それではお願いします。
1
人生初の鑑別所へと到着したよ。落書き工作員と感動の再開ですよ。ワクワク…しないね、実際は。
論文コンペは、原作通り迷惑掛けないように作業してますよ。勿論ね。
エリカ達や深雪も来たがったけど、キャノン先輩はギリギリの人数しかOK貰ってなかったんだよね。これ以上余計なトラブルを起こして堪るかという気持ちを、ひしひしと感じます。
まあ、深雪が来れなかったのは、仕事が忙しかったってものあるけど。
だがしかし!無駄な努力だ。原作通りだと、トラブルは起きる。その為の準備もしてきた。
鑑別所は、碌なチェックもせずに私達を入れた。勿論、十師族の偉大なるお名前パワーが絡んでます。
それでもCADの持ち込みくらいチェックした方がいいんじゃないかと思うけど、こっちには好都合だ。用意が無駄にならない。
職員の首が、これからのことで飛ばないといいんだけどね。
落書き工作員…いや、元工作員か。そいつは、監視装置が矢鱈と付いたホテルの部屋みたいな場所にいた。
マジックミラーのようなもので部屋は丸見えで、監視カメラでトイレや風呂まで監視されている。同情はしないけどね。
因みに話すのは、お姉様ただ一人です。落書きには倒せないので問題なしと、我々の意見は一致しているので安心して見ていられる。
そして、青コーナー!渡辺摩利の登場です。赤コーナー!関本勲~!!どの程度持つのか楽しみですね。
問題は、この後に訪れるので私は適当に眺めるだけだ。
『何しに来た?尋問ならプロから受けてる。そっちから訊けばいいだろう』
まだ取り調べってレベルのものは受けてないでしょ?随分と盛ったもんだね。
本格的なのは、これからだけど待っていられなかったから来たんだよね。
『悪いが心配事は早めに対処したい質でね。待ち切れないんだ。今、聞かせて貰う』
『いくらお前でも、ここでは魔法は使えないぞ』
自分のセリフをいった瞬間に、ハッと気付いたように息を止めようするが遅い。
お姉様の香りが落書きに侵入していた。ちょっと肺に入った程度では済まないだろうね。もうトランス状態みたいになってるよ。
『すぐに済むさ』
お姉様は、悪い顔で質問を開始した。
いやはや、怖いですね。
2
「匂いを使った意識操作…ですか」
達也が一目で看破する。
まあ、ブランシュの時に既に原作では言及さえてたものが、ここで使われたってことだね。
「二人共、見るのは初めてだったかしら?」
七草お嬢様が、意外そうに私達を見るが、こんな現場見る機会はそうそうないよ。私の場合だと、精神干渉魔法かそれに類するチート使うし(違法)。
「てっきり、風紀委員で見せてたとばかり…」
「大っぴらに使われたら、こっちが反応に困りますよ」
「まあ、そうよね」
お嬢様が苦笑いして、達也の言葉に同意した。
そして、落書きの自供(違法行為によるもの)が佳境に入る。勿論、私達は駄弁りながらでもお姉様の活躍を見逃してはいなかったよ?勿論、私もだよ?
デモ機のデータを奪った後は、乙女の私物を漁る気だったらしい。達也のも機を見て漁る気だったみたいだね。寧ろ、私はおまけみたいなもんらしい。おまけで乙女の私物を漁るな落書き(注:未遂です)。
そこにレリックの手掛かり、又はその物ズバリがあるんじゃないかと思ったそうな。あるか!
「達也君、そんな物持ってるの?」
「まさか」
お嬢様の疑惑の眼差しを、達也が名演技で切り返す。
尚も追及しようとするお嬢様に、達也はキッパリと否定していった。
「賢者の石絡みでレリックを調べていたのと、ウチはFLTに少し伝手がありますからね。余計疑われたのでしょう」
淡々と真実を述べている風で達也が淀みなく説明していく。
確かにオタに飛行デバイス上げてるから、それを言い訳にしてもいいよね。
納得した訳じゃないだろうけど、お嬢様に追及する時間はなかった。
だって、虎さんが遊びに来たんだから。
3
八王子鑑別所の非常警報が鳴り響いている。
お姉様は、ボケっとしている落書きをベットに転がして外に出る。
私達と廊下で落ち合う。
「侵入者のようですね」
「強引なことするねぇ」
「落ち着き過ぎじゃないかしら?」
私達姉弟の感想に、お嬢様が呆れたようにいった。そっちも余裕そうですよ?
「こんな命知らずなことをやってのける奴だ。サッサと退散するのが正解だろうな」
お姉様が冷静にいう。
ここは魔法師とか魔法師の卵とか、普通じゃない連中を収容する特殊鑑別所だから、警備体制は厳重だ。一国のエース級の魔法師でもない限り、突入しようなとど考えないんだよ。
まさにそのエースが来てる訳だけどね。
「屋上から侵入し、今は東階段の三階に到達ってとこですか」
達也が手元の端末を操作しつつ告げる。
お嬢様が、お得意のマルチスコープで答え合わせをしている。
「流石ね。侵入者は四人、ハイパワーライフルで武装しているみたい。階段の踊り場で警備員が交戦中ね」
「廊下は隔壁を下ろしているようですが…してやられたようですね」
達也が廊下の先にいる物騒な人物を睨む。
お姉様が彼氏がやられた恨みからか、険しい顔で姿を現した虎を睨み付けている。
「何?」
二人の警戒マックス状態に戸惑うお嬢様。いやいや、あれは警戒するでしょ。
通路には虎さんが立っていた。
「呂剛虎…」
お姉様の呟く声が、矢鱈と大きく響いた。お嬢様は、それでも意味不明なご様子。
虎さんは、こちらにゆっくりと近付いてくる。
「この場は逃げるべきなんですが…」
達也が前に出ようとするのを、お姉様が私怨で止める。
「二人は真由美のガードを。アイツは私がやる」
「摩利、気を付けて」
「只者じゃないのは、分かっている」
無謀なことを宣言するお姉さまに、止めないお嬢様。
達也がチラッと私に視線を寄越すけど、私は軽く肩を竦めた。
あちらもお姉様をターゲットロックオンしてるし。
まあ、ヤバくなったら選手交代ってことで。
4
お姉様がスカートを自分でめくり上げるという破廉恥行為をして、得物を取り出す。
当然、虎さんはノーリアクション。達也もいわずもがな。ここにいる男性陣は普通じゃないね。
仕様がないので、私と達也はお嬢様のガードとして庇うように立つ。
そして、お嬢様が先制攻撃でドライアイスの弾丸を造り出し掃射する。
虎さんサイオンの鎧に護られ無傷。お姉様へと突進する。
お姉様とお嬢様の連携攻撃が続くも、悉く防がれ逆撃を食らう。勿論、お嬢様は私達がガードしてるから大丈夫だけど、お姉様の方は防戦一方になっている。
原作では、ドウジ斬りを決めて退けていたけど、いくら既に魔法戦技で一流の領域にあるといっても、超一流相手では分が悪い。
本来は超一流同士の戦いに割って入れる方がおかしいレベルだからね。それこそ、私みたいなズルチートか達也みたいなイレギュラーが相手をすべきだよ。
怪我をしているなんてハンディは、ものともせずに虎さんの猛攻が続く。要所でお嬢様の攻撃が入っているから無事なだけだ。
そりゃ、一国のエース魔法師が学生にやられるなんて流石にないだろうから仕様がない結果だ。ドンマイお姉様。
私は、達也に視線を向けて合図を送る。達也は少し眉間に皺を寄せたけど、渋々頷いた。
済まんね。ガードは頼むよ?
お姉様が強力な一撃で態勢を崩すのを見逃さず、虎さんが止めを刺そうと拳を繰り出す。最早、ドライアイス弾など無視で突き込まれる。
威力的に脅威じゃないと悟られたね。
その瞬間、私はお姉様の襟首を掴んで後ろに倒す。拳は宙を打つに留まった。
「お…渡辺先輩。選手交代で」
「深景君!?」
「深景さん!?」
私は袖に仕込んだ刀の柄を取り出す。お姉様のようなセクシーな真似は止めたよ。
因みにこれは、幽遊白書の桑原が戸愚呂兄との戦いに用いたスペシャルソード(柄のみであるけれども)である。
サイオンの刃がグンと伸びる。
影分身で一度遊んだ相手だ。縛りプレイでもなんとかなるでしょ。油断はしませんよ?
私に対して虎さんも只者ではないと気付いたようで、改めて構えを取る。
先に動いたのは虎さん。虎さんらしくしなやか動きで素早く間合いを詰めてくる。
小手調べなしの掌底や拳打が流れるように襲い来る。拳に気を取られると鋭い蹴りが放たれるのは明らかだ。
そんな隙は作らないけどもね。
私は懐に入り込ませず、刀で拳や掌底を叩き落とし逸らしいなす。
相手も刀が壁に当たるように、こちらを誘導してくる。露骨ではないところが上手い。僅かでも物を斬れば速度が落ちる。超一流の相手であれば致命的な隙を生むことになる。
だが、甘いな。
「っ!」
刀が壁を斬るより早く、刃が縮み虎さんへ向けて刀が一切の勢いを落とさずに襲い掛かる。
サイオンの刃なんだから、勿論こんな芸当も可能だ。だけど、まさか虎さんもこんな芸当が学生に可能だとは思っていなかったようだ。
慌てて腕で刀をガードする。サイオンが虹色の火花を散らす。あちらが力を籠めて押し返そうとする。
私は力勝負に持ち込まれる前に、フッと力を抜くようにして刀を弾かれる勢いを利用して刀を引き戻し、トラさんへと鋭い踏み込みで迫る。
だけど、あちらも然る者で、そこを狙って空いた手が狙い澄ました一撃を放つ。
私は、その拳を柄頭で叩き刃を起こし振り下ろすが、拳を打たれた時点で既に後退に入っていた為に刃を伸ばしてもギリギリで躱されてしまった。
お互いにそのまま距離を取る。
良かったよ。援護しようとか考えてないようで。味方が。
5
:真由美視点
摩利が防戦一方になっていた相手に、深景さんが互角に戦っていた。
その間、私も摩利も援護しようとした。
CADに手を伸ばした私の手を達也君が掴んだ。
「駄目です」
「「達也君!?」」
思わず摩利とハモってしまった。
「下手に手を出すと姉さんを巻き込み兼ねません」
達也君が険しい表情で戦いを見ていた。
物凄いスピードで動き回っているのに、互いに壁や床に傷一つ付けていない。少し広い通路とはいえ、とんでもない技量。自分の全ての技を相手を倒すことに集中させているんだわ。
隙を窺おうにも確かに撃つタイミングが掴めない程に、目まぐるしい攻防が繰り広げられていた。
「私では、まだ力不足ということか…」
摩利が無念さを滲ませた声でいった。聞いて辛いけれど、現実は受け入れなければならない。お互いに。
「渡辺先輩の魔法戦技は一流だと、誰もが認めるところです。だからこそ、七草先輩も前衛を先輩にした。しかし、二流と一流に高い壁があるように、一流と超一流にも高い壁が存在しています。渡辺先輩は、実戦と研鑽でそこに至れると思いますが、今はまだ届かなかったというだけですよ」
珍しく達也君が、摩利を気遣うような声音でいった。深雪さんに聞かれたら、只では済まないようなことを考えちゃったわ。
摩利は、気を取り直したように目の前の戦いに集中した。私も、ここから何か学べることを見付けないとね。
戦闘は激しさを増すばかりで、付いていけない。
互いに既にわざと隙を見せるなどしているが、互いに容易に踏み込んだりしない。千日手に陥るかと思われたけど、呂剛虎が身体に纏ったサイオンの鎧を解いた。
「「っ!?」」
私と摩利が驚いた。
だけど、対峙している深景さんと見守る達也君は警戒を強めたようだ。
確かに、ここで鎧を解除は何かあると見るべきね。
そう考えた瞬間、呂剛虎の拳にサイオンが集中した。拳自体は硬化魔法のようなもので金属のような硬さを持ち、拳に覆われたサイオンはどんな魔法防御も無効化する。十三束君の技にも似てるけど、それよりも当然のように高度。
アレを真面に受けたら身体が砕ける。鎧を捨てて、攻撃に全力を傾けたの?
「鎧を捨てて、より身軽に動けるようにしたのか。まさか呂剛虎がここまでのレベルとは…」
達也君の軽い驚きに、私も慌てて観察し直すと、身体に一切の無駄なくまさに芸術的といえるレベルで強化が成されている。自身の身体能力を完全に生かし、かつそれを越えられる強化。ただ無駄に全身を魔法強化しがちだが、それだと上手く動けない。重要なのはバランス。それを選択できる魔法師は少ない。今ならば攻撃できそうではあるけど、それをやれば一瞬で私や摩利は無残な死を遂げるだろうことが容易に想像できる。
深景さんも応えるように、サイオンの刀を構える。当たり前のように深景さんも同じ状態だった。
でも、それ以上に凄い集中力。まるで、彼女自身が一本の刃のように研ぎ澄まされていて、近寄るだけで斬れてしまいそうだ。
そんな姿に私は不謹慎にも美を見出す。
そして…。
「秘剣」
深景さんの鋭く冷たい声が凛と響く。背筋がゾクゾクした。
呂剛虎も呼気が鋭く、まるで本物の獣のようにしなやかな筋肉が盛り上がる。表情も獰猛な笑みが浮かんでいる。この男は今、確実に目の前の戦いを楽しんでいた。
同じレベルで身体能力が強化できるのであれば、女である深景さんが不利だ。基礎的な肉体の強さは、男の方が上なのだから。
「達也君!」
思わず小声で縋るような声を上げてしまった。助けてほしくて。
「大丈夫です。刀を握って本気になった姉さんに勝てる者などいません」
達也君が力強く断言した。
私はホッとするより、非難するより浮かんだ感情は、ドロッとした感情だった。
達也君は、私の知らない彼女を知っている。それ故に揺らがない。絶対の信頼を持っている。
達也君にここまで信頼されることに羨ましさはある。でも、圧倒的に私の中を支配したのは黒い感情だった。
嫉妬。
これには、私自身が内心で戸惑った。こんな時に何をって。
先に動いたのは呂剛虎。サイオンで眩く光る右の拳を矢のように引き絞る。だが、そのモーションに騙されてはいけない。おそらく呂剛虎は、瞬時にアレをどこからでも出せる。そんな根拠のない確信が私の中にあった。
それは達也君や摩利、勿論対峙する深景さんも分かっているだろう。
そして、呂剛虎が消えた。そう表現するしかない程、視界から消えた。動きのキレもさっきまでと比べものにならない。
同時に深景さんの刀も消えた。
気付けば、両者は交錯していた。
呂剛虎が、腹から血を流していた。深景さんは制服の上着が大きく破れているのみ。
呂剛虎がゆっくりと前のめりに倒れた。
勝った!!
暫くして、彼女はゆっくりとサイオンの刃を消して、大きく息を吐いた。
私は気が付けば動いていた。
駆け寄って彼女の無事を確かめる。
「怪我は!?」
「…いや、ありませんけど」
深景さんは、いつものとぼけた感じに戻っていた。
面倒事が嫌いだけど、頼んだら仕方ないなぁというような顔で付き合ってくれる。女性であるが故に、男性とは違う行き届いた気遣いでエスコートしてくれたりする。かと思えば、危ない時にヒーローみたいに助けてくれる。今、みたいな姿もカッコイイ。
普段の上体に戻ってホッとしたような、残念なような。ちょっと複雑な気持ち。
私も本格的に不味いところまで足を踏み入れてしまった。そんな気がしたが考えないことにした。
今はまだ。
6
:摩利視点
前回、呂剛虎と戦った時にはシュウの手助けができた。それは、シュウが隙を作れるだけの実力があったからこそだった。シュウが一緒にいて護って上げられないと無念そうだったが、私は大丈夫だと思った。
ところがどうだ。シュウのいうことが正しかった。私は、自分の実力を正しく把握していなかった。
ドウジ斬りが何故か使えることや、魔法戦技は学生で負けなしだったことで、知らず知らずのうちに慢心していた。
最後の一撃。多分、真由美には見えなかっただろう。だが、私には見えた。いや、太刀筋は見えなかったけど、何が起こったのかは分かった。
あの瞬間、深景君の刀は三本あった。全く同時に三つの別方向からの斬撃が呂剛虎を襲ったんだ。呂剛虎は二つまでは避けて見せたが、最後の払いに反応できずに倒れた。
シュウとの戦いの際は見せなかった手札を晒したのは、そうしなければ勝てない相手であると悟ったからだろう。
シュウの時は、最悪撤退しても構わないという状況だった故に小手調べに終始したのだと、今だから分かる。それはシュウもだろう。あの時、時間が稼げれば、それで良かったんだから。
実際、平河千秋は何も重要なことは知らなかった。あちらからすれば、念のために消して置きたかったという程度なのだろう。だが、今回の関本は多少奴等の目的なども把握していた。今回、消して置かなければならない任務だったといえる。
しかし、それよりも深景君の技のとんでもなさが私の中では問題だ。あれはドウジ斬りに酷似していた。いや、私の方が紛い物か。
技のみで魔法の領域に到達していた。信じられない。確かに無意識に発動させることができるESPはある。でも、魔法的兆候は存在する。魔法を剣で使う千刃流とも勿論違う。あり得ない技前。
「達也君は、知っていたのか。深景君がこんな技を持っていたと」
「詳しくは知りません。しかし、姉さんなら驚く程のことではありませんよ」
この男は、身内の評価となると恥ずかしげもなくべた褒めするな…。
軽く胸焼けを起こしてから、話を振る相手を間違えたことを悟った。
エリカのことは苦手ではあるが、もっと道場に顔を出す必要があるな。
私は、もっと強くならねばと決意を新たにした。
7
その連絡は、論文コンペの二日前というギリギリのタイミングできた。
私は達也とディスプレイを見て、報告を聞いていた。
『スパイの実働部隊は、ほぼ拘束を完了しています』
響子さんが、お仕事モードで淡々と話すのを黙って聞き流す。
報告を終えると、響子さんが苦笑いしていう。
『深景さん達の情報が役に立ったわ。残念ながら隊長の陳祥山や、深景さんのいっていた人物の尻尾だとか、深景さんを襲った魔法師とかは逃がしちゃったんだけど、副官の呂剛虎は捕らえられたから満足してるわ』
響子さんが私を見ながら苦笑いしている。聞き流してるのバレテーラ。でも、その逃がした魚が大問題だから、全然解決してないって知っているからね。雑魚が捕まったなんて、どうでもいいんだよね。虎さんは兎も角として。
私は悪びれもせずに、いやいやと謙遜する。
達也が生暖かい目で私を見る。
原作通り、奴等は他の企業にもちょっかいを掛けていたらしく潰せて良かったってことらしい。
「それで、レリックの情報はどこから漏れていたんですか?」
達也が私と響子さんの遣り取りに焦れたのか、話を本筋に戻してくる。
『軍の経理データが漏洩して、そこから辿られたみたい。恥ずかしい話、今回被害に遭った企業にバレたら不味いわよ』
響子さん渋面ですね。いくら電子の魔女さんでも、もう手遅れの漏洩をどうにかできないよね。全面的に隠蔽する方向でいくんだろう。私も呟くような外道な真似はしないよ。
『拘束した連中を締め上げれば、あの街の尻尾も深景さんのいう華僑の尻尾も掴めるかもしれないのが救いね』
どうも響子さんの顔色は、最近冴えない気がするんだけど、気の所為でしょうか?チラッと達也を見ると情報を吟味しているのか、こっちに目線を寄越さない。
『まあ、論文コンペの応援には行くから。頑張ってね、二人共』
まあ、私や達也の企画じゃないから頑張るのは先輩方だけども。
結局戦争回避できなかったよ…。チート持ってても無力なもんだよ、随分前から分かってたことだけども。
でも!最低でも周公瑾はぶっ殺すぞ!絶対だ!フリじゃないぞ!
私は、そう決意を新たにするのだった。
8
:陳視点
夜の中華街。とても真面な店とは言い難い外見の店の奥に座り、周の若造を待っていた。
あの若造は、呂上尉が捕らえられた辺りから居所をコロコロと変えていた。こちらが把握に困難な程に。
ようやく連絡が取れて呼び出したところ、ここを指定された。
もうすぐ約束の刻限という時に、厨房から若造が姿を現した。
「お待たせ致しました閣下。最近、こちらを嗅ぎ回っている輩がいるようでして油断ならぬのです」
笑みを湛えて私の対面に座る。
「周先生。本件では随分とお世話になっております」
私は、若造のこちらを疑うような発言を無視していった。もしかすれば、こちらの捕まった連中が何か漏らした可能性もなくはないが、そんなことはどうでもいい。
「陳閣下にそのように仰って頂ければ、こちらも報われる思いです」
無視されたことなどなかったかのように笑みを崩さず、若造が答えた。
殊勝な返事だが、本心は知れたものではない。
「お陰で作戦も第二段階へと進むこととなりました」
「おお!遂に」
私の言葉に大仰に若造が感激の声を上げた。
「しかしながら、問題もありましてな」
「それは一体?」
「武運拙く副官が敵に捕らえられてしまいました」
「存じております。呂先生がまさか…」
私は殊勝な振りを、若造はこちらに協力的な振りをしつつ相手を窺う。互いに相手の本心は窺い知れない。
「あの漢は我が国にまだまだ必要な武人」
若造が一転して笑みを消し、真剣な表情で頷く。流石に不用意な発言はしてくれんな。
「周先生のお力をお借りしたく」
仕方なく頼みを口にすると、真剣な顔で重々しく若造が頷く。
「同胞の危機を見過ごすことなど、どうしてできましょうか。喜んで協力させて頂きましょう」
一々わざとらしく大仰な反応だ。
「丁度、呂先生の移送先と日時に関する情報を得たところでした。これも天の采配というものでしょう」
私は鼻で嗤いたくなるのを押さえて、まさにとだけ答えた。
こちらでも掴めなかった情報を、どうやって掴んだのか気になるところだが、どうせ答えないだろう。
驚きを顔に出さないようにするのに苦労させられた。
「ルートも既に。その代わり…」
「分かっております。中華街には被害が及ばぬよう可能な限り手配致しましょう」
「ご配慮に感謝致します」
最後までお互いに仮面を被ったまま別れることとなった。
このままにはしない。あの若造も、司波とかいう姉弟も。
前回、呂剛虎と深景の影分身が戦った時、魔法有りの状態で余裕モードでした。
今回は、魔法最小限の縛りプレイ。
呂剛虎は、十三束君ではないので、まだ上がある状態ですが使う前にやられました。戦闘回、ホント鬼門だと改めて思います。手抜きした結果ではないんですが…。
原作でも、ちょっとと思ったので、渡辺お姉様には負けて貰いました。
呂剛虎ってエース級ですしね…。
何分、書く時間が取れない日々が続いている為、投稿はいつになるか分かりません。懲りずに付き合って頂ければ幸いです。