ダンジョン最上階、ボス部屋の扉が開かれた。
部屋の中はトンネルの形をしていて、扉から奥まで100mほどの広い場所。
エリオスとイツキは目線を一度合わせると、中へ進んだ。
背後の扉が音を立てて、ゆっくり閉まった。
後戻りはもう出来ないのと同時に、戦闘の合図でもあった。
前方にボスエネミーが転送されてくる。
イツキはすぐに遮蔽物に隠れて射撃体勢を取る。
姿を現したボスエネミーは高さ5mはある蜘蛛だった。
顔面の3つ目から3本のバレットラインが出てくる。
目標はエリオス。すぐさま横に走って回避する。
次の瞬間、赤いレーザーが発射されエリオスのすぐ背後で爆発が起きる。
攻撃のわずかな隙にイツキは顔を狙い撃つ。
2発撃ってダメージはわずか。
次は足を狙う。
エリオスはエネミーから充分な距離を取りつつ、アサルトライフルで注意をひく。
レーザーに当たればかなり体力を削られるが、それさえ注意していれば問題はなさそうだ。
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「体力ゲージが赤色だ!行動パターン変わるよ!」
イツキが注意したように、エネミーの体が赤色に染まりゆっくりした動きが嘘のように早まった。
エネミーがエリオスに直線上に突っ込んできた。
避けきれないと判断したエリオスは身を丸めてショックに備える。
ドンッ
鈍い音とともにエリオスの体はゴロゴロと吹き飛んだ。
数メートル飛ばされたが、すぐに起き上がって回復スキルを使う。
今度はイツキがエネミーの注意をひいて時間を稼ぐ。
顔に向かって連続で引き金をひく。
しかしライフル弾がエネミーに当たる事は無かった。
「「!!」」
エネミーの体が消えた。
消えた、と言うより《ジャンプした》の方が正しいのかもしれない。
弾丸が届く前にエネミーはジャンプして、壁に張り付いてる。
「イツキ、背中の石を狙って!」
エネミーの背中がよく見えるようになって気付いた、ルビーのように輝く鉱石。
イツキはすぐさま狙い撃つ。
動くエネミーに向かって連続で撃ち続けて、一発が命中。
体力ゲージは通常時より2倍程削られた。
「背中が弱点だ、集中攻撃行くよ」
その言葉にエリオスも背中を狙う。
敵の体力ゲージはあと少し。
エネミーは危険と察知したのか、攻撃目標をイツキに絞ってジャンプを繰り返して近づいていく。
それにはイツキも射撃をやめ、エネミーとは逆の方向へ移動する。
エネミーのバレットラインがイツキをとらえる。
続けざまに2回発射されたレーザー。
「イツキ!」
直撃はしていないみたいだが、爆風ダメージは入ったはず。
エリオスは回復スキルをイツキに向かって撃つ。
イツキのHPゲージはあっという間に満タンになった。
器用に壁を進みながら何度も何度もレーザー攻撃をイツキに向ける。
そこでエリオスは何か考えたのか、メニュー画面を開いた後エネミーに向かって全速力で走っていった。
イツキは敵のバレットラインを避けながら視界の端でエリオスをとらえる。
敵の注意がエリオスの方へいかないよう、顔を狙う。
エネミーがレーザーを発射した次の瞬間、
エリオスがほぼ同時に背中の鉱石に光剣を突き立てる。
光剣は鉱石に傷をつけ、奥深くまで入る。
アサルトライフルに持ち替え、傷の間から弾がなくなるまで撃ち続けた。
パリンッ
背中の鉱石は粉々に割れ、エネミーのHPは0になる。
エネミーの悲鳴が聞こえた後、地面に倒れ込み「death」の表示
「イツキー…生きてる?」
「なんとかね」
エリオスがイツキを見るとHPが赤色。
後半バレットラインにずっと追われていた為か、少し疲れた表情をしていた。
イツキが座り込んでるエリオスのもとへ寄ると、強い口調で問いただす。
「それよりも、さっきのあれは何だ?」
「あれって?」
「最後の攻撃のことだよ。」
エリオスは助走つけて壁を走った後、エネミーの足をつたって背中に到達していたのだ。
「何の相談もなく突っ込んでいったと思ったら、敵の背中に乗るなんてどうかしてる」
「アサルトライフルでちまちま狙ってたら、その間にイツキがヤラレるんじゃないかなーと心配してだな…」
「……ハァー」
「なんだよため息つかなくてもいいだろ。ボスエネミー倒せたんだし!」
「これは貸しだから。まぁ君と組む事はもうないだろうけど」
「あーもー俺が悪かったよ!」
騒いでるエリオスを無視して、ボス部屋の奥へ。
トレジャーボックスの前でイツキは確認してきた。
「アイテムとクレジットは半分ずつでいいね?」
「いいぜー」
ボスを倒したのもあって、普段より多めのクレジットとアイテムが手に入った。
どこからか明るい音楽と共にイベント終了のアナウンスが流れだした。
「この後、祝賀会でもやるか?」
「反省会の間違いでは」
「まだ言うか」
「残念だけどこの後は予定が入ってる」
「例の彼女さんたちと仲良くデートかー。うらやましいー」
「単に今日付き合ってくれたお礼としてご飯をおごるだけさ。」
それをデートと呼ぶんじゃないの?と言いたげな目でイツキを見る。
転送ポートで総督府に戻ってからがまた騒がしかった。
イツキのファンであろう女性陣には睨まれる、イベントで手に入れたアイテムなど色々聞かれる。
うんざりなエリオスはふとイツキの顔を盗み見た。
もう最初にであった頃の笑顔に戻っていた。