GGOの強制ログアウトはWEBニュースでも取り上げられ、少しの間話題になった。
運営会社、ザスカーの公式発表では、サーバーの不具合が原因らしい。
翌日にはシステムが復旧したとのメールが届いて、ログインするシロ。
自分のホームへ行くと、クレハ、レイ、ツェリスカ、イツキがいた。
「お帰りなさい、マスター!」
「ただいま、レイ。」
「昨日は突然、真っ暗になってびっくりしました。マスターが無事に戻ってきてくれて、よかったです。」
「1人で留守番させてごめんね。」
「今ごろザスカーには苦情のメールが殺到しているだろうね。」
「そうね~。きっと担当の方は大変でしょうね…。せっかくの打ち上げだったのに、残念だったわね。」
「うん…。残念だったね。」
シロは昨日のことを思い出して、イツキを見る。
「どうしたんだい?僕の顔に何かついているかい?」
「ごめん、なんでもない。」
どうやらイツキはいつもと変わりないらしい。
「マスター、今日は何をしますか?」
「今日は急ぎの用事はないし…。あんたのやりたいクエストに付き合っても良いわよ。」
「私も参加したいわ。」
「僕も一緒に行こう。」
「私もすぐにやりたいクエストを思いつかないから、キリト達も誘ってみようか。」
シロの意見で、キリトのホームへ移動した。
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キリトのホームへ入ると、ここでも強制ログアウトの件を話していた。
「昨日はびっくりしたー。急に切断されるんだもの。」
ツェリスカがこの手の問題に詳しいのか、いろいろ説明してくれている。
「俺としては…今回のトラブルは少し気になっている。」
キリトは何かが引っかかるのか、原因をよく調べてみるらしい。
「その話はそのくらいにして、せっかくだしパーッと狩りに行こうよ!」
クレハが明るく話題を変えてくれた。
「さんせーい!」
「私も行きたいなー!」
他のメンバーも同意してくれて、みんなでフィールドに出る流れになった。
「OK!じゃあ、とりあえず総督府まで移動しよう。どこに行くかは途中で相談して…。」
「ちょっと待ちなよ。リーダーの意見を聞かないと。」
クレハが喋っていると突然、イツキが止めた。
「リーダー?ああ、キリトさんも参加出来る?」
「もちろん。だけど、このスコードロンのリーダーって…。」
キリトはシロの方を見る。
「存在感なくて、すみません。」
シロが苦笑いしながら、手を小さく挙げる。
「あ…スコードロンのリーダーに登録されているのは確かにあんただけど。別に気にしてないよね?いつもこんな感じだし。」
「それはおかしくないか?」
シロとクレハはイツキの方を見る。
「みんなは君を気に入ってこのスコードロンに入っている。もっと君が積極的にリーダーシップをとってほしいな。」
「そんな…。」
イツキの意見に、クレハが反応して空気が張りつめる。
「まぁまぁ、リーダーだって色んな形があるさ。クレハと二人三脚で良いコンビだと思うけど。」
キリトが仲裁にはいる。
「みんながいいなら、それでいいさ。ただね、少しどうかな…と思っただけなんだ。」
「イツキさん、それってあたしの力が…このスコードロンにふさわしくないってことですか?」
「どうしたの、クレハ。そんなこと誰も言ってないわ。」
「言ってないだけ。…なーんてね。」
「イツキ。」
シロがイツキの名前を呼んで咎める。
「クレハ、あなたは充分強いわ。だから、そんな自分を否定するようなことを言ってはダメ。」
「シノンくん、力にこだわっているのはクレハくんの方だよ。」
「真剣な人をおちょくったのはあなたでしょ。」
「あー、それは謝るよ。すまなかった。むしろ僕は、リーダーは強さだけで選ぶのか?と問いたかったんだ。」
「そうね…リーダーの基準はそれだけではないだろうけど…。」
「うーん。自然にそうなったというか、いつの間にかみんなの中心になってたものね。」
「最初は初心者だったのに、あっという間に頼れる存在になったよね。」
リーファやユウキの言葉に、クレハは思いつめた顔をする。
「……そう、なんだ。みんな、そんな風に思ってたんだ。」
「だろう。カリスマ、魅力、いろんな言い方はあるけれど…。シロ、君は特別な存在なんだと自覚したほうがいい。」
「特別…。」
呟くクレハの表情は、シロは前にも見たことがあった。
何年も前に、クレハが優秀なお姉さんのことを話していた時の、傷ついた顔だった。
「いい加減にして、イツキ。」
シロが今まで黙っていたが、怒った表情でイツキを見る。
「みんなが思ってること、なんだよ。」
「イツキがそうなる様に、横やり入れてたじゃない。私は自分を特別だとは思わない。」
「君がそう思っていても、周囲はそれを良しとしないよ。」
「もし、みんなが私の事をそう思ってたとしても、私は変わらない。」
「クレハくんは、それでいいのかな?」
イツキはクレハに聞くが、クレハは黙ったままだ。
「クレハは関係ない。」
「…シロ。あんたにとって、私はなんなの?」
「えっ…?」
突然の質問に、驚いて振り向く。
「いつも、あたしの後ろについてきたくせに。あたしがいなければ、ダメなんじゃないの?」
「クレハ…落ち着いて。」
シロがクレハに手を伸ばそうとするが、クレハはそれを拒否した。
「私は冷静よ。シロ、私と決闘しなさい。あんたより強い事を、証明してみせるわ。」
真剣な表情で戦いを申し込むクレハに、シロは断る訳にはいかなくなった。
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模擬戦闘が行える部屋を借りて、決闘をおこなうことになった。
念のためにツェリスカとイツキを見届け人をお願いして、2人は準備する。
何度も何度も一緒にフィールドやダンジョンを行った仲だけあって、お互いの戦闘スタイルは熟知している。
「シロ、この空薬莢を投げて、落ちた瞬間からスタートよ。」
「わかった。HPがゼロになった方が負けで、いいよね?」
「いいわよ。…それじゃあ、始めるわよ。」
クレハの手から、空薬莢が離れる。
カランッ
金属音がぶつかる音と一緒に、2人はトリガーをひいたーーー。
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「うっ…!」
クレハのHPがゼロになり、しゃがみこむ。
「…。」
勝ったシロは、黙ってクレハに近寄る。
「あたしは…ここでも、ダメなの…。」
「ナイスファイトよ、クレハちゃん。…こんなに強くなっているなんて、びっくりしたわ。」
「ああ、クレハくんの腕前はトッププレイヤーに劣らない。リーダーがその上をいっただけさ。」
「今回は運が良かっただけだよ。」
ツェリスカとイツキが褒めるが、クレハは首を横に振る。
「…同情なんかほしくない。そういうものを求めてGGOにいるわけじゃない。」
クレハはメニュー画面を開いて、何か操作する。
「あたし、ソロに戻るわ。フレンド登録も…削除する。」
「そんな…!」
「リアルにも連絡しないで。しばらく1人になりたいから。」
「…。」
「あたしは、もっともっと強くなるわ。絶対に、あんたより強くなってみせるから!」
クレハはそう言うと、ログアウトしてしまった。
「クレハ!」
シロが名前を呼んでも、そこにはいない。