私には見える 作:shion
遅くなりましたが、前回の続き的な物です。
追記:《スコッチ救済注意》
自暴自棄になり酒を浴びるほど飲む。
初めて出来た彼氏が二股をかけていた。
そんなこと知りたくなかった。
それもこれも全部この能力のせいだ。
こんな能力欲しくて望んだわけじゃない。
見るもの全てに表示される文字列に気が狂いそうになる。
もう嫌だ…何も見たくない。
生きているのが辛い…楽になりたい。
覚束ない足取りで使われていないビルの屋上へ行く。
飛び降りる為によじ登ると綺麗な夜景が見えた。
その夜景が何時もより眩しく感じ思わず目を閉じる。
そのまま前へ倒れ飛び降りようとする。
「君っ!なにやってるんだっ!」
後ろから声が聞こえ振り返ると男がいた。
「…っ…」
どうしてこんな所に…そう思うが、その男の頭上を見て私は悟る。
「…そっか、貴方も死にに来たの?」
「!?」
名も知らぬ誰かは私の言葉に驚き目を見開く。
「大丈夫、一緒にやれば怖くないよ?」
「何を言って…」
理解が出来ない…という顔をする男の人の顔色が無くなる。
「さあ、一緒に逝こう」
私は無邪気に満面の笑みを浮かべ手を差し伸べる。
名前が“文字ボケ”したその男の人に。
*********
私にはステータスが見える。
ステータスと聞くと、漫画の様に細かく細部まで描写されると思う人が多いだろう。確かに調べる際は様々な情報が表示されるが、大雑把に表示される所もある。
例えるならば、この図書館の中にある本。
1つの本にターゲットを絞りステータスを見ると【品質:良】と表示される。この場合表示された通り、品質の後に表示される文字によって本の状態が分かる。
もし傷んでいる本があれば、一つ一つ手に取って見て確認しなくてもピンポイントで見つけ修繕が出来るので、手間が省ける。
因みに良以外は普と悪があり、食品でも共通にそう表示される。
全然大雑把でないと思うが、これはましな方だ。人のステータスの場合だと、もっと酷いものがある。それは
「すみません、少しいいですか?」
「…っ、はい!」
後ろの少し高い位置から声をかけられ、それに驚いて手に取っていた本を落としそうになる。内心後ろからいきなり話しかけるなと思うが、仕事中なのに上の空な私の方が悪い。
心の中で悪態をつきながら振り返る。
そして後悔する。
「実はこの本を探しているんですが…見つけられなくて…」
「…え、」
目の前に元カレ似のイケメンが居た。
困ったように目を細めるその顔は確実に女の子にモテるだろう。前に訪れたカフェの店員とは変わったベクトルのイケメンで、見た目は細く見えるが体の筋がガッシリしているのがわかる。
いや、今はそんなことはどうでもいい。
私が驚いたのは彼の頭上に表示された文字列だ。
【沖矢昴】【赤井秀一】【ライ】【諸星大】
ガッテムっ!!!
某プロレスラーの台詞を心の中で叫ぶ。最近のイケメンは名前を沢山持つのが流行っているのかっ!?もしそうなら、その中2病みたいなの絶対後々恥ずかしくなるって!!
「…大丈夫ですか?」
「…すみません、知り合いに似ていて驚いて…」
…元彼似の顔に心配されるとは。声色は違うが顔を見ると本当に似ている。いや、でも元彼より格好いいか。…とにかく、この顔を見てると無性に殴りたくなってくるから早めに終わらそう。
目線を【沖矢昴】の手に向けると、どうやら新しく入荷した本を探しているらしい。新しい本だとシリーズの所には置かれず、新着コーナーへ置かれるからたまに見つけられない人いるんだよね。
「この本でしたら、新着本コーナにありますよ」
案内しましょうか?と付け足すと、【沖矢昴】はぜひと言い微笑む。その綺麗な顔面にパンチを入れたい衝動を何とか抑え案内をする。
するとそれが突然起こった。
「…っ」
自分にタゲを絞られた表示が出たのだ。
内心とても動揺する。この表示は日常生活では普通は表れないもので、正直出現条件が自分でも分からない。けれど、おそらくストーカーかそれ紛いの行為を察知しているのだろう。…何故知っているかって?…それは察してほしい。
「此方になりますね」
「ありがとうございます」
なんとか平常を保ち【沖矢昴】を案内しその場を離る。
挙動不審になると相手に気がつかれて、相手の行為がエスカレートする可能性もある。こういう場合は、とにかく相手の視界から消えるのが重要だ。
カウンターを後輩に任せ、中に入るとタゲが消える。
それを確認して安心したせいか、柄に似合わず大きな音を立てて椅子へ座り脱力する。この事から、やっぱりあそこに居る誰かが犯人だと確信し頭を抱える。
「米花町…犯罪率が少ないんじゃなかったの…?」
口から溢れたその音は、思った以上に細く弱々しかった。
見えちゃう人
元彼似の男に会って動揺する。元彼の二股はステータスに『二股』と表示されていて気がついた。その後、飛び降りる筈が気がついたら、タクシーに乗ってて家の前に居た。
元彼似の男
偶然を装い接触。自分の顔に見覚えがあると言われて、警戒し鋭い眼光を背後から送る。その鋭さがタゲ絞りと認識される。
ステータス先輩
その日・その時の【見えちゃう人】の精神状態によって表示に変化が生じる。文字ボケ=死と結び付くわけではない。