それでは、お願い致します。
1
次の試合を待つ間、私は自身が持ち出した刀のチェックをする。
幹比古君は、周囲を窺う小動物のような動きで落ち着きがない。
レオ君は、達也に微調整して貰った小通連の具合を見ている。
だが、背後に挙動不審な人が居て落ち着かないのか、レオ君が背後を振り返る。
「おい、幹比古。試合はまだ始まってないんだぜ?今からそんなんじゃ、もたねぇぞ?」
あまりの落ち着きのなさに、レオ君が呆れた声で幹比古君に物申す。
「レオはよく平気だね?普段全く関りがない人達に囲まれているのに!」
ここは一校選手の控室で、当然他の一科生も居たりする。
ジットリとした視線を向けて。
控え目にいって居心地は悪い。
「吉田君は人見知りなのですね?」
深雪が場違いな程、艶やかな笑みで明るくいった。
もみもみ。
刀を持つ手が振動でカタカタと震える。
遣り辛い。
イライラ。
「幹比古の態度の方が普通だろう。このくらいの年齢の男子はシャイなんだ、深雪」
達也が、自分のCADと私のCADを高速で弄っている。
因みに起動式を絶賛入れ替え中です。
カタカタ。
達也のガタイが邪魔で、片腕が動かし辛い。
イライラ。
「まあ!シャイなお兄様なんて是非私にも見せて頂きたいです!」
深雪が目を輝かせて、達也を見ているが、両者の手は止まらない。
そろそろ気付いてくれていいのだよ。
もみもみ。
「なんか色々と不健全ね!」
にゃも?
これは閣下の声。
やたらと声が明るいが、後ろからはドス黒いオーラが漂っている。
しかも、その声は耳元でする。
これは不健全に入らないにゃも?
イライラ。
ぎゅぅぅぅぅ。
どうでもいいけど、閣下。
気道が塞がれてるにゃもよ…。
私の首には閣下の腕が巻き付いているからにゃもね。
そこに市原さんとCADオタが入ってきたにゃも。
市原さんは器用に片方の眉を少し上げる。
CADオタは真っ赤になってアワアワしていたにゃも。
「会長。次の試合のステージが決定しました。市街地ステージです」
「ええ!?市街地でまだやるの!?」
閣下が思わず、私の首から腕を放したにゃも。
ふぅ。
「ステージ選定はランダムです。選定から外す気はないようですよ」
外さないにゃも?
閣下は不満げにゃもね。
「ところで…どういう状況なんですか?これ…」
CADオタが、恐る恐る気にしていたであろうことを訊いてくれる。
よく聞いてくれたにゃも。
深雪は私の脚をマッサージと称してもみもみしてるし、達也は私に寄り添って
キーボード叩いてるし、閣下はそれを見てチョークスリーパーにゃも!
レオ君は、見ないフリしてるにゃもよ。
幹比古君の方は、にゃも達のやってることが恥ずかしいみたいにゃも。
因みに何故、変な語尾になったのか…。
結果ハーレム状態でお世話?されていて、なんだか某・仮面の男にやられちゃう
雑魚王様みたいだなって思ったからだよ。
突然の思い付きです。意味は特にない。シュタインズ・ゲートの意味と同じで。
二人ばかり女で、一人は男だけど弟で、本当の意味でもハーレムと違うけどね!
女の子らしく逆ハーでもないっていうね。
いやー、モテすぎてツレーです!
って…。
「邪魔じゃぁぁぁぁぁーーーーーー!!!」
私は刀のチェックしとんのじゃーーーー!!
私の絶叫が外まで響いたとか、響かなかったとか。
2
私の怒りが炸裂したり、大会委員会が見事な手抜き仕事してたりで予選最終戦。
懲りずに、またボロビルスタート。
お前等、マジでヤル気あんの?っていいたい。
若者の安全を守る事について、腐れ爺と徹底的に話し合いたい。主に物理的に。
そして、試合開始。
妨害はまだない。
私と達也が慎重にビルからビルへと飛び移る。
相手方は、慎重に地面を走っているので、会敵が遅い。
それにしても移動しているのは…一人?
私は達也と頷き合ってから、二手に別れる。
別アプローチで私は好きにサポートする予定だ。
今回、幹比古君はレオ君のサポートに残している。
幹比古君は重要な役割がもう一つあるけどね。
『幹比古、姉さん。始めよう』
達也が念話を早速使いこなしている。
『OK。達也』
普通に幹比古君も使いこなしていた。
流石、元神童。君も天才側の人間なんだね。
まっ、私みたいなズルに言われたくないか。
私もいつでもどうぞと答える。
幹比古君は、原作通り精霊を使ってレオ君のサポートと、モノリスの位置特定を
担当していたのだ。
視覚同調は達也とだけだ。当然だけどさ。
そうこうしていると、自陣のモノリスに動きがあった。
レオ君だけは、念話が使えないから、幹比古君の精霊経由で状況を把握するしか
ない。どうもレオ君から敵の侵入警報がきたらしい。
どうも幹比古君のフォローもあり、無事敵を小通連で殴り倒したらしい。
無論、ルールに抵触しないようにしてたからね?
私も敵を一人発見。
なんかつり目の男の子。しかも長髪。ビルの中をCADを構えて歩いている。
うん?モノリス、この中かな?もしかして…。
まあいいや。さて、行きますか。
私は自分のいるビルの屋上から自由落下する。
拳銃型のCADを構えたまま、落下する。
一瞬の交錯。
レームさんがいってた。銃口と人が重なった瞬間に引き金を引けば当たるって。
重なる。
つり目君と目が合った。瞬間魔法を発動する。
何かがぶつかる音と呻き声が聞こえた。
うん。当たったね。
いやぁ。レームさんは流石だね。こっちじゃ、あの人、元スターズなんだけど話の
分かるおっちゃんだから、射撃とか気前よく教えてくれたんだよね。
例え、そこにココが悪人顔で笑っていようが。
っていっても、これどっちかっていうと後ろに立つと怒る人みたいな絶技ですね。
そのまま、地面に激突なんていうギャグはやらず、着地して即座につり目君がいた
ビルに飛び込む。
『二人共、見付けたよ』
幹比古君から念話がくる。
丁度いい。答え合わせといこうじゃない。
3
:達也視点
『二人共、見付けたよ』
早いなもう見付けたか。
精霊魔法は優秀な使い手であれば、これ程便利なんだな。
姉さんも古式が専門だが、流石に精霊魔法は使えないだろう。おそらくは…。
その姉さんはといえば、もう一人倒したようだ。
幹比古が探し当てたモノリスの位置は、今いる場所から近い。
ビルを一つ越えれば、すぐそこだ。
屋上から跳び、魔法も使わずに壊れた窓から滑り込むようにして、侵入する。
人の接近を感じて再び跳び上がると、曲がり角から女生徒がCADを構えてこちら
に近付いてくる。
女生徒は、極度に緊張しているようだ。
視野狭窄を起こしている。
確かにこのビルの天井は、他と比べて高いが、少し酷いな。
何故、見上げているのかといえば、俺は天井にぶら下がっているからだ。
足を天井に着けて。
このままやり過ごしてもいいが、折角隙があるのだ。
それを見逃すのも傲慢だろう。
そう考えると、音もなく彼女の背後に下りると、遠慮なく魔法を放った。
女生徒が崩れ落ちるように倒れた。
極度の緊張しているところに、脳震盪の錯覚を起こさせる魔法を食らったことで、
少し過剰な効果になってしまったようだが、緊張と上手く付き合えなかったのが悪い
ということにしておこう。
倒れた女生徒を残して、モノリスの真上に到着すると、CADを地面に向けて鍵を
発動させ、モノリスを開くと、突然背後の扉が蹴破られ、残りの一人が魔法を放つ。
鎌鼬か。
モノリス付近に三人もいたのか…。
迎え撃つ作戦だったのか?
俺は呑気にそんなことを考えながら回避しつつ、柱の陰に身を隠す。
残り一人は、ヒステリックに魔法を放ち続けている。
出てくるのを待つ気なのか、それとも柱ごとヤル気なのか。
いつでも飛び出せるように備えていたが、突如残り一人がヘッドスライディング
して倒れた。
慎重に柱から様子を窺うと、残り一人の背後に姉さんが立っていた。
幹比古がモノリスのコードを打ち込み中だったんだが、無駄になってしまったな。
俺達の勝利を告げるサイレンを聞きながら、俺はそんな感想しか出てこなかった。
4
:真由美視点
こちらの勝利を告げるサイレンが鳴り響き、一安心。
なんだか二校、空回りしてたのかしら?
釣り出された八校の失敗を参考に、自陣で迎え撃つ構えだったんでしょうけど、
明らかに失敗だったわよね。相手の駆け引きに乗らずに、戦おうとしたのはいい。
おそらく一人だけ外に出ていた選手は、オフェンスを引き込む役目だったんだろう。
でも、誰にも出会わずに相手のモノリスまで行ってしまい。あとはアドリブと
いったところかしら?アッサリと全員撃破されたんじゃね。ちょっとお粗末ね。
「これで決勝トーナメントの切符は、手に入ったわね」
どうも他の二人のメンバーの動きが不安だけど、あの姉弟がフォローも問題なく
やってくれている。これ以上は贅沢な望みでしょう。
「ああ、そうだが…。あの二人、特に深景君の方は手抜きが過ぎるんじゃないか?」
隣に座る摩利は、私とは違う感想みたいね。
「そうなの?」
私は摩利とは違って戦闘に特化した魔法師って訳じゃないから、よく分からない
部分があったのかもしれない。そう思いながら摩利に話の続きを促す。
「アイツならあの程度の攻撃しかできない相手、制圧にそれ程時間は掛からない筈だ。
それなのに曲芸染みたことやってみたり、遊びが過ぎるぞ」
ああ。あの落下時の一瞬の交錯での狙撃のことね。
「遊んでるんじゃなくて、できるだけ撃ち合いにならないようにしてるんだと思う
けどね」
私は自分でも驚くぐらい素気ない声でいっていた。
摩利は、怪訝そうに私を見る。
「摩利。深景さんが二科生だって忘れてない?あの攻撃もかなり古式の裏技駆使して、
結構強引に使っているらしいわよ」
そう。達也君と違い、彼女の攻撃は確かに相手の意識を刈り取っている。
だが、逆に言えば、それだけしか攻撃手段が彼女にはない上に、スペックの低い
CADでは、彼女曰く無理して撃って三発が限度らしい。
サイオン自体を事象改変の対象にするなんていう技術、普通は達人の技術だというし、
二科生の彼女に出来る精一杯ということでしょうね。
あの刀に関しては、秘密だっていっていたけど、彼女のサイオン弾以上の切札として
用意したといっていた。切札という以上、かなり消耗する筈だ。それを考えれば実質、
フルに三発撃つことはできない。
彼女は万が一に備えてできる限り、力を温存しつつ戦う必要に迫られている。
「そして、それを強いているのは私達。文句なんていえないわよ」
私がそう説明を締め括ると、摩利は苦々しい顔をした。
「確かに、そうだな」
私の言葉を認めて、自分の非も同時に認める。
だが、直後に疑わしそうな視線を向けられる。
何かしら?
「随分とご立腹の様子だが、一応、友として確認するが、本気で変な趣味に走った訳
じゃないよな?」
私の心臓が跳ね上がるのを感じた。
自分で自分の反応に驚く。
だが、私も十師族の長女。演技はお手の物だ。
心外そうな顔を作って見せる。
「私は七草の長女よ?父がそんな趣味、許容する訳がないし、私も義務は弁えてるわよ。
ただ、素敵な男性に出会えていないだけで、キチンとノーマルよ」
私の渾身の演技に摩利は納得したようだ。
まあ、これくらいはね…。
そう。ただ揶揄っているだけよ…。
本気で同性に恋なんてする訳がない。
私は、心臓が不意に高鳴ったのは、図星だったからか、それとも予想も付かないことを
いわれてビックリしたのか、考えるのを止めた。
5
:戸愚呂視点
敵情視察で試合を観戦させて貰った。
手の内は二人共見せていないようだ。
ガッカリはしていない。この程度でそれを見せる方が問題だからねぇ。
決勝トーナメントに順調に残ってくれてよかった。
この分なら決勝まで期待通りに行ってくれるだろう。
笑みを噛み殺して会場を後にしたが、通路で足を止めた。
「これはこれは、随分と懐かしい御仁と再会ですなぁ」
視線をある一点に向ける。
そこには
だが、私には分かっている。
「相変わらず見事ですがね。今の私は誤魔化せませんよ?ハッタリじゃないと証明しない
といけませんかねぇ」
出てくる気配がないので拳を握り締めると、空間が揺らぐように一人の男が姿を現した。
「久しぶり…というべきなのか迷うがな」
軍服を着た男が苦い表情でいった。
「そうですね。私は人間じゃなくなりましたしね。初めましてとでもいえばいいですか
ね?風間…今は少佐ですか」
「佐渡で何があった?
風間少佐が人間だった時の苗字で呼んだのは、明らかだった。
「止してくださいよ。元・中尉で、元・人間ですよ。昔のことです」
「元部下に何があったか、訊きたいだけだ。私にいえないなら、せめて藤林には話して
やれ」
自然と顔が苦いものになる。
人間だった頃のことだ。既に私には関係なくなっている。
人だった頃に婚約までした相手でもだ。
「さっきもいいましたがね。もう人間じゃないんで、そういうのは分からないんですよ。
人間同士でやって貰えますか?」
「どうしても話せないか?」
「どうしても…ですねぇ。面倒なんですよ。元来饒舌な方じゃないんでね。これ以上は
実力行使になりますが、死にますよ?」
一触即発。
お互いの闘気が高まっていくのが分かる。
ここで殺すのも一興かねぇ。
思わず笑みがこぼれる。
だが、あちらの闘気がみるみるうちに消えていった。
面白くないねぇ。
「ご納得頂けたようなので、失礼」
私は風間少佐の横を、ゆっくりと通過した。
背後で気配が消える。尤も私には分かるけどねぇ。
まあ、焦らずともいずれ戦う時は来ますよ。近い将来ね。
もうすぐ出口というところで、壁に背を預けている男がいた。
これもまた懐かしい顔だ。
お互い声も掛けず、何も仕掛けることなくすれ違う。
襲ってくれるなよ。柳。
昔、友だった男に背を向けて、私は会場を後にした。
6
さて、やってきました決勝トーナメント。
そろそろ出番がありますかね、私の刀。
組み合わせも決まりました。原作通りです。以上。
という訳で、第一試合を見物に行きます。
三校に女子が混じるイレギュラーがある。人員はあの命知らずその一。
お手並み拝見と。
その前に、早めの昼食を取りましょうかって訳で司波家一同移動中。
深雪に視線が集中してるけど、ノーリアクション。
私達姉弟には慣れたもんです。刺身のツマになるのなんてさ。
しかし、行く手には修羅場が…展開されていなかった。
揉めそうなメンツが並んでいたにも関わらず。
メンツをご紹介致します。
攻撃は千葉エリカ。防御するは千葉修次。援護は渡辺摩利でお送りしております。
どうやら原作通り、イチャイチャしていたお姉様と修次氏をエリカが発見し、突発的に
バトルが発生したようだ。
「次兄上。タイへ剣術指南に行かれたと伺っておりましたが、私の記憶違いですか?
恋人の為に任務を放棄されたということはありませんよね?」
原作では途轍もなく激昂していたのに、こっちのエリカは半眼で呆れ果てた声で、
冷静にグイグイ攻めている。
あれ?お姉様を恋人として認めてる?
「いやいや、キチンと許可を貰って帰ってきたんだよ?それに向こうの人は、筋も
よかったからね!」
何やら、修次氏もいつもと勝手が違うのか、そこにツッコむことができず、防戦一方
である。思いっきり誤魔化し入ってると宣言するかの如き、声の上擦りとセリフ。
「まあ、エリカ、落ち着け。シュウも任務を放棄するような真似はせんさ」
恋人の後ろを護る摩利お姉様。
黄色い声援を送る恋人(女)には、見せられん姿ですな。
見た目と喋り方を除けば、乙女だと知っているけどね。
「先輩には訊いてませんよ。黙っていて下さい」
お姉様を見もせずに、バッサリと斬るエリカ。
「許可を得たといっていましたが、余程に重要な案件だったのでしょうね?何故、重要
案件で戻られた筈の次兄上が、ここにいるのでしょうか?」
追い詰めたネズミを甚振る猫の如き攻めを見せるエリカ。
タジタジになって最早、腰が引けている修次氏。
そろそろ撤退を本部に打診しているところだろうか。
「いや、アレは任務というより親善を目的としたもので…」
「つまり親善交流であるという理由で、正式に拝命した任務を放棄してこちらにいらした
ということですね」
「……」
見事に自爆頂きました。
はい。詰みましたね、これ。
「父上に報告入れときますね」
ガックリと項垂れる修次氏に背を向けて、アッサリと去って行くエリカ。
修羅場ですらないワンサイドゲームで、エリカの勝利といったところですね。
修羅場って、ほら!お互いにドロドロすることでしょ?
何やら鳥みたいにクルクル首を回している修次氏。
いつもと違うので、戸惑っているって感じかな。
あと、お姉様。苦笑いだけしか感想ないの?
7
まあ、取り敢えず勝ち組は放置して、原作とは違う颯爽とした姿で去って行った友達を
追う。
「エリカちゃん!」
おお!いつの間にか美月もいたようだ。
エリカが美月の声に振り返る。
エリカからは、なんの負の感情も感じられない。凄くアッサリとしてる。何故?
「ああ。いたんだ。何?もしかして暴れるとでも思った?」
図星だったのか美月がアワアワしている。
美月にしてもエリカがお姉様と何かあるのは、感じてただろうし。
あのイケメンの正体がエリカの兄とくれば、予想は難しくない。
達也と深雪が互いに視線で会話している。なんて器用な。
要約すると。
『まさか委員長の恋人が、千葉修次氏だったとはな。委員長に当たりが強かったのは、
どう考えても…』
『ですよね?』
そんな感じ。分かる私も大概だ。
深雪は修次氏の詳細は知らないだろうけど、美月と同じ理由で察しているだろう。
「いくらあの女が気に入らないからって、場所も考えず暴れたりしないわよ。一応、家の
用事で来てるんだしさ。そんなことしようものなら、クソ親父が五月蠅いもの。クソ親父
には、報告してやらないけどね」
エリカは、そんなことをいいながら、ないないといわんばかりにパタパタ手を振った。
「でも、盗み聞きはよくないわね。罰として一回奢りね」
エリカは人の悪い笑みでいった。
達也と深雪が苦笑いする。
「分かった分かった。ただ常識の範囲で頼むぞ?」
達也が合わせるように意地悪く笑った。
「え~。どうしよっかな~」
そういってエリカは先頭を歩き出した。
美月は、慌ててエリカの後を追った。
何、この違い。
まあ、いい方に変化したなら歓迎するけどさ。
達也が高校生離れした余裕でみんなに昼食を奢った。
全員に奢ってくれたんだよね。流石、シルバー!お金持ってるねぇ!私?こういう時、
奢って貰うのが、私という人間だ!!姉としてどうなんだって?いいじゃん!達也の方が
高給取りなんだから!
奢りの美味しい昼食を食べながら話す。
「それで?まだ何か訊きたいことがありそうじゃない?」
エリカが、訊きたそうにしているみんなの空気を読んで、口を開く。
「委員長に対して当たりがキツイと思っていたが、委員長は修次氏と交際していたのか」
達也が真っ先に感想を述べる。
「達也君も修次兄貴知ってたんだ?って知っててもおかしくないか。深景は仕事で知って
るよね?」
私は頷いた。
そう、あの圧斬り用の剣だ。剣というより飛び出しナイフって感じで、剣とは私として
はいいたくない。次があるとすれば真面な刀を注文してほしいと、お兄さんにいっといて。
「世界的な剣術家でいらっしゃるのでしょう?凄いわ」
深雪が笑顔で褒める。だが、笑顔に黒いものが混じっているような?
「女に現を抜かして、仕事サボるヤツだよ?昔はさ、剣一筋でさ。格好良かったんだけど
さ。前までは一番尊敬できる剣士だったよ」
エリカが溜息を吐くように、言葉を吐き出す。
前までは?今は変わったの?まっ、いっか。充実した修行ができてるなら。
私がそんな事を考えていると、深雪がニッコリと笑う。
「あら!そんなこといってはいけないわ。それに
深雪が、的確にエリカの触れられたくないところを撃ち抜く。
我が妹ながら、恐ろしい子!
「あぁぁぁああ~!忘れて!あんなの本来の私じゃないんだから!!」
自分でも似合っていないと思っているようで、エリカがのたうち回っている。
「いいのよ。大好きな次兄上の前ですもの。あれくらいどうってことないわ」
「違う!!」
なんか他人を甚振る姿が、御当主の美魔女に似てる。口が裂けてもいえやしないけど。
あの美魔女、ウチのヒステリーとは比べものにならないくらい見た目若いからね。
ネチネチ攻めている姿が、恐ろしいこと恐ろしいこと。
深雪は将来ああなるのかね。そこも矯正しなきゃダメですか。
「エリカはブラザーコンプレックスだったのね」
笑顔で深雪が他人のことは、断じていえない発言をする。
それ、アンタがいっちゃいかんでしょ。
「アンタがいうなぁぁぁーーー!!」
エリカの絶叫が木霊する。
そろそろ迷惑だから、止めとこうか?
おや?何やらおかしな気配が…。
この後、二人の人間にスタンドが発現したとかしないとか。
私は何も見ていない。
8
「おい。二人共、大丈夫か?」
「なんだか、凄く疲れてそうだけど?」
レオ君と幹比古君が、私と達也を見て心配してくれる。
ありがとう。一服の清涼剤です。
あの後、深雪とエリカの背後から世紀末救世主伝説っぽい何かが立ち上がり、とんでも
ない応酬を繰り広げた…とかしないとか。何故、スタンドが世紀末救世主伝説だったのか、
主人公とお兄さん…、いや、私は何も見ていない。
「試合で気合が入れば大丈夫だ」
如何に達也といえども、あの想像を絶する出来事は堪えたようだ。
いつもより言葉が少ない。
「同」
私は更に少ない。説明する気力はない。
幹比古君が、牧歌的に一科生関連の出来事と勘違いして謝ってくれたが、現実はもっと
過酷だ。あれに比べれば一科生のやっかみなんてお子様の駄々と変わらない。
だけど、調子悪いといって見逃す訳にはいかない三校の試合。
レオ君達に無理しないようにいって貰い。
申し訳ないが、適当に大丈夫大丈夫といって対応終了させる。
そして、三校の試合が始まった。
9
結論をいうと。
全く参考にならなかった。
忘れてたよ。今回は達也を挑発する為に王子様マーチだったんだ。
一人でモノリスまで物騒なお散歩を見ただけだった。
命知らずその一の手の内も見れなかったよ。
クラウドボールに出てた感じだと、雷系かね。
兎に角、ぬりかべスタイルでちょっかい出す蟻を爆破して回ってたよ。嘘だけど。
吹っ飛ばしてたけどね。
「おいおい。なんだ、あの防御力」
「プリンス以外、手の内を見られなかったのも痛いね」
レオ君と幹比古君がそれぞれ感想を漏らす。
私は白目。達也はあまり困ってなさそうな、困ったな発言。
で、残念参謀がカーディナルジョージと分かって、幹比古君が腰が引けたりしてけど、
これで観戦終了。
勿論、達也先生の魔法講座もあったけど、それは長いので割愛する。
無情にも弟の活躍をカットする私。
で、残念王子様、何故かモニターに手を振ってたけど、ファンサービス?
女の子が黄色い声援上げてたけどさ。
戸愚呂の件は、来訪者編まで説明はなされない予定です。
大まかには決まっています。
最早、別人じゃねぇか!とかなんだそりゃ!とかツッコミ
どころがあったとしても、お目こぼし下さい。
深景の霊丸については閣下に説明した時に、捻り出した
言い訳です。本来、バンバン打てますCADなしで。
変に頼られても面倒なので、急遽でっち上げた内容です。
これもお目こぼし下さい。
にゃもは単なる趣味で意味はありません。
いきなり仮面の男が出てきたりは…しません。
それとスタンドは比喩です。混じったりしません。
二校の作戦についてはオフェンスのうっかりミスです。
それがなくてもダメダメでしたが…。
次回も、気長にお待ち頂ければ幸いです。