司波家の長女は何をする?   作:孤独ボッチ

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 時間が掛かってしまい申し訳ありません。
 今回もあまり話が進んでいない…。
 それでも、前進はしている…筈だ。

 それではお願いします。


九校戦編14

               1

 

 今現在、室内はどんよりとした空気です。

 主に男の子二人から漂っている。

 因みにつるんでる二科生組は、全員私と達也の部屋にいた。

「なあ、達也。マジなのか?」

 レオ君が呆然自失というか、魂が離脱しかけながらも言葉を紡ぐ。

 彼等は、死刑宣告…もとい、モノリスコード強制参加をぬりかべから仰せつかったのだ。

 あまりの事に抵抗らしい抵抗もできなかったようだ。

 あの強面でくわっ!て睨まれたら、一高校生が抵抗などできる筈がない。

 ヤクザより質が悪いんだから。

 因みに、その後、呆然とする二人を達也が、無情にも拉致してきて今に至る。

「会長ならいいそうだが、十文字会頭がこんな冗談を言うと思うか?」

「いやいや、会長さんならいうってのは兎も角…マジなのか?」

 私はレオ君の肩に手を置いて、ニッコリと微笑んだ。

「ドンマイ!」

 いい加減、男の子なら覚悟を決めなさい。

 レオ君が、お腹が痛い子みたいな顔で項垂れた。

 そして、落ち着きなく貧乏ゆすりしているのは幹比古君。

 彼は派遣された術者を殺され、突然モノリスコードに強制参加させられグロッキーだ。

 精神的な意味で。

 隣で美月が、どう声を掛けてよいものか悩んでいる。

 だが、ここにはリーサルウェポン・エリカがいた。

 情け容赦なく幹比古君の頭を引っ叩いた。

 死人に鞭打つとは、まさにエリカの為に存在しているよね。

 幹比古君が無様に前のめりに倒れ込んだ。

「ひ、ひでぇ」

 レオ君が恐怖に震えている。

「全く、落ち着きなさいよ。ミキ」

 声の感じは、ちょっと注意したみたいな感じなのに、行動がバイオレンスだね、エリカ。

「ぼ、僕の名前は…幹比古だ」

 倒れ込んでもツッコミは忘れない。

 素晴らしい人材だ。

 美月が慌てて助け起こしている。

 だが、痛みで再起動は果たしたようだ。

 流石、幼馴染。

 分かっていらっしゃる。

「しかしよ。やれっていわれても、なんにも用意してないんだぜ?」

「うん。妨害を防ぐ意味合いがあるなら、協力は吝かじゃないけど、装備なしの無手で

挑むのは無理だよ」

 やっと真面なことを口にした二人。

「安心しろ。俺と姉さんも何も準備してない」

「いやいやいや。それダメだろ。色々と」

 達也のボケにレオ君が即ツッコミを入れる。

「安心できないなら、心配するな」

「それ、意味が同じだから」

 思わず達也の言葉にツッコミを入れてしまうエリカ。

 でも、それくらいしかいえないよね。

「まあ、CADオ…もとい、中条先輩がバッチリやってくれるよ。多分…」

 私は宥めるようにいってあげた。

「多分!?」

 幹比古君が、名前ネタ以外で初めてツッコミに参加した。

「心配するな。中条先輩は段取りのいい人だ。キッチリやってくれるさ」

 達也がフォローを入れてくれる。

「それにCADなら俺が用意する。一人四十分で仕上げて渡すさ」

 当たり前の如く、絶技を宣言したマイブラザー。

 普通は四十分なんて無理だ。

 まっ、私も手伝うことは当たり前に決まっておりますがね!

 四十分ってそこから出た時間だし!

「自分達のもあるでしょ。大丈夫なの?」

 エリカが若干心配気に言った。

「まあ、自分のなら…」

「すぐにでも終わる」

 私達の言葉にエリカは乾いた笑いを漏らした。

 この言葉に二人も覚悟が決まったようだ。

 こりゃ、逃げられんわ、と。

 よかったよかった。

「あ~あ。私がやりたかったなぁ」

 エリカのボヤキに全員の心の声が、私にはハッキリと聞こえた。

 

『アンタ、接近戦専門でしょうが!』

 と。

 

 

               2

 

 そこからCAD調整に即突入する。

 時間ないしね。

 既にCADオタは待機していた。

 段取りがいいこと。

 しかし、ここで一悶着。

 達也が吉田家の術式の欠陥を告げたのだ。

 その所為で幹比古君が魔法を上手く使えないと。

 原作通り、これはクリアしたけどね。

 原作では達也が一人でやってたけど、今回は古式を専門にしている私がいるから、私も

手を貸すことになった。

 といっても原作では達也一人でやってたから、私が口を出す必要もないから、サポート

してただけだけどね。

 それを見て、CADオタが硬直してたけど、気にしなくていいだろう。

 傍から見ると、クレイジーな作業に見えるだろうからね。

 最早、二人で新魔法作っちゃいました的な作業だ。

 普通の魔工師がやったんじゃ、使うのは遠慮申し上げるところだ。

 だが、見れば分かって貰える。

 魔法師なら、これは使えると。

 だから、幹比古君も黙って見守っていた。

 流石、使う術が多彩なこと。

 二人でああだこうだいいながら作業して、ジャスト四十分で作業を終わらせた。

 レオ君?

 原作通り小通連だよ。

 あれの調整は達也がパパッとやっちゃったよ。

 ここでもサポートです。

 チャンと試験はしていたようだし、扱いは大丈夫でしょ。

 

 私達の分は宣言通りと言わせて頂く。

 ついでにCADオタは、エクトプラズムを吐いていた。

 

  

               3

 

 :戸愚呂視点

 

 蛭江は戦闘要員としての技能は低いとはいえ、それは我々の基準の話だ。

 そこ等の魔法師に後れをとることなどない。

 それが一瞬にして本体ごと消された。

 身体を捨てる余裕すらなかったということだからねぇ。

 依頼主にも断りは入れた。

 ここ等で茶番も終わりにしたいことだし、最後は派手にやりたいねぇ。

 問題は()()()()()()()()()()()()()()()()

 ニヤリと思わず笑みがこぼれる。

 私の疑問の答えのような発表がなされる。

 一校がメンバーを総入れ替えして、モノリスコードに出ると。

 メンバーには、どっちも容疑者が入っている。

 これだねぇ。

 考えることなどないって訳だねぇ。

 神なんて信じちゃいないが、こういう時は有難く感じる。

 私の予想通りなら、一校は決勝まで勝ち進む筈だ。

 途中で負けるなら、妨害するまでもない話。

 本戦に、()()()()()ちょっかいを出すまでだ。

 仮の依頼主もその方が喜ぶだろうが、私的には嬉しくない。

 是非、頑張って貰いたいねぇ。

『各員へ。次の妨害目標、新人戦モノリスコード。おそらくは決勝になるだ

ろう。いつでも出れるように待機しておくように』

 少し、相手もウォーミングアップが必要だろうし、丁度いいんじゃないかねぇ。

 残りメンバーから、何故決勝に?という質問は出ない。

 私の面白そうな相手とは遊びたい心理を、理解してくれているからだろうね。

『あと、使えそうなヤツを何人か呼ぶことにする』

『それは剛鬼と蛭江がやられた関係で?』

 私の言葉に隠魔鬼が確認してくる。

『そうだ。こっちも総力を上げて取り組んだと見せないと、いけないからねぇ』

 頷くような気配なのは、無口な獄門鬼。

『今からいうことじゃありませんけど…』

『分かっているよ。退路を考えることまで敵前逃亡などという積もりはないよ』

 相手の厄介さが身に染みている魅由鬼が、いい辛そうに切り出したことを先回りして

私は肯定してやった。

 蛮勇より臆病の方がいい。

 こっちも大した実力者は連れてこなかったとはいえ、生き残ってくれれば次も使える

から、こっちも有難い。

『それでは、各員待機せよ』

 

『『『了解』』』

 

 

               4

 

 突貫作業でCADを仕上げ、即席チームでいざ出陣。

 因みにお相手は八校で森林ステージ。

 さて、どこで仕掛けてくるかな?

 これは八校の話じゃなくて、エイミィに怪我させた連中の話だ。

 八校なんて、ぶっちゃけどうでもいい。

 趣旨はレオ君達は理解している。

 危険であることも。

 それを含めて、閣下が試合前の演説にいらしている。

「っていう訳で、森崎君達の貯金を含めても、残りのチームの成績のお陰で全敗すると、

決勝トーナメントにいけません。その方が丸く治まるけど」

 やっぱり、一校の強引なやり方は他校の反感を買ったみたいだね。

 残りの対戦相手は二校と八校。

 彼等はウチにだけは負けたくないとか、思ってる様子だとか。

 こっちは妨害のハンデがあるのは承知だが、ルールを曲げさせるのまでは許容範囲外

らしい。

 しかも、代役のメンツは意味不明。

 エンジニアから二人、メンバーにすら入っていない応援メンバー二人。

 他校にしてみたら、ルールまで曲げてまでこれか!?ふざけてんのか!?って話。

 同情一転、ヘイト満点、おまけで困惑が隠し味って感じらしい。

「特例で試合する以上、勝ちますよ。当然でしょう」

 達也はハッキリといい切る。

「余計な心配だったわね」

 閣下が微笑んで頷いた。

 それで送り出されたんだけど…。

 なんだか、私だけ凄く応援して貰ったんだけど、なんかペタペタ引っ付くの止めて

貰えません?

 それで出てって、観客からの、は!?って感じの声が聞こえてくるようですよ。

 なんせ、レオ君は腰に棍棒モドキを下げており、私に至っては完全に刀下げてんだから。

 実際、こっちから観客なんて見えませんがね。

「なんか…悪目立ちしてるんじゃないかな?」

 カメラ越しにさえ感じる視線。

 凄いね。

 幹比古君が引き攣り気味にいう。

 疑問の余地もない。

 悪目立ちしているけど、それが何か?

「選手が注目されるのは当然だ。気にするな」

 達也がバッサリと切り捨てる。

「明らかに、コイツと深景の刀が原因だろう」

 レオ君がげんなりと自分の得物を見下ろし、溜息を吐いた。

 うん。当たりだね。

 ドンマイ!

 

 もうすぐ試合が始まる。 

 

 

               5

 

 :将輝視点

 

 モノリスコード予選で一校のメンバーが、入れ替えられた。

 俺とジョージは敵情視察で観に来ていた。

 これに止むを得ないと考える者、やり過ぎだと思う者もいるようだ。

 なんにせよ、大会委員会が是としたなら、文句をいっても仕様がない。

 問題なのは…。

「出て来たね、あの二人が」

 こっちの方だろう。

 深景さんと何かと注目されているエンジニア・司波達也が試合の代役として出て来た

のだ。

 他に一競技にしか出ていない選手はいた筈なのに、エンジニアや応援で来ていた人間

を代役にする。

 異常なことだ。

 例え、深景さんであろうと、試合である以上は手加減するつもりはないが、心配でも

ある。

 妨害工作を躱す為の人選だろうが、ならば何故代役に選ばれる程の選手が応援に

回っていたのか?

 あの二人が只者じゃないのは分かるが、残りの二人はどういう事だ?

 まさか、生贄ということはあるまいが…。

「ああ。まさか選手とは思わなかったがな。どういう意図なのか…」

「それをこれから見分しようじゃないか、将輝。二人共独特だね。二丁拳銃スタイルに

司波達也はブレスレット型、司波深景は武装一体型…かな?使いこなせるのかな?」

 俺の言葉の意味を察したジョージが、サラッと話題を変えた。

 考え過ぎるなということか。

 もう始まっているのだから、確かにここであれこれ考えてもそれこそ仕様がない。

 だから、ジョージの気遣いに乗った。

「伊達やハッタリではないだろう。いずれも特化型か」

「最初から二丁拳銃スタイルみたいだけど、複数の系統魔法を使いたいなら、汎用型を

チョイスすればいいと思うけど…」

 ジョージが考え込む。

「まあ、その狙いをこれから見分しようじゃないか」

 ジョージが苦笑いでそうだねと答えた。

 司波姉弟は、今大会で学生では有り得ない技術を見せたスーパーエンジニア。

 少しでも魔法が分かる者なら、侮りなどしない。

 他校も最大限の警戒をしているだろう。

 俺も今はあの二人がどれ程のものか見せて貰おう。

 

 だが、彼女が()()()()()()()()()に晒された時には、その限りではない。

 もうすぐ試合が始まる。

 俺は意識を集中して全てを見逃さないように備えた。

 

 

               6

 

 さて、始まりましたモノリスコード。

 オフェンスが達也、ディフェンスがレオ君、遊撃が青春中の幹比古君。

 そして、なんと!私も遊撃だったりする。

 私も古式ですし、ですよねぇ!って役割。

 決して手綱が取れないから、放置されたのではない。

 ココ重要です。テストには出ないけど。

 対戦相手は何度もいうけど八校。

 八校相手に森林ステージ。

 八校は野外実習を遣りまくっている学校で、森とか大好物らしい。

 だが、残念でした。

 私達姉弟も大好物です(得意という意味で)。

 達也が身体能力の高さを示し、私も高速移動中。

 縮地で。

 あっという間に、敵さんを一人発見。

 まだ、こっちに気付いてないよ。

 相手は女の子のようだ。

 それじゃ、失礼。

 ハンドガンタイプのCADを構えて、撃つ。

 霊丸を調節して撃ち込んだ。

 見事に八校の女の子が直撃を受けて、転がっていく。

 ピクリともしない。

 よし、気絶してるね。

 断って置くけど、死んでないからね。

 こういう時、便利な技だわ。

 

 私はすぐさまその場を離脱する。

 

  

               7

 

 :真由美視点

 

 試合開始からビックリの連続だった。

 達也君と深景さんが開始と同時に高速で移動し、姿を消す。

 達也君の動きは、九重先生に師事していると聞いていたから驚かなかったけど、深景

さんの方が問題だった。

 突然、姿が霞むように消えた。

 カメラが案の定、彼女の姿をロストする。

 達也君の動きは、キチンとカバーしているにも関わらずに。

 ロストしたと思ったら、八校の選手が倒れた。

 こちらはカメラがカバーしていたが、八校選手の視界外から放たれた一撃で倒れた

ようだ。

 おそらくはハンゾー君に使った遠当てか何かを使用したんだと思う。

 得意のサイオンの一撃で八校選手が吹き飛んだ。

 あの短時間で距離を詰めるなんて、物凄いスピードだ。

「もしかして…縮地か!?」

 隣にいる摩利が声を上げる。

「知ってるの?」

「ああ、もう、都市伝説みたいなものだな。習得していたヤツがいたとはな…」

 あの摩利が呆然としている。

 使い手は今、確認されていないそうだ。

 文献にのみ、あったと伝えられる技術なんだそうだ。

 摩利も彼氏経由でその文献を覘いたことがあるそうだ。

 八校有利の森林ステージで、気配も覚らせずに接近し、一撃で仕留める。

 とんでもないわね。

 観客席全体から戸惑いと驚きのどよめきが聞こえる。

「あっ!モノリスが開きましたよ!」

 あーちゃんが声を上げる。

 深景さんに気を取られている間に、達也君が八校のディフェンスを躱しモノリスを

開いたようだ。

 大会委員会が気を利かせて、リプレイ映像を出す。

 同じく達也君が高速で八校ディフェンスに迫り、突然の回避行動で八校選手の魔法の

照準を外すと、自身もCADを構えて魔法を放つ。

 おそらくは加重系統だろう。

 八校選手が思わず膝を突くが、行動不能にまでには至らない。

 それでも、彼は敵モノリスに走る。

 八校選手が達也君の背中を撃とうとCADを構え、魔法を放とうとした時。

 達也君が八校選手を見もせずに、CADを背後に向けて魔法を放った。

 その時、八校選手の魔法式が砕け散る。

 あまりのことに、八校選手がCADを取り落とす。

「っ!?」

術式解体(グラムデモリッション)!?」

 

 あの姉弟には、本当に驚かされる。

 その後、摩利が術式解体(グラムデモリッション)を知らなかったので、説明して上げた。

 

 

 

               8

 

 :達也視点

 

 さて、モノリスはこじ開けたが、流石に悠長にコードを打ち込む暇はない。

 すぐさま離脱を選択。

『こっちは一人片付けたよ』

 どうも移動中らしい姉さんから念話が入る。

 流石に早いな。

 射撃音が響いていたので、倒したのは分かったが。

 念話は古式の同調を利用した通信法で、姉さんが()()()()()()()使えるようにした

ものだ。

 本当に一定距離しか使えないのか怪しいが、姉さんがいわないなら訊くことはしない。

 姉さんをオフェンスにしなかった理由は、姉さんを自由に動き回らせる為だ。

 多分、姉さんをオフェンスにすると、色々と窮屈な思いをさせてしまうだろう。

 姉さんには、好きに行動して貰った方が、パフォーマンスがいい。

 さて、こっちもオフェンスの役割を果たさないとな。

『幹比古君が、木霊迷路で一人を戦線に加われなくしてる。レオ君が一人撃破』

 俺は口元を緩ませる。

 遠くで悲鳴が聞こえる。

 おそらく幹比古が無力化した選手に、姉さんが狙撃で止めを刺したんだろう。

 となると、俺に報告を入れた頃には、姉さんは幹比古のカバーに入っていたということ

だろう。

 俺は敢えて魔法で木の上に跳び上がると、魔法なしで隣の木に跳び移る。

 さっきの八校ディフェンスが、魔法の気配を察知してCADを手に慎重に接近してくるが、

魔法で跳び上がった木を警戒して、こちらに気付いていない。

 これでチェックメイトだ。

 八校選手の背を遠慮なく、俺は撃った。

 姉さんのように、サイオン自体を武器に出来ないが、行動不能にするくらいは俺にも問題

なくできる。

 今度こそ、身動きができないようだ。

 

 それを確認すると、俺はモノリスに走る。

 俺は悠々とコードを打ち込むと、俺達の勝利を告げるサイレンが鳴り響いた。 

 

 

               9

 

 :エリカ視点

 

 試合終了と同時に安堵した。

 他の子達は無邪気に勝利を喜んでる。

 まあ、それは別にいいんだけどさ。

 水を差す気はない。

 それに深景や達也君が居れば、まあ負けないでしょ。

 あの二人は高校生としては、別格といっていい。

 しかも、深景があの有名な九字光虎だったとはね…。

 次兄上が刀の製作を依頼していたから、どういう人物か調べたことがあったけど、顔や

年齢は公表していなかった。

 昔に失伝した技術と新たに造り出した技術を融合させ、新たな妖刀を打ち続けている

刀匠。

 妖刀などといえば聞こえは悪いが、ある種の魔法を使う専用の刀型のホウキは総じて

妖刀といわれる。

 現にウチにも何本かあるし、私も継承者の一人だ。

 実は私は実家を出て早々に剣の修行に出たかった。

 家の柵でそれは叶わなかったけど、今はそれでよかったのかもしれない。

 だって、深景に出会えたから。

 正直、深景が九字光虎であるというのがショックだった。

 剣の腕があれだけ凄まじいのに、剣が片手間だったということに裏切られたとすら

感じた。

 剣一筋に鍛えた私を、軽々と越えていた癖にって。

 でも違った。

 深景は剣を御座なりにしている訳ではなかった。

 剣を打つ為に、剣を深く学んだ結果だったのだ。

 深景なりに一本筋を通していたのだ。

 あの縮地でそれが分かった。

 正確には視認はできなかったが、軍用のプロテクターを着用していても、刀が動き

の邪魔にならず、尚且つすぐに抜けるようになっていた。

 人が刀に合わせて使うのは、現代では当たり前のこと。

 だって、刀は現代の主力兵器じゃないんだから。

 でも、深景の刀は違ったのだ。

 刀が使う人に合わせて打たれていたのだ。

 刀を扱う者の気持ちになって造る。

 それを体現した結果だったんだと、感じた。

 だから、深景は現代戦闘は勿論、古武術・剣術を学んだのだろう。

 より現代に使うに相応しい刀を打つ為に。

「エリカちゃん?大丈夫ですか?」

 考えごとをしてたら、横から美月が心配そうに声を掛けてきた。

「ああ!なんでもないなんでもない!気にしないで!」

 

 勝手に一人で拗ねてただけだし。

 

 

               10

 

 :将輝視点

 

 試合は予想通り、と言っていい結果。

 想定外も。

「今の試合、どう見る?」

 言葉短くジョージに問う。

「それは試合の総括じゃなくて、あの姉弟のことだね?」

「そうだ。どう攻める?」

 ジョージが一つ頷くと、少し考えてから口を開いた。

「あの二人は凄く戦い慣れているように見える。魔法より寧ろ戦闘技術に警戒すべきだね」

「魔法技術の方は?」

術式解体(グラムデモリッション)には、驚いたけど、彼の方はそれ程警戒する必要はないと思う」

 それから司波達也が使った魔法に関して解説を加えていく。

 確かに、不意打ちだったにも拘らず、意識を刈り取れてなかったな。

「寧ろ、彼女の攻撃手段があれだけしか確認できなかったのが、痛いかな?でも、僕の勘でいって

いいなら、サイオンを利用した攻撃しか手持ちはなさそうだね」

 勘といいつつジョージは、自信があるように見えた。

 俺は黙って続きを促す。

「他に手持ちがあるなら、もっとスマートな魔法をセレクトしたんじゃないかな?そこから導き

出される結論は、二人共、強力な魔法が使えないんじゃないかな?奈津さんとタイプは同じと

思っていいと思う。普段は、高度にチューンしたCADを使用してるもんだから、慣れてもいない

んだろうと思う」

 成程な。

 アレだけのアレンジスキルがあれば、そうだろうな。

 それに深景さんなら、敵に自分達の仲間を一人減らしたことを喧伝するような魔法は、使わない

だろう。

 あの抜刀術を思い出し、俺はそんなことを考えた。

 司波達也の方の分析にも納得できる。

 それにしても、奈津と同じタイプか…。

 ルール有りの競技で幸いだな。

 お互い何の制約なくぶつかれば厄介な相手だが、魔法競技なら恐れる必要はなさそうだな。

「本当の事情は分からなくていいんじゃない?兎に角、魔法は術式解体(グラムデモリッション)以外警戒する必要はない

と思う。彼女の狙撃も僕達や一色さんなら感知できる。寧ろ、彼の駆け引きに嵌ってしまうことを

警戒すべきだね」

「真っ向勝負に、どう持ち込むか、だな?」

「そうだね。彼女のスピードは恐るべきものだけど、ウチにも一色さんがいる。彼女は一色さんに

倒して貰おう。あとは将輝のいう通り、どう真っ向勝負に持ち込むか、だね。それができれば勝て

るよ。草原ステージに当たれば、九分九厘…ってとこだね」

 九分九厘といいつつ、ジョージの顔に笑みはなかった。

 

 やはり、あの姉弟を敵に回すとなれば、更なる隠し球も警戒しているんだろう。

 それにしても…一色に深景さんが倒せるのか?

 そんな疑問が浮かんだが、ジョージには口にしなかった。

 きっと、ジョージは自分でも不安に感じているだろうからな。

 

 

 

  

 

 

 




 今回は、色々な人の視点でお送りしました。
 三校は楽観視はしていませんが、どうするよ?って感じに
 なっています。一応、一色さんに参謀君が渡す予定になって
 いますけどね。
 モノリスコードのメンバー入れ替えに関しては、いくら非常
 時とはいえ、文句は出なかったの?って疑問からこうなり
 ました。
 
 次回も気長にお待ち頂ければと思います。
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