キリト達がSBCフリューゲル攻略の話で盛り上がっている中、シロは市街地へ行こうと外へ出る。
「シロ、ちょっといいかな。」
シロを呼び止めたのはイツキだった。
「あれ、みんなと話さなくていいの?」
「僕は賑やかなのは苦手でね。…それより、ちょっと気になる事があって。」
2人はシロのホームへと移動して、イスに座った。
「おめでとう。やっとフリューゲルの攻略が始まるね。」
イツキの言葉に、シロは嬉しそうに頷く。
「呼び止めた理由が…このアイテムなんだ。」
イツキがアイテムメニューの画面をシロに見せる。
そこには《???》と書かれたものが1つ。
「これってエギルさんがよく鑑定してくれるアイテム?」
「いいや、それとは違うらしい。彼には前に一度、鑑定してもらった。」
「でもアイテムが何なのか分からなかった。」
「その通り。」
「うーん。未確認アイテムじゃないとすれば、考えられるのは…」
「クエストのキーアイテム、それか使用方法が決められてる特殊なアイテム…」
「その可能性は高いね。どこのフィールドで拾ったの?」
「…。これは、君がくれた物だよ。」
シロがイツキに渡したものといえば、エリオス時に手渡した《赤い鉱石》。
「あー、あれか。」
「そう、あの赤い鉱石だ。それをちょっと手を加えてね。そうしたら、名前が今の状態に変化したんだ。」
「へー。加工できたんだね。ちょっと調べてみても良いかな?」
「構わないさ。その為に君に話した訳だし。」
イツキは《???》をシロのアイテム欄へうつす。
シロは移動したのを確認して、《???》をタップしてみた。
すると、《???》の表示が、《紅の薔薇》に変化した。
「えっ!?アイテム名が変わった!」
「アイテムを出してごらん。」
驚くシロとイツキ。
シロは言われた通り、《紅の薔薇》を選択する。
シロの目の前で装飾された箱が、光って姿を現した。
手に取ると、意外に重みを感じる。
「開けてみるね。」
イツキに確認を取り、蓋を開ける。
「「これは…」」
薔薇の形をした、赤いカフスが、2つ入っていた。
「アイテム欄に説明やステータス値はのってるかい?」
「ちょっと待って…。」
シロはアイテム欄を目で追う。
「…。」
「…。」
「…シロ?」
「…。」
イツキも気になって、シロの方へ体を寄せてアイテム欄を見る。
『《紅の薔薇》:大切な人へ贈ることで、初めて姿を現す貴重なもの。』
大切な方と、1個ずつ身につけることで良いことが起きるかもしれません。
と最後に、文章が続いていた。
「と、取り敢えず、エギルやリズベットにこのアイテムを見せてみようか!」
「僕も一緒に行くよ」
2人は再びキリトのホームへーーーー
リズベットにカフスを見せて、何か聞いた事無いかと、尋ねた。
リズベットが知っていたのは、噂に聞くクエストの内容だった。
「恋愛成就のクエスト!?」
「何だいそれは?」
「たまにあるじゃない。カップルが一緒に何かをしたり、同じ物を身につけたり…。すると、その二人は永遠に結ばれるっていうイベントよ。」
「…。」
リズベットが言うには、赤い鉱石を手に入れた時から、このクエストは始まっていたのかもしれない。
エリオスがイツキに譲ったこと、イツキが鉱石に手を加えたこと、それらが偶然重なって、発見出来たクエストだ。
「それで?シロはそれを誰に渡すつもりなのかしら?」
リズベットはニヤニヤ笑いながら、カフスを返す。
「ははは…。教えてくれて、ありがとう。」
「ちょっと、シロ!」
受け取ったあと、シロはごまかしながらホームを出て行った。
イツキもリズベットにお礼を言って、シロの後を追う。
シロはホームを出て、すぐの通路のすみに立っていた。
「シロ?」
「…イツキか。これ返すね。」
カフスの入っている箱を渡そうとする。
「君が大切と思う人に渡せばいいよ。」
「元々、イツキにあげた物だし。」
「…そこまで言うなら、持っておこう。」
イツキは箱を開けて、カフスをひとつ、取り出す。
「それで、シロ。」
「なに?」
「僕は、君に、ひとつ持っていて欲しいと思ってるんだ」
イツキはそう言いながら、シロの右手にカフスを乗せる。
「!」
「貰ってはくれないかな。」
「…。」
「もちろん、嫌なら断って欲しい。」
「嫌、では、ないよ…」
「ありがとう。」
イツキの笑顔が、いつもの含み笑いではなく、自然な笑顔に見えた。
「こっちへ、おいで。」
「自分で、つけれるよ。」
「今までカフスをつけたことあるのかい?」
確かに、つけたことないし、つけ方もピンと来ない。
イツキはシロの手首を軽く引っ張り、自分の体へ寄せる。
シロの襟に、カフスを付けてあげる。
「…近い。」
「シロが遠いんだよ。」
イツキがいつもより近くにいるので、シロは目線をそらす。
「……。」
シロは自分の顔に熱を帯びてるのを感じ取る。
カフスを付け終わったのか、イツキがシロの顔を見つめる。
「イツキ?」
一瞬だった。
シロは反射的に目を瞑ると、額に何かが軽く触れる。
少し経ってから、イツキの声が聞こえた。
「そんな表情をしてると、もっとイタズラしたくなるな…なーんてね。」
「!」
シロは気付いたらメニュー画面を開いて『ハラスメント禁止!』と書かれた警告文をイツキの顔めがけて投げつけていた。
この警告文は運営が用意しているもので、プレイヤーから過度な接触などされた場合、用いる事ができる代物。
プレイヤーに投げつけると、地味に痛い。そして、貼り付く。
最悪、運営からアカウントを消されるので、それなりに効果はあるみたいだ。
イツキは顔に貼られた警告文を、シールをはがすかのように、取る。
「いたた…。すまない、シロが可愛かったから、つい…」
イツキの言葉が最後まで、続く事はなかった。
赤い顔で怒っているシロの後ろに、
キリト、アスナ、クレハ、ツェリスカ、デイジー、そしてレイのメンバーが驚いた顔をして、少し離れた所から見ていたからだった。