私には見える 作:shion
ほんのりクロス表現があります。
苦手な方はご注意ください。
~追記~
誤字報告をしてくださった方々ありがとうございます!!
人間の脳というのは不思議だ。
時に時間を早く感じたりその反対もあり、驚いた時には無意識の内に現実逃避をしたり、走馬灯が見えたりもする。…これは場合によっては誰にでも共通して起こることだ。
…そして今、殺人事件に巻き込まれた私も似たような何かを体験している。
「貴方がやったんじゃないですか!?」
「僕は犯人じゃないですっ!」
そう、人の台詞が吹き出しになって見えるのだ。
何を言っているか分からないと思うだろう。
大丈夫、私にもよく分からない。
前にも殺人事件に遭遇した事があったが、こんな事は起きなかった。前回と違う点を上げるとすれば、容疑者として上がってしまっただけ。
「貴方でなければ誰がやったと言うんです!」
「ですから、僕はやってないんですっ!!」
こんな中でも、視界に彼らの吹き出しが飛び交う。さながら、最近ハマっている推理ゲームの学級裁判パートをリアルで見ているようだ。
「決めつけないでくださいよっ!!」
そんな彼らの頭上には、今日も通常運転で名前がふよふよと表記されていて、偶然居合わせたという毛利探偵と、男の人の押し問答を死んだような目をして見る。
「いや、違うだろ…」
もし彼が犯人なら『加害者』という表記が出る。けれど、言い合っている男の人のステータスを見てもその表記がない。という事は恐らく彼は犯人ではない。けれど、毛利探偵は第一発見者と言うことだけで彼をそれと決めつけているのだ。
「何が違うの?お姉さん」
「え…?」
ふと…下から声が聞こえ見てみると、見覚えのある子供が下から見上げている。徐にその子供の頭上を見て血の気が一気に引くのがわかった。
「ねえ、何で違うって思ったの?」
無邪気な顔をして問いてくる子供の頭上には【江戸川コナン】とその後ろに表記された灰色の【工藤新一】という名前。
目の錯覚と思いたくて凝視するが、出てくるのはいらない情報ばかり。
え…え、蝶ネクタイに『変声機』…?
それに腕時計には『麻酔銃』って…え?
なにこの子…物騒…。
「コナンくんっ!駄目じゃない勝手に居なくなっちゃ!」
「ねえ、何で違うと思ったの!?」
黙りな私に苛立ったのか、声を荒らげる少年。
その後ろから現れた毛利探偵の娘に捕獲されつつも、此方から目を離さないその姿。そして大きいその声に反応し、此方に視線が集まる感覚がする。
ヤバい。
このままだと疑われる。
「えっと…ほら、ドラマとかでもし犯人だったら、自分から疑われる行動はしないんじゃないかな…って」
「そうですよねっ!!」
さっきまで疑われていた男の人が、何故だが私の両手を掴み持ち上げる。
おい、勝手に触るな、そして近寄るな。
「勝手に動き回るなって言っただろ!!」
「痛ってぇ!!」
そんな中、服の襟を持たれ放り投げれた【江戸川コナン】は床に頭を打ったらしく痛がる。…床に付く時、一瞬guardって表記されたのは見なかったことにしよう。
このままだと私の脳のキャパを超える。
「それに素人は黙ってろっ!」
「…すみません」
「先生!こんなものを見つけました!」
ナイス。毛利探偵マジナイス。怒られはしたけど、結果的にあの少年と離れる事が出来た。タイミング良く見覚えのあるイケメンに呼ばれて探偵も遠くへ行く。
何かまだ少年が此方を遠目で見てるけど、これを機に壁の花ならぬ壁の容疑者になって、必要最低限関わらないようにしよう。
そしてこの後来るであろう、毛利探偵の推理ショーに巻き込まれないように犯人からも距離を置いておこう。
*********
この吹き出し…台詞のステータスだ。
相手の吹き出しの嘘を言っている部分の色が変化して見える。
そう気がついたのは、私の視界が本格的にゲームのスクリーンと化して酔い始めた時だった。
一番キツかったのは、犯人のアリバイを崩す時。
犯人の吹き出しに、唐突にカットインが如く吹き出しが割り込んで来てヤバかった…さながら「その言葉切ってみせる!」っていう幻聴が聞こえる程。
そんなカオスな推理ショーだったが、結果的に犯人は被害者の恋人だった。
犯行の理由は、恋人が友人である第一発見者の男の人を好きになったと言い、別れを切り出された事から。別れ話にカッとなり殺してしまった後、事の発端のその男の人に罪を着せようとしたらしい。
途中「お前のせいで!」とか言って揉み合いになりかけたけどさ、
…犯人。それちゃう、逆恨みや。
他にももっと詳しくいろんな事を毛利探偵は推理ショーで説明していたけど、正直推理ショー時にあることに気がついて、殆ど犯行のトリックなど頭に入らなかった。
私は気がついてしまった。
毛利探偵が推理ショーをしてない事に。
最初はちょっとした違和感で、今回突然見える様になった吹き出しが、先程の様に話し手の前に現れず何故か椅子の背後から現れた事だった。
次に、現場をあれだけうろちょろしていた【江戸川コナン】が、推理ショーが始まると忽然と姿を消し、視線を辺りに送ると何故か毛利探偵の座っているソファーの後ろに名前が見えた。
そして決定打が、先程偶然見てしまった【江戸川コナン】の持ち物と、毛利探偵のステータスに突如現れた『眠り:強』という表記。
以上の事以外も色々とあるが、恐らくあの少年が毛利探偵の代わりに推理を披露しているのだろう。
普通だったらあり得ないと思うが、私には彼が【工藤新一】である事を知っている。
…そういえば毛利探偵が有名になったのも【工藤新一】がテレビから消えてからの様な気が。
「お父さん!起きて!」
「先生!」
事件が終わり毛利探偵の体を揺する娘さんとイケメン…けれど、全く反応なし。麻酔を打ったであろう当の本人は、それを気にせず犯人の方を見ている。
…とにかくこの場から逃げよう。
これ以上此処に居るとまた何か起こる…そう思い急いで帰り支度をする。
帰る時、一瞬タゲが標示され驚き動きがぎこちなくなるが、気にせず最近テレビで見るローンのCMの人達が如く物凄い速さで自宅へ向かう。
無事に自宅に着くと、安心からか脱力感に襲われ荷物を放り出しベッドに勢いよくダイブする。
色々な事がありすぎて頭の中が働かないが、取り敢えず自分の身に何事も無かったことをただ安心する。
そんな私を嘲笑うように。
ガムに包まれた『GPS』が衣服に付いていると分かったのは、衣服を脱いだ後。
…とりあえず、早急に引っ越しをしよう。
そう心に決め、ガムに包まれたGPSに恨みを込めハンマーを振り下ろした。
見えちゃう人
今回事件の容疑者として上がってしまった人。前回は『加害者』を遠目でずっとガン見していた。何となく知ってはいけない事を知ってしまったと確信し逃走。…けれど、時既に遅し。
物騒な名探偵
前の事もあり警戒しつつ食いつく。
今回、見事に『GPS』を付ける事に成功するが、直ぐに反応が消えたため緊張が走る。
ステータス先輩
一定の条件下で標示が変化する。
【見えちゃう人】を通して日々学習しているとか。