『金色の夜明け』団 アジト
「ヴァンジャンス団長!」
『金色の夜明け』団団長ヴァンジャンスに一人の魔導師が声を掛ける。
「何故あんな下民の新人を大事な任務に.........!」
ヴァンジャンスは振り向くと、男に話し掛ける。
「君は私を信頼しているかい?」
「勿論ですとも...!私アレクドラ・サンドラーはあなたのためなら死ねます━━━!!」
「━━━━...では...私が信頼する彼の事も信頼してあげてほしい。彼も『金色の夜明け』団の一員だ...我々の為にこれから更に強くなっていくだろう.........」
(彼には強くなってもらわねば....それに、『黒の暴牛』に行ってしまった"彼"にも強くなってもらわねばね━━━━━...)
ヴァンジャンスの言う"彼"とは恐らくノアの事であろう。だが、接点の無い彼を気に掛ける理由とは一体━━━━...
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魔宮内部、ノア達三人は『金色の夜明け』団に加入したユノに助けられ、現在はノアとアスタ、そしてユノが互いの成長を確認する。
「ユノ、何故こんな奴らをわざわざ助けたのだ。我々の任務はあくまでこの『
彼は『金色の夜明け』団の一人 クラウス・リュネット
眼鏡を掛けており、見るからに真面目そうな男だ。
「オイユノ!いきなり何だこの失礼な眼鏡は!」
「先輩。」
「メガ...失礼なのは貴様だ!貴族の私と対等な口を訊くな!」
アスタの発言に異を唱えるクラウス。
「あらぁ...ノエルさんじゃありませんか。」
「........」
ノエルに話しかけた少女、彼女も『金色の夜明け』団の一人 ミモザ・ヴァーミリオン 見た目はゆるふわ系の少女だ。
「ご機嫌よう昨年の王族一同のお食事以来かしら。」
「ん?...ノエルの知り合い?」
「えぇ...ちょっとね。」(従姉妹のミモザ...!よりによってコイツも来るなんて............!)
「『黒の暴牛』は野蛮な団だとお聞きしますわ大丈夫ですか?」
突然、ノアの前で失礼な発言が飛び出す。
これに対してノアは「.....は?」と言って呆然としてしまう。
「フン...そっちこそ大丈夫なのミモザ...!貴女みたいなトロイのが『金色の夜明け』団でやっていけるのかしら?」
それに対してか、ノエルも負けじと彼女に皮肉で返す。
「はい、皆様お優しい方ばかりで...お陰で魔法を臆する事無く魔法を振るえておりますわ...あっノエルさんは魔力のコントロール全く出来ておりませんでしたけどその後どうですか?」
(相変わらずの天然失礼...やっぱりムカツク~~~~~~~)
思い出したかのようにノエルの魔力がコントロール出来ない事に触れるミモザ。ノエルの発言から悪気があって言ってる訳ではないと理解出来るが、それでも悪気が無い分
「私達、先日このメンバーでの任務で魔法帝に『星』を受理されましたの...!」
それを聞いてアスタはニヤリとほくそ笑むと、
「俺達だってこの前『星』貰ったもんね!!」
アスタの後ろでどや顔を決めるノエル。まさしく虎の威を借る狐のようである。
「嘘をつけ...『黒の暴牛』の新人ごときがそう簡単に『星』を授与される訳ないだろうが、今回の任務を任されているのもおこがましい。」
「魔法帝直々に任されたっつーの!」
「また見え透いた嘘を...」
「嘘じゃねぇぇぇ!」
クラウスはアスタの言葉を嘘と決め付け、話を信じようともしない。どうやら『黒の暴牛』の評判はかなり悪いのだと理解出来る。
(それ以外にも、『黒の暴牛』は殆どが下界出身の魔導師が多い事もある。)
彼ら『金色の夜明け』団は構成メンバー全員が貴族出身という事もあり、やはりそういった面でも下界出身のメンバーが多い『黒の暴牛』を忌避しているのだと理解出来る。
「━━━そういえば...貴様らは四人で来ていると聞いたがもう一人はどうした?...まさか貴様らを置いて逃げ帰ったなどと言うまいな、それとも
明らかに馬鹿にした様子でこちらを伺ってくるクラウス。
やはり下民という事でノア達を下に見ているのだろう。
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一方、その頃ラックはというと...
「ほっ♪」
楽しそうに魔法を使用して敵の位置を探り、其処へと向かっていた。
「次を左...と━━━...どれくらい強い相手か...楽しみだな~~~~~~~♪」
わくわくしながら先へと歩みを進める様子はまるで子供のように無邪気であった。
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(((俺(私)達ほっぽってどっか行ったなんて...言えねー...)))
ラックの身勝手な行為により、ノア達が現在被害を被っている事など当の本人は知る由もないだろう。
「どちらにせよ新人を置いて行くようなクズのあつまりだ━━━━...『黒の暴牛』...汚らわしい魔法騎士団の恥さらし共めが.........!!」
クラウスの発言にカチンときたアスタ。
「...上等だコノヤロー...俺達『黒の暴牛』が先にこの『魔宮』を攻略してやらぁぁぁぁ!!見てろよ!!....えーっと...変な仮面のボスの団!!」
「変な仮面...だと...?貴様ぁぁぁぁぁ!!我らが崇拝するヴァンジャンス団長を愚弄するかぁぁぁぁ!!?」
今度はクラウスもキレた。
「大体変なのはそっちの団長の方だろうが!何なのだ筋肉ムキムキにタンクトップって」
「何だとコラァァァァ!?男らしくてスーパーイカすだろーがぁぁぁ!!」
「......」(凄い係ってる。)
「......」(自分から係うなって言ってたのに...あれはいいのか?)
クラウスとアスタの口喧嘩を見て、ノアとユノは先程のクラウスの言葉を思い出していた。
「いいだろう愚か者共、魔法騎士団トップと最下位との実力差思い知らせてくれる!!━━━ミモザ!」
「はぁい。」
《植物創成魔法 "魔花の道標"》
ミモザは魔法で魔宮の模型を作り出し、内部構造を確かめ始める。
「え~~~~~と...この「魔宮」の大体の構造はわかりましたわ。」
「ユノ━━━━━!」
「...はい。」
次はユノが魔導書を開いて魔法を発動する。
《風邪創成魔法 "天つ風の方舟"》
魔法で生み出した風にミモザとクラウスを乗せる。
「せいぜい足掻くんだな。」
クラウスはノア達を見下し、嘲笑う。
「............人三人を余裕で........!」
((さすがだな━━━...ユノ...!!))
アスタとノアはユノの成長した姿に感動する。
(((誰が先に宝物殿に辿り着くか勝負だ━━━━!!)))
ノア、アスタ、ユノはそれぞれ競争意識を剥き出しにして宝物殿へと歩みを進める。
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「━━━━ってどうするのよ!?...私達探索系の魔法なんて使えないのよ!?」
「う━━━ん.....どうしようか?」
ノエルの言葉にノアは考え始める。
「そんなの決まってるだろ!しらみ潰しにすべての道を行く━━━━!!」
アスタは罠魔法で生成された魔物を大剣で倒しながら走り出していく。
「馬鹿じゃないの!!?...あ、馬鹿だったこのままじゃ「宝物殿」に行くどころか迷子になるわよ!」
ノエルの言うとおり、この魔宮は内部構造がかなり入り組んでいる為、迷子になる可能性の方が高い。
「......」
その時、ノアはその場に留まり、目を閉じて何かを感じとる。
(あそこか...。)
ノアが見た方向には、別の場所へと繋がっている入り口であった。
「アスタ!」
「ん?」
「あそこの入り口だ。」
ノアはアスタ達に次の行き先を提示する。
「何で分かったんだ?」
「ん~~~直感?」
アスタの疑問にノアは直感と答える。
「馬鹿じゃないの!?...勘なんかで「宝物殿」に辿り着ける訳ないじゃないの!」
ノエルの言うことも一理ある。
「.....まぁ、ノエルの言うとおりなんだけど...それでも俺は,この先に進む。」
《武器魔法
魔導書からナイフを取り出すと、ノアは入り口に向かってナイフを向けた。
するとナイフから黒い影が伸び、入り口付近の壁にくっつく。そしてナイフから伸びた影がゴムのように縮み、ノアを入り口付近まで移動させた。
「アスタ達も後から付いてこいよ....それじゃ、お先。」
ノアはナイフを魔導書に戻すと、入り口の向こう側に向かって走り出していった。
「待ちやがれノア~~~~!!!」
ノアの後を追いかけてアスタが壁を登っていく。
「何で毎回こうなるのよ~~~~!!!」
ノエルもアスタの後に続いて壁を登りながら愚痴を溢すのだった。
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一方その頃、ユノ達は
「ハン...愚か者共共が...我々に勝てるはずがないだろう...大体、何なのだあいつは全く魔力を感じなかったぞ。」
「そうでしたわねー。」
クラウスはアスタに対して陰口を叩き、ミモザはそれに共感した返答を返す。
「あんなのを採用するなど..「黒の暴牛」団長は何を考えて...」
「━━━...クラウス先輩...アイツの事、あまり侮らない方がいいですよ。」
「............!!この「魔宮」を生きて出られればいいがな............!私は我が国の為に迅速な
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魔法帝の城にて、
「お伝えします魔法帝━━!『魔宮』にて魔法騎士団『金色の夜明け』団『黒の暴牛』団調査開始、そしてダイヤモンド王国の魔導士軍隊の侵入を確認しました━━!」
偵察を行っていた魔導士が魔法帝に現在の「魔宮」の様子を報告する。
「我がクローバー王国の隣国...ダイヤモンド王国...!最近領土拡大に力を入れている侵略国家...!」
「あんな国の連中に『魔宮』の古代魔法を奪われたら厄介な事になるぞ...!」
「敵の軍の力は如何程だ...!」
「............」
ザワザワと騒ぎ出す魔導士達、その場には、見知らぬ長髪の男が紛れ込んでいたが、誰も知る由はなかった。
偵察の報告は続いて、敵の情報が報告された。
「敵の軍を率いているのは『奈落のロータス』です━━━━...!!」
敵の名前を聞いた途端、周りがザワつき始めた。
「あぁ━━━...!昔戦場で会った事あるよ!強かったね━彼!使う魔法がこれまた面白くて...」
こんな時まで呑気でいられるのは彼、魔法帝位のものだろう。
「呑気な事言ってる場合ですかァァァ!!」
「ウィリアムも面白そうな子を行かせたようだし━━━...大丈夫大丈夫...
その時の魔法帝の目は、彼ら魔法騎士団を信用しているのか、とても鋭く真っ直ぐ前を見つめていた。
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その頃、魔宮内部 ある場所
「あれ~~~~~~...弱いなぁ~~~~~~~」
ダイヤモンド王国の魔導士達を倒し、魔法で倒した魔導士の一人を掴んでそう言い放つラック。
「...でも君は、そんな事無いよね?」
ラックが顔を向けた先には、一人の魔導士がいた。
「いやぁ~~~~参ったねどうも...ハードル上がり過ぎるとロクな目に合わないからね~~~~~...勢いある若い力...コワイね全く━━━━━━━」
顎を掻きながらそう言い放つ中年の男性魔導士
果たして、ラックはアスタ達と合流出来るのだろうか━━━?