

「そうね。だからこそ、彼女に勝利することに価値がある。これが競技である以上、不可能では

ないわ」

 一色さんの顔色が戻っている。

 いい感じに変に入った力が抜けたみたいだ。

 狙っているのか、偶然なのか、四十九院さんは人の心をほぐすことに長けている。

 四十九院さんのこういうところは、素直に凄いと思う。

 一色さんの言葉に十七夜さんも、力強く頷いた。

 こちらも大丈夫そうだ。

「まずは、あの司波深景から片付けないといけないけどね?」

 十七夜さんが不敵に笑ってみせた。

 

 僕もエンジニアとして、その勝利を支えるまでだ。

 

  

               3

 

 エイミィと一緒に観戦していた私だが、エイミィの様子が…?

 色々と対戦予定の相手の心を圧し折ったマイシスターだが、実は味方も戦々恐々だった。

「分かってたけど…。何あれ」

 味方で心強いけど、ピラーズブレイクは個人戦。

 当然、深雪と戦う事は想定される。

 対戦する方は完全な罰ゲームだよね。

 同じ学校のエイミィにしても、味方に完膚なきまでに粉砕されるなんて嫌だろうし。

 エンジニアとして全力は…尽くした事になっているが、雫に授けた秘策がないと無理だわ。

 ごめん、エイミィ。

 そこまでいったら諦めて。

 しかし、これから酷なことを確認しなきゃね。

 次の次はあの命知らずその二だ。

 エイミィより実力は本来上の相手。

 方針を確認しないといけない。

「エイミィ。確認しておくことがあるんだけど」

「うん。何?」

 エイミィが不思議そうに答える。

「次の次なんだけど、貴女が取れる道は二つある。一つ、あのカトウ?」

「カノウね」

「ああ、そのカノウ選手の疲労を誘うことに重きを置いて、負けを覚悟する。二つ、勝ちを狙う」

 ただし、勝ちを狙う場合、次の試合には回復が間に合わない。つまり、そこで終わる。

「勝ったとして、次はどうなると思う?」

 敢えていわなかったけど、やっぱり気付くか。

 自分のことだしね。

「エイミィは、この先の競技にも出るし、エンジニアとしては棄権を勧める」

「そっか…」

 エイミィも冷静に頷いた。

 エイミィは、雫と違い優勝したいと宣言しなかったグループだ。

 だから、雫のような特訓はさせていない。

 故に、これしかいえない。

 エンジニアとしては失格だが、私もできる範囲でしか協力する気はない。

 これでもエイミィには友達になったし、肩入れしたぐらいだ。

「どっちにする?」

 二者択一。

「初めてのミーティングの時、さ。深景、訊いたよね?優勝したいかって…」

 でも、エイミィの口から出たのは、答えではなく別のことだった。

 私は口を挿まずに、黙って聞いていた。

「正直ね。ピラーズブレイク、深雪と雫が出るし、私じゃ優勝できないなって諦めてたんだ」

 あの二人は他とレベルが違う。

 正攻法では勝ち目が薄い程に。

 そして、深雪と雫でも差が開いている。

 雫は十分に優れている。

 凄すぎるのはマイシスターなのだ。

「でも、雫はいった。勝ちたいって。深雪に挑んだんだ。凄いと思ったよ。実はさ、雫の訓練を

コッソリ見に行ったことあるんだよね。あの雫が座り込んでるのなんて、初めて見たよ。でも、

雫は楽しそうだった。何やってるのか、私には分かんなかったけど」

 雫の魔法力は、私の秘策を実行することに問題はない。

 だが、維持する精神力の問題で、よく雫はへたり込んでいた。

 サイオン切れじゃないけど、エイミィには分からなかったか。

 実はエイミィも一部同じことをやっているんだな、これが。

 雫は更に深く踏み込んでる内容なだけで。

「それ見てさ。私もやってやろうじゃんって思ったんだよね」

 エイミィは微かに微笑んだ。

「勝つよ。勝った後でどんなにみっともなく、負けてもね!」

 エイミィが私の正面に回り込んで、私の眼を真っ直ぐに見て満面の笑みで宣言した。

 

 勝てるかどうかは、五分五分だ。

 私も今からできる範囲で、その決意に応えよう。

 

 

               4

 

 :エイミィ視点

 

 深景は、私の話を黙って最後まで聞いて分かってくれた。

 基本的に深景は、できる範囲で私達の意見を採用してくれる。

 何も司波君が無視する訳じゃないし、ちゃんと話を聞いてくれてたけど。

 なんというか、深景は私達のスピードに合わせてくれるのだ。

 私は、最初のミーティング後のことを思い出していた。

 

 

 司波君のエンジニアとしての腕は、すぐに見せて貰えた。

 なんにしても、深雪とほのか、雫のお墨付きとはいえ、私達は司波君達の実力を知らない訳だ

から、見せてほしいとお願いしたのだ。

 彼が調整したCADで魔法を使わせて貰った。

 結果は想像以上だった。

 信頼に値する凄い男の子だと思った。

 でも、どうにも肌に合わないというか、兎に角ダメだった。

 なんか無理矢理力を引き出されているような、強制感というか…。

 叩き出される結果は破格だから、好き嫌いの問題で拒否していい話じゃないのも分かるんだ

けど…。

「あの!深景さん?だったけ?貴女はどのくらいの実力なの?」

 和美が、言い辛そうに手を挙げていった。

 どうも彼女は私の同志だったらしい。

 司波君の調整に苦手意識があるみたいね。

 名指しされた彼女は、私?と首を傾げた。

「達也の調整は理想的なものだけど、苦手だった?」

 いい辛いことを!!

 和美と私は、内心で悲鳴を上げる。

 表情には出さなかった筈だけど、深景さんは分かったらしい。

「ああ、いいよ。人それぞれだし。ね?」

 深景さんは隣の司波君に声を掛ける。

 司波君も怒った様子もなく、平然と頷いた。

 一番、恐ろしい深雪の反応も特になかった。

 さっきも睨まれて、内心怖かったからさ。

 あとで、深雪はお姉さんも大好きだから、馬鹿にされたり、侮られたりしない限り、怒らない

ことが分かった。

「ああ。じゃあ、姉さんもやってくれるかい?」

 司波君が気軽にいうと、深景さんはアッサリと頷いてCADを調整した。

 エンジニアになっただけあって、慣れている。

 和美と私の分の調整を、あっと言う間に終える。

 結果をいえば、私達は二人だけ深景さんをメインのエンジニアに選んだ。

 女の子だからかな?こっちのペースを考えてくれているのが、よく分かる調整だった。

 司波君みたいに最初からMAXって訳じゃないけど、()()()()()()()

 これで伝わるかな?まあ、いいか。誰に説明するでもないし。

 

 使用魔法のセレクトの時の話だった。

 最初は軽い雑談で、少し身構えている私の気を紛らわせてくれた。

 そして、いつの間にか、私がどんな魔法が得意かまで喋っていた。

 話し易いし、聞き上手。

 この時から、私は彼女に好感を持ち始めた。

 二科生ってことで、身構えてたけど、そんなのは関係ないと教えられた気がした。

 これが友達になるキッカケになったと思う。

「それじゃ、エイミィは構造物を移動させるのが、得意なんだ?」

 深景も私もいつの間にか、名前を呼び捨てにするようになっていた。

「うん。大質量物体を高速移動させる砲撃魔法だね」

 グランマの庭の石を勝手に動かして、遊んだこともある。

 物凄く怒られたけど。

「砲撃か…」

 深景が考え込む。

「うん!できればスカッとする派手なヤツがいいな!」

 遠慮なく要望も添えてみる。

「それじゃ、私も試したいことがあるんだ。ちょっと冒険してみない?」

 深景が悪戯を思い付いた子供みたいにいった。

 最初、出来上がってきた魔法式を見た時は、私に使い切れるかな?と思ったけど、

意外に大丈夫だった。

 司波君同様に、キチンとコンパクトに纏めてくれたからだと思う。

「それじゃ、試してみようか」

 演習場で試し撃ちしてみることにする。

 前代未聞のやり方で杭を作成し、高速で撃ち出す。

 強化されようと、杭が止まろうと、更に力を加えて打ち込むことができる。

 面白い魔法だと思う。

 ショットガン型のCADをクルリと回して、私はノリノリで魔法を撃ち出した。

 相手の抵抗がない状態だと、ボーリングのピンみたいに一撃でピラーが躍り、全て破壊できた。

「気持ちいい!!」

 この杭には更に仕掛けがあるし、これはいいな。

 面白い!

 

 あとは習熟するだけ、ということで深景は雫の訓練に向かった。

 私もモノリスコードの合同訓練があったし、そっちに向かった。

 もう、日が沈む頃にようやく解放された。

 いやー。楽しいけど、しんどいわ。

 何度吹っ飛ばされたことか…。

 なんてトボトボ歩いていると、深景と雫の姿が見えた。

 あの二人もまだやってるんだ。

 軽い気持ちで見物することにする。

 何をやっているのか、見当が付かないけど、魔法…なの?

 なんとも不思議な感じだった。

 サイオンが飛び交っているようだし、魔法なんだろうけど()()()()()()()()()()()()()

 それが終わると雫が、地面に座り込んでしまう。

 雫は遠目でも汗だくなのが分かる。

 その雫に深景がしゃがみ込んで、端末を見せながら何かいっている。

 疲れて座り込んでるんだから、少し待ってあげればいいのに。

 深景らしくないような気がして、内心深景を非難した。

 でも、それが間違いなんだって気付いた。

 雫が、食い入るように深景の端末を見ていたから。

 これは雫が望んだ事なんだ。

 それを深景は最大限応えているだけなんだって。

 雫は深雪に本当に勝ちたいんだ。

 雫は学年二位の成績で、私より遥かに上の力を持っている。

 その雫がここまで必死になっているのに、私はどうだろう。

 結構、遊び感覚じゃないかな?

 どうせ、深雪と雫に勝つのなんて、無理なんだから楽しまないと!なんて思ってた。

 雫の姿を見て、熱くなった。

 こんなの本来の私のキャラじゃない。

 でも、この時の私は、私だって負けていられない、やってやる!なんて柄にもなく思った。

 

 

 思い返してみれば、熱気に当てられたんだと思う。

 でも、そのお陰で今、落ち着いているんだから、いいと思う。

 

 よし!大物に私も挑んでやろう。

 

 

 

               5

 

 その日の夕食は、ちょっとしたお祭りムードだった。

 一年女子に限るけど。

 まあ、上級生に対する妨害工作を見てるから、不安を紛らわせたかったって意味もある

だろうけどね。

「凄かったよね!深雪のアレ!」

「A級魔法師でも難しい魔法なんでしょ!?」

 インフェルノに皆さん大興奮でした。

 他にもお褒めの言葉を方々から頂戴しております。

 エイミィや雫も褒められているが、インフェルノのインパクトに負けております。

 達也も、普段は話し掛けられない子から、話し掛けられている。

 問題は…。

「あーあ。私も司波君に担当して貰えばよかった!」

 手の平返しはいいけど、失礼な発言してる子がいることだ。

 貴女の担当だって全力を尽くした筈だ。

 実力的にしょっぱくても。

 まあ、少なくとも私よりマシということだ。

 これは不味いと思い、深雪に目配せする前に雫が注意してくれた。

「ダメだよ。CADの所為にしちゃ」

 雫がやんわりといってくれる。

 注意された子も、いいたい事を察したのか、先輩に失礼だったね、なんていって謝っていた。

 うんうん。それでよし。

 口は禍の元。なんて私がいえたことじゃないね。

「いや、でも司波君を譲ってくれた男子には感謝だよね!」

 譲ったというか、男子が病気レベルだったというか…。

「うん!お陰で絶好調だもんね!私達!」

 ここまでくると、流石に達也も苦笑いしていた。

 だが、突然大きな音を立てて立ち上がる者がいた。

 残念イケメン森崎である。

 一緒に恥を分かち合った友を置いて、森崎君は去って行った。

 まあ、恥を掻いたのは森崎君一人だったか。

 競技は、三校の戦力に力負けするのも仕方ない。

 でも、空回りしてるのは、自分自身の責任でしょ。

 そんなことじゃ、女の子にモテないぞ。

 証拠に女子がジト目だぞ。

 

 夕食が終わり、食堂を深雪一党がゾロゾロと出ていく。

 私と達也も後をカルガモよろしく付いていく。

 すると命知らずその一と三校女子集団に、出口でバッタリと出くわしてしまった。

 三校は今から食事らしい。

 お互い突然の遭遇で、少しの間無言。なんで?

「あら、一校の皆さん。御夕食でした?」

 一番最初に声を出したのは、命知らずその一。

 優雅な笑みでの第一声だった。

 雑鬼を乗せてた人物と同一人物とは思えない。

「お先に頂きました。三校の皆様はこれから?」

 深雪が同じく優雅な笑みで答える。

「ええ。入れ違いで残念です。でも、丁度よかった」

 命知らずその一の笑みが消える。

「司波深雪さん。この前は侮った発言をしたことをお詫びします。貴女は私達の世代で間違い

なくトップクラスの魔法師。だからこそ、全力を尽くして貴女を倒します」

 一校女子が、命知らずその一の発言に、無言でどよめくという器用なことをやる。

 私と達也は観戦です。

 すると後ろから誰かに抱き付かれる。

 誰かは分かるが、なんでそんなことをしたのかが分からない。

「あの…かっ、会長?」

 私の問いには閣下は答えずに、深雪と命知らずその一の遣り取りに、目を輝かせている。

「あら!今年もやってるわね!」

「喜ぶな!」

 お姉様も同伴か。

 でも、今年も!?

 毎年やってんの!?このドラマ!?ヤダ、帰りたい。

 そんな馬鹿なことを考えている間に、ドラマはクライマックスへ。

「私も負ける気はありません。お互い全力を尽くして戦いましょう」

 深雪が余裕の笑みで手を差し出す。

 命知らずその一が、迷わずその手を掴み握手する。

「ええ、いい戦いをしましょう」

「ええ」

 お互いに同時に手を離すと、一校と三校がすれ違う。

 深雪と命知らずその一以外が遅れたのは、ご愛嬌ということで…。

 

 ところでいつまでくっ付いているんですか?閣下。

 

               6

 

 :ダグラス・黄視点

 

 横浜の中華街。

 滅多に集まることのない幹部達が一堂に会していた。

 食事が目の前にあるものの、手を付ける者は誰もいない。

「確かに、その戸愚呂とかいう男のお陰で、接戦ではあるが、まだ第一高校が一位のままだ。

予断を許さない状況だな」

 口を開いたのは幹部の一人。

「もう少しなんとかならんのか。こっちの寿命が縮むぞ」

 他の幹部が次々と愚痴をいい始める。

 今は、あの男に任せるしかない。

 左京の若造も、我々の動向に目を光らせている筈だ。

 戸愚呂ほどの男でなければ、ヤツの目を掻い潜るのは難しいだろう。

「新人戦にしても、第三高校が有利という下馬評を覆して、第一高校が点を伸ばしている」

 他の幹部の一人が、焦りを滲ませた声でいった。

 私は余裕のある笑みを浮かべる。

「心配するな。念の為、ジェネレーターも何体か持ち出させた。戦力は申し分ない」

 他の幹部を安心させる為にいった。

 ジェネレーターなど使ったら、すぐに我々の介入だとバレるからな。

 他の幹部もそれは承知している。

 だから、顔を顰めて少しの間、黙った。

「心配しなくとも、不味いことになれば手を打つ」

 私は他の連中を見渡す。

 だが、皆の表情は優れない。

「是非、そう願いたいものだな。我々の尊厳の為にも…」

 他の幹部が汗ばんだ手を握り締めて、絞り出すようにいった。

 私も騒ぎ出したくなるのを抑えて、余裕のある顔を維持した。

 

 戸愚呂には、すぐ連絡するとしよう。

 

  

               7

 

 アイスピラーズブレイク二回戦。

 第一高校女子軍、負ける要素なし。

 圧倒的だな、我が軍は。

 などと調子に乗ってみる。

 因みに、ここで深雪のエンジニアとしていた達也に、王子様と残念参謀が宣戦布告に

きたそうだ。

 閣下の言葉通り、ありふれたことなんだね。

 そういえば思い出したけど、原作でもそんなシーンあったわ。

 

 次はいよいよカ…ノウ?と対決か。

 

 

               8

 

 決戦の時です。

 決勝リーグですけど、決勝戦じゃありません。

 私とエイミィだけクライマックスです。

 いつになくキリッとした顔で立つエイミィが、モニターに映っている。

 相手も特に気負う様子もなく、試合開始を待っていた。

 相手が打ってくる手は、ある程度予想できるので、全て伝えて対策も打ち合わせ済み。

 DJアーミーが喧しく何かをいっているが、二人には聞こえていないだろう。

 当然、私も聞いてない。

 間もなく試合開始で、DJアーミーがやっと黙る。

 

 試合開始。

 

 最初に仕掛けたのはエイミィ。

 杭を高速で射出する。

 エイミィから見て、左から二番目の列に着弾する。

 十七夜側のピラーが一箇所に集合する。

 やっぱりそうしてきたか…。

 巨大な一つの氷の塊として、強化してあるのが分かる。

 杭が少し刺さったところで止まる。

 更に杭を押し込もうとしたエイミィが、標的を変更する。

 上空に、十七夜の共振破壊の起点が多く作成されたからだ。

 それも前の試合で見たより多い。

 これも予想はしていた。

 だが、計算が追い付くの?って思ったけど。

 おそらく好きなところから、波の合成を造り出すことが、できるんだろう。

 エイミィが発動兆候があると分かった場所から、撃ち抜いていく。

 達也みたいな眼を持っている訳じゃないから、それはかなり遅い。

 エイミィのピラーには、多少影響が出ている。

 だが、まだ破壊判定をされる程ではない。

 それが蓄積すれば、不味いけど…。

 後手に回る予想はしていたから、エイミィにも焦りの色はない。

 いいね。

 相手側のエンジニアである残念参謀を見ると、微かに口元が笑っている。

 今のところ思惑通りの青山通りでしょうからね。

 だけど、こっちもやられっ放しじゃないよ?

 突然、十七夜側の攻撃が緩む。

 十七夜の顔が険しくなる。

 気付いた?知ってた筈なのにね。杭の中には仕込みがあることに。

 上空でエイミィが撃ち抜いた杭は、役目を終えると杭が砕けて、中身の魔法が撒かれる。

 実はアレは領域干渉というより、ジャミングに近い。

 領域干渉は要は力技で魔法を抑え込むものだ。

 でも、これは魔法の形成の一部を阻害することを目的としたものだ。

 全体を抑えるのではなく、一点に集中して阻害する。

 つまり、魔法の維持が困難になる。

 困難になれば、余計な力を使いガス欠が早くなる。

 残念参謀が今更キーボードを叩いて、私の作成した魔法を精査しているけど、遅い。

 攻撃で防御が緩んだ隙に、エイミィが刺さった杭を更に深く打ち込む。

 ピラーの一つに大きな亀裂が入った。

 ここで、初めて十七夜が防御に力を入れた。

 そう、思わず入れてしまった。

 深く突き刺さった杭が砕け、領域干渉モドキが十七夜側に一定範囲広がる。

 どっちの維持もやり辛くなったことで、少しでも焦れば勝機は転がり込んでくる。

 問題は、いつ十七夜が冷静さを取り戻すかと、エイミィがどこまで持つかだ。

 この魔法の欠点は燃費が悪い事だからね。

 湯水のようには使えない。

 一方、十七夜は緻密な計算を頭の中で行えるし、力もエイミィより上。

 少し自陣側に起点を作成し、効果を及ぼすようにすれば、逆襲が可能になる。

 後はこのアドバンテージがある内に、エイミィがどこまで突き放せるかだ。

 エイミィが新たな杭を射出する。

 これでピラーを一つ破壊し、次のピラーに突き刺さる。

 イメージだよエイミィ。

 それが通じたのか、一列のピラーを一気に破壊した。

 これで三本。

 会場がどよめく。

 これで、一つのオブジェクトではなく、二つになったね。

 真ん中に砕けた氷の残骸があるから、統合もできないでしょ。

 ここで十七夜が反撃の方法に気付いた。

 私の、なんちゃってジャミングの効果範囲に気付いたのだ。

 影響を予め受けていたエイミィ側のピラーが、二つ破壊される。

 二本損失。

 最も効率のいい破壊法を、頭の中で計算しているのが分かる。

 エイミィ。確かに杭は大質量体じゃない。でも、何よりも硬い。それは…。

「私は!!砲撃が得意だぁぁぁ!!」

 謎の叫び声を上げて、エイミィが杭を放つ。

 今まで以上のスピードで。

 そう。いいたいことはそれだ。

 右から二番目のピラー一本を破壊し、次に刺さるが、そこでストップした。

 これで四本。

 でも、十七夜側もピラー強化のコツも掴んできたみたいね。

 早いな。

 十七夜も、冷静さを完全に取り戻したと見るべきでしょうね。

 そこからは、じわじわとピラーが破壊されていく。

 六本損失。

 ここにきて、エイミィの方が焦っている。

 杭がなかなか深く刺さらない。

 焦らないで…。

 魔法師は世界を騙す詐欺師。

 イメージこそが現実。

 

 信じて。自分が勝つと。

 

 

               9

 

 :エイミィ視点

 

 予想より立ち直りが早い…。

 どんどん自陣のピラーが破壊されていく。

 私の抵抗なんて、関係ないとばかりに…。

 どうする?どうする?…。

 どんどん破壊されて、残り五本。

 無駄撃ちはできない。

 どうしたら…。

 

 その時に思い出した。

 

『いいこと?アメリア。嘘には慎重にならなければいけないわ』

 グランマの言葉だ。

『魔法師の嘘は無意識に、現実を書き換えてしまうのよ』

 小さい頃にいわれたことだけど、ずっと心に残っている言葉。

 そうだった筈なのに、今の今まで忘れてた?

『魔法師ってさ。世界に対しての詐欺師なんだよ。嘘を現実だと騙すんだよ』

 これは深景がいったこと。

 

 思い出されるのは、あの日の雫の姿。

 

 このまま…終われるか!!

 

 私は杭を砕くと、新たに杭を造り出し放つ。

 十七夜選手が、無駄なことをとでもいいたげに笑う。

 私は撃ち抜ける!!

 杭に回転が加わる。

 右端の一列のピラーが砕ける。

 十七夜選手の驚愕が伝わる。

 これで七本。イーブン…一本差。

 自陣のピラーがまた一本倒れた。

 八本破壊されている。

 こっちのスタミナも、そろそろ限界。

 それはきっと十七夜選手にもバレてる。

 だって、もう驚きから立ち直って、勝負ありみたいな顔してるもん。

 だけど…

『緻密な計算で成り立ってる魔法はね。位置情報を変えるだけで威力が弱まるの』

 流石、深景。

 私は残り四本の自陣のピラーの場所を、微妙に動かす。

 このくらいなら問題ない。

 間一髪凌ぐ。

 相手の残り左端のピラー一列三本。右から二番目の一列二本。

「これで!!」

 向こうの計算が終わる。

 どう考えても私は最後の一発になる。

 無茶だけど…やってやる!!

 イメージはボーリング。

 私は最後の力を振り絞って、ピラーをくっ付け、CADの引き金を引く。

 ここも凌ぐ。

「足掻きはそこまでよ!」

 一列三本のピラー左下を高速で撃ち抜く。

 三本のピラーが横っ飛びする。

「なっ!?」

 イメージは完璧。

 飛んでいったピラーは、見事二つのピラーを破壊しながら倒れた。

 見れば、私のピラーはまだ二本健在だった。

 

 向こうにはない…。

 

 やればできるだね、私。

 残念ながら、ここから意識が途切れてしまった。

 

 

               10

 

 歓声が響く。

 エイミィの勝利が宣言され、十七夜も倒れた。

 向こうも慣れないことに、連続で対処させられて、本人の予想を超えて消耗していた

んだろう。

 私は控室を走って出ていくと、エイミィのところまで素早く辿り着く。

 向こうも同様に十七夜を回収している。

 救護室行きになったのは、いうまでもない。

 

 考えてみれば、相手も救護室行きになったんだから、会うことも予想しておくべき

だったよね?

 私は残念参謀と向き合っていた。

「マナー違反を承知の上で、教えて貰えますか?」

「答えられることなら」

 残念参謀が険しい顔で訊いてくるのを、私はアッサリと応えた。

「僕は最初、あの杭は古式魔法の技術応用によるものだと、思っていました。遠当て

の技術の発展だと。杭が砕けた後はサイオン波が撒き散らされる故に、魔法が妨害され

るのだと。でも、違った。障壁の生成に領域干渉、それを射出する、挙句打ち付ける

ことまでできるなんて有り得ない。明智選手のCADは間違いなく特化型だった」

 ああ、そのことね。

 いやぁ、聞いたらガッカリするよ?

 私は、エイミィが使っていたCADを残念参謀に渡した。

 残念参謀は、怪訝な顔で黙って受け取った。

 CADを調べ始める。

「これは!?」

 気付いた?

 これには()()が付いている。

「銃口には螺旋の溝じゃなく、刻印が彫ってある。エイミィはサイオン流して撃ってた

だけなんだよ」

「馬鹿な!?別々の魔法を組み合わせて刻印が作成できるっていうのか!?」

 それが刻印や魔法陣のいいところだしね。

 欠点は、それだけ余計にサイオンを流さないといけないこと。

 エイミィのやることは、出来上がった杭を射出して、質量体を動かす要領で杭を

押し込むだけにしてあったけど、無駄撃ちできない為、効率よく撃つ必要があった。

「別にCADの銃身に、びっしり精密機器が詰まってる訳じゃないんだし、可能でしょ」

 空きスペースに銃口を通して、サイオンが流れるようにしただけだし。

 私は米に刻印を彫れる程だよ?銃口に刻印彫るなんて朝飯前ですよ。

 デバイスチェックでも、何もいわれなかったよ?

「それは…」

 絶句している残念参謀に、私は背を向けた。

 まあ、答えることは答えたでしょ。

 

 まあ、エイミィが勝ってよかった。

 

 

 

 

 




 エイミィの魔法のタネ明かしです。
 まあ、何でもありですからね。
 
 次回、ようやく雫と深雪が競う事になるかな?
 と思います。

 次回は来年になるかと思います。
 気長にお待ち頂ければ幸いです。
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