SAO フェイタルバレット   作:玄神

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30話 決別

GGOの強制ログアウトはWEBニュースでも取り上げられ、少しの間話題になった。

運営会社、ザスカーの公式発表では、サーバーの不具合が原因らしい。

 

 

翌日にはシステムが復旧したとのメールが届いて、ログインするシロ。

自分のホームへ行くと、クレハ、レイ、ツェリスカ、イツキがいた。

「お帰りなさい、マスター!」

「ただいま、レイ。」

 

「昨日は突然、真っ暗になってびっくりしました。マスターが無事に戻ってきてくれて、よかったです。」

「1人で留守番させてごめんね。」

「今ごろザスカーには苦情のメールが殺到しているだろうね。」

「そうね~。きっと担当の方は大変でしょうね…。せっかくの打ち上げだったのに、残念だったわね。」

「うん…。残念だったね。」

シロは昨日のことを思い出して、イツキを見る。

 

「どうしたんだい?僕の顔に何かついているかい?」

「ごめん、なんでもない。」

どうやらイツキはいつもと変わりないらしい。

 

「マスター、今日は何をしますか?」

「今日は急ぎの用事はないし…。あんたのやりたいクエストに付き合っても良いわよ。」

「私も参加したいわ。」

「僕も一緒に行こう。」

 

「私もすぐにやりたいクエストを思いつかないから、キリト達も誘ってみようか。」

 

シロの意見で、キリトのホームへ移動した。

 

********

キリトのホームへ入ると、ここでも強制ログアウトの件を話していた。

「昨日はびっくりしたー。急に切断されるんだもの。」

 

ツェリスカがこの手の問題に詳しいのか、いろいろ説明してくれている。

「俺としては…今回のトラブルは少し気になっている。」

キリトは何かが引っかかるのか、原因をよく調べてみるらしい。

 

 

「その話はそのくらいにして、せっかくだしパーッと狩りに行こうよ!」

クレハが明るく話題を変えてくれた。

「さんせーい!」

「私も行きたいなー!」

他のメンバーも同意してくれて、みんなでフィールドに出る流れになった。

 

「OK!じゃあ、とりあえず総督府まで移動しよう。どこに行くかは途中で相談して…。」

「ちょっと待ちなよ。リーダーの意見を聞かないと。」

 

クレハが喋っていると突然、イツキが止めた。

「リーダー?ああ、キリトさんも参加出来る?」

「もちろん。だけど、このスコードロンのリーダーって…。」

キリトはシロの方を見る。

 

「存在感なくて、すみません。」

シロが苦笑いしながら、手を小さく挙げる。

「あ…スコードロンのリーダーに登録されているのは確かにあんただけど。別に気にしてないよね?いつもこんな感じだし。」

 

「それはおかしくないか?」

シロとクレハはイツキの方を見る。

「みんなは君を気に入ってこのスコードロンに入っている。もっと君が積極的にリーダーシップをとってほしいな。」

「そんな…。」

イツキの意見に、クレハが反応して空気が張りつめる。

 

「まぁまぁ、リーダーだって色んな形があるさ。クレハと二人三脚で良いコンビだと思うけど。」

キリトが仲裁にはいる。

「みんながいいなら、それでいいさ。ただね、少しどうかな…と思っただけなんだ。」

 

「イツキさん、それってあたしの力が…このスコードロンにふさわしくないってことですか?」

「どうしたの、クレハ。そんなこと誰も言ってないわ。」

「言ってないだけ。…なーんてね。」

 

「イツキ。」

 

シロがイツキの名前を呼んで咎める。

「クレハ、あなたは充分強いわ。だから、そんな自分を否定するようなことを言ってはダメ。」

「シノンくん、力にこだわっているのはクレハくんの方だよ。」

「真剣な人をおちょくったのはあなたでしょ。」

「あー、それは謝るよ。すまなかった。むしろ僕は、リーダーは強さだけで選ぶのか?と問いたかったんだ。」

 

「そうね…リーダーの基準はそれだけではないだろうけど…。」

「うーん。自然にそうなったというか、いつの間にかみんなの中心になってたものね。」

「最初は初心者だったのに、あっという間に頼れる存在になったよね。」

リーファやユウキの言葉に、クレハは思いつめた顔をする。

 

「……そう、なんだ。みんな、そんな風に思ってたんだ。」

「だろう。カリスマ、魅力、いろんな言い方はあるけれど…。シロ、君は特別な存在なんだと自覚したほうがいい。」

「特別…。」

呟くクレハの表情は、シロは前にも見たことがあった。

何年も前に、クレハが優秀なお姉さんのことを話していた時の、傷ついた顔だった。

 

「いい加減にして、イツキ。」

シロが今まで黙っていたが、怒った表情でイツキを見る。

 

「みんなが思ってること、なんだよ。」

「イツキがそうなる様に、横やり入れてたじゃない。私は自分を特別だとは思わない。」

「君がそう思っていても、周囲はそれを良しとしないよ。」

「もし、みんなが私の事をそう思ってたとしても、私は変わらない。」

「クレハくんは、それでいいのかな?」

 

イツキはクレハに聞くが、クレハは黙ったままだ。

「クレハは関係ない。」

「…シロ。あんたにとって、私はなんなの?」

「えっ…?」

突然の質問に、驚いて振り向く。

 

「いつも、あたしの後ろについてきたくせに。あたしがいなければ、ダメなんじゃないの?」

「クレハ…落ち着いて。」

シロがクレハに手を伸ばそうとするが、クレハはそれを拒否した。

「私は冷静よ。シロ、私と決闘しなさい。あんたより強い事を、証明してみせるわ。」

 

真剣な表情で戦いを申し込むクレハに、シロは断る訳にはいかなくなった。

 

*******

 

模擬戦闘が行える部屋を借りて、決闘をおこなうことになった。

念のためにツェリスカとイツキを見届け人をお願いして、2人は準備する。

 

何度も何度も一緒にフィールドやダンジョンを行った仲だけあって、お互いの戦闘スタイルは熟知している。

「シロ、この空薬莢を投げて、落ちた瞬間からスタートよ。」

「わかった。HPがゼロになった方が負けで、いいよね?」

「いいわよ。…それじゃあ、始めるわよ。」

 

クレハの手から、空薬莢が離れる。

 

カランッ

 

金属音がぶつかる音と一緒に、2人はトリガーをひいたーーー。

 

 

*******

「うっ…!」

クレハのHPがゼロになり、しゃがみこむ。

「…。」

勝ったシロは、黙ってクレハに近寄る。

 

「あたしは…ここでも、ダメなの…。」

 

「ナイスファイトよ、クレハちゃん。…こんなに強くなっているなんて、びっくりしたわ。」

「ああ、クレハくんの腕前はトッププレイヤーに劣らない。リーダーがその上をいっただけさ。」

「今回は運が良かっただけだよ。」

ツェリスカとイツキが褒めるが、クレハは首を横に振る。

「…同情なんかほしくない。そういうものを求めてGGOにいるわけじゃない。」

 

クレハはメニュー画面を開いて、何か操作する。

「あたし、ソロに戻るわ。フレンド登録も…削除する。」

「そんな…!」

「リアルにも連絡しないで。しばらく1人になりたいから。」

「…。」

「あたしは、もっともっと強くなるわ。絶対に、あんたより強くなってみせるから!」

 

クレハはそう言うと、ログアウトしてしまった。

「クレハ!」

シロが名前を呼んでも、そこにはいない。

 

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