時間になったので、転送ポートで移動した。
ダンジョンの中に人の気配はない。
ランダムで配置されたのだろう。
クレハの説明を聞きながらエネミーを倒していくシロ。
感覚をだんだんと思い出して来たようだ。
「あんたって本当にゲームのセンスだけはいいよねー」
「小さい頃、クレハはよく泣かされてたもんね」
「あれはシロが手加減をしなかったからでしょ」
「勝負はいつも全力でやる主義だからね!」
なんて話していると奥に扉を見つけた。
側にあるコンソールを操作して扉を開ける。
クレハが開いた扉の先を見て、警戒する。
扉の先にはプレイヤーが2人。
こちらに気付かず背後を向いていたなら狙えた。
残念ながら先を歩いていたプレイヤーも後方のクレハ達に気付いて後ろを向いた。
「あれ、キミたちは…。」
この声を聞くのは本日2回目であった。
先を歩いていたのはイツキ。その後ろを白い服を着た男性のペアだった。
(イツキの側にいる人、初めて見るなぁ。)
クレハがシロに小声で伝える
「シロ、隙を見て逃げるわよ」
確かにこの状況はこちらが不利だ。
クレハ1人なら逃げれる可能性はあるが、シロを連れている時点でそれは無理に近い。
イツキがその様子を見て笑った。
「うーん、もしかして逃げる相談してる?
正しい判断だとは思うけど…背中向けたら撃っちゃうよ。」
(ですよね。イツキからしたら見逃す理由が無い)
「クレハ、彼の言う通りだよ。」
「でも…!」
心配そうにシロを見るクレハ。
「正解、と言いたいところだけど。
結果が決まってる勝負ほどつまらないものはない。」
シロは顔には出さないが、内心はかなり悔しがっていた。
彼の言っている事は当たっている。
それが今のシロとイツキとの距離でもあるのだ。
「…実に退屈極まりない。弾の無駄も避けたいしなあ。」
「だから見逃すとでも言うんですか?」
「まさか。ここは《GGO》で、今は戦いのときだよ。」
イツキはさらに先にある扉を指差して言葉を続ける。
「そうだな…僕に殺されるのと、あっちのエネミーに殺されるの、どっちがいい?」
2人は扉の方向を見る。
「この奥に少し面倒くさそうなエネミーが配置されている。
もしかしたらトラップが仕掛けられてるかもしれない。どちらか選ばせてあげるよ。」
クレハはシロの顔を見る。
「クレハ、大丈夫。2人ならエネミーくらい倒せるよ」
「でもイツキさんの言う通り、トラップがあるかもしれない」
「そのくらい私なら発見出来るよ。私のゲームのうまさをクレハは知ってるでしょ」
自信満々に笑うシロにクレハもやっと頷いてくれた。
「もちろんエネミーを倒してくれたら、見逃してあげるよ。
それじゃあ、すぐ死なない様に頑張ってね。」
一応後ろも警戒しつつ先を進むクレハとシロ。
「心の準備はできてる?」
「私はいつだって行けるわよ。あんたの方はどうなのよ」
「私?私はね…凄く楽しいよ」
扉を開くシロの顔は生き生きとした表情をしていた。