司波家の長女は何をする?   作:孤独ボッチ

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 色々とあって、遅くなりました。すいません。忘れられてると思いますが、お願いします。




横浜騒乱編6

               1

 

 さて、辛くも虎さんを退けた私達(お姉様が辛かった)。これで事件は終わった!訳がないじゃない。

 あのナルシストや撃ち逃げした奴、おまけで陳とかいうゴリラも残ってるのに終われる訳がない。知ってた。

 あれから事態に進展はない。そうだと思ってた。だがしかし!周…以下略。

 コンペの準備の方は、順調で私達担当分は終わったんだけどね。この調子で全部終わってくれれば良かったのに。もうコンペ明日だから準備は終わってなかったらヤバいけどね。

 あとコンペで残っているは、リハくらいなもんだ。それも午後だし、課題(学校のやつ)でもやっつけとくかって感じが今現在という訳だよ。

 心中で延々と愚痴を垂れ流しつつ課題をやっていた私と達也にエリカが話し掛けてきた。

「ねぇ!明日何時に会場入りするの?」

 来る積もりですよね?バレバレだから素直に訊いてくれていいんだよ。

 達也の方は訝し気にエリカと無関心を装っているレオ君をチラッとだけ見る。

「八時に現地集合、九時に始まって三十分はセレモニー。そこから持ち時間三十分でいよいよコンペ開始だな」

 達也が要約した内容をアッサリと教える。調べれば簡単に分かる事だし、隠す意味もない。

「うちの出番は?」

「一校は最後から二番目。つまり午後三時だな」

「へえ。結構待たされるね。その時間に合わせて会場入りしないの?」

 根掘り葉掘り訊いてくるエリカに、達也の顔が諦めの境地に達しているのが分かった。まあ、達也もエリカが何かしたがっていてコンペに来る積りなのは分かっただろうけど、達也にも諦めさせる方法が見付からなかったんだろうね。申し訳ないけど回避法が私にも分からん。

「メインで発表をする市原先輩は、午後から来る。だけど、俺や姉さん、五十里先輩は見張り兼トラブル処理で早く会場入りしないといけないんだ」

「現地集合ってことね…。デモ機はどうすんの?」

「生徒会で運送業者を手配してる。勿論、服部先輩達の護衛付きでな」

 エリカは、それを聞いて首を傾げた。

「服部先輩って市原先輩の護衛じゃなかった?」

「当日は、七草先輩と渡辺先輩が付いてくるそうだ。ただ応援に来るって感じの質問じゃないが、どうした?」

 達也もズバッと斬り込むことにしたようで、どストレートに訊いた。私には真似できませんわ。

 エリカもここまでズバッと訊かれると、答え辛いのか目を泳がせてる。

 だが、ここで無関心のフリを続けていた(バレバレ)レオ君が堪り兼ねて声を上げた。

「あのよ!俺達にもなんかやらせてくんねぇか」

 エリカもレオ君がどストレートに頼んだことで溜息を吐いていた。

「別に構わないが、どうしたんだ?」

 達也が分かり切ったことを訊く。達也よ。なんとなく分かるよ、目がちょっと死んでいるのが。

「いや、テメェ勝手なのは承知だけどよ!あれだけ苦労して短時間鬼特訓したってのに、出番全くなしは悲しいだろうが!」

「そうよ!学校まで休んで、コイツしごいて、とんでもないネタで勝手に弄り回されたってのに報われないなんて、私が可哀想でしょうが!」

 清々しい程の正直なお言葉を叫ぶお二人。仲が良過ぎでしょ。

「なんというか…。二人共、もう付き合っちゃえばいいんじゃないかな?」

「「冗談じゃない(わ)!!」」

 私の言葉にやっぱりハモる二人。

 因みに食堂で二人の付き合ってるネタは、雑談でご本人にもいってたりする。何気に私も揶揄った一人です。通信でね。

「まあまあ、これで終わりな訳がないから出番はあるよ」

「え?解決したんじゃないの」

 エリカがビックリしたようにいった。幹比古君もビックリして身を乗り出している。

 エリカも一般に公開されてない情報を当たり前みたいに知ってるね。幹比古君、アンタはどっから知ったのっていいたい。

「捕まったのは大物だけど、大物単独で動いてる訳ないでしょう?」

 達也も苦い顔を見て納得するお二人プラス一。

「このまま終わってくれればベストだ。だが、何もないという確信もない。それに論文コンペが狙われるのは毎年のことらしいからな」

「それじゃあ、僕も何か手伝うよ」

 達也の言葉に、幹比古君がすかさず手伝いを申し出る。当然のようにエリカやレオ君も参戦表明していた。

「うん、ありがとう」

 苦笑いしている達也の代わりに、私が礼をいう。

 でも、ほのか達は来ない方がいいと思うけど、みんなセットだからなぁ。

 因みに何気なくを装ってほのか達にはいってみたが、勘繰られただけでミッション達成ならずだったことを明記して置く。

 

 まあ、当たり前だよね。詳しいこと説明できないんだから。

 

 

               2

 

 全くどうにもならずに戦争…もといコンペ当日。

 事態が全く前進しないまま徒労に終わり、無事に会場に着いたんだけどね。せめてそのくらい平和にと思ってたんだけど、忘れてたわ。これ。

 ちょっと険悪な雰囲気が漂っとるとです。エリカとキャノン先輩が睨み合っとります。何故、エリカがいるのかって?愚問だよアミーゴ。因みレオ君もいるからね。空気と化しているけど!はっはっは。

「お姉様、そろそろ声を掛けた方が…」

 いやいや深雪よ。達也じゃなく私が掛けるのかい?それで止まるか?これ。

 達也はといえば、現実逃避しているのか遠い目をして立ち尽くしていた。姉として動くべきときのようだ。ジーザス。

 致し方なく火中の栗を拾うべく進み出る。

「おはようございます」

 フランクに笑顔で近付いた私を、キャノン先輩が敵の増援でも現れたかのような顔で睨む。戦術的撤退を実行したくなるが我慢する。

「おはよ!深景!」

 エリカが良い笑顔で私に挨拶してくる。キャノン先輩がイラッとしてるのが分かります。すいませんね。

 ここは婚約者の出番では?とおかっぱ先輩を見るも、苦笑いが返ってくるだけ。頼りにならん人だね!

()()()()()()にいい聞かせてくれない?邪魔だって」

 貴女のお友達をやけに意味深に強調するキャノン先輩。もしかして、私の差し金だとでも思ってるの?違うから。

 その言葉にエリカもイラッとしたのが分かったが、ここは精神的な大人であるところのこの私が抑えるべきところだ。

「分かりました。それでは()()()()私に任せて貰えるんですね?」

 大人であるところの私は自分が責任を持つ旨を伝えると、キャノン先輩がおかっぱ先輩をチラ見する。自分で決めなさい、そこは。微かに頷いて見せるおかっぱ先輩。

 渋い顔でキャノン先輩は了承してくれた。

 いっとくと、本来はそっちで処理する案件だからね?

 

 私はエリカとレオ君を引き連れて、上級生夫婦に聞こえない位置まで離れる。

「話聞くよ?」

 私は可能な限り穏やかな声で促した。黙ってたいならそれでいい。

 二人はきまり悪そうに視線を逸らすけど、私はただ待つ。

 暫く無言だったが、エリカがキャノン先輩に対する不満を漏らしたことで堰を切ったように話し出した。私はただ聞くに徹した。

 ようは、キャノン先輩のやり方といいように不満があったらしい。レオ君は喧嘩こそしなかったものの同じく不満だったようだ。

 まあ、エリカはそれだけじゃなそうだけど、まあいい。いずれ本人がいう気があればいうでしょう。

「護衛とかってガチガチにやらなくて大丈夫だよ。普通に応援してくれれば」

 何かいおうとしたエリカを押し留めて続きを口にする。

「どうせ何かあれば、大騒ぎになってどうでもよくなるから、その時は協力したって何もいわれないって」

 二人がニヤッと笑う。若干引くレオ君。それにエリカ。まるで越後屋、お主も悪よのぅみたいな顔だけど、一般論だから。

 二人に挨拶して別れると、今度は上級生夫婦が近寄って来た。

「何いったの?」

 おっと!代わりに対応した後輩に対して随分ないい様なことで。

「ここのところ危ないことが多かったから気合入っちゃったみたいで、すいません。普通に応援してくれればいいよっていったら分かってくれましたよ?何か問題ですか?」

 嘘はいってないよ?私は深々と心を籠めて頭を下げる。社会に出てマナー講習など受けると、頭を下げている相手に追い打ちはし辛いなどと教わる。実際はどうかといえば、必ずしもそうじゃない。だから耐える。

「……」

 疑り深い目付きでキャノン先輩が二人をジッと見るけど、二人は視線を合わせず明後日の方向を向いている。目が合わないと分かったキャノン先輩が私を睨むが、私は平然と受け流す。

 やがて、キャノン先輩が重い溜息を吐いた。勝利。

 

 キャノン先輩は、旦那さんの目配せの所為か礼をいって素直に去って行った。

 

 

 

               3

 

 色々とイベントがあったが、どうにか控室に入った私達は新たな客人を迎えることとなりました。

「深雪さんはお久しぶりね。二人にはよく会うけど」

 深雪は他意のない笑顔でご無沙汰しておりますと行儀よく挨拶した。

 私と達也は苦笑いしかない。後半は明らかに色々と仕事を振った嫌味だろうからね。いや申し訳ない。嘘だけど。

「藤林さんは、一校の控室に来てよかったんですか?」

 一応の盗聴対策をする達也。勿論、この部屋はクリーニング済みだ。まあ、流石に盗聴器も盗撮カメラも仕込まれてなかったのを確認しただけだけど。何事も裏技は存在する。

「今の私は防衛省技術本部兵器開発本部所属の技術士官として訪れているから。それに二校の控室にもお邪魔するわよ?ちゃんとね」

 響子さんは、お茶目にウインクしていった。気遣いが台無し感が凄いわ。

「古式魔法師としての藤林さんとしても…ですね?」

 達也が私の方を見る。

「そういうこと。だから、二人は藤林少尉でも藤林さんでも、藤林お姉様でもいいわよ?」

「それでは遠慮なく。それで藤林お姉様、そろそろ…」

「御免なさい。冗談よ」

 深雪の黒いオーラに素早く撤退する少尉殿。賢明ですよ。

「いいニュースと悪いニュース、それとおまけでろくでもないニュースがあるけど、どっちから聞きたい?」

「斬新な選択肢ですね。悪いニュースからろくでもないの、いいニュースの順でお願いします」

 私は悪い話から聞くタイプです。達也と深雪からは任せるサインがきたし、私の趣味ですよ。それに大体予想できる内容だしね。

「セオリー通りね、深景さん。私はそういうの好きよ」

「私もそうなんですよ。そろそろ真面目にいきません?」

 私達も大してやることないけど、長々話している訳にもいかない。

 響子さんは、コホンと一つ咳払いする。

「例の件、やっぱり終わらなさそうなのよ」

 うん。知ってた。親玉クラスが残ってるしね。響子さん調べでも、まだ妙な痕跡を残しているそうだ。

「一応、私の方で保険は掛けてるけど、怖い刑事さんが同伴しててね」

 ああ、分かります。源田さんですね。そして、エリカのお兄さん一号が保険ね。原作ではいないからね、源田さん。響子さんにいいとこ見せようと気張って来たんだろうに、憐れエリカお兄さん一号。おまけが漏れなく付いて来た訳だ。

「それで、ろくでもないニュースだけど、深景さんの怪しい情報源から浮かび上がった華僑だけど、只者じゃなさそう。これ見てくれる?やっと少しだけ映像確保できた程度だけど…」

 私達はいわれて響子さんのタブレットを覗き込むと、あのナルシスト野郎が映っていた。だが、ナルシスト野郎は、カメラに向かって明らかに笑みを浮かべて立ち去って行った。

 ああ、これは気付かれてますな。

「これ以降、カメラに記録されていないし改竄の後もなくてね。あの辺りだと街路カメラも当てにならないから、消息不明よ。申し訳ないけど、直近に危機があるかもしれない状況だと、これ以上は人手を割けないから」

 まあ、あの野郎だと気付かれると探し出すのは、難しいかもしれないねぇ。響子さんの立場だと、気付かれるわ、これ以上注力できないわで、ろくでもない話って訳ね。ネタ元は私の情報のみだし。それにしても怪しいって…。いや、ジーザス御子柴、ココ・ヘクマティアル…。うん、弁護できないくらいに確かに怪しいわ。響子さんからの投了宣言にも等しいお言葉。だが、諦めたら、そこで試合終了だ!私はやるよ、その前に戦争だけどさ!

「次はお待ちかねのいいニュースよ」

 私が余程、顔を顰めていたのか響子さんが気遣うようにいった。

「ムーバルスーツが完成したわ。夜にはこっちに持ってくるって真田大尉が満面の笑みでいってわ。それと、深景さんの意見は採用されたみたいよ?」

 ホッとするよ。そりゃ、響子さんは着ないからいいかもしれないけど、あの身体の線がハッキリ出るわ、着替える場所が男女同じだわって環境は何とかして欲しかったんだよ。何よりダサい(注:個人主観です)。他人事なら、オタクの一人としてニヤニヤと鑑賞したかもだけど、こっちは着用して戦わないといけないんだよ。そりゃ、捩じ込むよ。因みにこっちのムーバルスーツは、インナーの上から装着可能だし、ちょっと鎧っぽい装甲が追加されて特撮ダークヒーローっぽくなりました。趣味ですが何か?勿論、軽くて丈夫な素材で動き易いですとも。抜かりはない。

「もう完成ですか…。流石ですね。しかし、急がなくてもいいのでは?」

 達也が冷静に意見する。ところがこれが正解なんだよね。いえないけどさ。

「明日にデモがあってね。持って来ないといけないのよ。尤もそれを捩じ込んだのは真田大尉なんだけどね。ほら、基幹部品までそっちに頼り切りになっちゃったじゃない?せめて完成ぐらいはって頑張ったみたいよ。これで面目を保てるってホッとしてたわ」

 響子さんが苦笑いしていった。

「こっちは完成させられなかった訳ですからね。逆に有難いんですよ」

 達也が気遣いではなく本気でそういった。FLTにパワーアーマー系のノウハウは流石になかったからね。天眼で漁ればどうにかなったかもだけど、真田さんも趣味人だから参加したがってたんだよね。だから噛ませて差し上げた次第です。どっから聞いて来たのか不明ですよ。

「それは大尉に直接言って上げて?喜ぶと思うから」

 そうして響子さんは語るべき内容を話し終えると、不穏な資料を残して二校の控室へと去って行った。合法ロリ巨乳を後ろに貼り付かせたまま。

 

 響子さん、気付いててそのままにしてるよ。憐れな人が多いな、最近。 

 

 

 

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 私と達也はデモ機の監視業務に当たっていた。本当は、先にあのバッカプル夫婦がやる筈だったんだけど、旦那さんの方が気になる発表があるとかで順番を入れ替えたんだよね。まあ、別に私達はいいんだけれども。

 それが終わってバカップル夫婦と交代した私達は、深雪と合流して客席へと向かう。原作でも他校の発表とか殆ど紹介されなかったし、どういう風にやっているか地味に楽しみだ。重要だからもう一度いうけど、バカップル夫婦みたいに気になる発表はないから、交代しても全然構わなかったからね。

 そして、ここで懐かしい再会が!って夏に会ってるから、そんなでもないけどね。

 いわずもがな一条将輝君である。相変わらず残念若様。そしてイケメンだな。ついでに隣にはうちの学校の十三束ショタ鋼君がいる。強そうな名前とは裏腹にショタ系な顔の御仁で、容姿と違って実力は名前負けしておらず、地味に強かったりする。今回は二人共、会場警備スタッフとして、ぬりかべの手下として働いている。しかし、残念若様は凄いな。横のショタ鋼が霞んでるよ。少女漫画だったら絶対に背景に花背負ってるよ。非モテの私には眩しい。容姿に関しては、深雪を見てるからポッとなったりしないけどね。ショタ鋼は、まあドンマイ。

「深景さん!」

 爽やかな笑顔で挨拶されてトキメキが全くなしとは、我ながらどうかと思うけど、精神年齢ウン十代の私だから仕様がない。

 私も笑顔で頭を下げて置く。

 何やら私の家族達からほんの少し黒いオーラが出たように思うけど、きっと気の所為だろう。間違いない。

 残念若様は笑顔で私の前まで来る。

「お久しぶりです。後夜祭のダンス以来ですね」

「ええ。そうですね。お元気そうで何よりです。一条さんは、警備ですよね?」

 達也は兎も角、深雪をまるっと無視して私に話し掛けた残念若様にショタ鋼がマジかコイツ!?みたいな顔で見ている。よし、表に出ろ。冗談だよ、よく分かるよその気持ち。

「はい。しっかりお守りしますから、ご安心下さい」

「それでしたら警備に戻られたらいかがですか?一条さん」

「これは失礼しました。挨拶を失念していました。お名前はなんと仰るんでしたっけ?」

「嫌ですわ。もうボケていらっしゃるのですか?」

 深雪が私との間に割って入るようにいった言葉でバトルが始まったよ。またしても展開されるインフェルノ。だから、止めなさいって。

 達也。止めなさい。騒ぎになる前に。ショタ鋼の顔面が最早エイミィに見せられないレベルで崩れているから!達也は考え事でもしているのか、二人を見ていない。

 大方、残念若様が居た方が安心だとか考えてるんでしょうが。

 これは私が止めないといけないか。

「一条さんがいらっしゃるのでしたら、安心です。宜しくお願いしますね?」

 残念若様が深雪を避けるように横にずれて私の前に立つと、深雪の眼がスッと細くなった。怖い。

「勿論です」

 残念若様が原作の深雪に対するように、気合が入り過ぎている。私に対して。袖繕っただけで何故こんなに懐かれたんだろうか?ホントに謎だ。

「十三束君。苦労するだろうけど頑張って下さいね」

 深雪が最後にショタ鋼に声を掛けたが、ショタ鋼はカクカクと人形のように頷くのみだった。深雪の今の笑みは凄い迫力だからね。分かるよ。

 深雪の当て擦りに、残念若様が更にヒートアップしかけたが、止めて仕事に戻らせた。

 

 気合の籠った残念若様の背中を見て、原作深雪程煽ってないんだけどなぁと心配になった。

 

 

 

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 色々と気苦労があった後、エリカ達と会場で合流したんだけどさ(何故かレオ君は除く)。何やら見覚えのある渋い御方の姿が見える。チャラい見た目のお兄さんの隣に。源田さん、ヤッホー。

 源田さんは、こっちに気付いて軽く手を挙げて挨拶してくれた。

「何?深景ってバカ兄貴の隣にいる人と知り合い?」

 エリカが源田さんについて訊いてくるけど、気付いてたのに千葉兄の存在を黙殺してたのね。千葉兄は気にしてないみたいだけど。無視されても懲りずに手をヒラヒラ振ってるし。

「まあ、同門…というか同じ先生に付いてる?から」

 微妙ないい回しなるのも、剣の師匠が紛らわしい苗字でそれを気にしてるからだよ。前にいったっけ?

「ああ!そうなんだ!いいな…私も紹介してくんないかな」

 エリカは将来武者修行の旅に出たいという生まれる時代を間違えた?いや、ある意味合ってるのかな?女の子だからね。時代が時代なら大人しく嫁に行けっていわれるし、合ってるんだと思う。そんな訳で、現代の剣聖とはお近づきになりたいところでしょ。紹介くらいはしてもいいけど、教えて貰えるかはエリカ次第かな。

 幹比古君もエリカが千葉兄をガン無視していることをスルーしている。他家の因縁に巻き込まれたくないだろうしね。

 横では、達也が深雪にショタ鋼のことを訊いていた。二人でショタ鋼のレンジ・ゼロのことを話したりしていた。

 話を変えるようにエリカが達也と深雪の会話に割って入る。

「何話してんの?」

 だが、それは微妙に失敗だったりする。

「そういえばレオはどうしたんだ?」

 達也があまり愉快な質問ではないことを訊いたから。途端に不機嫌になるエリカ。そして、目を細めて低い声で宣言する。

「この際だからいっておくけど、私はアイツを鍛えただけで、付き合ってる訳でもないしコンビでもないの。お分かり?」

「そういう意図があった訳じゃないんだか…」

 エリカの迫力に苦笑いしつつ達也がいった。深雪でさえ苦笑いしているから、大した迫力だったといえる。

 でも、お似合いだと思うし、絶対そうなると確信する次第であります。

 そんなことを考えた瞬間に、エリカが私を睨み付けた。怖い。

「どうしたの?」

「いや、なんか不愉快な事を考えたような気がしたから」

 声が震えないように注意しながらいったけど、エリカの勘が怖い。

 それから探るように見られたけど、素知らぬ振りを通した。

 

 因みに、合法ロリ巨乳は響子さんにガッツリと釘を刺されて怒っていたそうな。

 

 

 

               6

 

 市原さんが到着したのは、五校の発表中のこと。お嬢様とお姉様もおまけに付いて来た。

「来ちゃった」

 私の前でお嬢様がそんなことをいっているが、私はどう反応すればいいんだろうか?いらっしゃい!と前髪でも撫でるべきだろうか。いかん、年齢が。

「予定より早くいらっしゃったのは何かあったということですか?」

 反応に困っている私を見兼ねたのか、達也がお嬢様に話し掛ける。

 なお、深雪は完全に知らん顔でいる。薄情な妹だよ。嘘だけど。

「予定より早く尋問が終わったからね」

 お嬢様に任せていると埒が明かないと思ったのか、お姉様が代わりに答えた。

「尋問ですか。それで新たな事実は判明したしたんですか?」

「ああ、関本はマインドコントロールを受けていたようだ」

 達也の顔が真剣なものに変わる。予想より本格的な工作だったからだろうね。

「メンタルチェックはブランシュの一件以来、定期的に受けるよう義務付けられている筈ですか?」

「定期的といってもひと月に一度だ。付け入る隙などあるということだろう」

「凄腕なのか、薬物なのかが気になりますね」

 お姉様は、投げやりに肩を竦めた。分からないということですね。

「もしかしたら本物の邪眼かもしれないわね」

 ここでシリアスに復帰したお嬢様が口を挿む。

 因みに、ここでいう邪眼は良い夢を見られる方のものではない。

「まあ、彼は元々国家が魔法師を管理することに不満を漏らしていたから、邪眼でいいように使われた可能性はあるわね」

「厄介な可能性が持ち上がりましたね。前回は安い手品でしたが、今回こそは本物かもしれないとは」

「そうね。だからこそ、注意してね。ハンゾー君達には、もういってあるけど厳重に注意して」

 お嬢様はそう締め括ったけど、どうして私の方を見ていたのかな。まあ、何かあるのは確定している訳だけどね!

 結局は、その場その場で全力を尽くすという名の行き当たりばったりでやるしかないってこと…。いつも通りでしょ、それ。

 

 そして、後に分かるが(白々しい)、やっぱり虎さんは檻から解き放たれていたそうな。

 

 

 

               7

 

 大詰めとなると、私は観客席で応援となる。達也は正式にメンバーだけど、私は協力しただけだしね。観客席から見守らせてもらうよ。因みに、レオ君はもう合流してエリカ達と座っていた。他の面々も一応、警戒はしてるけど、やっぱりゾロゾロと兵隊が雪崩れ込んでくるのかね。

 私は自分の端末を眺めて溜息を吐く。実は、虎さんが逃げ出さないように匿名でタレコミしたんだけど、どうやら意味をなさなかったみたい。逃げられたよ。きっとハッスルしてるよ。あの虎さん。お姉様じゃなくて私にくるよ、これ。

『もう兵の配置は済まされてると見るべきね。定期連絡を偽装してるみたいだけど、もう警戒してた市内の警察やら、海上保安庁やらが消息不明になってる』

 そんなメッセージがポンと表示される。一応、エレアに調べて貰ってたんだけど、案の定な結果か。タチコマは一応、魔装大隊の備品だからね。あんまり好きに使い過ぎると、こっちの情報も筒抜けになっちゃうからさ。今回はエレアにおねがいしてたんだよね。

 そして、エレアが送ってくれたデータに目を通す。ああ、表向き異常なし的な雰囲気を装ってるのね。それで騙されちゃってるんですね。なんで、日本ってセキュリティ弱いんだろうね。

 通信端末を見ながら顔を顰める。無駄に犠牲を出したような気になる。いや、そうなのか?いや、考えないようにしよう。精神衛生上宜しくない。

「お姉様、どうかなさいましたか?」

 深雪が心配そうに声を掛けてくる。どうやら心配させてしまったみたいだ。私は軽く頭を撫でてやる。

「知り合いから、メッセージがきただけだから心配しなくていいよ」

 嘘だけど。戦争準備されてるけど、雪崩れ込まれることがほぼ確定してるけど。

 ラッキースケベ幹比古君と美月の眼で監視もしてるけど、二人の監視じゃ物理的に突入してくる兵士は引っ掛からないみたいだしな。

 これは、諦めていつも通りにやるしかないかぁ。ちくしょう!

「ごめん。ちょっとは席外すよ」

 私は立ち上がり、エリカ達から見えないところまで行くと、通信端末を弄る。

 ぬりかべの端末にタレコミを入れて置く。お嬢様も注意するようにいったみたいだけど一応ね。どこまで匿名のタレコミを悪戯と判断せずに取り合ってくれるか分からないし、効果は不明だけど何もしないよりはマシでしょう。

 

 ソースが悪戯メール染みたものじゃ、あんまり期待できないかなぁ。

 

 

 

               8

 

 :十文字視点

 

 七草と渡辺からの情報は既に共有されている。それに向けて方針も変更済み。防弾チョッキも着用させている。だが、共有されていないことが一つあった。

『敵集団が既に入り込んでいる。注意されたし』

 送り主不明のメッセージ。十文字家の人間に悪戯を仕掛ける度胸のあるものなど、そうはいない。それを分かって送られたものか、それとも理解できない愚か者の仕業か。どちらにせよ。現場の空気を感じ取るに不穏なものがある。本当にせよ嘘にせよ。

 それ故に、その感覚が正しいか、より現場に近い人間に確認する必要があるだろう。そう考えた俺は、服部や桐原に問い掛ける。

「二人共、現在のところまでで違和感を感じる点はあるか?」

 服部と桐原は互いを見てから、桐原が先に話せというような仕草をした。やはり、二人共感じていたか。

 服部は確信がない所為か、いつもの歯切れの良さが鳴りを潜めていたが口を開いた。

「…横浜だからといっても、外国人の数が多いように思いました」

 ふむ。現地を下見した服部の視点という訳だ。

 コンペは一般の人間は見学できない。関係者のみだ。会場周辺には魔法を愛好する変わり者でも近付いてこれない。加えて観光するにも、街中には警戒中の警官や魔法師協会の魔法師がうろつき、正直楽しみは半減する。観光するには不向きな時期だ。それに不穏な情報の数々を思えば、関連を疑いたくなる。

 俺は今度は桐原へと視線を向ける。

「外国人の件は、それ程気にしてはいませんでしたが…。どうも会場周辺より街中が妙に殺気立っているように感じました」

 服部も頷いていた。

「ふむ。やはりそうか…」

「十文字先輩もそう感じていましたか」

 頷いた俺に、服部が表情を険しくする。どうも、良い予感がせん。

 俺は勢いよく立ち上がると、通信機のマイクを取り上げて全隊に通達する。

「一校の十文字だ。これより厳戒態勢に移行する。全隊へ通達する。すぐに戦闘になることも想定せよ」

 俺は、通信機のマイクを下すと、二人を見た。

「服部、桐原。少し席を外す。警備を担当している魔法師の責任者にも話を通してくる」

 二人は無言で頷いた。この二人ならば問題あるまい。

 俺の頭の中ではあのメッセージが強く自己主張していた。

 

『敵集団が既に入り込んでいる。注意されたし』

 

 

               9

 

 一校の発表が始まった。

 どうやらグラップラー保険医が平河妹も原作通り連れてきているようで、少しイラッとする。

 警備の体制は、どうやらぬりかべが私のメッセージかお嬢様の情報を信じたのか、キチンと対応してくれているようだ。

 会場周辺の入り口には、すぐに展開できるバリケードが設置され警備体制は大幅に強化されていた。元々防弾チョッキは最初から装着していたが、今は外に特殊な盾と特殊コーティングの強化ガラスまで設置されていた。

 こっちは成果を出すと良いんだけどね。

 美月やラッキースケベ幹比古君も、警戒を緩めず発表を見るという器用なことをしている。かくいう私もそうだけど。

 市原さんの発表も佳境となる。私も協力した機器は存分に役割を果たしているようだ。達也も付いててトラブルなんて起こりようもないけどね。

 そして、市原さんの力強い言葉で発表は締め括られる。内容はって?そりゃ、アナタ原作チェックして。私は監視業務が忙しいです。

 次の三校が発表準備に入り、一校は素早く撤収作業を行う。

 皮肉なことに原作通りのタイミングで異変は起こった。

 

 残念若様が不審者を発見し、相手は誤魔化すことを早々に諦めて反撃に出たのだ。

 

 

 

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 :将輝視点

 

『一校の十文字だ。これより厳戒態勢に移行する。全隊へ通達する。すぐに戦闘になることも想定せよ』

 通信機の向こうから十文字さんの威厳のある声が響く。

 俺は、その頃一校の十三束と共に会場内から外の巡回に交代したところだった。

 不穏な注意だ。十文字さんは冗談をいう人ではないだろうから、何かしらの情報と根拠があるのだろう。そういえば市内を移動している際に矢鱈と殺気立っている印象を覚えていた。だが、中華街などの不穏な一団が身を潜める場所も多い街故に、一応注意して置こう程度にしか思わなかった。

 俺は心拍を若干上昇させる。

 隣の十三束は、緊張した表情をしている。大体の魔法師は実戦経験がないので仕様がないだろう。

 会場内には彼女がいる。絶対に通さない。それにジョージも学生の発表の場であっても気合十分といった感じで、今回の発表に取り組んでいた。九校戦では一校の司波に好き放題やられたのが、相当悔しかったようだ。かくいう俺もスッキリしている訳ではないから応援している。

 それにはまず今のパートナーである十三束の緊張を解してやることが先決だろう。十三束の肩を軽く叩いてやる。

「力み過ぎるな。ゆっくりと深呼吸しろ」

 軽く肩を叩いてやるとビクッと反応していたが、俺の言葉に素直に深呼吸している。俺は内心その素直さに苦笑いする。ジョージだったら馬鹿にするなと怒る場面だな。だが、意見を聞き入れる余裕があるのはいい。

 少し緊張が残る十三束と会場周辺をゆっくりと歩き始めると、ある光景が目に入った。

 外国人、東洋系の観光客がカメラを手に歩きながら話していた。一見楽しそうに会場をこれ見よがしに指差している。一見すると魔法フリークが、関係者以外非公開の会場だけでも近くで見ようと訪れたといった体だが、俺の眼は誤魔化せない。

 俺が立ち止まったのを、十三束が怪訝そうに振り返っている。そして、俺と同じものを見たが、特に何かに気付いた様子はない。こればかりは学生では気づき難いか。

 その観光客は、鍛え方が軍人のそれだ。服越しでも分かる。家柄の関係でそういう人間との交流がかなりあるからだ。アスリートの鍛え方と異なる相手を殺す為の筋肉の付き方をしている。それに撮影機材を入れているにしては大きいバッグ。決定的な一定の歩幅。退役軍人という可能性は低いだろうが、決めつけはできない。俺は十三束を促し、その観光客へと近付いていく。勿論、通信機で本部に連絡を入れつつだ。

「こちら一条。外周フェンス外に不審者を発見。これより声掛けを実施する」

 それを聞いて十三束の表情が一瞬強張る。あちらから、見えていないといいけどな。

『応援を送る。無理はするな』

 十文字さんが席を外しているのか、一校の服部さんが通信を返してくる。俺は短く了解と答える。すぐに応援が左右から二組、五校と八校の制服を着たグループと警備を担当する魔法師二人組が近付いてきた。もう正式な警備に話を通したようだ。流石十文字さんだな、行動が早い。

 観光客は、こちらを見て戸惑うような様子を見せていた。だが、身体の力は程よく抜けており、すぐに次の動作に移れるようにしているのが見て取れた。

 俺は近付いてくる味方に目配せする。二組共にこちらの意図を汲み取り、援護の体制を取ってくれる。俺達は何気ない表情で不審者に近付いていく。

 先に取り繕うのを止めたのは、あちらだった。

 大きいバッグは瞬く間にバラバラになり、対魔法師用のハイパワーライフルが姿を現し、射撃体勢から躊躇なく発砲した。よく訓練されている。俺でなければ当たったかもしれない。

 その弾丸は、アッサリと俺の障壁の前に弾かれる。十三束が素早く障壁から抜け出しフェンスを蹴って着地する。素早い動きに不審者の集団の反応が遅れる。一人があっという間に掌底を食らって横に並んでいたお仲間諸共吹き飛ぶ。

「餓鬼がぁ!」

 ハイパワーライフルが十三束に向く前に、俺の魔法で残りの連中が吹き飛んだ。

 十三束がこちらを見て頷く。

 背後では警備を担当する魔法師が通信を入れている。当然、もう一組の学生警備組もだ。

 だが、その頃には知らせるまでもなく方々から銃声が響いていた。いくら察知されたとはいえ、思い切りが良過ぎる気がする。

「本部。これらの攻撃は囮の可能性がある。注意してくれ」

『了解した。入口の封鎖に加わって侵入者の排除に加わってくれ』

 すぐさま本部から返答が返ってくる。悪くない。状況は兎も角な。

「行こう」

 俺は十三束に声を掛けて、一番近い出入口に向けて走り出した。

 

 更なる攻勢があれば、学校の生徒は撤退させないといけない。勿論、彼女も。

 

 

 

               11

 

 :源田視点

 

 どうも最近、警部殿がソワソワしてると思ったら、案の定藤林のご令嬢が絡んでいやがった。しかも、勝手に会場まで見回りをすると約束したときた。呆れてものがいえん。いいように使われるなと忠告したが無駄だったか。

 放って置いても勝手に行くのが目に見えたいたから、俺も付いて行くことにした。少しはマシだろう。

「警部殿。気付いてるか?」

「あの…全然敬意が籠ってないんですけど…」

「これは失礼。で?」

 重い溜息を千葉警部殿が吐く。それはこっちの溜息だ。

「会場が既に物々しいですね。学生も魔法協会の魔法師の方も」

「ちょいと事情を訊いた方がいいな」

 俺は、通信端末を使って街を巡回している稲垣に連絡を取る。ワンコールもないうちに奴が通信に出た。嫌な予感がしやがる。

「何かあったか?」

『管制ビルに自爆車両が突っ込み爆発炎上中、各地で武装勢力が動き出しています。今、自分達で対処していますが、応援を要請中です。そちらも無事では済まなそうですよ』

 俺は思わず舌打ちする。やっぱり、禄でもないな。警官が二人うろついたくらいじゃ、どうにもならん。

 その時、藤林のお嬢さんが真剣な表情で近付いてきた。

「そちらも情報がきたようですね」

「お陰さんでな。こんな非常事態じゃ、どこまで踏ん張れるか怪しいところだぜ。そっちは万全に準備しているんだろうな?」

「現在、駐屯地から部隊が向かっています」

「それまで勤勉なお巡りさんが身体を張るしかないって訳だ。泣けるね」

「源田さん。今は」

 藤林のお嬢さんに思わず嫌味をいっていると、千葉が行動を促してくる。心中で舌打ちする。今はコイツが正しい。

「藤林さん。我々は現場へ向かわなければなりません」

「私はここへ残ります」

 千葉が真面目に敬礼して走り出すのを、俺は後から追い掛けた。

 

 まさか想定より斜め上がくるとはな。最早、戦争だぜ。

 

 

 

               12

 

 

 警戒していた面々が、外の攻撃に反応する。

 外で微かな戦闘音がしているが、もう爆発音と衝撃がきていて不審に感じている生徒がチラホラといる。

 警備とテロリスト御一行様が激突したみたいだね。しかし囮ですよ、それ。だって、上空に光学迷彩&遮音のステルスヘリがホバリングしてるからね。魔法万歳ってとこな兵器だよ。

 丁度、達也とショタジョージが話しているタイミングでだ。やっぱり原作通りか。嫌になってくるよね。結局はこれだもの。

 達也が気付いているのは当たり前。もうドンパチ始まっていることまで視えているだろう。ショタジョージも怪訝な顔をしている。

 そして、こっちに向かってるテロリスト諸兄は、当たり前みたいに光学迷彩使ってるけど、私の所為なのかね。いや、違うよね。だって、ほのかだって魔法で同じようなことしてたし!光学迷彩は…タチコマに搭載してるし、ムーバルスーツにも採用されたわ。で、でも、私が最初に開発した訳じゃないし!違う!うん。そうだ。

 おっと、余計なことを考えているうちに降下してきたし、あっという間に侵入されてますがね。外は、気付いている人もいるみたいだけど、襲撃で足止め食らってるか。こっちでなんとかしろってことね。不甲斐ないとは思わないよ。私はフッと溜息を吐いて立ち上がった。

 それを見て、達也が険しい表情でこちらを見てくるが、任せるように合図を送る。渋々と達也は、こちらに来るのを中止する。私ならただ斬るだけだから、達也より目立たない。

「お姉様」

 深雪が険しい顔で声を掛けてくるのを、笑顔で宥める。

「エリカ、レオ君。遺憾ながら出番」

 エリカが不敵な笑みを浮かべて同じく立ち上がる。既にラッキースケベ幹比古君から襲撃の件は伝わっている模様。レオ君も同様な顔で立ち上がる。

 私の視界に偶々三校の応援席に四十九院沓子が居るのが見えた。まあ、彼女も応援に駆け付けていても可笑しくはないね。うん、彼女にも働いて貰おう。立ち上がった時に、こっちに気付いたようで、手をヒラヒラ振って見せた。あっちも何か厄介が起こったと気付いているだろうに余裕だね。でもナイスタイミング。私は手でパタパタと扇いで見せた。それで私の造った古式の術具の事だと察したようで、取り出して見せてくれる。持ってて良かったよ。

 音もなく扉が少し開き、すぐに締まる。だが、その短時間で侵入を果たしていた。奇襲ご苦労様です。

「スリーマンセル!スリーセット!左右中央!」

 光学迷彩を纏った兵士が一瞬止まる。学生連中も達也達以外はギョッとした目で私を見るが、知ったことじゃない。

「沓子!朝霧!」

 四十九院家は水のエレメントの家系で、光学迷彩とは相性がいい。

 因みに朝霧とは、まさに朝霧のような霧を発生させて姿を隠すと同時に、相手を自分の土俵へと引きずり込む魔法だ。どの魔法をセレクトするにしてもゲームでいうバフが掛かると思えばいい。私はそれを入れてくれと頼まれたから知っている。

「うむ!よく分からんが心得た!」

 うん。我ながら、よくぶっつけ本番で頼んだよね。光学迷彩で来ると分かってれば予め頼んでたんだけど、そんなの無理だからさ。乗ってくれて良かったよ。

 次の瞬間、沓子を中心に霧が立ち込める。完全に互いの姿が見えなくなるが、その中で不自然に光る人型が見える。濃霧にならないように調整してくれてるみたいで、余計に助かるわ。多分、光学迷彩の人影が見えたことで糸を察してくれたんだろう。

 じゃ、お疲れ!

 私は心の中でそう告げて霧の中を走り、中央に走り込んでいた男三人を仕込んでいたスペシャルソードで叩き斬る。流石に反応はされたが、避け切れずに血煙を上げて倒れた。

 左右の通路を走ろうとした兵士達も制圧されたようだ。

 沓子の傍には例の九校戦で深雪達と戦った一色さんと十七夜さんがいた。彼女達が素早く倒したようだ。結構意外だけど、尚武の気風な三校だけあるのかな?男連中なにやってんの?それ以前に警備は?あっ!今動き出した。

 エリカは見事に一太刀で二人斬り倒しており、レオ君はエリカの修行の成果はどこやったといいたくなる力業で殴り倒したようだった。

 霧が消え、連携した人間と警備を担当する生徒以外が悲鳴を上げてパニックになる。

「お姉様」

 いつの間にか近付いてきた深雪が私に手を翳す。

 気付いてみれば、少し返り血を浴びていた。深雪がそれを魔法で消した。

 さて、なんか私とかエリカ達とか沓子達が恐怖の目で見られてるみたいだから、そろそろ落ち着いて貰おうかと、CADオタを見ると、既に梓弓を放っていた。オタの魔法が空中で波紋のように広がり、生徒達が落ち着きを取り戻した。

 CADオタの手は若干震えていた。まあ、仕様がない。ゆっくりと説得する時間もなかったのに、即座に対応してくれたことを感謝すべきなんだろう。短時間で使わせたお嬢様に。その証拠に傍にお嬢様の姿があり、私と目が合うとウインクしていた。連携が見事に決まったね。打合せ一切なしだけど。お嬢様がCADオタに何事か告げると、ゆっくりと壇上へと向かう。ショタジョージが壇上で固まっていたが、漸く再起動を果たしてお嬢様に場を譲る。 

「皆さん。一校の七草です。現在、武装勢力がこの会場を襲撃してきています。いえ、この会場だけではありません。この街が既に侵略者の攻撃を受けている状況です」

 おそらく独自の情報網で最新の情報が入って来たであろうお嬢様が、言葉の爆弾をぶっこんできた。まあ、外は本物が飛び交ってますがね。

 感知系の魔法を使う生徒は、早速状況の確認をしているのが見て取れる。梓弓の効果でパニックは避けるだけじゃなく、冷静な行動ができている。

 外の警備は、事前リークが機能しているようで他の侵入を許していない。あっ!ヘリが落ちた。ぬりかべ流石。それから御代わりは今のところなさそう。この分だと早目に会場周辺は排除できそうな感じだ。

「目的はおそらくここに保管されている魔法技術であると推測されます。すぐにこの場を離れる必要があるでしょう。一番不味いのは、ここに残り続けることです。ここから地下道を通ってシェルターへ向かうか、他の脱出法を取るのか。早い決断をお勧め致します」

 お嬢様がそう締め括る。

 私は深雪を連れて、達也の方へと歩き出した。エリカ達が私達を追ってゾロゾロと動き出す。

「姉さん、どうする?」

 達也がお嬢様が喋ろうとしたのを遮るようにいった。お嬢様は、達也を頬を膨らませて睨み付けていた。あざと過ぎて逆に凄いわ、その反応。でも、不満はあっても口を挿まないのは、訊きたいことは同じなんだろう。

「脱出ルートは警備担当の人達の活躍で開いてるからいいとして、状況確認しときたいかな。現在の戦況によっては方針も変えないといけないし」

「じゃあ、VIP会議室を遣おう」

 今まで黙っていた雫が発言する。そういえば、雫はお父さん経由でパスワードとかも知ってるんだったけ。それでいいのか雫父。って今はいいか。

「それじゃあ、私達はデモ機のデータを処分してるわ。後で合流しましょう」

「一校の方はどうするんです?」

 私の質問に、お嬢様が笑みを浮かべた。

「今の生徒会長はあーちゃん…中条さんよ。彼女に任せるわ。それはもういったから、何度もいったりしたら小姑みたいで鬱陶しいでしょ?」

 との答えだった。

 視線をCADオタへ向けると、小動物みたいにプルプルしてるけど一応は纏めてる…か?まあ、大丈夫としておこう。

「分かりました。一応いって置きますが、終わったら応援に行きます。でもそちらが先に終われば、先に避難して結構です。いいですね?」

「分かったわ」

 そして、私達はお嬢様と別れる。

 チラリと他校に目を向けると、既に高校別に集まり動き出していた。三校の方もショタジョージが纏め役を引き受けているようだ。フリーズの汚名返上したね。上級生も居る筈だが何もいうまい。

「地下シェルターへ向かいます?」

 一色さんの質問に、ショタジョージが一瞬考え込んでから首を横に振る。

「地上を行こう。将輝達とも合流する必要があるしね」

 おお!流石参謀。達也と同じ回答を素早く弾き出したようだ。

「姉さん?」

「いや、なんでもないよ。行こうか」

 私達は、他行が固まって行動しようとする中、別に足早にVIP会議室へと急いだ。

 

 ところが、私は大事なことをすっかりと忘れていた。

 

 

 

               13

 

 途轍もない銃弾の嵐に曝されております。結果、我々は柱の陰で釘付けにされています。

 何故かって?はっはっは!シェルターへの通路が外へ繋がってたから、達也もショタジョージも地上から行こうって結論出したんだよね?なら、向こうからこっち来るのも有りじゃありませんか!警備陣、そっちは押さえてなかったんだね。責められんけどね!原作描写からも、もっと遅いと勝手に思ってたよ!考えてみれば、周辺からのアプローチに失敗したら他のアプローチを試すに決まっているんだよ。迂闊だったわ。CADオタ達とか他校の学生とか大丈夫かね。もう、シェルターへ地下使って行くのは厳しいよ。とか考え事してる場合じゃないか。

「相手は対魔法師用の高速弾を使用している」

 達也は流石なもので、こんな状況にも眉一つ動かさない。

 うん。凄い貫通力と弾速だよね。ありゃ、普通なら魔法使う前に死ぬわ。

 レオ君が自信満々に柱の陰から出ようとして、達也に強引に引き戻されていた。

「アホ」

「うるせぇな!」

 エリカに蔑まれて、レオ君ちょっとガチギレ。

「はいはい。そこまでね」

 私が宥めてやると、二人共漫画かアニメで見るようなリアクションでフンッ!とお互い顔を背けた。やっぱり気が合うと思うんだよ、この二人。

 だが、いい加減真面目に事態を打開せねばなるまい。

 よし!深雪と達也の出番だ!

「姉さん」

 なんだい?マイブラザー。どうして、私に手を差し出してるのかな?意味が分からないよ?ここは銃弾凍らせた方がいいでしょう。私なんにもできないよ?嘘だけど。

「姉さんの魔法特性を、いい加減キチンと把握するのに丁度いい機会だと思うんだ。バスで使ってた効果だけじゃないんだろ?」

「……」

 まあ、完璧に誤魔化せてるとは思ってなかったけど、この状況でやるの?まあ、雑魚相手だからね。丁度いいっちゃ丁度いいのかもしれないけど、こっちは丁度よくない。スプラッタはなるべく避けたかったんだけどね。

 私は盛大な溜息を吐いた。まだ、真価は隠して置きたい。一部はあの美魔女にバレてるから、そこまではいいかな。覚悟を決めて私は達也の手を取った。

 深雪を除く全員が頭の上に疑問符を浮かべているのが分かる。

「精度は期待しないでよ?」

「敵なんだから、遠慮は要らないよ」

 そらそうだ。

 私の頭に映像が流れ込んでくるように全ての敵が視認できている。

 そして、私は()()()()()を発動してやる。

 私の魔法特性は切断。本来は見えるものを切り裂く力だが、それの発展として目に見えない概念レベルのものまで切断できるのだ。最初に説明した時はなんか別のこといったって?気にしないで。

 一斉に敵から悲鳴が上がる。ワザと狙いを甘くしているので、銃だけでなく腕ごと切断された奴が結構いるだろう。

 痛みにのたうち回るような馬鹿はいないが、嵐のような弾幕は止み突撃の隙が生じる。

 事情を把握している達也は躊躇なく柱の陰から飛び出して、敵を片付けていく。レオ君もエリカも疑問を捻じ伏せて敵を斬り倒し、殴り倒していく。だからレオ君、修行の成果はどうした?

 そして、ラッキースケベ幹比古君も呪符を使い敵を吹き飛ばした。

 敵集団の残党は、這う這うの体で逃げ出した。追撃は控えた。

 戦闘は終わった。アッサリと。

 私は一つ溜息を吐くと、非戦闘系の友人達を振り返った。流石に深雪以外は死体を見て顔を蒼くしている。死体の状況は酷いの一言だけど、レオ君が何気に一番綺麗に敵を倒している。因みに、一番気遣いないのがエリカだったりする。血の海だよ。

 まあ、かくいう私のやったこともスプラッタなことなんだけれども。怯えさせちゃったかな。こんな魔法特性だからね。他の使い方もできなくはないけど、血生臭いことが主だからね。

「悪いけど、今は頑張って」

 私の言葉に非戦闘系の友人は、なんとか頷く。震えているのは見なかったことにした。

「済まない。刺激が強かったな」

 達也が戻って来て気遣いを示す。ほのかの血色が少しだけよくなったのは流石だね。

「姉さんも済まない。強引だったけど、確かめて置きたかったんだ。こういう事態になった以上は」

 達也の言葉には昏さが混じっていた。おそらくは沖縄の出来事が頭を過っているんだと思う。

 私は気にしないでといわんばかりに、手をヒラヒラ振った。

「兎に角、VIP会議室に急ごう」

 達也に促され、ゾロゾロとみんなが動き出す。

 

 これからが本番だ。周公瑾始末してないけど。

 

 

 

 

 




 色々な意味で書けなくて、ここまで空いてしまいました。
 少し速足でいこうと思って、他のキャラ視点は少な目です。
 ホント、次いつになるか分かりませんが、呆れずに付き合って頂ければ幸いです。


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