2025年秋ーー
世間は三連休の初日を迎えていた。
ましろは自室のベッドの上でアミュスフィアをかぶってるところだ。
今日は紅葉に誘われた大会の日。
新規アカウントでログインするため、約束の時間より早めに準備をする。
体を寝かせて、目を閉じる。
「リンク、スタート」
最初に自分の名前を決める項目
『プレイヤー名:シロ
これでよろしいですか?』
「はい」を決定する
次に決めないといけないのはアバターの姿だ。
現実世界の自分にどことなく似せた。
出来上がったアバターで軽く体の動作を確認する。
全ての設定を終えると目の前に
《ようこそ、GGOの世界へ》
シロの体は白く光り、転送が始まったーーー
最初の転送先は前回同様、転送ポート前。
そこが紅葉と待ち合わせ場所になっている。
久しぶりに見る景色は前と変わらない。
(あれ、そういえば紅葉ってどんな格好で来るのか聞いてない…)
周りを見渡してみるが、すぐに見つけれる気がしなかった。
どうしよう…とキョロキョロしていると女性の声で
「お待たせー」
声をかけて来た女性はピンク色の髪を右サイドで結っている。
シロはこんな人知り合いにいたっけ…?と悩んでいると女性は続けてこういった。
「紅葉よ。ここでは《クレハ》って呼んでね。
イベント大会の参加登録が込んでて、参っちゃった。」
「紅葉ー久しぶりー!」
「だーかーらー、クレハって呼びなさい!…で?あんたの名前は…ふーん《シロ》ねー」
「何か言いたそうだね、君」
「安直すぎない?名前から取っただけでしょ。」
「失礼な。簡単で覚えやすいじゃないか。」
「逆に忘れないわよ!」
クレハと合流できたシロは歩きながら話を続けた。
「あんたは雰囲気ですぐに分かったわ。」
「えっ。私ってどんな雰囲気だしてるの」
「そうねー。人付き合いが面倒くさいとか行ってる割に、お人好しな感じかな。」
「褒められると照れるね」
「誰も褒めてないわよ。それにしても、突然の呼び出しによく応じられたね。」
「ひどい。来いって行ったのクレハじゃん」
「だからあんたはお人好しって言ってんの。」
久しぶりに会ったはずなのに会話は弾んで、笑い合った。
総督府ロビーにたどり着いた2人。
「大会の受付はここでやるのよ」
(クレハ…ごめんね、ここには何度も来た事あるんだ。今度何かおごるよ…)
シロは心の中でそんなことを考えてる間にクレハが何かを見つけたらしい。
「うわ、イツキさんだ!あの人も大会に参加するのかなあ」
「!!!」
女性に囲まれている中心人物は紛れも無く、イツキ本人であった。
(やばいやばいやばい…!)
どこかですれ違うくらいの予想はしていたが、まさかログインした当日に出くわすとは…。
心の準備ができていないシロ。
「?そんな不思議そうな顔しないでよ。あそこにいる人よ」
内心焦っている姿をクレハは勘違いしてくれた。
「ええっとその…イケメンだねー」
口では取り繕うが、心の中では
(まーた囲まれてんのかリア充ー!!)
と悪態をついてる。
「まぁ…確かにかっこいいし、ファンの子も結構いるみたいだけど。
あの人はGGOトッププレイヤーのイツキさん。彼が率いるスコードロン《アルファルド》は強くて有名よ。」
(うんうん、エリオスの時は一度も誘われてないけどねー!)
シロは黙ってイツキを見ていると、イツキと目が合ってしまった。
「やあ。君たちも大会に参加するの?」
「は、はい!」
声をかけてきたイツキに、クレハが緊張しながら答える。
「クレハくんだよね。噂は聞いてるよ。」
「え?」
「あちこちのスコードロンを渡り歩いてるんだろ。クレバーな戦況分析が頼りになるって評判良いよね」
「あ、ありがとうございます!」
(さすがクレハだね)
イツキの視線は自然とシロへうつった。
「そこの君は…?初期装備みたいだけど、もしかしてニュービー?」
「あたしの幼馴染みなんです。ゲームはメチャクチャうまいけど、GGOにログインしたのは今日が初めてだから。」
「初日から大会に参加するなんて、冒険好きだね。そういうの嫌いじゃないな。」
「はぁ…」
「面白い戦いを期待してるよ。では、お先に失礼。」
イツキはそう言うと、人ごみに消えていった。
(ほとんど喋れなかったな…)
消えていったイツキ方向をしばらく眺めるシロであった。