司波家の長女は何をする?   作:孤独ボッチ

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 少しづつ話は進んでおります。
 遅いけど…。

 では、お願いします。


九校戦編13

               1

 

 ピラーズブレイクが終わった。

 雫が戻ってくる。

 当然、落ち込んでいた。

「お疲れ様。最後は賭けに勝ったってだけだから、次回は更に相手の裏をかく方法にしないと通じ

そうにないかな」

 この後、天狗さん辺りがこの技術の問い合わせをしてくるだろうけど、別に構わない。

 ()()()()()()()()

 この技術も結局は修練がものをいうものだし、私のサポートなしだと何十年単位で修行が必要に

なる…と思う。

 なにせ、短期習得の為に結構裏技的な方法を駆使したからね。

 それでもチートの妹は越えられなかったけど。

 即実戦投入とはいかない技術であるのは間違いない。

 習得は軍なんだから各自で宜しくという積もりだ。

 雫はといえば、てっきり慰めでも口にすると思っていた使えないエンジニアが、次回などと

いった事に、ビックリしたようだ。

「次回…?」

「そう、次回。何?雫と深雪の対決ってこれで終わりなの?負けたら引き下がるの?」

「っ!!」

 そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔しなくても…。

 当然次回あるでしょ。

 九校戦は来年もあるんだから。

 それが叶わなくても手合わせくらいやってもいいし、授業で競うこともあるでしょ。

 何も原作通りでなくても、そこはいいでしょ。

「ああ…そう…だね」

 雫はカクカクとぎこちなく頷き、その後になんとか笑みらしきものを浮かべた。

 うん。表情がマシになってよかった。

「でも、普通、こういう時に掛ける言葉じゃないと思う」

「異論はないけど、少しは気が紛れたんだからいいんじゃない?」

「それも自分でいうことじゃないと思う」

 私は笑った。

 正論だ。

 雫も笑った。

 声を出して笑った訳じゃないけど、雫だから。

「それじゃ、反省会といこうか」

「…わかった」

 私は結構容赦なくダメだった点とよかった点を指摘した。

 録画した映像を二人で観ながら。

 雫は真剣な表情でそれを聞いていた。

 

 終わった頃には、親密度が上がったような気がした。

 あくまで気がしただけだけど。

 

 反省会が終わって、帰る途中でほのかが待っていた。

 二人が暫し見詰め合う。

 私は余計だね。

 私はほのかに耳元で後を宜しくと、サクッと無責任に丸投げして退散することにした。

 

 

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 後は間の悪いことに達也達が雫達とエンカウントしてしまったりしたそうだが、原作通り乗り

切ったようだ。

 ささやかなながら、ピラーズブレイク優勝・準優勝のお祝い会を開こうといった時、いつも通り

の雫に戻っていたから、ほのかも上手くやってくれたんだろう。

 勿論、我が弟と妹も頑張ってくれたんだろう。

 我が弟は、金銭的な意味でも貢献したらしいけど。

 あと、天狗さんは忙しいらしい。

 達也もあれから面会できないそうだ。

 別に私は話したくないからいいけど、寧ろずっと忙しくしてて下さい。

「それではカンパ~イ!!」

 ルネッサ~ンス。

 っと、いかん年齢が…。

 里美さんの乾杯の音頭でお祝い会がスタートした。

 勿論、ジュースでの乾杯だよ?

「いや、まさか折角の覚悟が友に止められるとは!!」

 大袈裟な仕草でエイミィが嘆く。

 アンタ、モノリスコードに出るんでしょうに。

「フッ!僕の本領はミラージバットさ」

「ほのかとスバル、それにお姉様は明日からミラージバットね」

 嫌な事を思い出せないで。

「しかし、風呂で深景さんのスタイルは見たけど、ミラージバットの衣装を着られると、強調

されるね」

 里美さんが眼鏡を光らせて、下らないことを宣う。

 止めなさいっての。

 しかも、私の衣装さ。

 誰の陰謀か知らないけど、みんなと少し違うんだよ。

 どっかのうっかりさんの元を逃げ出した杖と契約しちゃった魔法少女みたいなコスチューム

なんだよ!一体誰得なの!?鬱だわ!!

 大体、どこから持ってきたのよ、アレ!?

 あの衣装に許可出すとか、大会委員会も何考えてんの!?

「そうなんだ!!もう揉ませろ!!」

 錯乱したエイミィに極小の霊丸を叩き込み撃沈する。

 詰まらぬものを撃ってしまった。

 ところでほのかに雫。百合の世界に行っちゃったんじゃないよね?

 お互い手を握って見詰め合ってるけど!

 それと深雪。なんでしなだれかかってるくるの!?

 里美さんは、なんだかヅカの人みたいにポーズを決めてるし!

 これ、酒混入してんじゃないよね!?

 ここから女の子が入り乱れる狂気の沙汰に突入していくことになるなど、この時の私には

分からなかった。

 夜が明けた時、昨夜の惨事を覚えていた子はいなかった。

 

 なんでやねん!!

 

  

               3

 

 悪夢のような日が来てしまった。

 ミラージバット予選。

 どうか夢なら醒めて!!なんて悲劇のヒロイン気取っても、誰も助けてくれないのさ!

 達也がエンジニアを引き受けてくれたんだけど、矢鱈気合が入ってましたよ…。

 衣装合わせと同時にCAD調整完了って、どんだけ~って感じだよ。

 これが私の魔法少女デビューか…。

 くっ!殺せ!

 私は深雪の穴埋めだから、里美さん、ほのかの後に登場になる。

 私の役割としては、決勝までいって二人のサポートってとこだよね。

 表向きの私だと、予選に勝つのキツイんですけど!!

 二人は順調に決勝への切符をもぎ取った。

 私の出番です。

 いやだいやだいやだ…。

 ゲシュタルト崩壊しそうだわ。

 円柱の柱の上に立つと、歓声と共にエロ視線が突き刺さる。

 スタイルが前世よりよくなったのも、良し悪しだね。

 テンション下がるわぁ。

 だが、四方向からの謎の殺気が発せられ、会場が静まり返る。

 まあ、もうツッコマナイヨ?

 

 さて、参ります。

 開始のブザーが鳴る。

 

 ホログラムの球体が現れると同時に飛び上がる。

 お!流石マイブラザー。軽い軽い。

 私の表向きの魔法力でも、他の選手より早く球体に到達する。

 魔法のステッキで叩く。

 他の子が、叩く標的を失い虚しく着地。

 次々と球体が現れる。

 みんながぴょんぴょん飛び跳ねて、ポイントを重ねる。

 がっついてますな。

 新人戦だけあって、ペース配分がなってない。

 私は焦らず自分のリミッターと相談して、一定のリズムで跳び上がる。

 一瞬で自分が叩く球体を判別するなんて、プレイヤースキルの範疇。

 他の子達が無駄に跳ね回り、息切れしてきた中。

 私はマイペースでやっていた。

 ハッスルしてボロ出すなんて、御免だからね。

 これで負けたらどうするんだって?

 それは残念で済ませるよ。

 元々が無茶振りなんだからさ。

 だがしかし、予想に反して、がっついた人達のミスで私は予選を突破した。

 キツイ筈なのに普通に突破とか、思惑通りの青山通りっぽくて嫌だね。

 誰の思惑だって?

 そんなのコレを押し付けた人達に決まってるでしょ。

 

 なんか閣下の熱っぽい笑顔が視界に入り、更にテンションが落ちたのは内緒だ。

 

 

               4

 

「見事だったよ、姉さん。勿論、二人も」

 三人で戻ったら、達也からそういわれた。

 深雪と雫も一緒だった。

観戦が終わってから合流して、待ってたんだろうね。

 しかし、姉として取り敢えず。

 私は無言でステッキを達也の頭に振り下ろした。

 鈍い音がしたが、達也は頭をさするだけだった。

「達也さん!」

 恋する乙女・ほのかが駆け寄る。

 例によって達也は、ほのかを手で制して大丈夫アピールをしていた。

 素直に受けなさないな。

 もう一発いっとく?

 ほのかが泣きそうだし、自重するしかないか。

 深雪は苦笑い。

 雫は無表情でサムズアップしている。

 里美さんは、一人ドン引きしているようだ。

「私は穴埋め要員なんだから、まずは二人を称えないとダメでしょ」

 達也が、ああ!みたいなリアクションをする。

 勿論、私と深雪にしか分からない程度の反応だけど、失礼だから、それ。

「いやいや。ホントに深景さんは二科生かい?蔑視的な意味じゃなくて…」

 達也と深雪に配慮したのか、最後が言い訳っぽく聞こえる。

「だって、普通に予選突破してるからさ」

 今度は素直に感心した様子で里美さんがいった。

 達也と深雪は何やら嬉しそうに頷いている。

「いや、あれは他の子の自爆でしょ。ペース配分がなってなかったもの」

「そのペース配分が難しいんですよ!」

 ほのかが、私が謙遜でもしたと思ったのか、否定に力を入れていった。

 そうかな?だって、二人だって達也の指導でペース配分完璧じゃない。

「その指導も君は受けてないだろ?」

 私の考えていることが伝わったのか、里美さんがいった。

 そんなに考えてること分かり易いかな、私。

「兎に角、次は決勝だ。それまで体を休めてくれ」

 達也がエンジニアとしてのコメントをして、背を向ける。

「お兄様?」

 そのまま去って行こうとしていた達也に、深雪が声を掛ける。

「済まないが、少し休むよ。深雪はモノリスコードの見学でもしておいで」

 達也が振り返って、深雪のいいたいことに答えた。

 

 それじゃ、私もそうするか。

 なんて呑気に構えていたことを私は後悔することになる。

 

 

               5

 

 :戸愚呂視点

 

 さて、仮初とはいえ、依頼主。

 依頼は実行しないといけないねぇ…。

 見たところ、魔法師の卵もいいところで、叩き甲斐もなさそうだねぇ。

 これは蛭江にでも一人で遣れる仕事だ。

『蛭江。新人戦モノリスコードで妨害の指示が出た。お相手の四校の仕業にでも見せ

掛けろ』

 通信機がなくともこうして指示ができるようになったのは、便利になったものだねぇ。

『要ります?そんな小細工』

 ヘラヘラした声が返ってくる。

『勿論、気付かれているだろうけどね。キチンと証拠があれば、無視もできないものさ』

 蛭江はこういう細かい作業が得意だった、人間だった頃から。

『分かりました。野郎ばっかりの競技ですからね。サクッと開始同時にフライングって

感じでやりますよ』

『くれぐれも…』

『分かってますって、バレないように注意はしますよ』

 多少、不安が残ったものの、これ以上いっても仕様がない。

 つくづく詰まらない仕事だ、今回のは特に。

 

 溜息を吐きたくなるのを、コーヒーを飲み干して、モニターを眺めた。

 

 

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 :真由美視点

 

 ミラージバットは、出場選手三人が決勝進出で順調。

 深景さんも期待に応えてくれた。

 新人戦が魔法競技初めての一年生じゃ、あんなに淡々と一定のリズムで得点を重ね

られたら、平静ではいられない。

 しかも、最初に圧倒的な発動スピードで跳び上がったのも効いている。

 その所為で、他校の選手は焦りでペースを乱されて、後半まで体力が持たなかった。

 やっぱり()()()()は、普通じゃないわね。

 それにしても、深景さんのあの衣装…いいわね!

 急いで私が一年生の時に使ったヤツを、手直しさせたけど間に合うものね!

 実家の力をこんなところで使うのかって、父には嫌味をいわれたけど。

 問題ないわ!

 決勝も期待しましょう!

 

「会長?」

 気が付くとハンゾー君が怪訝そうに、私を見ていた。

 ボゥっとしていたから心配されたみたいね。

 しまったわ。

 ここは天幕内で、これから新人戦モノリスコードの応援だったわ。

 男子はハンゾー君に任せきりにしてものね。

 私はなんでもないと適当に微笑むと、ハンゾー君は真っ赤になって引き下がった。

 う~ん。相変わらず揶揄い…面白い子ね!

「会長が心配なされるのも当然ですが、流石に最下位の四校が相手です。大丈夫でしょう」

 いいように誤解されたので、私は笑顔で頷いておく。

 今のところ男子の空回りっぷりは、発揮されていない。

 明智さんが上手く森崎君を操縦している。

 そのお陰もあって、順調に勝ち進んでいる。

 リーダーの森崎君は、やる気満々だけど三校には敵わないでしょうね。

 準優勝を狙って貰うしかないわね。

 そんなことはおくびにも出さずに、試合を見守る。

 みんなこの試合の勝利を疑っていないから、リラックスして気軽に眺めていた。

 そして、開始のブザーが鳴り響いたその瞬間。

 一校のスタート地点である廃屋が、崩れ落ちた。

「はぁ!?」

 誰かが声を上げる。

 それを合図にして混乱が全体に広がった。

 四校のフライングだと騒ぎ出す子もいた。

 私自身も戸惑っていたが、そんな暇はなかった。

 みんなを宥めるのに、私は力を注ぐ必要があったから。 

 

 四校の反則行為?それとも…。

 答えは見ていても、四校を疑ってしまうのは仕様がない。

  

               7

 

 私は深雪と雫と一緒になって、エイミィの雄姿を観戦する積もりだった。

 だが、それは色々な意味で砕かれた。

 開始早々に、スタート地点が潰されたのだ。

 なんで忘れてたかな…。

 あの残念イケメンと一緒にモノリスに出るということは、この妨害行為に巻き込まれる

可能性があったんだ。

 何故、このことを忘れていたのか。

 原作でもあったことなのに。

 分かってる。

 自分に降り掛かった災難で頭が一杯になって、それどころじゃなくなったんだ。

 肝心なところでこれか!!

「お姉様」

 深雪の冷たい手が、私の手に添えられる。

 それで初めて気付かされた。

 握り締めた拳から血が滴っていた。

 深雪がハンカチを取り出して、巻いてくれる。

「ごめんね。ありがとう」

「いえ」

 自己嫌悪で一杯になりそうになっていたから、丁度よかった。

 今はそれどころじゃない。

 私はエイミィ達の無事を確認する為に、歩き出した。

 精霊の眼(エレメンタルサイト)で魔法の痕跡を探す。

 どんな僅かな痕跡も見逃しやしない。

 今、達也は休憩中。

 他の誰にも気取らせやしない。

 見付けた。

 僅かな糸を。

 どんなにサイオンを偽装し、痕跡を誤魔化そうと私の眼は欺けない。

 糸を辿っていくと、もう術者は観客席から離れていた。

 見るからにスケベそうな男が、ヘラヘラ歩いていた。

 コイツか。

 明らかに普通の人間ではない。

 パラサイトだ。

 遠慮はいらない。

 後ろにいる二人に気付かれないように、厳重に魔法式及び魔法の痕跡を隠蔽する。

 サイオンセンサーにすら引っ掛からないくらいに。

 別空間にコアがあるパラサイトを殺すのだ。

 別空間に展開する魔法なのが、丁度いい。

 ≪崩霊裂(ラ・ティルト)

 私はこの世界には存在しない魔法でパラサイトを焼き払った。

 間の抜けた声を上げて、スケベ面は一瞬にして青白い炎の柱に焼かれ、燃え尽きた。

 分かっている。

 こんなことはなんの救いにもならない。

 ただの自己満足だ。

 だけど、これは反撃の狼煙だ。

 派手にいこうじゃないの。

 

 スケベ面が燃え尽きた辺りで、騒ぎが起こり始めていたが、私は無視して歩き続けた。

 

 

               8

 

 エイミィ達は、結果をいえば命に別状はなかった。

 魔法万歳ではあるけど、重症だ。

 全治魔法込みで二週間。

 三日は絶対安静。

 取り敢えず、原作より酷くなってはいない。

 犠牲者が増えている分、酷いといえなくもないけど。

 私は、もう気持ちを切り替えていた。

 今回の連中には私が制裁を下す、と。

 私にできることは、これ以上被害を出さずに九校戦を終わらせて、首謀者を速やかに

片付けることだ。

 その為なら、多少目立とうが、嫌だろうが、()()()()()()()()()()()()()()

 自己満足だと承知の上で、決意を新たにすると、後ろからマイブラザーがやってきた。

「お兄様!」

 深雪が真っ先に反応する。

 達也の顔が険しくなった。

 私達の様子だけで何かあったと察したみたい。

「モノリスコードで何かあったか?」

 雫が何かいう前に私が口を開いた。

「また妨害工作だよ」

「お姉様、まだ決まった訳では…」

 私の断定に深雪が宥めるようにいった。

 残念ながら、私は確認しているから決まっている。

 理由はいえないけどね。

 雫は少し落胆した様子だった。

 なんかこの子の感情が読めるようになってきたよ。

 雫にしてみれば、組織の妨害などでなく四校のフライングの方がいいと思っていた

んだろう。

 そっちなら怒りをぶつける先もある。

 だが、組織であるなら、彼女が手を出すことは好ましくない。

「姉さんなりに確信がある。そういうことかい?」

「まあね」

 達也の問いに、私は素っ気なく答えた。

 その確信は語る積もりがないことを示したのだ。

 話すことがなくなり、みんな黙り込んでしまった。

「達也君も戻ったのね。悪いけど、深景さんと達也君はちょっと付き合ってくれない?」

 気まずい空気が出てしまった直後に、有難いことに閣下が後から声を掛けてきた。

 私と達也は視線を交わすと、頷き合った。

 異論はない。

 

 私達は、閣下の案内で天幕内に幾つかある区画された部屋に通された。

 閣下が入った瞬間に音を遮断する魔法を使用する。

「見事な遮音障壁ですね」

「まっ、これ位はね」

 達也の称賛に閣下は少し照れて答えた。

「いきなり本題なんだけど、今回の件も件の犯罪組織の妨害だと思う?」

「ええ。だと思いますよ。いくら九校戦といっても、技術優先の四校がバレバレの反則

やる価値が、新人戦にあるとは思えませんしね」

 前置きなしで本題に入った閣下に、私は表向きの理由を口にする。

 大体ここで勝っても、四校の成績じゃ意味がない。

 四校が一校に今更意趣返しする理由もない。

 達也も隣で賛同してくれる。

「向こうがここまでやってくるとなると、私達も考えなくちゃいけないわ」

 お好きにどうぞ。

 私は勝手にやるだけです。

 ここで閣下は迷うような態度を見せた。

「考える、とは?」

 達也が話の続きを促すようにいった。

 閣下が意を決したように私達を見る。

「今、十文字君が折衝中なんだけど、メンバーの入れ替えをして競技を続けようと思う

の」

「しかし、モノリスコードではメンバーの入れ替えは…」

「分かってる。それは今回の事態を考慮して貰うし、認めさせるから」

 閣下がキッパリといい切った。

 凄いね。あの腐れ爺にそこまで強気に交渉できるのか。

「それでね。モノリスコードに貴女達に出てほしいのよ」

 達也の眉間に皺が寄る。

 達也が何かをいう前に、私が達也の肩に手を置く。

「姉さん…」

 渋々といった感じで達也が黙る。

「つまり、私達に代わりに妨害工作の盾になれってことですね」

「ええ」

 閣下は真っ直ぐに私の目を見ていった。

「貴女達の実力を評価した結果だけど…軽蔑してくれていいわ」

 原作と違って、閣下の口から参加を強制されるとはね。

 でも、これは想定していたことだ。

「他の二人はどうする予定なんです?」

「姉さん!?」

「いいの?」

 達也と閣下が驚いて私を見た。

「エイミィとは、もう友達になったんです。放置することはできません。別に一科生の

ことは身内以外どうでもいいですが、身内に手を出された以上、何もしない訳にいきま

せんよ」

 閣下はどうでもいいって…なんていって凹んでいた。

 なんで貴女が凹むんですか。

「姉さんの気持ちは、分かった。俺もベストを尽くすよ」

 達也は止めても無駄だと思ったのか、私を護ることにシフトしたようだ。

 大丈夫。迷惑は掛けない。

「その代わり、成績の方は約束できませんよ?ミラージバットの後ですし、CADの

レギュレーションまでは流石にどうにもできないですよね?」

 閣下は苦い顔で頷いた。

 メンバーの入れ替えだけでも、相当の無理がある筈だ。

 流石にレギュレーションを無視は向こうが了承しないだろう。

 そんなの許可したら、他校が暴動を起こすだろう。

「それでは、メンバーぐらいはこちらで指名させて頂きますよ?」

 達也が有無をいわせぬ口調でいった。

「え?いいけど…」

「それでは他のメンバーは、西城レオンハルトと吉田幹比古をお願いします」

「ええ!?それはちょっと…」

「メンバーを入れ替えるんですから、人員を変えるのなんて今更でしょう。飲ませて

下さい」

 達也、容赦ないね。

 ついでにレオ君も幹比古君も、やりたいと思ってないと思うよ。

 更にあのぬりかべに、成績の件も伝えて置いて下さいね。

 

 結局閣下はすぐに天幕を出て、ぬりかべと共に員数外のメンバー参加を、腐れ爺に

飲ませた。

 

 

               9

 私とほのか、それに里美さんが達也の前に整列していた。

 悪夢のミラージバット決勝の始まりです。

 悪夢であろうが、今回止める訳にはいきません。

 ほのかを危険な目に万が一でも合わせられないし。

 ついでに里美さんも。

 ガードの意味でも降りられない。

「予選と戦い方は何も変わらない。…みんなの持ち味を出し切れば、一・二・三位独占

間違いなしだ」

 うん。私は兎も角、二人の場合は正しいね。

 それよりお姉さん、みんなの前の間が気になります!

 口には出さないけど。

 私も達也に倣っていつも通りを通している。

 即ち、渋面してます。

 断っておくけど、これはいつも通りを意識した結果です。

 断じて本音ではない。

 証拠に二人共気付いてないから。

 何故、達也と二人でいつも通りにしているかといえば、閣下に不安になっている子達

のケアも頼まれたからだ。

 動揺は感染する。

 なんてことないって感じを出さないといけないのだ。

 証拠に女子はある程度落ち着いたよ。

 私以外の二人は、達也の言葉に嬉しそうに頷いて出て行った。

「達也」

「分かってるよ。見逃しやしない」

 原作では新人戦のちょっかいはここまでだったが、原作とは異なる以上、無警戒など

愚かなことはしない。

 達也の言葉に頷くと、私も二人を追って決勝の舞台へと急いだ。

 

 開始のブザーが鳴り響く。

 開始前のエロ視線があまりなくなっていたので、精神的に少し楽だ。

 その代わり、達也がガン見されたけど。

 真っ先にほのかが先制点を叩く。

 流石、光のエレメント。

 速い速い。

 お次は里美さん。

 他の選手は跳び上がれても、競り合うところまでいけない。

 呑気に構えて見えても私は達也と共に周囲を警戒しつつ、試合もやっていた。

 ほのかの進路妨害を無謀にも企んでいた二校の選手に、進路を塞ぐようにフェイントを

掛ける。

「っ!!」

 二校選手は咄嗟に回避なんて芸当ができずに、高く跳べずに着地する。

 勿論私も。

 実際フリだけだし。

 フェイントに引っ掛かった二校の選手が私を睨み付けるが、気にしない。

 そう、今回、悪いけど私はガードとサポートに徹する。

 三位くらい他校にやってもいい。

 それで二人の安全が買えるなら安い。

 今度は私が先に跳び上がる。

 二校選手はお返しとばかりに、私の進路を塞ごうとするが、私は身体を捻って躱す。

「っ!?」

 私のステッキが球体を叩き、得点を捥ぎ取る。

「おい!?なんだあれ!?魔法か!?」

「おいおい。魔法なしであんなことやれるなんて、本戦レベルじゃねぇか!!」

 おや?正解をいい当てた人がいるよ。

 跳び上がるのは魔法。

 躱すのは自前の身体能力だ。

 節約しないといけないからね。

 私はそれからも一切他校の三人に、二人の邪魔はさせなかった。

 いいように翻弄してやりましたよ。

 目立ったけど…。

 

 結果はほのかが優勝。

 里美さん二位。

 三校選手が地味に三位。

 

 私は目立ったにも拘らず五位。

 

 だって、邪魔に徹してたんだもん。

 

 

               10

 

 :ダグラス・黄視点

 

 新人戦モノリスコードを観て、幹部が胸を撫で下ろす。

 これ以上の快進撃は困るからな。

 これでモノリスコードは棄権だろう。

 戸愚呂にもう少し仕事をさせるか?

 そんなことを考えながらミラージバット決勝を観ると、またしても快進撃。

 クソッ!もどかしい!!

 いっそ、もっと手を出させるか!?

 その願いが伝わったのか、戸愚呂から通信が入った。

 あの男からとは珍しい。

『部下が一瞬で消されました』

「何!?国防軍か!?」

『いえ。もっと厄介な相手のようですなぁ。この先は少し派手にいくかもしれません。

承知して置いて下さい』

 ヤツの部下も尋常じゃない連中だ。

 それが一瞬で、だと!?

 

 その衝撃に、派手にいくだのという過激発言や、戸愚呂が酷く楽しそうな様子に、私は

気付いていなかった。

 

 

 

 

 




 雫は深雪と本気で戦う機会を気にしていましたが、そんな
 の自分で作りなさいと思っていたので、こういうことに
 なりました。
 十文字さんの説得パートは省略になりました。
 達也が逃げているなら、一科生はなんなんだって思ったの
 私だけですかね。
 深景のミラージバットは、アッサリした感じになりました
 が、原作もサラッとしてましたし、これでご勘弁を。
 深景は原作の細部は薄れ始めていて、これからも漏れは
 出るでしょう。まあ、当然だと思いますが。

 それでは次回も気長にお待ち頂ければ幸いです。
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