死銃ーーパイソンとの戦いから数日後。
現実世界で、ましろは、ある人物と会う約束していた。
今回の事件のことを、詳しく聞きたいと言う人だという。
学校が終わったら、連絡をしてくれ…とは聞いていたが、今がその時なのだろう。
携帯を取り出して、相手にメールを送る。
すると、学校の裏門で待っている、と返事がすぐ返ってくる。
指示通りに、裏門へ向かう。
正門ほどではないが、こちらも人通りはある。
裏門を出てすぐ傍にバイクが止められていた。
そして、その傍らには黒いジャケットを着た青年。
「…もしかして、キリト?」
「ん…シロか?初めまして、俺がキリトだ。」
「初めまして、シロです。」
「話し方はいつも通りで良いよ。これから移動するけど、大丈夫か?」
「時間なら心配しないで。…ちょっと待って、もしかして私も、バイクに乗るの?」
「心配ないよ。ヘルメットなら2つ用意してある。」
こうして、ましろは人生で初めて、バイクを体験するのである。
ヘルメットを被り、キリトが乗っている後ろにまたがる。
「ちゃんと、俺の服でいいから捕まってて。」
「…はい。」
こんな姿をイツキが見たらどんな顔をするのだろう。
途中まで想像したましろは怖くなり、キリトの服をぎゅっとつかむ。
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「もう着いたよ。」
「…死ぬかと思った。」
「君がそれを言うとシャレにならないな。」
「バイクって意外にスピード出るんだね。」
「…この上で君に会いたいって言うやつと待ち合わせしているんだ。」
キリトとましろが入ったお店は、以前ましろも来た事のあるレストランだった。
「やぁ。2人とも。こっちだよ。」
奥の4人がけテーブルに座っていた、男性が呼び止める。
「初めまして、神谷ましろです。」
「君の事はキリトくんから聞いているよ。初めまして、私は、菊岡誠二郎。総務省でSAO事件や今回ような事件を担当している者だ。」
「総務省…。」
「とあえず、何か好きな物を注文すると良い。」
菊岡の向かいにキリト、その隣にましろが座る。
席についたましろは、メニューを見る。
「ここは、あいつが出してくれるから、遠慮しなくていいよ。」
こっそり呟くキリトに笑みを零す、ましろ。
2人とも飲み物とケーキを注文した。
「それで、今日は何をお聞きしたいんですか?」
「まずは、君に謝罪しなければならない。」
「えっ?」
「ナーヴギアを盗まれてしまったのは、こちらの不手際なんだ。この事がなければ、今回の事件も未然に防げたのかもしれない。」
菊岡はイスから立ち上がると、頭を下げる。
ましろも急いでイスから立って、そんなこと止めて下さい。と止めさせる。
「今日、君から話を聞きたいのは、事件が起きるまでのことと、あのSAOを模した世界で行われたことについてだ。」
ましろは自分が知っている限りのことを、菊岡とキリトに話した。
「…なるほど。君の話す内容と、犯人のパイソンが言っている内容はほぼ同じの様だね。」
飲み物とケーキが運ばれてきて、飲み物を口に含む。
「あの、ひとついいですか?」
「なんだい?」
「アルファルドのリーダー、イツキは…彼はどうなるんですか?」
事件が起きてから、ましろはログインしていないし、イツキとも連絡が取れないままだった。
菊岡はタブレットを操作して、事件の資料を見せてくれた。
「彼のことは…ここに書いてある。事件について、かなりの事情を把握しているからね。」
不安そうに文章を読む、ましろ。
「心配しなくて大丈夫だよ。彼は他の人たち同様、事情を聞いているだけだ。」
「他の人たち…?」
ましろの疑問に、キリトが答える。
「ツェリスカとクレハのことだよ。…クレハとはリア友だったよな。」
「うん。クレハとはすぐに連絡がついたから知ってる。」
菊岡が知っている情報を付け足す。
「ツェリスカくん…彼女の仕事については、知ってるかい?」
「現実世界の話はほとんど、聞いた事無いです。」
「彼女は、GGOを運営している、ザスカーの人間なんだ。」
「!」
GGOについて詳しいとは思っていたが、運営の人とは思わなかった。
「あと、パイソンもザスカーで勤務していて、ツェリスカくんとは上司と部下の関係だったらしいんだ。」
「えぇっ!?」
「今までパイソンもツェリスカくんもお互いに職場の人間とは気付かなかったらしい。パイソンがナーヴギアを彼女の住所へ送る際に、気がついたと言っていたよ。」
まさか、自分の上司が犯罪を犯しているとは、ツェリスカも予想できなかっただろう。
「それから、死銃事件について、話しておこう。」
「えっ…死銃事件?」
シロはBoBでおこなわれた事件について、耳にしていなかった。
キリトの補足を受けながら、シノンが襲われた事、とある兄弟が逮捕されたことなど、事件の一連を聞いた。
「それじゃあ、パイソンが、死銃ではなかった…?」
「彼は、死銃を語った偽物だ。…ただ、単独犯でここまでの事はできなかったはずだ。」
「協力者が…いる?」
「まだ、分からないが…。何か分かればキリトくんを通して伝えるよ。」
その日は、キリトのバイクで家まで送ってもらう事にした。
「ねぇ、キリト。」
「どうした?」
ヘルメットを被るキリトに、話しかける。
「キリトは、今回の事件…どう思う?」
「そうだな…。パイソンのやろうとしていた事は、どんな理由であれ許されない事だ。」
「…。」
「あと、君が自分の命を投げ出す事がこれから無い事を、願うよ。」
「うっ…。」
「心配していたのは俺だけじゃない。警告文が来た時点で、相談してほしかったな。」
「ごめん…。」
「アスナのお説教はかなり怖いからなー。覚悟しといた方がいいぞ。」
「キリトはよく怒られてるもんね。」
「ははっ。俺も人のこと、言えないな。」
「…ありがとう。」
「ほら、帰るから後ろへ乗った乗った。」
キリトの優しさが、今は嬉しく感じるましろだった。
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家に着いたましろは、ヘルメットをキリトに返す。
「今日はありがとう、キリト。」
「このくらい、大した事ないさ。…しばらくは、身の回りを気をつけて。」
「うん。…今日は、ログイン、しようと思う。」
「わかった。それじゃあ、ホームで待ってるよ。」
キリトを見送って、ましろは家に入り、携帯を開いた。
メールの送り先は、伊月だ。
今日ログインすること、話したい事が沢山あること…。
伝えたい事はこれ以外にもあるが、それは会って伝えなければ、意味が無い。
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シロがログインして、まずは自分のホームへ向かった。
「…!マスター!」
ホームでずっと自分の事を待っていてくれたのだろう、レイが泣きながらシロに飛びついた。
「レイ…ごめんよ。すぐに来れなくて。」
「マスターが無事なことはキリト達が教えてくれました…でも、会いたかったです。」
レイが落ち着くまで、そばに居てあげるシロ。
やっと泣き止んだのか、シロは涙を拭うと、笑った。
「お帰りなさい、マスター!」
「ただいま、レイ。」