SAO フェイタルバレット   作:玄神

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33話 ラスト・バトル

「…それじゃあ、ログアウトするよ。」

「ここから先、何が起きるか分かりません。気をつけて下さいね、マスター。」

「うん。」

シロのホームで、レイが見送ってくれた。

ログアウトをしたら、シロはナーヴギアを被って、死銃との戦いに挑むつもりだ。

 

 

********

ーー現実世界。

 

目の前にある、ナーヴギアを手に持つ。

手は微かに震えている。

ましろは大きく、深呼吸するとナーヴギアを被った。

アミュスフィアに比べると、重たくて、暗い。

 

「リンク、スタート」

 

言葉と共に、意識は仮想世界へ。

 

********

暗闇から、目の前に景色が広がる。

無事にログインできたらしい。

 

シロは隣を見る。

そこには、シロと同じく驚いているレイが、そこにいた。

「……!?マスター、ここはどこなのですか?」

「私にも分からない…。それより、レイはどうしてここに?ホームにいたはずじゃ…」

「はい。わたしは数秒前まで、マスターのホームで待機していました。」

2人はとりあえず、前へ進んだ。

 

「ちょっと!」

不意に聞いた事のある声がする。

声の方を向くと、なんとクレハがいた。

「なんで、あんたがここにいるのよ!」

「それはこっちのセリフだよ、クレハ。」

「まさか…デスガン…あっ、いや…。あ、あんたの顔は今は見たくないの。早くログアウトしなさい!」

「いま、死銃って言ったよね」

「はい、クレハは確かに言いました。」

「レイちゃんまで…!というか、ログアウトしないなら…」

 

「ログアウトなら、できないわよ。ログアウトボタンが選択できなくなってるわ。」

 

「「!」」

今度の声の主は、ツェリスカだった。

「まさか、あなたたちがいるなんてね。」

「ツェリスカまで…もしかして、死銃に?」

「ええ、そうよ。」

ツェリスカとクレハの話を聞くと、2人とも死銃に誘い出されて、ログインしたらしい。

「どこから手に入れたか知らないけど、ナーヴギアを自宅にまで送ってこられたわ…。」

 

「待って。それじゃあ、私と同じく、2人ともナーヴギアを…?」

シロの質問に、うなずく2人。

この場に居るレイ以外の全員が、ナーヴギアを送りつけられて、被るよう指示があったらしい。

 

 

「まだ疑問は残るけど、ここにずっと居るわけにはいかないし、気をつけながら進みましょう。」

 

周囲を警戒しながら進むと、転送ポートが見えてきた。

「これって…罠だよね。」

「他に道はなさそうだし、ここを行くしかなさそうね。」

「私が先に行ってみますよ、マスター」

「ちょと…レイ!」

 

止めようとしたときには、既にレイは転送ポートの中へ入ってしまった。

無事にレイは転送されたらしく、姿が消えた。

「私も先に行ってるから!」

レイに続き、シロも飛び込む。

 

転送された先は、円形の広場だった。

シロの横にはレイもいた。

「こら、危ないから勝手に行かないの。」

「えへへ…。ごめんなさい、マスター。」

 

そして、ツェリスカ、クレハも続けて転送されてきた。

「ここは…どこなの?」

 

広場の中央まで歩いて進むと、男性の声が聞こえた。

「やぁ…皆様、お揃いで。」

「!」

シロ達の目の前で、誰かが転送されてきた。

 

「ようこそ、GGOとは似て非なる、デスゲームの世界へ。」

「イツキ、パイソンさん!」

「嘘でしょ…。」

「どうして、あなたたちまで…」

シロ、クレハ、ツェリスカが驚きの声を上げる。

 

「それは簡単な話です。私が、死銃だからですよ。」

「えっ!?」

パイソンの唐突な言葉に、ツェリスカはすぐに銃に手を触れる。

いつでも行動できるように、パイソンとイツキの動向に注目する。

 

「あなたも落ちぶれたものね、イツキ。」

「僕は違うさ。パイソンくんから、このデスゲームエリアの話を聞いてね。楽しそうだから、付いてきたんだ。…ちなみに、僕らの頭にも、ナーヴギアを装着されている。面白いだろう?」

「そんな…」

イツキの言っていることに、動揺するシロ。

 

パイソンは楽しそうに話し出す。

「これも全部あなたがイケないんですよ。シロ…いいや、《神谷 ましろ》」

「どういうこと?」

全く身に覚えの無いシロは、理解できない顔をする。

 

「あなたや、あなたを取り巻く人間達がイツキさんを変えてしまった。」

「僕は別に変わったつもりはないんだけど。」

「いいえ…あなたは前とは違う。以前のあなたは孤高でとても魅力的な人でした。」

「…。」

「前にも言ったと思いますが…。《アルファルド》に集まっている私も、彼らも、みんなイツキさんを慕って集まっているんです。それなのに…シロ。あなたが来てから、全てが変わってしまった。」

パイソンはイツキの事を崇拝しているのだろう。

そんなイツキが目の前で1人の人間に固執していく…そんな姿を見るに耐えれなかった。

 

パイソンの手には銃が握られている。

それをシロに向ける。

「神谷ましろ。あなたはここで死んで罪を償うべきだ。」

 

「本当に残念だなぁ、ましろ。展望台で話したこと、あれは全部本心だったんだけどね。君との冒険も、ここで終わりみたいだ。」

イツキは自身の襟につけている赤いカフスをトントン、と叩いてウィンクをする。

一歩先にいる、パイソンは、それには気付かない。

 

「…!」

シロはそれを見て、根拠はないけれど、イツキは敵じゃない気がしてきた。

 

「パイソン…。私に用があるなら、クレハ達は関係ないわ。ログアウトさせて。」

シロは喋りながら、パイソンとの距離を少しずつ縮める。

 

「言ったでしょう。あなたと、あなたを取り巻く人間…。それは《黒の剣士》たちも入ってるのですよ。」

「キリト達も…!?」

「あなたたちが死ぬことで、死銃の存在は完成し、イツキさんも前みたいに戻ってくるはず…。」

 

「残念だけど、みんな生きて、帰るわよ。」

「ログアウトもできないのに、どうやるつもりですか?」

パイソンは勝ち誇った顔で、シロを見つめる。

 

「イツキ!」

シロは叫ぶと同時に、UFGをパイソンに向けて撃つ。

 

「!」

パイソンは一瞬驚くが、UFGのことは前から知っていたため、イツキとは反対側に避けた。

「そのくらい、避けられないと…思いましたか?甘いですね。」

 

「それじゃあ、これは避けられるかな?」

 

「!?」

パイソンが驚いて、後ろにいるイツキを見ると、ハンドガンの銃口を自分に向けていた。

「あなたは…結局…裏切るのですね。」

「僕は君の仲間になった覚えはないよ。」

「…あなたは、そういう人でしたね。なら、こいつの出番ですね。」

パイソンはメニュー画面を開く。

 

「…!なにか、よくないものが来ます!気をつけて下さい!」

 

広場の中心から、何かが転送されてきた。

黒いブラックホールの渦から出てきたのは、マントを羽織ったエネミーだった。

 

パイソン以外の全員が突然のエネミーに驚き、一瞬の隙をパイソンに与えてしまった。

 

「きゃぁっ」

「クレハ!?」

 

クレハの叫び声が聞こえ、視線をうつすと、パイソンがクレハを人質にとり、銃口を彼女に当てていた。

イツキがすぐに銃口をパイソンにあわせる。

「いいんですか?このままでは、彼女の脳はナーヴギアで焼き尽くされて、死んでしまいますよ。」

「イツキ…。」

「悪いけど、僕の1番大切なのは、君だ。」

「私は誰ひとり、死んで欲しくない。」

「僕は君さえ無事でいてくれれば、それでいい。」

イツキは頑に、パイソンに銃口を向けたまま。

 

「パイソン…クレハちゃんを離しなさい。人質なら、私がなるわ。」

「…悪いが、君のようにずる賢い女性は、嫌いでね。」

ツェリスカの説得にも、パイソンは耳を貸さない。

 

今度はシロがパイソンの方へ向かって喋る。

「クレハを離して。」

「そうですね…あなたが死んでくれれば、考えてあげてもいいですよ。」

パイソンの言葉に、イツキはいっそう険しい顔をする。

 

「約束して。私が死ねば、クレハを、みんなを無事に返して。」

「シロ!ダメよ!」

クレハが焦って止めるが、シロはゆっくり広場の端に向かって歩き出す。

 

「泣ける友情ですね。…そこから飛び降りるつもりですか?」

「自分で引き金をひく勇気はないからね。」

「ダメです!マスター!」

「止めろ、シロ。止めるんだ。」

イツキは慌ててシロの後を追う。

 

シロは広場の端ーーーフィールドの端へ辿り着くと、下を覗き込む。

真下は雲のオブジェクトしか見えず、自分が高い所に立っていることが分かる。

このまま落ちたら、間違いなくフィールド外の死亡判定を受けるだろう。

 

「イツキ、そう言えば、また答えてなかったよね。」

「何を…」

振り返ったシロはほほ笑んでいた。

「私がGGOを続ける理由。ーーそれはね、強くなって、イツキの横に立っていたかったんだ。」

「シロ!」

 

イツキの焦った声が大きく響く。

なぜなら、シロの体が後ろへ傾いたからだ。

シロの背後は何もない。

つまり、そのまま落下すればシステム的に「dead」の判定になる。

 

 

支えを失ったシロの体へ必死に手を伸ばすイツキ。

イツキの指先がシロの服を掴む。だが、2人の体はすでに空中へ投げ出されていた。

 

「マスタアァー!!」

レイの悲痛な叫び声だけが響いた。

 

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