結局、イツキはパーティーが終わっても戻ってくる事はなかった。
シロは自分のホーム、イツキのスコードロン、ショップなど心当たりを探して回るが、イツキの姿はどこにもなかった。
(フィールドに出てるのかな…それとも…)
グロッケンの中でまだ探してないところ…展望台。
シロはすぐに向かった。
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展望台を見渡すと、見覚えのある後ろ姿。
「…イツキ。」
名前を呼ばれたイツキは振り返る。
「どうしたんだい。主役が抜け出しちゃダメだろう。」
「とっくにパーティーは終わったよ。探しても、どこにも居ないから…」
「騒がしい所が苦手でね。…意外かい?僕は集団戦は得意だけど、集団に加わるのは苦手だよ。」
イツキは展望台から外を眺めて、続ける。
「そうだな…。人の輪から外れた、ここみたいな場所がちょうどいい。…なーんてね。そういう設定も受けがいいと思わないかい?」
「何か、嫌なことでもあったの?」
「…君には隠してもバレてしまうね。」
「声で、分かるから。」
「なるほど、次からは声色も気をつけてみよう。」
「…。」
シロはどう返してよいのか反応に困っている。
「そうそう、大事なことを言い忘れていた。」
イツキはシロの顔を見て、笑う。
「クエストクリア、おめでとう。」
「…ありがとう。」
「まさかあそこが分岐点だとは思わなかったよ。あえて困難な道を選ぶのが正解だったなんて。
僕はやっぱりOSの再インストールを選んだだろうな。」
「…イツキの選択した答えも間違いではなかったはずだよ。」
「そうかもしれない。でも、トゥルーエンドには至らない。やはり、僕には英雄になる素質はないのか…。」
「イツキはGGOで英雄になりたかったの?」
「どうだろうね。目の前の退屈な景色が消えるなら、なりたいと思うよ。」
「私とクエスト攻略している間も、退屈に感じていたの?」
「むしろ、その逆だよ。君はいつも僕の考えとは逆の道を行く。」
イツキはため息をつくと、でもね…と言葉を続ける。
「君と一緒に居る時間が長くなるにつれ、見えている世界は違うんだろうな…って実感させられるよ。シロ、やっぱり君の目にはこの世界は輝いて見えるのかな?」
「そんなこと…ない。」
「そうじゃないと、NPCのアファシスを助けようなんて選択肢、思い浮かばないよ。」
「本当に、私のことを、そう思ってるの?」
シロの声が少し震えている。
「君は特別だ。だからこそ僕は、君の特別でありたいと思った。」
「…。」
「今まで誰かに固執するって事は無かったんだけどね。…あぁ、でもエリオスと居た時も楽しかったよ。結局は、《ましろ》。君のことが頭から離れなくてね。調子が狂うんだ。」
シロは目を閉じて、深呼吸する。
「…私の目のにうつる世界は、いつだって、灰色だよ。」
イツキは少し驚いた表情をする。
「さっき、イツキの考えている事を『声でわかる』って話したよね。小さい頃からの癖でね、人の顔色ばかり見ていたら自然に身に付いた癖なんだ。」
「…前に言っていた、家庭のトラブルが関係あるのかい?」
「うん。…特別だって言ってもらえて嬉しい。ただ…。」
シロがその言葉の先を続ける前に、イツキの笑い声が重なる。
「ハハッ…本気にしなくて良いよ。…さっきのは冗談だから。」
「そっか…。分かった。」
イツキの言葉に、シロは泣きそうな顔をする。
次の瞬間、シロの視界が揺れた後に、目の前が真っ暗になった。
この日、GGO内にログインしていたユーザーが、強制ログアウトされる事件が起きたからだ。