SAO フェイタルバレット   作:玄神

23 / 39
今回長いです。


22話 波風

SBCフリューゲルは忘却の森の中にあるらしく、そこまでの道をシロとイツキの2人で下見に行っていた。

 

「ねえ、シロ。」

「どうしたの、イツキ。」

2人は息のあったコンビネーションで敵を倒して行く。

 

「さっきのジャンケンの事なんだけど。」

「うん。」

「僕に運がない事、知っていたよね。」

「…ワスレテマシタ。」

「もう終わった事だし、気にしてないよ。…ただ。」

 

イツキがエネミーの最後の1体を撃ち倒す。

「このお返しは近いうちに必ずするからね…なーんてね。」

その言葉に固まってしまうシロだった。

 

 

「…ここのダンジョンって入れるかな?」

「今はフリューゲルまでの探索を優先した方がいいんじゃないか」

「ちょっとだけ入ろうよ。」

道に逸れた所にダンジョンの入り口を発見して、シロは先に入って行ってしまった。

 

イツキは仕方ない、とため息をついて、後に続く。

 

*********

「特にめぼしい物はないねー。」

「レアアイテム落ちてないかと期待したけど、ダメだったね。」

先を歩くシロにイツキは注意する。

「ボス部屋には間違っても入ってはいけないよ。今回の目的はSBCフリューゲルなんだから。」

「分かってるよー。」

本当に分かってるのか…とイツキは2回目のため息をついた。

 

「…ちょっと待って。」

ふいにシロが足を止める。

それに従って、イツキも止まってシロの方を見る。

 

シロはいっけん何もなさそうな壁を触って、何かを確かめている。

イツキは周囲を警戒しながら、その様子を見守る。

「イツキ、ここに多分隠し扉があるよ。」

 

シロがスイッチを押してしまったのか、壁が一部光ったと思ったら、シロの姿が消えた。

「!?」

イツキは慌ててシロが触っていた所を確認する。

どうやら壁にあるスイッチを押すと、隠し扉が起動するらしい。

イツキの体が光って、壁の向こう側の部屋へ転送された。

 

 

「シロ!」

すぐさま、シロの安全を確認する。

「私は大丈夫。でもここ…。」

イツキは自分たちが転送された部屋を見ると、大きなトンネルの通路だった。

 

「気をつけて、ここはトラップ部屋だ。」

「巻き込んでしまって、ごめん。」

「謝るより、生きてここから出る事に専念して。」

 

この部屋の主であろうエネミーが転送されてくる。

 

「「!!」」

 

エネミーの正体を見たシロは記憶を必死に掘り返す。

過去に一度、倒した相手だ。

「シロ、避けるんだ!」

 

エネミーのバレットラインがシロへ伸びる。

慌てて、目の前の遮蔽物に逃げ込む。

イツキは違う場所から狙撃する。

 

「思い出した!」

シロはUFGを使って遮蔽物に身を隠しながら近づき、エネミーの背中に乗る。

狙うは背中の急所。

そう、前と同じように背中に乗って、弱点である赤い鉱石を破壊した。

 

急所を破壊されたエネミーは体を支えることが出来なくなり、ダウンする。

倒れているエネミーのHPを削ることは簡単だった。

 

 

「ドロップアイテムは…。あっスナイパーライフルだよ!」

シロはドロップアイテムを持って、イツキのもとへ走る。

「これ、それなりに強いからイツキが持っておく?」

「……。」

イツキが返事をしない。

「イツキ?」

シロはイツキの顔を覗く。

何かを考えこんでいる。

 

「イツキさーん!ドロップアイテム全部もらっちゃうよー!」

「…。」

「イツキのばーか…。」

シロが悪口を言った瞬間に、イツキが真顔でシロの顔を見る。

驚いて、嘘ですごめんなさい、と謝る。

 

イツキからは少し怒ってるようにみえるが、

悪口を言った事が原因ではなさそうだ。

 

「ねぇ、どうしてエネミーの急所がすぐに分かったんだい?」

「えっ…だって、前に一度戦ってるから…」

と言った所で、シロは『しまった』という顔をする。

 

「そうだね。前も君が倒したんだよ、《エリオス》。」

「…!」

「知ってたかい?君が倒したエネミー、攻略情報は出回ってない。なぜなら、初期のイベント大会でしか、今まで出現した事がないんだからね。」

「…。」

「何か言うことは無いの?」

「イツキ、今まで騙してたみたいで、ごめん。」

「みたい、じゃなくて騙してたんだろ。見てて楽しかったかい?」

イツキのとがった言葉に、シロの顔が曇る。

 

イツキの言っていることは真実であって、

シロに騙す気がなかったが、謝る事しかできない。

 

「ツェリスカも…あの様子だよ、知らないみたいだね。」

「うん…。」

「悪いけど、もう帰るよ。」

2人は黙ったまま、SBCグロッケンへと戻って行った。

 

 

*******

グロッケンに着くと、イツキは黙って歩き出す。

そのすぐ後ろをシロがついていく。

 

「あら、早かったわね~。」

「お二人とも、お帰りなさい。」

ツェリスカとデイジーが出迎える。

 

「やぁ、ツェリスカ。ちょうど良かった。」

「何かしら、イツキ。それに、シロ…?どうしたの、そんな顔をして。」

「君も知っておくべきだと思うよ。」

イツキはシロを見ながら、ツェリスカに話す。

「いったい何の話?」

 

イツキは、ダンジョン内で起きたことを話した。

《エリオス》しか知らない事を、シロは知っていた事。

ツェリスカはそれを聞きながら、シロに本当なのか事実を確認する。

 

「要するに、《エリオス》のアカウントは残したままで、新しく《シロ》のアカウントを作ってるのね。それで、その事を今まで黙ってたと。…これで、あってるかしら?シロ。」

シロはうなずく。

 

「さすがの僕も騙されたよ。似ているなとは思っていたけど…まさか、ね。」

「イツキ。あなたは少し落ち着きなさい。」

「僕が?僕は落ち着いてる。」

「いつものあなたらしくないわね。言葉の端々にトゲを感じるわよ。」

ツェリスカの言葉にイツキは怒った表情をする。

「当たり前だろう。君だって…!」

「私のことは良いの。今はあなたの事を言ってるのよ。」

「…。」

ツェリスカの言葉にイツキは黙る。

「とにかく、イツキはシロのホームにでも行って、2人でよく話して来なさい。」

「…はぁ。先に行って待ってるよ。」

 

それだけ言い残すと、イツキは先に行ってしまった。

ツェリスカは今度はシロの方を向く。

「シロ、私も突然のことで驚いているわ。だから、イツキの後は私の所へ来て。」

「ありがとう…それと、ごめんなさい。」

「今は早く、イツキの所へ行ってあげなさい。」

「うん。」

シロは急いで、自分のホームへと向かった。

 

 

********

シロは深呼吸をすると、自分のホームへ入って行った。

 

ホームはイツキ以外に人の気配はなかった。

イツキはイスに座って、待っていた。

シロも黙って隣のイスに座る。

 

「君の話を聞かせてくれないか。」

シロは正直に、簡潔に説明をした。

 

エリオスでログインをして遊んでいたが、家庭内のトラブルで離れたこと。

クレハに誘われたのがきっかけでまたやり始めたこと。

そして、ちゃんとイツキとツェリスカには話そうと思っていたこと。

 

「クレハくんは君がGGOをやっていたことは知らなかったんだね。」

「そうだね。この後クレハにも全部話すよ。」

「知ったら、クレハ君はきっと怒ると思うよ。」

「それでも。話すべきだと思う。」

シロの言葉にイツキは見守る事にした。

 

「それでね、イツキ…。」

そう言いながら、シロが立ち上がる。

「今回の事は、本当にごめんなさい!」

シロは頭を下げて、謝った。

 

「そうだね…。シロ、顔をあげて。」

イツキの言葉に、シロは顔をあげイツキを見る。

「今度、買い物に付き合ってよ。それでチャラにしてあげる。」

「いや、さすがに…」

「もちろん、全部君のおごりだよ。」

イツキの表情はいつもの笑顔にもどっていた。

 

 

********

シロはツェリスカとクレハの所へ行って、事情を全部話した。

「あんた、ALOやる時点で私も誘いなさいよ!」

「ご、ごめん…。」

「怒ってるんじゃないの。ゲームはあんたとやってる方が楽しいんだから!」

「そうね。シロのケットシーの姿は興味あるあわね。」

「ツェリスカ…。」

「それより、シロ。あんたはSBCフリューゲルに行く準備しないと。ショップへ付いてってあげるから、一緒に行きましょう。」

クレハはシロを連れて、ショップへ行ってしまった。

 

残ったツェリスカはイツキのホームへ向かう。

 

 

*******

「イツキはいるかしら~。」

「これは…ツェリスカさん。イツキさんは、いますよ。」

出迎えたパイソンがイツキを呼ぶ。

 

「今日は何度も君の顔を見る気分ではないのだけど。」

「あら、冷たいわね。お礼の1つも出ないのかしら。」

「何が言いたいのか、分からないなぁ。」

「シロが私の所へ来たわ。」

「…説明しに行くと、言っていたね。」

「あなたにとって大切なものなら、はぐらかさないで、ちゃんと向き合いなさいよ。」

「ははっ。僕はいつだって正直に生きてるさ。」

「そうかしら。指をくわえて待ってるように見えるわ。僕を選んで欲しいって。」

「その『人の気持ちを理解しています』って話し方は気分が悪い。」

「あら、じゃあ私がシロを独り占めしちゃっても構わないのね?」

「…。」

「無言は肯定ってことで受け取るわよ。」

「どう解釈しようが、好きにすると良いよ。」

これ以上イツキに何を言っても無駄と悟ったツェリスカは、邪魔したわね。

と言い残して去って行った。

 

パイソンはイツキの不機嫌な顔を黙って見つめていた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。