SAO フェイタルバレット   作:玄神

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29話 君の特別

結局、イツキはパーティーが終わっても戻ってくる事はなかった。

シロは自分のホーム、イツキのスコードロン、ショップなど心当たりを探して回るが、イツキの姿はどこにもなかった。

 

(フィールドに出てるのかな…それとも…)

グロッケンの中でまだ探してないところ…展望台。

シロはすぐに向かった。

 

 

*********

展望台を見渡すと、見覚えのある後ろ姿。

「…イツキ。」

名前を呼ばれたイツキは振り返る。

「どうしたんだい。主役が抜け出しちゃダメだろう。」

「とっくにパーティーは終わったよ。探しても、どこにも居ないから…」

「騒がしい所が苦手でね。…意外かい?僕は集団戦は得意だけど、集団に加わるのは苦手だよ。」

イツキは展望台から外を眺めて、続ける。

 

「そうだな…。人の輪から外れた、ここみたいな場所がちょうどいい。…なーんてね。そういう設定も受けがいいと思わないかい?」

「何か、嫌なことでもあったの?」

「…君には隠してもバレてしまうね。」

「声で、分かるから。」

「なるほど、次からは声色も気をつけてみよう。」

「…。」

シロはどう返してよいのか反応に困っている。

 

「そうそう、大事なことを言い忘れていた。」

イツキはシロの顔を見て、笑う。

「クエストクリア、おめでとう。」

「…ありがとう。」

 

「まさかあそこが分岐点だとは思わなかったよ。あえて困難な道を選ぶのが正解だったなんて。

僕はやっぱりOSの再インストールを選んだだろうな。」

「…イツキの選択した答えも間違いではなかったはずだよ。」

「そうかもしれない。でも、トゥルーエンドには至らない。やはり、僕には英雄になる素質はないのか…。」

「イツキはGGOで英雄になりたかったの?」

「どうだろうね。目の前の退屈な景色が消えるなら、なりたいと思うよ。」

「私とクエスト攻略している間も、退屈に感じていたの?」

「むしろ、その逆だよ。君はいつも僕の考えとは逆の道を行く。」

 

イツキはため息をつくと、でもね…と言葉を続ける。

「君と一緒に居る時間が長くなるにつれ、見えている世界は違うんだろうな…って実感させられるよ。シロ、やっぱり君の目にはこの世界は輝いて見えるのかな?」

「そんなこと…ない。」

「そうじゃないと、NPCのアファシスを助けようなんて選択肢、思い浮かばないよ。」

「本当に、私のことを、そう思ってるの?」

シロの声が少し震えている。

 

「君は特別だ。だからこそ僕は、君の特別でありたいと思った。」

「…。」

「今まで誰かに固執するって事は無かったんだけどね。…あぁ、でもエリオスと居た時も楽しかったよ。結局は、《ましろ》。君のことが頭から離れなくてね。調子が狂うんだ。」

 

 

シロは目を閉じて、深呼吸する。

「…私の目のにうつる世界は、いつだって、灰色だよ。」

 

イツキは少し驚いた表情をする。

「さっき、イツキの考えている事を『声でわかる』って話したよね。小さい頃からの癖でね、人の顔色ばかり見ていたら自然に身に付いた癖なんだ。」

 

「…前に言っていた、家庭のトラブルが関係あるのかい?」

「うん。…特別だって言ってもらえて嬉しい。ただ…。」

 

シロがその言葉の先を続ける前に、イツキの笑い声が重なる。

「ハハッ…本気にしなくて良いよ。…さっきのは冗談だから。」

「そっか…。分かった。」

イツキの言葉に、シロは泣きそうな顔をする。

 

 

次の瞬間、シロの視界が揺れた後に、目の前が真っ暗になった。

 

この日、GGO内にログインしていたユーザーが、強制ログアウトされる事件が起きたからだ。

 

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