司波家の長女は何をする?   作:孤独ボッチ

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 先に出来上がったので投稿します。
 時間掛かってるのは変わりませんが…。
 それでは、お願いします。



 


横浜騒乱編1

               1

 

 大馬鹿をシバキ倒して、私に平穏が訪れた!

 なんて思ってから少し日数が経っていた。

 もうすぐ戦争の時間です、もとい…論文コンペの時期です。

 いやぁ、今から鬱だなホント。

 迫りくる災いに身体だけじゃなく目からも汗が出る。

 今の私は自室で中華街を洗い直していた。

 無頭竜を調べた時も実はついでに調べてたんだけど、見付からないんだよ。

 あの長髪ナルシスト野郎(アニメ版の動きやらに由来する風評被害)。

 まあ、無頭竜ですら所在を掴ませないように頑張ってたんだから、奴が見

付からないのは必然といえるかもね。

 でも、諦めません。勝つまでは。

 決意を新たにネットにダイブしようとした時に通信機が鳴った。

 誰からだ?

 通信相手の情報を表示すると、知り合いからだった。

「もしもし?久しぶりだね?打ち上げたロケットは何発目?」

『フフ~フ!いきなりだね。順調とだけいっておこう』

 特にお互い名乗り合わない。知り合いだし。

『そっちは順調かな?違ったらこっちに…』

「合流しない」

『残念!』

「こっちも多少難航してるけど、進んでるよ。でも、そっちには朗報でしょ?」

『そうだね。()()()()()()()()()()()()()()()!先に完成させないと』

 相手の不敵な笑みが見えるようだよ。

『今日は親切な友人としての忠告だよ。華僑に気を付けた方がいい』

 華僑ね。今探してるんだけどね。そっちかイレギュラーか。

「華僑なんて全世界にいるんじゃない?」

 知っていながら、すっとぼける私。

 向こうも半ば承知してることだろう。

『私がいうんだよ?それは悪い華僑だよ』

「物凄く悪いんだろうね、それは」

『そういうこと。フフ~フ』

 それだけいって挨拶もなしに通信は切れた。

 いつもこんなものだし、私も用事が済んだらサッサと切る。

 そこら中の警察や治安組織にマークされてるからね。あの子は。

 用事が済んだら、切るに限る。

 

 それが今回の厄災の狼煙だった。

 

 

 

               2

 

 :源田視点

 

 咥え煙草で港を疾走するってのは乙でもなんでもない。

 まして、追う奴がいるともなれば余計だ。

 今、俺達は横浜港から不法入国してくる外国人を追跡中だ。

 自己加速で疾走中だ。それも野郎とだ。乙な訳がねぇわな。

「あのぉ、源田さん。一応俺にも立場ってもんがあってですね」

 横をピッタリと付いてくるのは千葉の御曹司だ。

 仕事は最低限にやってるから文句は…多少あるな。

「なんですかね」

「今追跡中!咥え煙草止めて貰えるますかね!」

 咥え煙草してようがしてまいが速度に変化はねぇよ。気にするな。

「この前、カメラの前で大欠伸してたの撮られたでしょうが!!」

 こんなとこにマスコミがいるわけねぇじゃねぇか。

「最近のマスコミは節操がないんですよ!某ジーザスとか!」

 ああ。あの野郎か。

 確か、アイツと繋がりがあったな。

 本人はすっとぼけてやがったがな。

「別に構わねぇよ。仕事は真面目にやってるんだからな」

「稲垣君!代わってくれ!」

 仕方ねぇだろうが、稲垣の奴は別方向から攻めてるんだからよ。

 なんで階級が上の筈の千葉が俺に対して敬語かといえば、単純だ。

 剣術の稽古でボコボコにしてやったからだ。

 当人、弟に才能で負けてるからな。それに腐らずやる影の努力家だ。

 だから、協力してやったんだが、お気に召さなかったようでな。

 俺に対しては腰が引けるようになった。

「ん?警部殿!スピード上げるぞ?」

 そろそろ終着らしいや。

 連中がスピードを上げて、こっちを振り切りにきやがった。

 俺は笑うと咥えた煙草を携帯灰皿に捨てた。

「いや、…そうですね」

 諦めたように千葉もスピードを跳ね上げた。

 

 まあ、船は使うわな。ここは港だ。

「源田さん!警部!」

 千葉の想い人・稲垣が別方向から現れる。

 別の方向に向かった外国人を追跡していた筈だが、どうやら終着は同じだっ

たらしいな。

「稲垣。船を止めてくれ」

「いいんですか?自分だと壊してしまいますが?」

「このままハンカチ片手に見送る訳にゃいかねぇだろう」

 千葉が顔を顰める。

「俺に責任きそうだな…」

 ボソッと本音いいやがったな。

「責任は俺が取るよ。やってくれ」

「了解!警部なら出てこないセリフですね」

「一言余計だよ、稲垣君」

 ニヤッと笑うと稲垣は、リボルバーを構えて船尾を狙撃すると爆炎が上がる。

「いくぞ!」

「いや、俺が上司なんですが…」

 文句をいいつつも俺と一緒に千葉が跳躍する。

 連中の船に乗り移ると同時に強襲する為だ。

 千葉が刀を抜き、俺は妹弟子の造ってくれた三段警棒を伸ばす。

 船員が驚いて、蜘蛛の子散らすように逃げる。

 まずは千葉が甲板を切り裂き、俺がそれを突き破るように突入した。

 甲板の破片と共に着地すると、後から千葉が減速してゆっくりと着地した。

 俺はある物を見て舌打ちする。

「逃げられた、ですね」

 千葉も俺と同じく海面に続く穴を見て溜息を吐いた。

「取り敢えず、残った船員をしょっ引くぞ」

「何も話さないでしょうし、行く先なんて分かり切ってますがね」

 

 全くその通りだ。クソッ!。

 

 

 

               3

 

 :周視点

 

 懐中時計を取り出し、時間を確認する。

 私を他人が見たら不審に思うでしょう。

 何しろ井戸の前でジッと立っているんですからね。

 私達の息が掛かった飲食店の裏にある井戸だからこそできることですね。

 井戸が内側から崩れ出す。

 フム。時間通りですか。流石は…といったところでしょうか?

 そうこうするうちに中から人がゾロゾロと姿を現しましたね。

 姿を現した人間に対して恭しく礼をする。

「まずはお着替えを。その後に寛いで頂き、朝食をお持ちしましょう」

 指揮官が路傍の石ころでも見る目で私を見ているのが分かりますが、どうで

もいいのはお互い様ですか。

「周先生、ご協力感謝致します」

「いえいえ。陳閣下はお元気ですか?」

 指揮官である陳が一瞬嫌な顔をする。

 今は国家公認の武器商人になっているんでしたか。

 おっと、貿易商でしたか。

 どうも軍人に誇りを持っている彼には閣下の決断は気に入らないようですね。

 彼は私の言葉に返事もせずに歩き出す。

 

 立ち去っていく気配を感じながら、私は笑みを抑えれなかった。

 

 

 

               4

 

 私は極悪華僑を探して日夜戦っているが、日常は私とは関係なく訪れる。

 生徒会でのお食事会というある意味パワハラ染みたイベントはなくなり、私

と深雪は大変有り難く思っている。

 偶に私も召集されてたからね。実は。

 やっぱり気楽に食べられる方がいいからね。

 A組とE組では昼休みに入る時間が微妙にズレることがあるから、先に来た

方が席を確保することになる。

 そして、今日は私達E組が席を確保していた。

「すみません!遅れちゃって!」

 A組の面々が姿を現したが、ほのかが米つきバッタと化していた。

 達也が宥め、私達が気にしないでいいといっても恐縮した感じだった。

 予め遅れるって聞いてたから気にしないでいいのに。

 深雪も私と達也に丁寧にお詫びの言葉をいう。

 目立つから、そろそろ着席しようか?

 

 着席したA組の面子だが、ほのかは達也の隣に陣取っていた。

 勿論、深雪は逆サイドを確保している。

 私は因みに達也の正面です。

 ほのかは、あのポロリ以来ガンガンいこうぜ!状態でアグレッシブだ。

 本気でジャイアントキリングが見えてきたかもしれない。

 まぼろし~ってならないように願いたい。

 いかん年齢が…。

 そんなほのかだけど、生徒会役員に選出された。

 深雪が副会長でほのかが会計だ。他の面々は原作でチェックしてね。

 要らないか。

 その関係で慣れない書類仕事で時間を食ったという訳だ。

 達也の方もほのか達の愚痴に触発されたのか、頭痛を感じているようだった。

 本来なら、達也を副会長に据える気だったオタだが、キャノン先輩のダメさ

で今年中は風紀委員に居残りとなったのだ。

 君はまだいいよ。私は茶坊主居残りだよ!?意味不明だって。

 それはそうと、港で捕物があったみたいだし、原作通りなら大亜連合が遊び

に来てるな。

 ままならなさに、キャッキャする桃色の空気を振りまく正面から目を背け、

コッソリと溜息を吐いた。

 

 顔を上げると深雪と達也に心配されてしまった。

 気が抜けませんね。

 

 

 

               5

 

 放課後、私が雑用という名の茶坊主をしていると生徒会室の扉が開いた。

「深景さん、いる?」

 扉を開けて覗き込んできたのは、閣下だった。

「あーちゃん。ちょっと深景さん借りるけど、いいかしら?」

「あ!はい!大丈夫です」

 オタ会長、私の意見は訊かないんですか?訊かないですね?

 閣下、いやもう違うか。

 お嬢様が私の腕にしがみ付くとサッサと外へ連れ出して行った。

 ほのか、生暖かい視線を向けるんじゃない。

 

「それでどういった用件です?」

 何やら定番と化したエアポケットベンチで並んで座った私は開口一番に質問

した。

「うん。実はもう達也君には深雪さん経由で依頼済みなんだけど、深景さんに

も論文コンペを手伝って欲しいのよ。勿論、お手伝いでよ?流石に定員がある

から」

 余裕があってもお断りしたいわ。

 今、長髪ナルシストを探すので忙しいんだよ!こう見えて!

「いや、ご協力できることはないような…」

「深景さんには、五十里君の模型造りを手伝って貰いたいのよ。深景さんも手

先は器用でしょ?」

 おかっぱと?

「いやいや、キャ、千代田先輩が荒ぶるじゃないですか。嫌ですよ」

 ここはキッパリと断りたい。

 あの先輩は、おかっぱが絡むと更に面倒臭くなる。

 主に嫉妬。重い。途轍もなく。

 よくあんなにラブラブ(死語)になれるもんだよ。類は旦那を呼んだのか?

「ちょっと本来のチームメイトである平河さんが体調を崩してて参加できない

のよ。三人目の選考で揉めた所為で時間が厳しいのよ。この通り!協力して!」

 お嬢様は拝み倒す気でいるようだ。

 いや、だからさ、キャノン先輩と揉めたくないんだって。

 女の嫉妬は厄介極まりないんだから!

 なおも嫌がる私にお嬢様が目を潤ませながら接近してくる。近い!

 顔が引き攣る。

 演技がお上手なことで。

 ここで振り払おうものなら、絶対悲劇のヒロイン宜しく思わせぶりな態度で

周囲に私が悪人であると思わせるよね、これ。

「根回しと取り成しはして下さいよ…」

 私は重い溜息を吐くと、それだけ辛うじて口にした。

「ありがとう!深景さん!」

 思いっ切り首に抱き着くお嬢様。

 礼はもう聞いたから、離してくれません?

 

 矢鱈、長い抱き着きに思わず白目になったのはいうまでもない。

 そのうち刺されるかも…。

 

 

               6

 

 そして、漸く開放された私は達也達と放課後に喫茶店にいた。

「えっ!?達也、論文コンペの代表に選ばれたの!?」

 幹比古君が驚きの声を上げる。

 そりゃ、論文も提出してない一年、しかも二科生が選ばれりゃ驚くよね。

「ああ」

 達也がなんの感慨もない声で肯定する。

「アッサリし過ぎ」

 エリカが呆れて肩を大袈裟に竦めた。

「達也にしてみりゃ、選ばれて当然ってもんだろ」

 レオ君が笑っていう。レオ君じゃなきゃ嫌味だと思うよね、このセリフ。

 選ばれた当人より興奮している幹比古君が、どれだけ凄いことかを力説して

いたが、すぐにトーンダウンする。

「でも、確か日があんまりなかったんじゃ…」

「あと九日だな」

 ここでも達也に動揺はない。さす弟。

「それ、間に合うんですか!?」

「大丈夫。俺は手伝い程度に入っただけだ。執筆自体は夏休み前から進めてい

たから」

 ほのかの悲鳴みたいな声に、達也は宥めるように穏やかに答えた。

 実は日程がヤバかったりして。何しろ私が応援に駆り出されるくらいだし?

「それでも急ですよね?」

 美月が可愛く首を傾げながらいった。

「本来のメンバーの一人が体調を崩したらしい」

「それはお気の毒ですが、急過ぎるのではありませんか?お兄様ならば、その

役割を熟せるとはいえ…」

 達也の簡潔な説明に、深雪は納得できなさそうに眉を顰めた。

「市原先輩の選んだテーマが俺の分からない分野だったら、流石に断ったよ」

 達也は若干苦笑い気味にそう答えたが、深雪の反応は芳しくない。

 もう勘弁してやりなよ。

 少しくらい一緒にいる時間が削れても、それ以外は結構一緒にいるんだし。

「どんなテーマなんだ?」

 レオ君は興味を惹かれたのか、勢い込んで訊いてきた。

 他の面子も興味があるのか達也の答えを待っている。

「重力制御魔法式熱核融合炉の技術的問題点と解決策について、だな」

「悪い。サッパリ分からなねぇわ…」

 達也のサラリとした答えに、レオ君は目が点になっていた。

「加重系魔法の三大難問に挑むのかい!?」

 現代魔法も学んでいる幹比古君は、驚愕といっていいくらい眼を剥いている。

 レオ君を除いて、友人達はしきりと感心していた。

 

 ぶっちゃけ、私にも興味がない内容だ。

 だけど、弟の夢だ。応援したい気持ちは存在する。

 

 

 

               7

 

 家に帰った私達は、家の車庫に嫌なものが停まっているのを発見した。

 ヒスママの車である。

 私達の表情が必然芳しくないものに変わる。

 玄関開けると、それは現れた。

「相変わらず仲がいいのね」

 若干皮肉交じりにヒスママこと継母・小百合が現れた。

 どうする?

 攻撃する。逃げる。防御する。道具を使う。作戦。

「こちらにいらっしゃるとは珍しいですね」

 達也の冷たい視線が炸裂。ヒスママはダメージを受けた!

「まあ、仕事が忙しいもの。顔を出せないのは仕方ないわ」

 ヒスママの攻撃。私達には効かなかった。

「すぐに夕飯の支度をしますね!お姉様とお兄様は何が食べたいですか?」

 深雪の無視が炸裂した。ヒスママのストレス値が上がった!

 私と達也は特にリクエストなし。

 深雪は相変わらずヒスママを無視して、自分の部屋へと向かった。

 

「で?どんな話です?」

 私は話の内容が想像できる為に、素っ気なく尋ねた。

 今現在、私達はお互いテーブルを挟んで対峙している。

 深雪が自室へ行っているので、私と達也が応対する。

「貴女になんの関係もない話よ。貴女も着替えてきたら?」

 このヒスママ、私が四葉内での地位がないことを知っているから、対応が達

也以上にぞんざいだったりする。

「申し訳ありませんが、用件をいって貰えますか?深雪が戻る前に済ませたい

ので」

 達也が不快さを隠そうともせずにいうと、ヒスママも畏れより怒りが勝った

のかムッとした顔をした。

「相変わらず、貴女達は私のことが気に入らないのね」

 大人の仮面をかなぐり捨ててヒスママは、そう吐き捨てるようにいった。

 そりゃ、会う度にギャーギャーいわれりゃ好かないよ。

 正確にいえば部外者なのに、研究室に出入りしてる身だけども。

 私が悪いって?貢献してるからいいんだよ。アフロもそういってるし。

 コラボなんてよくあることだよ。

 今更でもあるしさ。

「深雪はそうですね。理由は語るまでもないでしょう」

「貴方はどうなの?」

「そういう感情とは縁がありません。そうできていますので」

 達也が淡々と答えるのを、私は眉を寄せて聞いていた。

 それに気付いた達也が軽く私の方を見たが、何もいわなかった。

 因みに、私は嫌いだ。

 母親も嫌いだったし、宿六も親らしい要素は欠片も存在しなかった。

 所詮は政略結婚だ。やることやって終了は自明の理だろう。

 あの母の実験動物を見るような目は、今も記憶にこびり付いている。

 宿六の無関心も。

 そんな宿六の恋人なんざ、好きになる要素はない。

「話すだけ無駄という訳ね。いいわ。本題に入りましょう。貴方に研究室を手

伝って欲しいのよ。高校を中退してね」

「俺はガーディアンが本来の仕事です。深雪が一高生である以上、俺も一高生

でなくてはなりません。そういう訳ですのでお断りします」

 オブラートなしの本題に拒否。

「自分程の優秀なガーディアンが、天下の四葉に存在しないとでも?」

 皮肉をいうヒスママ。

 だが、その程度で達也が感情を動かすことはない。

「深雪の護衛という点に限れば、いませんね」

 案の定、サラリと達也に対応されてしまった。どっちが年上なんだろう?

「貴方のような優秀なスタッフに片手間で働かれてもね」

「それでも今期の会社の利益に貢献した筈です。飛行デバイスの発注は今後も

増えていくでしょう。今段階で、前期利益の20%になっている筈ですが?」

 攻め手を変えたヒスママだが、ぐうの音もでない返しに悔しそうに顔を歪め

た。ホント、どっちが年上だ?

 飛行デバイスに関しては、達也は術式などを公開しているがシルバーの信頼

性は大きい。

 FLTのデバイスを求める国は多い。

 少なくとも自国で安定したものができるまでは。

「それじゃ…せめてこのサンプルの解析は優先してやって頂戴」

 おお!出たな!今回の目玉!

 ヒスママは、バックから宝石箱を取り出し慎重に蓋を開ける。

 紅い勾玉が姿を現した。

「…瓊勾玉系統の聖遺物ですね」

 所謂オーパーツです。レリックなんて呼ばれます。以上。

「どこで出土したものですか?」

 達也が鋭く問い掛ける。

「さあね」

「成程、国防軍絡みですか」

 FLTも武器商人染みてます、ありがとうございます。

「解析と仰いましたが、まさか複製しろなどといいださないでしょうね?」

 ヒスママは痛いとこ突かれた!みたいに顔を顰めた。

 達也が眉間に皺を寄せて溜息を吐く。

「現代技術で合成困難であるからレリックなのですが?」

「クライアントからの強い要請である以上、断れないわ」

 まあ、御上に逆らえないのは分からなくないけどねぇ。

「何故、そんな無茶な要求が?」

 いいたくないけど、いわない訳にいかないとばかりにのっそりと口が開く。

「瓊勾玉には魔法式を保存する機能があるそうよ」

 達也が私に視線を向ける。

「まあ、そうだね。どっちかといえば、ソーサリーブースターみたいなもんだ

と思えばいいよ」

 達也の片眉が器用に跳ね上がる。

「適当なことをいわないでくれない?」

 険のある声でピシャリと注意してくるヒスママ。

「では、適当でないことを聞かせて頂けますか?」

「軍が動くに十分な確度の観測結果が得られています」

「成程、軍は無視できないでしょうね」

 達也が重々しい声で頷く。

「しかし、火中の栗を拾う必要があるとは思えませんが?」

「既に賽は投げられているわ」

「文字通りの博打ですね」

 達也が厳しい声で非難する。

「十分勝算はあるわ!貴方の異能を駆使すれば!」

 他人の金で博打を打つって、使い方違うか?

 私はそんなことを思った。

 達也はあからさまなものいいに苦笑いしている。

「姉さんの古式の知識は必要になると思いますが?それに俺の魔法でも複製で

きるか分かりませんよ。どうしてもというなら、第三課へ回して下さい」

 ヒスママが歯軋りせんばかりに歯を食いしばっている。

 また手柄がどうの考えているんだろう。

「なんならここでサンプルをお預かりしますが?」

 達也の言葉にヒスママがキレた。

 テーブルを叩くと宝石箱を持ち去ろうとした。

 その瞬間、私はヒスママの手から宝石箱を救出していた。

「なんの積もり!?」

 親切にしてやった積もりなんだけど?

「持って帰るのは止めた方がいいですよ?外国人の不法入国のニュースはご存

知ですよね?脳味噌をぶちまけたいのなら止めませんけど」

 迂闊に聖遺物なんて持ち歩くなよ。

 原作読んでた時も思ったけど、そりゃ捕捉されるわ。

 何故、ここに向かうまでに襲わなかったのかと疑問すら感じるよ。

 別に欲しいなら襲っちゃえばよかったのに。

 なんか理由語られてたっけ?

「っ!?」

 ヒスママが真っ青になってビクつく。

「姉さんは、この情報が既に漏れていると考えているのかい?」

「さあ?だけど、最悪を想定して動くのは基本でしょう」

 それに日本は諜報能力は昔から当てにできないんだよね。

 国内なら、どこぞの生臭坊主とか天狗さんとかいるけど、彼等も国際舞台

ではね。

「確かにね…」

 ヒスママは馬鹿にされたと思ったのか、今度は顔を真っ赤にして宝石箱を

ひったくると大股で去って行った。

 

 あ~あ。もうちょっと優しくいってやるべきだった?

 

 

 

 

               8

 

 ヒスママがキレて車に乗り込んだところで、私も腰を上げる。

「姉さん。俺が行こうか?」

「いや、いいよ。私が怒らせたんだしさ」

「お姉様?お兄様?」

 私が何をしようとしているのか、瞬時に理解した達也との会話が理解でき

なかったようで、着替えて入ってきた深雪が不思議そうに声を上げた。

 軽く事情を説明してやると、深雪は憤慨した様子だった。

「お姉様の手を煩わせるなんて…」

 私は怒っている深雪の頭を撫でて宥めてやる。

「まあ、念の為だよ」

 達也に後を頼み、ライダースーツを手早く着込むとガルムに飛び乗る。

 さて、行きますか。

 ガルムは即座にスピードに乗ると、猛然とヒスママの車を追跡し始めた。

 すぐにヒスママの車を追跡する車も発見する。

 警戒心ってものがないのか、あのヒステリー。

 ヒスママの車のあまりの無警戒振りに呆れたよ、私は。

 見事に不審車両に小突かれたヒスママの車は、大事故を起こす前に急停止

して止まる。今時技術の成果だね。

 そして、不審車両からワラワラ出てくる不審者御一行様。

 うん。悪役だね。

 デストロイ。

 私はCADをホルスターから引き抜くと、無造作に構えて引き金を引いた。

 魔法だから反動がないのが有難い。

 ループキャストされた遠当てが立て続けに発動し、ギャグみたいに不審者

が吹き飛ばされた。

 相手も拳銃をぶっ放してくるが、私の華麗なる操縦テクニックで銃弾を回

避すると、そのまま轢き飛ばしてやる。

 テロリストに情けは無用だ。

 私は走っているガルムから飛び降りると、静かに着地してヒスママの車に

駆け寄る。

 エアバックに埋もれて気を失っているだけのようだ。

 言わんこっちゃない。

 その瞬間、私の眉間にチリチリしたものが走り、反射的に身を屈める。

 眉間があった部分を銃弾が通過し壁を穿つ。

 おお怖っ!

 即座にガルムが走り込んでくる。

 エレアが制御しているから、不審者を轢き逃げして回っていたのだが、私

の危機に中断したようだ。

 私はガルムを楯にする。

 本当にヒスママの脳味噌をぶちまける訳にいかないので、車を楯にするの

は止めて置く。

 その事で車の中にいたであろう魔法師が、ご同輩を魔法で回収していく。

 狙撃手を片付けないと出られないから、あっちは無視するしかない。

 迂闊に強い魔法は使えないし、空間凍結で片付けると証拠隠滅して貰う際

に響子さんに不審がられる。今更だって?そっとしておけ。

『で?どうするの?達也だったら一発で片付けて問題ないけど、貴女は不味

いでしょう?』

 エレアがホログラムと共に訊いてくる。

「こんなこともあろうかと、刀をバイクに載せてあるんだよ」

 私はガルムから刀を取り出すと、鞘から引き抜く。

 紅い刀身が美しく、更に刻印が刻まれた刃が姿を現す。

 そして、サイオンをゆっくりと流し、刻印を起動させた。

 刻印から炎が揺らめく。

「☲(離)」

 とある古い漫画を参考にした一撃で消えろ。

 トリガーワードと共に炎が光り輝く。

 放つのは一瞬。

 相手の場所なんてもう把握済みだ。

 射線に身体を晒したが、相手に私を撃つことはできなかった。

 その前に骨まで焼き尽くされたのだから。

 それにしても威力を収束させるのに苦労するな。

 古い漫画だと、あまりに威力が強過ぎて自分までダメージ受けてたからね、

この技(モドキであるが)。

 

 その後、私は気絶したヒスママをビンタで起こしてレリックを回収した。

 ビビッてたから容易に回収できたよ。

 

 

 

               9

 

 ヒスママをある程度安全と思われる地点まで送り届ける。

 顔色が悪かったけど、取り乱してはいなかった。

 礼をいわないところも平常運転だ。

 大丈夫でしょ、アレ。

 それから家に帰って天狗様へ連絡を取る。

『それにしても都心ではないとはいえ、ライフルをぶっ放すとはな』

「魔法のアシストなしでやってましたし、手練れですね」

 天狗様の報告は達也と一緒に行う。

『ともあれ街路カメラの方は処理を始めている』

「ありがとうございます。少佐」

 私の代わりに達也が礼をいう。

『光学スコープのみで、千メートル級の狙撃をやるスナイパーは簡単には手

配できないからな。それだけで犯人が特定できるかもしれないな』

「宜しくお願いします」

 それからすぐに車が発見されたと天狗様に報告が入り、私達にそう教えて

くれた。

 達也か私が調べれば、何か手掛かりでも掴めるかもしれないが、お行儀よ

く私達は黙っていた。

『それと、バイクとあの武器に関しては報告書を提出して置いてくれ』

 天狗様が通信を切る前にぶち込んでくれた。

 あれ?ガルムもタチコマがいる以上問題ないだろうし、刀も普段使いして

るのと大して変わらないんだけどな?

 頭の上に?マークを浮かべている私に達也は生暖かい視線を向けてきた。

 

 いや、その視線止めなさい。

 

 

 

               10

 

 それから深雪のエプロンの披露があったり、達也が年頃の男の子には決し

て吐けないセリフを炸裂させるという些事があったが、本題はこっち。

「姉さん。このレリックには魔法式保存の機能があるのかい?」

 深雪が驚いて私と達也を見比べる。

「うん。ただ扱いは難しいと思うよ」

 達也が無言で続きを促す。

 勾玉は装飾品の側面の他に祭事に使用する。

 つまり祈りを捧げるのに使う訳だ。

 祈りは原初の魔法だ。

 祈りから勾玉が大雑把な魔法式を構築・保存することで祭事を行い易くす

る。繰り返すことにより術式は洗練され、機能をより確実に発揮させるため

のものとなる。

 問題は上書きも容易だという点だ。

 より強く構築された魔法式を上書きしてしまう為に、折角の効果が台無し

になってしまうことがある。長年蓄積したものが、早々消えるとは思えない

が可能性がある以上、注意すべきだからね。

 より強い感情を刻むという点で、無頭竜のソーサリーブースターに似てい

るので、さっき例に挙げたのだ。

 それらのことを説明してやる。

「成程、テロなどに利用される恐れがあるな」

 余程、管理と魔法師の身辺調査を徹底しないと危なくて使えない。

 ここで事情がよく呑み込めていない深雪に今までの経緯を説明すると、や

はり軍の無茶振りに顔を顰めていた。

「まあ、現物は押収してきたから、ゆっくりと調べればいいよ」

「姉さんにも意見を訊くと思うけど…」

「出来る範囲で協力するよ、勿論」

 達也がシステムを解き明かせば、欠点も克服できるかもしれない。

 原作で達也が夢をどうしたのか、ついぞ確認できなかったけど、この弟なら

どうにかするだろう。

「お兄様なら、きっと成し遂げられます」

 

 深雪の言葉は、預言みたいに聞こえた。

 

 

 

 




 深景がどうしてあの人と付き合っているのか、少しだけ
 出しました。
 天狗さんに関しては、有益な情報を吐き出してくれれば
 いいという感じで、諦めが入っています。

 次回は、これ以上に時間が掛かると思われますので、気
 長にお付き合い頂ければ幸いです。




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