「クレハ、私が前衛するからよろしくね!」
「ちょっと…シロ!」
シロはトラップの気配を確認しながら前へ進んでいった。
相手は四つ足のエネミー。
シロを捉えるとバレットラインが現れる。
それを前転で避けながら頭部に攻撃を入れる。
(レベルはそんなに高くないな…)
シロのHPゲージが減ると、クレハがすぐさま回復してくれている。
少しずつだがエネミーのHPを削っていく形で倒せた。
「ナイスサポート、クレハ!」
「シロこそお疲れさま。」
このレベルならばイツキ達なら簡単に突破できたはずだ。
(本当に暇つぶしとしてエネミーをあてがったな。)
その事実だけでも、シロの心の中はざわついた。
「イツキさん、これで文句内でないしょ」
「もちろん、約束は守るよ。」
「この先、道は2つに分かれてるから、まずイツキさんたちが先に進んで下さい。」
クレハの提案にイツキは残念そうな顔をする。
「うーん、実は僕、くじ運が無くてね。だから君たちが先に選ぶといい」
「…わかりました。シロ、どっちの道にする?」
マップなんてものは無いので、ここは直感に頼るしかない
「うーん…右で」
「それじゃあお互いに生き残れるように、頑張ろうね」
イツキが笑顔でそういい残し、左の道へ消えていった。
**********
イツキと分かれたすぐ後ーーー
2人は右の道をひたすら進んでいた。
「イツキさんと戦闘にならなくて良かったわ。
今回の目的はレアアイテム狙いなんだから、強敵との戦闘はなるべく避けるわよ。」
「そうだね。」
「あっ!…ほら、見て」
クレハが駆け寄った先には、何かを操作する為の画面が並んでいた。
「こういうのはね…操作すると、先にすすめたりするのよ。」
これかな…こっちかしら…と声が聞こえてくる。
シロは起動してない転送ポートを調べていた。
ピッ…ピピッ
電子音が聞こえた瞬間、シロの体が白く輝き始めた。
「シロ!落ち着いて!すぐに私も追いかけて行くk…!」
クレハの言葉が途中で切れてしまった。
シロの転送が開始されたからであった。
「あーやっちゃったなぁ…」
転送された先には階段があって、エネミーや人の気配は感じられなかった。
ゆっくり周囲を確認しながら階段をあがる。
奥にカプセルがひとつだけ置かれている。
「何かのイベント…?トラップでは…なさそう」
シロがカプセルに手を触れた瞬間、
カプセルが光り始める。
『プレイヤー認証…マスター登録開始。』
「!」
機械的な音声が流れ、何かが開始された。
『ユーザー名、シロ…登録完了。』
その言葉と同時にカプセルが動き始め、その蓋が開いた。
中には少女、と呼ぶのが正しい年頃のアバターが眠っていた。
少女は光に包まれ浮き始めた。
ゆっくりと重力に逆らい5メートル程の高さで静止する。
と、次の瞬間、不思議な光は消え少女の体は落下を始めた。
「!」
とっさに動いて少女を抱きとめる。
それと同時に乾いた音が聞こえた。
音の出所を確認する間もなく、次は何かが急速に近づいてくる足音がした。
後ろを振り向き様に音の正体を確認するシロ。
相手は光剣を持った青年。
全身黒で統一されたその姿はもう目の前まで迫っていた。
(避けきれない…!)
せめてこの少女だけでも守れたらと、両手を広げてかばう。
「マスター?」
少女の声が聞こえた瞬間、光剣を持った青年の動きが止まる。
マスターが一体誰を指すのか分からないが命拾いをしたらしい。
「ちょっと…待ちなさい!」
今度はクレハの声がして、見ると青年に銃口を向けていた。
「あなたこそ、銃をおろして。」
さらにクレハの背後には銃を構えた女性が立っていた。
銃口はクレハに向けられたまま。
一番最初に動いたのは光剣を持ている青年だった。
光剣の光を消してクレハの方を振り返る。
「話を聞いてくれ。俺たちは戦うつもりは無い。残念だけど、間に合わなかった。」
「間に合わなかった?いったい何の話を…?」
「すでにそこのアファシスは、マスターと認めたようだし。」
そういいながら全員の視線はシロへと集中する。
「……はい?」
いまいち状況をつかめてないシロであった。