時間が掛かりましたが、まだ折れていませんよ。
では、お願いします。
1
その騒動が起きたのは、良いことと悪いことが起きてプラスマイナスゼロの
夏休みが終わった後のだった。
私は雑用という名のパシリをやる為に生徒会室に向かっていた。
そして、扉を開けるとすぐに碇ゲンドウポーズを取った閣下が見えた。
思わず回れ右したくなった。
「深景さん。緊急事態よ」
パシリの私にはどうしようもないと思うけど。
「使徒でも来襲したんですか?」
だとすれば、私は変態中学生(病室での一件での評価)ではないので出撃は
できない。
「伝説に語られる存在が現れたという程ではありませんが、正真正銘の緊急事
態です」
市原さんは、私のネタが分からなかったのかサラッと流し補足するように
いった。
「実はね…。あーちゃんが………生徒会長選に出ないっていっているの」
なんだ。そんなことか。
そういえば、原作でもゴネてたな。
でも、今回オタを釣り上げる餌は色々ある買収は楽な仕事だろう。
「それなら説得すればいいのでは?」
「ことはそう単純な話ではなくなってしまったのよ…」
相変わらず碇ゲンドウポーズを崩さずに閣下が宣う。
そして、厳かにデスクの上に書類を三枚並べた。
「見ていいんですか?」
私の問いに閣下は無言で頷いた。ああ、そう。
正直、見たいとは思わないが状況把握は必要だろう。
私は緩慢な動作で三枚を回収して素早く視線を走らせた。
なんだこりゃ。
それが書類を見た私の正直な感想だった。
書類には、こう書かれていた。
生徒会選挙の選挙の在り方について
内容は選挙とは名ばかりの現状は出来レースであり、公平な選挙とは程遠い。
今回、立候補者がいない以上、自由な選挙を取り戻すいい機会ではないか。
そんな内容が、ツラツラと紙一枚丸々書いてあった。
要約すれば二行も要らない。
三枚別人が示し合せたかのように、ほぼ同じ内容だった。
確か、原作でこんな展開はなかった筈だ。とすれば…呪いか。
「カンゾー…もとい服部さんはどうなんです?」
一応、念のためカンゾー君の選択を訊いてみる。
「ハンゾー君はね。部活連の次期会頭に推されてるのよ。本人もそれを了承し
てる」
閣下が眉間に皺を寄せて苦悩に満ちた声でいった。ですよね。
部活連の会頭候補を生徒会で無理に強奪は、今までいい関係にあった部活連
との間に罅を入れかねない。閣下でもそりゃできないよね。
「ああ、深景さんには分からないわよね。この状況」
いや、既に思い出してますけどもね。
難しい表情で書類を読んだ私を見て、何が悪いのかが分からないのだろうと
思ったようだ。
でも、原作ではこの段階よりもっと前に話題になっていたから、選挙なんて
すっかり忘れていたよ。そういえば、あったよね。
「当校の生徒会長は大きな権限を有しています。卒業後も評価されます。四年
前に、この書類のような提案が生徒会内であり、実行したことがありますが、
重傷者が二桁を叩き出した段階で当時の生徒会は強引に収束を図り鎮圧しまし
た」
え?鎮圧したの?更に怪我人増えたんじゃないの?それ。
「それ以来ね、選挙はタブーなのよ。順当にいけばあーちゃんが首席で生徒会
役員だから彼女を指名して終わりなんだけど…」
ゲンドウポーズのまま溜息を吐く閣下。
「しかも、この三人が問題です」
市原さんが深刻な声でいった。ああ、そうだね。
慶滋康臣 一科生 二年。
川路秋生 一科生 二年。
那由多花咲里 一科生 二年。
各々実力はあれど、九校戦や論文コンペに色々と問題が有り過ぎて出れない
猛者で、風紀委員がマークしているヤバい人達である。
生徒会長目指せるだけの情報収集能力と厄介な能力を備えている訳だ。
生徒会役員から漏れたとは考え辛いから、何かしらの手段を持っているんだ
ろう。
よくもまあ、こんな人等野放しにしてるよね。
マークするだけでいいのかね。
「恐らく間もなく生徒会の次期会長の指名が困難である状況を暴露し、公平な
選挙に強引に持ち込む算段ではないかと。厄介なことに川路君は七草会長のや
り方には批判的ですし、慶滋君も自身の研究を邪魔された逆恨みをしています。
天然の那由多さんはどう動くか予想が立てられません」
わー、素晴らしい。
「まずは、簡単に動けないように十文字君に圧力を掛けて貰ってるけど…」
閣下の言葉が終わるより前に通信端末が鳴る。
嫌な予感がしますよ、これは。
閣下も同じ予感を抱いているのか、顔を顰めて通信端末に手を伸ばした。
「はい。七草です。……分かりました…」
閣下は天を仰いて通信を切った。
「どうしました?」
市原さんが閣下に鋭く問う。
「一歩遅かったみたい。今、千代田さんと川路君が衝突寸前みたい…」
こうして、平和は長続きしない。
2
何故か私までドナドナと連行されて現場に向かう。
パシリの仕事の範疇外だよ、全く。
到着すると既に場はアツアツだった。
「俺は別に生徒会長選の活動をしている訳じゃない。公平に選挙をやろうと呼
び掛けているだけだ。何が問題だ?」
「だから!届け出もなしに演説されても困るっていってるのよ!生徒会の承認
がいるのよ!手続きくらい踏んでよっていってるの!」
キャノン先輩と目付きの悪いスポーツ小僧みたいな奴が揉めていた。
「あの男子生徒が川路君ですよ」
市原さんがコソッと私に教えてくれた。
達也が何人か要注意人物がいるってことで教えて貰ってたけど、顔を見るの
は初めてだよ。甲子園でも目指してるといい。
「川路君。届け出を出してくれれば許可は出しますよ。私は独裁者ではありま
せんから」
私と市原さんが話している間に、閣下が火中の栗を拾いにいっていた。
それにしてもぬりかべに圧力云々のお言葉の後だと怪しい発言ですわ。
「会長!」
気まずそうにキャノン先輩が声を上げる。
本当なら閣下の手を煩わせる積りじゃなかったんだろうな。
川路さんが不敵な笑みを浮かべて、キャノン先輩を押し退けるように閣下の
前に立つ。
「そうでしたか。では、私の意見も汲んで貰えるのですかね?」
「検討しますよ」
「ハッ!どこぞの政治家のようですね!」
よくも七草家の令嬢にあんな態度取れるな。馬鹿なのか大物なのか。
その大馬鹿(合体させた)が私をチラッと見ると鼻で嗤った。
ああ、そういう人でもあるのね。
「今に至るも次の会長が指名されない理由は、中条が拒否したからだそうです
ね?」
「あら、よくご存じね。どこから聞いたのかしら」
「風の噂というヤツですよ」
大した風もあったもんだよね。なんか二人で腹黒く笑っているし。
だが、それをブチ壊す空気の読めない大声が聞こえて二人の黒い笑みが消え
た。
「皆さん!本来の高校生活とはもっと自由に活動が許されていい筈ではありま
せんか!それにも関わらず!現生徒会は我々の活動を妨害する始末です!こん
な生徒会で本当にいいんですか!?」
何やらオタク臭がする男子が、これまたオタク臭の強い面々を引き連れて演
説をブチかましていた。
因みにあのオタクが慶滋康臣先輩らしい。嘘かホントか慶滋保胤の子孫なん
だとか。
「ちっ!あのオタク野郎!」
大馬鹿が舌打ちして悪態を吐く。
そりゃ、見事に囮に使われればそうなるよね。
「生徒会は次の会長を擁立できずにいます!今こそ!本来の生徒会選挙を取り
戻そうじゃありませんか!」
本来ならば失笑ものの言い分だ。
だって活動妨害って、達也の話だと怪しい呪術を実用レベルに引き上げる研
究をしていたらしいし。
なのに、誰もそれに突っ込むことなく聞いている。
それどころか、駆け付けてきた別の風紀委員も止める気配がない。
不審に思って観てみると、足元に陣が形成されていた。
おいおい。
よく観てみると恐らくアレは見る人間が信じている生徒が見えるようになっ
てるよ。
効果範囲はそれ程じゃないみたいだけど、これアウトじゃないの?
「あら?これ、いけないんじゃないかしら?」
気が抜けるような声と同時に陣が消える。
陣が機能を失い効果が切れると、風紀委員達が取り押さえるべく動き出した。
同じ一科生にいいようにしてやられて頭にきたのか結構乱暴だ。
「那由多家の十八番の反唱だね」
後からゆっくりと重役出勤をかました我が家族のお出ましだった。
いうまでもなく、解説したのは達也だ。
「全く、魔法式が見える訳でもないのに、よくサッと妨害の魔法式を組めるも
んだね」
これが私。
そう、反唱はどのような魔法が使われたかをサイオンから演算して、発動よ
り早くジャミングできる魔法式を組んで放つ魔法だ。ある意味、観える私達よ
り凄い。
その代わり負担が大きいし、演算容量の確保に四苦八苦しているらしいけど。
もしかして、その所為で天然なのかも…なんて。
「完全に逆のベクトルで相殺する訳じゃないから不可能じゃないけど、凄いの
はその通りだね」
深雪は私達の話をニコニコと聞いているだけだ。
修羅場が展開された現場で似つかわしくない態度のような…。
「こんの!野郎共!!俺を揃って囮に使いやがって!!」
大馬鹿が、いつの間にか取り出した銃剣型のCADを持って銃剣突撃を敢行
していた。
「あっ!待ちなさい!」
閣下が辛うじて制止の声を上げるも当然無視して走り出す。自己加速か。
九校戦に選ばれても本来おかしくない実力が、今無駄に発揮された。
素行面で選ばれないだけらしいから、速い速い。
突然に起きた事態に閣下もキャノン先輩も対応が遅れ、銃剣突撃を許してし
まった。
「部長に続け!!」
「「「おう!!」」」
取巻きも続けて突撃。
咄嗟に閣下達が、魔法を使い乱戦を回避したお陰で実現したバカげた事態と
いえる。
「お姉さまに何するの!?野蛮な男共を排除するわよ!!」
「「「はい!!」」」
これもいつの間にか現れた女生徒集団が、当の本人である那由多さんを追い
越し突撃。
那由多さんは、リアルお姉さまなんだそうで
あるんだそうだ。噂によるとガチらしい。
「あらあら、元気一杯ね」
当の那由多さんは、頬い手を当てて苦笑い。いや、止めろよ。
私?友達や知り合いが巻き込まれてないんだからいいんじゃない?
この人の問題は、大体熱狂的妹達の暴走で周囲に被害を撒き散らすからだそ
うです。
そして、慶滋さんを挟んで両陣が激突する。
「バ、バカ!よせ!!」
慶滋陣営もこれでは応戦を避けられず、三つ巴で乱戦が起こった。
これは、実力で鎮圧した以前の生徒会正しいわ。
「止めなさい!!」
閣下の声すら既に届かない様子に、私は閣下の肩にポンと叩いた。
「何!?」
「暫くすれば落ち着きますよ。そっとしておきましょう」
「できる訳ないでしょ!?リンちゃん!!あーちゃんを連れてきて!!梓弓の
使用を許可します!!」
そして、引き摺られるようにして現場に現れたオタは、梓弓で戦乱を収めた
のだった。
いや、三勢力が疲弊した瞬間に風紀委員で潰せばいいんじゃないの?
被害の弁償は当然奴等持ちですがね。
3
どうにか諸々の問題を片付けて私達は帰宅することになった。
連中の怪我は大したことなく済んだ。チッ!
そんな中、私達を待っていてくれたいつもの面子は有難い。
という訳で喫茶店アイネブリーゼで感謝の気持ちを現金で表す私達。
あんまりよくない付き合い方のような気もしないでもないけど、いい子達だ
から変な勘違いはしないでしょ。
「へぇ。道理で校内が騒がしかった訳よね」
エリカがカフェオレを啜りながらいった。
帰宅が遅れた理由を説明できる範囲でした感想がこれです。
戦乱!状態だったのに。
「それにしても、中条ってあのちっこい先輩だろ?なんか頼りねぇな」
これはレオ君。直球な意見だね。
「でも実力はピカイチ」
雫がボソッといったけど、頼りないのは否定しないんだ。
「本人やりたくないっていってるんでしょ?だったら深雪がやったら?」
最早、オタが立候補していないことは、あの三人のお陰で知れ渡っているよ
うだ。
「無茶なこといわないで。私じゃまだ務まらないわ」
深雪が困ったようにいった。
「でもさ、そうなったら達也君は勿論、深景も補佐するだろうし問題ないん
じゃない?」
エリカもサラッと私を巻き込んでいた。除外しろ、私は。
「七草会長は、役員の条件から一科生のみを除外する積もりのようですしね!」
美月が嬉しそうにエリカの意見に賛成してくる。
「そうだね!いっそ達也君か深景がなったら?」
それはないわ。
これには深雪は大賛成のようで、もう一票入れるとはしゃいでいるし、ほの
かまで対抗するように一票入れると騒いでいた。
ほのかが入れるのは達也の方だけどね。
まあでも、そんなこと関係なくさ。これ、フラグなんじゃないの?
達也と私は確かに頭痛を感じた。
4
あれから一週間程経った頃のことだ。
朝、登校してくると学校内は緊張感に包まれていた。
「これは、あの三人の影響かな?」
「だろうね。本来なら今日が公示日だったのに、その前から騒ぎ出して生徒会
が出馬する人間を用意していないことが公になってしまったからね」
「会長のお話ですと、例年は生徒会の役員がそのまま繰り上がって終わりの選
挙だそうですし。どうなるか分からない選挙になるとなると、上級生の先輩方
も未経験でしょうから…」
どうやら過去の戦国時代ばりの選挙の話を聞いたんだろう。
深雪が微妙な表情で感想をいった。
達也と私は早くも始まっている騒ぎを思い出し、げんなりとした。
司波一家でそんなことを話しながら校門を潜った。
「おはよう。二人共」
幹比古君が朝の挨拶をしてくれる。
私と達也もそれに応える。
「…あのさ。変なこと訊くけど」
「じゃあ、却下で」
「……」
幹比古君の思い切って訊いてみたみたいな空気を一刀両断する私。
冗談だよ!アミーゴ!
「姉さんの冗談だ、幹比古。で?なんだ?」
達也が憐れと思ったのかフォローを入れる。
「ああ…うん。二人が生徒会選挙に立候補するって本当?」
はぁ?何、そのガセネタ。
「どういうことだ?」
絶句する私の代わりに達也が口を開いた。
特に怖いオーラを発した訳でもないのに幹比古君が怯む。
「いや、そういう噂が流れてて…」
もしや、アミーゴ。お前まさか!!
「いや!僕じゃないよ!?実習の時に廿楽先生に訊かれたんだ。司波姉弟も選
挙に出るのかいって」
ああ。あの研究馬鹿教師か。
「何故そんなデマが流れているんだ?」
「やっぱりデマなんだ」
思った通りだみたいな顔で幹比古君が頷く。なら訊くなよ。
「立候補したところで俺や姉さんに票は集まらない。先生方の間で何故そんな
デマが流れたんだ?」
幹比古君の返答は知らない、だ。まあ、そうだよね。
「いや、そんなことねぇんじゃねぇか?先輩とかも噂してっけど好意的だぜ?」
レオ君もこの話題に参戦してきた。
レオ君的には褒めてるんだろうけどね。嬉しくありません。
そこからエリカや美月も噂を聞いたと話題に乗っかってきた。
だが、重要なのは美月の証言です。
「カウンセリングの時に、そんなことを聞いた気がしますよ?」
合法ロリ巨乳ギルティ。
5
その後、達也に合法ロリ巨乳を締め上げて貰って事情が明らかになりました。
どうやら私達姉弟の活躍が、先生の間で話題になっていたというのが理由ら
しい。
質が悪いことに誰も真偽を確認に来ないで噂だけしてるってこと。
こっちから出ないよ!っていうのもなんだしね…。自意識過剰みたいでしょ?
でも、常識で判断しようか?
そんなことを考えていると、閣下が堂々と二科生の教室に踏み込んできた。
辺りが騒めく。
皆、遂に!とか本当だったんだ!?とか言い合っている。
断言しよう!違うと!
「深景さん、達也君!ちょっと時間あるかな?大丈夫!生徒会の用事ってこと
で手続きしておくから!」
拒否権ないんですよね?分かります。
閣下は私達の返答すら聞かずに、私達の机で素早く手続きを済ませた。
連行先はいわずと知れた生徒会室だった。
6
私は遂に来たか、という気分だった。
どういう展開かは大体思い出している。
思い出していなくても用件が察しがつく。
「授業を休ませてしまって申し訳ありません。しかし、猶予があまりないもの
で」
市原さんが厳粛な声でまず口火を切る。
私と達也も気にしてないとアピールする。それしかないし。
「よかったわ!」
一方閣下はワザとらしいったらない。
「実はね!選挙のことなんだけど…」
「深雪には、まだ早いです」
「ダメです」
私達は同時に否定の言葉を先んじて放った。
二人からの砲火に閣下の顔が引き攣る。
「いえね。ちゃんと補佐は付けるし、一年生で生徒会長っていうのも…」
「深雪にはまだ成長が必要ですよ。まあ、私達が世話を焼き過ぎてるのもあり
ますけど、せめて魔法を暴走させることがなくなるまではダメですね」
生徒会は今の閣下でさえヤジが飛ぶ。深雪ならばネタは私と達也だろう。そ
の時に生徒全員氷の彫刻になるなんて洒落で笑えない。
「中学の頃に生徒会長を経験しなかったんですか?」
市原さんが若干意外そうに訊いてくる。
「俺が止めました。今より深雪は自分をコントロールできていませんでしたか
ら」
達也の言葉に閣下達が黙る。
「それにしても困ったわね。明日には公示だから。立候補者なしは不味いのよ」
まあ、分かるけどもね。
達也も実際にあの乱闘騒ぎを見ているから、微妙な表情になる。
「だからお願い!!深雪さんを出させて!!二人から見てまだダメでも、地位
が人を育てることだってあるじゃない!?」
「いや、普通にオタ…中条先輩を説得すればいいんじゃないですか」
あまりの必死ぶりに思わず呆れた声が出てしまった。
「あーちゃんは、あの騒ぎで益々及び腰になっちゃってね!生徒会室にも近付
かない有様で説得どころじゃないのよ!」
いつも強引な癖になんでそこでヘタレるの。オタに甘過ぎない?
でも、カリオストロ城の最終決戦みたいな乱闘はオタには怖いか。
「なんだったら、私があの三人を暫く休ませるか…」
新聞紙被って明日の予告をやってやるかな。
「それだけは止めて!!こっちの不正が疑われるどころか、確定するから!!」
おっと、声に出ていたようだ。最後に一つ。
「バレないようにやりますけど?」
「ダメに決まってるでしょ!!」
隣の達也から呆れた視線を向けられているが、半ば本気だったりする。
風邪をひかせるくらいの呪いなら、今の状態でも余裕ですけどね。
「兎に角、説得すればいいんですよね?なら、俺に任せて貰えますか?勿論、
穏便にやりますよ」
穏便にの部分で私を見るマイブラザー。お姉さん悲しいよ。
「本当にできるの?」
達也が力強く頷く。
「やっぱりいざという時に頼りになるわね!達也君は!」
おいおい。
まあ、説得材料はあるけど、トラブルにはどう対処するの?
7
生徒会室に来ない小動物系オタを捕獲すべく私と達也は動き出した。
上級生でブルームのいる教室に私達は躊躇なく踏み込んでいく。
閣下のことをとやかくいえない。
達也の貫禄と私の怪しいオーラで誰も声を掛けてこない。
オタを守ろうと動いた上級生に笑顔を向けるだけで、何故か怯んで声が上が
らない。
話が分かる人達で助かるなぁ。
「中条先輩」
ロックオンされているオタは、逃げることもできずに私達を迎えることと
なった。
「少しだけ時間を頂けますか?」
勿論、拒否権は認めていない。にっこり。
逃がさんぞ。
「な、なんですか…」
怯えた声でオタがそれだけは口にした。
「少し相談したいことがあるってだけですよ~」
私のスマイルゼロ円を受けて、顔が引き攣るオタ。
「あ、あの私、今日は…」
「少し相談したいことがあるってだけですよ~」
「あの…」
「少し相談したいことがあるってだけですよ~」
「分かりました…」
私の笑顔の魅力の勝利とでもいおうか、オタは諦めたように承知してくれた。
被疑者が連行されるように連れ出したのだった。後悔はしていない。
8
カフェの片隅で邪魔にならないように陣取り説得開始です。
「単刀直入に用件をいいます。生徒会選挙に立候補して下さい」
達也は文字通りド直球で用件を告げた。
予想はしていただろうにオタがビクッと反応する。
「私には…そんな大役務まりません」
泣きそうな顔でいうオタ。
「それでも貴女しかいないんですよ。服部先輩は部活連の新会頭ですし。それ
に歴代最高の生徒会長になって下さいっていってる訳じゃないんですよ、私達
は」
オタが恐る恐る私の顔を見る。
「上に立つ人には二種類あるって聞いたことがあります。一つは単純に凄い人。
今の七草先輩みたいな人ですね。もう一つは、足りないところを助けて上げた
くなる人です。 私は先輩は後者の人だと思っています。別にいいじゃないで
すか。失敗したって。周りが支えてくれれば乗り切れますよ。自分を信じられ
ないなら、支えてくれる人を信じてみたらどうです?」
これは本当に思うことだ。
セリフ自体は慣れ親しんだ趣味の産物だが、このオタは原作でもキチンと生
徒会長を務めていた。能力的にも悲観するものではない。
オタは何やらポカンとした顔で私を見ていた。
ついでに達也も意外そうに私を見ている。
「何?」
「いや、深景さんがそんなこというのが意外で…」
オタが思わずといった感じでポロっと本音を漏らす。
説得する時くらいふざけずにやるよ、失礼な。多分…きっと。
「それじゃあ、深景さんも支えてくれるんですか?」
私の顔が若干引き攣ったのはご愛敬といったところだ。
「まあ、お茶なら淹れられますよ」
オタがクスッと笑うが、すぐに表情が曇る。
「でも、なりたい人が多いですよね…」
例の乱闘三集団は、実質選挙から弾かれたと見ていい。
あれだけ派手にやったんだから、そりゃそうだよね。
問題は腹いせに何かやる懸念だろう。
それに閣下の二科生の制限解除に反対する勢力。
「それに関しては暫く姉がガードしますよ」
おおい!!初耳なんですけど!?
「それに生徒会長になった時に、俺達から就任祝いを差し上げようかと思って
います」
遂に切り札を切るのか。
「実はFLTには伝手がありまして、モニターとしてCADが安く手に入るん
ですよ。今度、発売される飛行デバイス。一機お譲りし…」
「やります!!なります!!深景さんが護衛してくれるなら安心ですし!!」
堕ちんの早過ぎるでしょ。
やっぱり、オタクの原動力はグッズだと再確認した。
9
三集団自滅により、九月に入っても選挙戦に熱はない。
生徒会が時期生徒会長を擁立した以上、外野に勝ち目はないからね。
殺気を放つ閣下と無言の圧力のぬりかべ。
完全に喧嘩を売る方が馬鹿ですよ。
それでも懲りずにやる奴は原作と違っているだろうと思って警戒していたが、
予想に反して穏やかな日々を送っていた。
オタのガードはただいるだけ状態だけど、それはいい。楽だし。
そして、放課後にはオタと共に生徒会室へ。
「
と思うわよ」
全く残念そうにしていない閣下が、にこやかにそういった。
あれだけおかしな真似するなよ?な?みたいな空気を醸成しておいてよくい
うな。
オタはといえば、念仏を唱える僧侶の如く演説原稿を読経していた。
悟りでも開く気か。
因みにオタには祝いの品は渡し済みだ。
オタクは興味の対象に対しては三倍の誠実さを発揮するのだ。嘘だけど。
「それ以上に盛り上がるのは生徒総会になるのでは?」
「まあ、真由美がかねてからやり遂げたかったことだからな」
達也と今まで黙っていた渡辺お姉さまがいった。
「私の最後の仕事としてやり切る積もりよ」
閣下は微笑みながらも力強い眼で宣言する。
「生徒会選挙の暴走がありましたし、今回も何かあるのではないのですか?」
深雪が懸念を表明するが、お姉さまが笑って否定する。
「いや、ないだろう。いくらあの三人といえど、この女と十文字を正面切って
敵に回す程無謀じゃないだろう」
散々圧力掛けて、大人しくなったからね。
でも、これまで何かしらあったからな…。油断は禁物なんだよね。
「まあ、気を付けるべきだと思いますよ?あの三人をはじめ生徒会長の座を諦
めた人は多いでしょうけど、せめて一矢報いる気でいる人もいるんじゃないで
すか?」
「急にどうしたんだ?」
お姉さまよ。なんですか?その変な物でも食べたのか?みたいな口調。
「水面下で会長の提案を潰すべく、活動してるのは知ってますよね?」
逆にいえば、正面からでなければ喧嘩は売れるからね。
閣下もぬりかべも基本はルールを守る人だからね。
「何か掴んでいるのか?」
お姉さまが真剣な表情で私に訊く。
「いえ。ただ平和に終了することは期待してませんね。今までの流れからいっ
て」
私の言葉に全員が苦虫を嚙み潰したような顔で黙り込んだ。
嫌な予想程、世の中は的中するように出来てるからね。
10
「司波!」
教室に戻ろうとした私達を渡辺お姉さまが呼び止めてきた。
お姉さまは私達姉弟が一緒の時は苗字で呼ぶ。余談ですけどね。
「少し頼みたいことがあるんだが、風紀委員の本部まで来てくれないか?」
おおう!私は既にオタの警護があるんだが?
まあ、こっちは達也と深雪に任せますよ。
付いてきますけどね。
達也の教育を受けた風紀委員本部はキレイになっていた。
まあ、汚い時の本部は見てないけども。
「君達のことだから、用件は察しがついているだろうな」
勿論ですとも!厄介事ですよね?
「相談したいのは真由美のことだ。実力的に襲われたとしても返り討ちにでき
るとは思うが、万が一がある」
「二科生の制限の解除、ですね?」
お姉さまの言葉に達也がすぐさま答える。
「ああ。深景君のいうように何かしらやってくるのではと警戒しているんだ」
「まあ、十分有り得ることでしょうね」
「アイツのことだ。こっちの護衛なんて笑って断るだろう。だから、君等で真
由美を警護してやってくれないか?」
案の定というヤツである。
影分身を使えば可能だけど、そんなこと学校でやろうとはまだ思えない。
ここはやっぱり達也達に活躍して貰うしかないな。
だが、私が口を開いて達也達に押し付ける前に深雪が口を開いた。
「兄ならば問題ありません。お任せ下さい」
流石はマイシスター。私の手が塞がっていると理解しているか。
「そうだな。深景君は中条のガードをしているしな。達也君に任せるのが妥当
だな」
お姉さまが納得して頷く。
だが、私はこう思う。
お姉さまがガードすればいいんじゃない?って。
達也も同じ思いなのか、ニヤニヤとお姉さまを見ていた。
ならば、私はジト目で見てやろう。
「いや!私もやることがあるんだ!」
お姉さまはキッチリ視線の意味を理解しごにょごにょと言い訳していた。
素直にデレよう。
私は武士の情けとしてそれはいわないでやった。
11
私達は次の日から別々に警護をすることになった。
オタの方は平和だけど、閣下を警護している達也や深雪は大変だったらしい。
ファンクラブの嫉妬が。
「撃たれることはないと分かっていても気分のいいものじゃない」
これは達也の感想だ。深雪がキレなくてよかった。
後になってお姉さまに報告したそうだけど、お姉さまも失念していたらしい。
一番近くで見ていた人だろうに。
私?イレギュラーもあるし黙ってたよ?
私はといえば、貴重な一人の時間を過ごすべく例のエアポケットに向かう。
覚えてない?ベンチがあるけど誰も来ないあそこだよ。
だが、そこには意外な先客がいた。
「ああ。深景さん。こんにちわ!」
閣下である。
「どうも。もうすぐ選挙とか総会とかで忙しいんじゃないですか?」
「少しくらい息抜きしないと息が詰まるもの」
私の質問に閣下が苦笑いで答える。
正論ですな。それでは私は遠慮させていただきましょうか。
頭を下げて回れ右しようとしたが、その前に制止の声が掛かる。
「少し話さない?」
ベンチの空いたスペースをポンポン笑顔で叩く。
私に話題は提供できないが、聞き役に徹することくらいはできるだろう。
周囲にファンの気配はない。
こんなところを見られた日には、今度は私がCADを向けられる。
「私ね。七草に生まれなかったら、どういう人間だったんだろうってよく考え
るの。生徒会長になったのだって、七草の家に生まれたからって部分が多分に
あるしね」
いきなりヘビィな話だった。
私は黙って聞いていた。
「恵まれた環境に感謝はあるし、それに見合った成果を上げるのは義務だと
思ってる。でも、偶に息が詰まるとね、一人になりたくなるの。魔法科高校に
入って、ここを見付けてかなり楽だったわ。周りの子を撒いてやれば気軽に一
人になれて、誰もここに来ないから。でも、それももうすぐお仕舞い。これか
らは家の仕事が多く私にも回ってくる。生徒会長を降りられるのは嬉しいけ
ど…。なんか複雑な気分よ」
今までは生徒会を理由にある程度免除されていた仕事が、そのまま閣下に圧
し掛かってくる。それに七草の長女が一人になれる時間はそうはないだろう。
「勘違いしないでね。生徒会の仕事は楽しかったわ。気苦労もあったけど、主
に今年の春からね」
そりゃ、申し訳ない。私達の所為じゃないけどね!
閣下は普通の高校生活を送ってみたかったんだろう。
だから、一般生徒に戻れるのは嬉しい。
でも、家の仕事でそれは叶わない。
今は私にもその気持ちが分かる。
私は特典を貰って転生した時は、非日常とそこで活躍する自分にワクワクし
ていた。
だが、蓋を開けてみれば力だけあっても中身が凡人では、有効活用などでき
ないと嫌という程味わった。選択も誤った。
日常は愛すべきものだったと思い知った。
「嫌ね!暗い顔しないでよ!らしくないんじゃない?」
冗談っぽく私に腕を絡ませて肩に頭が預けられる。
いや、それ彼氏にでも…。いや、
「こういうこともやってみたかったかな?だから、ちょっと付き合ってね?」
そういうの、了承した後でやって貰えません?
確か、閣下にはもう婚約者がいる。
原作ではどうなったか記憶にないけど、婚約者がいる以上彼氏など許されな
い。
結局、かなりの時間そのままでいることになった。
変な噂流されるような場所でないのは幸いだね、これ。
12
そして、やってきました生徒会長選挙&生徒総会の日。
私が明日の予告を敢行しなかったお陰で、あの三人と取巻きがいるのは確認
済み。
「それでは頼んだぞ」
お姉さまの号令で一斉に風紀委員が警備の配置に就く。
それはいいんだよ。風紀委員なんだから。でもね…。
「行こう。姉さん」
達也に促されたが、納得いかないんですけど?
何故私が風紀委員と一緒に会場警備なんですかね?人いるでしょうが!
こんなことになったのは、閣下とオタの要請によるものだった。
「深景さんはガードしてくれるんですよね?」
「あーちゃんのついででいいから、私もよろしくね!」
…要らないと思いますけどね。私は。
今現在は閣下が二科生に対する制限解除について演説していた。
生徒総会は現生徒会長最後のお仕事みたいなものだが、本来は前座の筈のも
の。
だけど、メインよりブルーム(笑)の皆様が熱いこと熱いこと。
主に視線が。
一部自分に正直な方々が閣下の胸に視線を集中させていらっしゃる。
そんなところから声は漏れていないよ。まあ、放って置くけどね。
「以上の理由を以って、役員選任資格の撤廃を提案致します」
閣下が話し終えると、深雪がマイクを握る。
「質問のある方がいらしたら、挙手して下さい。質問者は学年と氏名を述べて
からお願いします」
本来なら女房役の市原さんがやるのだが、今回は深雪がその役割を担った。
もう世代交代は始まっているという訳だ。
その実、論文コンペに向けて忙しいという側面があるけども。
そして、目付きの悪い大馬鹿が手を挙げる。
流石に一団を率いていただけあって、他より圧が違う。
深雪が、指定してもいないのに勝手に立ち上がって名乗り喋り出しおった。
「会長が挙げた理由に疑問がありますね。ここは魔法科高校だ。普通の高校な
らいざ知らず、魔法科高校において魔法の実力が重視されるのは当然というも
のでしょう。会長は差別意識を助長したようなことを仰っていたが、これは差
別ではなく区別です。二科生に風紀委員や生徒会役員が務まるとは思いません
が?」
閣下はルール違反をされたにも拘らず、微笑みを浮かべたままだ。
深雪は早速の展開に眉を顰めている。
「川路先輩…」
深雪が苦言を呈そうと口を開きかけたが、閣下に止められた。
「今回はお答えしましょう。ただし、次はありませんよ、川路君」
「いいでしょう」
どこまでも偉そうな男だな。こいつこそ命知らずと呼ばれる存在だろうね。
「二科生は確かに一科生に比べ、実技では劣ると判断される生徒であるのは事
実です。しかし、それはあくまで授業での話です。現に二科生にも拘わらず、
九校戦で好成績を収めた生徒がいたのは流石にご存じでしょう?一科生で出場
できなかった生徒が全員彼等と同じ成果を出せると断言できますか?」
これは命知らずの大馬鹿に当て擦りしてますな。
大馬鹿もムッとして黙り込む。
二科生全員にチャンスがあるだけで、実力がなければ二科生だろうが一科生
だろうが使わない。閣下はそういっているのだ。
「現に彼等の活躍に触発されて、二科生も奮起している生徒が増えています。
反して一科生はどうでしょうか?胡坐をかいていませんか?違うというなら
ば、文句が出ない結果を出せばよいだけの話です」
これは更に二科生で頑張る生徒が増えるかもね。
まあ、一科生もやってやろうじゃないか!って感じになってるけど。
「それは司波達也や司波深景という特定生徒の為の方便ではないのですか?」
おっと。これはよくない発言だ。会場がどよめく。
「会長は、その二人をやけに気に入っているようですね?ただ単にお気に入り
を引き上げる為の提案ならば、却下されるべきだ!」
原作でも似た発言した奴がいたような気がするが、こっちではこいつがいっ
たか。
「引き上げるも何も次代の生徒会人事は私の関与できる話ではありません。私
は院政を敷く趣味はありませんしね」
大馬鹿の攻撃を閣下は余裕でいなした。
「はっ!次の生徒会長も貴女と同じということでしょう!何せ、同じく司波深
景を連れ歩いていたではないですか!」
「彼女が一緒だった経緯は、ただ単に彼女が近接戦闘に長けていたという理由
のみです。一科生を含めても、です。故にその質問の答えはNOです」
「渡辺先輩よりも、とでも?流石にないでしょう!現にそこの司波深景はミ
ラージで大した成績を上げてない!優勝したのも二位になったのも一科生の新
入生でしょう!認めたらどうです!?所詮はただの依怙贔屓だと!!」
うわっ!やべぇ地雷踏み抜いたわ!
殺気と冷気が会場を覆い尽くす。
見る人が見れば、私が二人を勝たせる為に動いていたのは分かっただろう。
だが、見ていなかった人の意見なんてこんなものだ。
事情を知っている身内がいわれれば…。
「仰りたいことはそれだけですか」
凄い静かな声で深雪がそういった。
風紀委員さえも身動きができない。
「直接試合を見た訳でもないのに、よくもそんな侮辱を!」
いや、達也止めなさいよ!
達也は、冷ややかに大馬鹿を見ているだけで深雪を止めに入らない。
物凄いプレッシャーに大馬鹿硬直ですね。
「あら、失礼しました。不適切な発言でした。しかし、新人戦の成績について
は、もう一度調べ直してはいかがでしょうか?他と比べて低い順位ではないと
納得頂けると思いますよ」
謝罪の言葉が聞こえたのに、相変わらず責め立てられているような気がする
のは、気の所為でしょうか?
「質問は以上ですか?」
深雪の口調は質問はもうないだろうな?と副音声が聞こえる。
「……」
最後の抵抗なのか、大馬鹿は黙って着席した。
慶滋巻き込まれ野郎も深雪のプレッシャーに負けて、手を引っ込めている。
ヘタレめ。
那由多天然さんは頬に手を当てて、あらあらといっていそうな感じだ。
取巻きも巻き込まれ野郎同様、沈黙。
これで立ち向かう勇者は存在せず、電子投票を開始の流れになり閣下の最後
の仕事は可決した。
そして、ラストを飾るのはオタの演説。
あの読経が役に立つ時がきたね。
まあ、当選確実だけどね。
そしてあちこちから応援の声が上がる。
何気にオタは人気が高い。
その声援に推された訳でもないだろうけど、淀みなくハッキリした口調で話
す。
問題は最後の言葉が放たれた後に起こった。
「本日の決定を尊重し、生徒会役員は一科二科を問わず優秀な人材を登用する
つもりです」
これだ。
ここで黙ったと思われた巻き込まれ野郎が手を挙げた。
質問OKっていってないのにね。
そして、名乗りもせずに声を上げる。
さては、閣下よりグレードが下がるから攻め時だとでも思ったな。
「優秀な人材とは誰を指しているのか、是非教えて頂きたい。当然、貴女の中
には誰を選ぶか大方のところ決まっているのでしょう?生徒会長すらもう決
まったも同然なんですからね」
最後にチクッと嫌味をいうのも忘れない。
「そこの野暮なメガネとか、そこの威圧的な二科生じゃないの?」
呆れるくらい低俗な野次が追従するように放たれる。
見れば、喋ってるのあの天然の取巻き連中だよ。
それに乗っかった反対派の連中が口々に野次を飛ばし出す。
更に怒ったオタの支持派が反対派を卑怯者呼ばわりして過熱。
現生徒会が落ち着くよう声を上げるが、興奮状態の生徒の耳には届いてい
ない。
私は溜息を吐いた。
確かに幼稚だよね、これ。
うん?大馬鹿が目配せしてるぞ?
目配せを受けた生徒が頷くと、何人か立ち上がる。
会場の熱気に紛れているが、確かに闘気が漏れる。
成程ね。乱闘に持ち込んで事態収拾しようって、どうしようもない案か。
それでアンタの株は上がらない。バレてるから。やらせないけどね。
私は立ち上がった連中と大馬鹿をを睨み付けた。
覇気を籠めて。
途端に連中の周りにいた生徒まで黙り込み、動けなくなった。
これ、滅多に使わないから加減が難しいんだよね。
気絶させる訳にもいかないからさ。
中身凡人の私が使える理由はチートだからで納得している。
そして、遂にあの人がキレた。
「静まりなさい!!」
私のズルチートと違い、本物が炸裂する。
深雪がマジギレしていた。
サイオン光と吹雪が吹き荒れる。
これを見て、喧嘩ができる大物はここには存在していない。
止めようとCADに手を伸ばす残りの現生徒会の方々と風紀委員を、私は手
で制止する。
それと同時に達也が、深雪の前に立ち肩に手を置いた途端に深雪の力を抑え
込む。
そのイケない光景と力に生徒全員が呆然と立ち尽くすのみ。
争いどころじゃないからね。
でも、そろそろ正気に戻って貰おうかな。
私は大きく手を打つ。
パチン!という音が会場に響き渡る。
その音に現生徒会の方々が正気に戻り、声を上げ始める。
それからは大人しいものだった。
粛々と投票が行われ、整然と総会&選挙は終わった。
オタが当選したのはいうまでもない。
13
だが、これで綺麗に終われる程甘くはなかった。
主に身内が。
「何故、女王陛下とか女王様とかスノークイーンなどという表記で私にカウン
トされているのですか!?」
深雪が投票結果にお冠である。
「まあ、気にしないでいいと思いますよ?無効票ですし…」
市原さんが慰めたが、深雪の怒りは治まらない。
投票結果はオタが信任される形だが、あの時に発したオーラに押される形で
深雪に投票する生徒が続出したのだ。
それだけなら笑って済ませたのだが、問題は深雪の名前の後に付いた尊称に
あった。
いずれも女王様系。それに深雪がキレたのだ。
「それにしても惜しかった
お姉さまが場を和ませる為と話を逸らす為に、揶揄うようにいった。
「「……」」
何故二人なのかって?
達也にも票が入り、更に何故か若干数私にも票が入ったからだ。
達也は150票程、私には18票程入った。
達也は兎も角、私は全然惜しくないよ。
「投票用紙を貸して下さい!書いた生徒を突き止めます!」
だが、深雪はブレなかった。
「そんな無茶な」
その場に引き継ぎで来ていた閣下が、呻くようにいった。
「まあまあ、深雪。選挙は匿名が基本だよ」
「それでは泣き寝入りしろというのですか!」
深雪が私の胸に飛び込んでくる。
「大丈夫大丈夫。深雪は女王様じゃないよ。私の可愛い妹だから」
「お姉さま!」
達也も深雪にそっと寄り添う。
美しい光景に見えるだろう。
だけど、私は自分の吐いた臭いセリフに目が死んだ魚になっていたと思う。
だからさ。みんなそんな嫌そうな顔しないで貰えるかな?
今回は勝利したといっていいなんて思ってました。
でも、生徒会室の扉を開けたら居たんです。
「深景さん!チャース!!」
「「「チャース!!」」」
大馬鹿とその手下が。
私に投票したのはお前等の仕業か?
よし!殺そう!!
心の中で私はどこぞの中華娘のように叫んだ。
深景、舎弟を得る(要らない)
最後に真由美さんの心の内でも入れようと思いましたが、
止めました。
書きたいシーンは書けたのでよかったと思っておこうと
思います。
那由多さんは、取巻きの起こしたことを見ているだけで
何も関心を抱いていないので無関心です。それでも自分
を慕ってくれる人がいうので、抗議文を無感情に書いた
ような人です。どっかで活躍させる予定はない…。
次回からは横浜騒乱編へ突入します。
時間は掛かると思いますが気長にお待ち頂ければ幸いで
す。
来訪者編がアニメ化か、楽しみですよね。