ブラッククローバー ~武器魔法の使い手   作:晴月

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ページ13 対峙する魔導士達

「出ていけ....だと?」

 

ノアの言葉に反応を見せたダイヤモンド王国の魔導士 マルス

 

「ここは俺達クローバー王国の管轄....出ていくならばお前らの方だ....!」

 

マルスは魔導書(グリモワール)を開いて魔法を発動する。

 

《鉱物創成魔法 "ハルパー"》

 

マルスの周囲に無数の剣が出現し、刃をノア達に向けている。

 

「成る程....鉱物から創り出す魔法か....なら、」

 

ノアは刀を魔導書に戻すと別の剣を取り出した。

 

《武器魔法 "炎魔の剣"》

 

「その鉱物...硬さは"ダイヤモンド"並かな?」

 

剣の面に指を這わせ、マルスに向かって走り出す。

 

「無茶だ!」

 

クラウスがノアに制止の言葉を掛けるもノアの脚は止まらない。

 

「先ずはお前だ...!」

 

ハルパーの刃は全てノアに向けられており、マルスが右腕を振り下ろすと同時にノアに向かって飛んでいく。

 

「ハアッ!」

 

ノアが横凪ぎに剣を一閃すると、無数あったハルパーは溶けていく。

 

「な!?」

 

それを見ていたクラウスは驚いた。あの無数に現れた刃がノアの放った一撃で溶けるとは思わなかったからだ。

 

「成る程、その鉱物...やっぱりダイヤモンドだったか。」

 

「どういう事だ?」

 

疑問に感じたクラウスがノアに聞いた。

 

「鉱物の中でも最高の硬さを誇るダイヤモンド....だがそんな鉱石にも弱点が存在する。」

 

「弱点?」

 

「ダイヤモンドってのは...炭素の塊なんだ....炭素は"火"に弱い。」

 

なら、答えは単純だ。と言って剣を(かざ)す。

 

「ダイヤモンドには火を当てて溶かせばいい...こんな風にな!」

 

《炎魔法 "蒼炎の盾壁(じゅんへき)"》

 

剣を地面に突き刺し、蒼い炎の壁を横一面に作り出す。それによって、ハルパーを次々に溶かしていく。

 

「ほら来いよ....こんなもんじゃない筈だろ...ダイヤモンド王国。」

 

手招きをしてマルスを煽るノア。

 

「いいだろう、その安い挑発に乗ってやろう...!」

 

再びハルパーを大量展開していくマルス。

 

「な...!?」

 

その数は、先程展開されていたものの約5倍程の量であった。

 

「この数を見てまだそんな減らず口を叩けるのならな...!」

 

次々にノア目掛けてハルパーがどんどん迫ってくる。

 

(蒼炎の盾壁で俺に物理攻撃は効かなくなっている....どうするつもりだ...?)

 

《鉱物創成魔法 "レーヴァテイン"》

 

ハルパーは一つの巨大な大剣となり、ノアの発動した壁を通り抜けた。

 

「蒼炎の盾壁を....越えた!?」

 

慌てて魔法を解除し、剣を魔導書に戻してマルスの攻撃を回避するノア。

 

「くっそ...予想外過ぎて固まっちまった...!」

 

(奴のあの剣....恐らく、さっきのナイフよりも硬度は倍以上の筈....どうしたもんか)

 

ノアは自分の後ろで立ち尽くしているユノ達を一瞥した。

 

(アレ(・・)を、使うしかないのか....だが、アレ(・・)は反動がデカイうえに発動までに時間が掛かる....だが、そんな悠長なこと、言ってられる状況でもない!)

 

「ユノ、二人を連れて少し下がっていてくれ。」

 

「何か考えがあるんだな?」

 

コクッ、と頷きでユノに返答する。

 

「分かった。ノア....お前の判断を信じる。」

 

ユノはクラウス、ミモザを連れて扉付近までノアから離れた。

 

「さて、と。」

 

ノアは、天井を仰ぎ深呼吸をするとマルスに向かって左腕を突き出す。

 

「お前に俺の技を見せてやる。」

 

突き出した左腕を右腕で掴み、その場で目を閉じて直ぐに開く。

 

「体は剣で出来ている!」

 

ノアがその言葉を放った途端、彼から計り知れない威圧感が溢れ出した。

 

「血潮は鉄で心は硝子。」

 

(何だ今のは、一体....何なんだコイツは━━━!!?)

 

「幾度の戦場を越えて...不敗...!」

 

ノアは更に詠唱を続ける。

 

(止めなくては、これ以上....この男に、手出しさせる訳にはいかない!)

 

危機感を感じ取り、ノアに向かってレーヴァテインを振り下ろすマルス。だが、

 

「な....!?」

 

レーヴァテインは寸でのところでユノによって防がれる。

 

「邪魔はさせない....!」

 

「貴様....!」

 

「たった一度の敗走もなく、たった一度の勝利もなし。」

 

ノアの詠唱はまだ続く。

 

「遺子はまた独り、剣の丘で砕氷を砕く...けれど!、この生涯は今だ果てず...」

 

そしてノアの詠唱はあと少しで完了する。

 

「ならば━━━━!!」

 

マルスはレーヴァテインを解除し、全てハルパーに戻してノアに投擲する。あと少しでノアに当たる....その時、

 

「死ねぇ、クローバーの魔導士よ!」

 

「偽りの体は、それでも剣で出来ていた━━━!!!」

 

ノアの詠唱が終わり、その瞬間、ノアの周囲に地中から飛び出した無数の剣によってハルパーの投擲は全て弾かれる。

 

「なっ....何だ、コレ(・・)は....!?」

 

マルスは戸惑いの表情を見せた。

 

魔宮内部が一瞬にして、無数の剣が刺さった雪原へと変化したからだ。

 

「内と外を入れ換える魔術(・・)...."固有結界"だ。」

 

突き刺さっていた剣を一つ手に取り、マルスに向ける。

 

魔術(・・)....だと...!?」

 

聞き覚えの無い言葉に、驚きを隠せないクラウス。

 

魔法ならば、自分達が所有する魔導書を用いて発動することが可能だと理解はしていた。しかし、初めて魔術という言葉を耳にし、一体どういうものなのかと思考を巡らせるが一向に答えは導き出すことが出来ない。

 

「行くぞ、ダイヤモンド王国の魔導士よ...武器の貯蔵は充分か...!」

 

近くに刺さった剣を一つ抜き、マルスに向かって走り出す。

 

「...ッ....舐めるなよ、こそ泥風情が...!」

 

「それは...こっちのセリフだ!」

 

マルスはハルパーを、ノアは剣で互いに受け止め、押し合う

 

所謂、鍔迫り合いの状態となっていた。

 

「貴様....その力、"魔法"ではないのか...」

 

「だからさっき言ったろ...."魔術"だって...」

 

互いの力量は互角だと覚ったノアはバックステップで一時離脱し、持っていた剣をその場に突き刺し、両手から新たな剣を"創り出した"

 

「武器魔法 干将・獏耶....お前を倒すにはこれが一番いい。」

 

そう言ってノアは双剣を真横に投げる。

 

「何のつもりだ....武器を捨てるなど....勝負を捨てたか...貴様ァ!」

 

レーヴァテインを発動してノアに振り下ろそうとしたその時、

 

「いいや、捨ててはいない....むしろ、俺の勝ちだ。」

 

ノアがそう言うのが先か、先程ノアが投げた干将・獏耶はマルスの両肩に突き刺さった。

 

「な.....に......!?」

 

「干将・獏耶は夫婦剣.....互いに引き寄せ会う性質を併せ持つ。」

 

(これで終わりだ。)

 

「━━鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎむけつにしてばんじゃく)

 

「━━心技、泰山ニ至リ(ちからやまをぬき)

 

「━━━心技黄河ヲ渡ル(つるぎみずをわかつ)

 

「━━━唯名別天ニ納メ(せいめいりきゅうにとどき)

 

「━━━両雌、共ニ命ヲ別ツ(われらともにてんをいだかず)......!」

 

再び干将・獏耶を創り出し、また真横に投げ、今度は詠唱を始める...そして、

 

ノアは両手に干将・獏耶を握り締め、飛び上がり、マルスの頭上目掛けて双剣を振り下ろす。

 

鶴翼三連(かくよくさんれん)!!!

 

二つの双剣は同じタイミングでマルスにぶつかり、マルスの身体はその場に崩れ落ちていった。

 

「.......終わった。」

 

「いや、まだだ」

 

「なっ!?」

 

崩れたマルスの声が別の場所から聞こえ、直ぐ様その場から飛び退いた。

 

「何で....!?」

 

《鉱石創成魔法 "タロスの人形"》

 

先程ノアが倒したマルスは彼が魔法で造り出した人形であった。

 

「お前の攻撃など....俺の前では無力に等しい。」

 

「..っく...なら!」

 

《無属性武器 "加州清光"》

 

「はっ!」

 

マルスに刀の一撃を叩き込む。...だが、

 

《鉱石創成魔法 "ネメアの鎧"》

 

マルスはノアの攻撃を魔法で造り出した鎧でガードした。

 

ノアは衝撃で仰け反ってしまうが直ぐ様体制を立て直す。

 

「っく....やっぱ硬いな。」

 

「まだ続ける気か?....無駄な事を...」

 

ノアに呆れ果てて溜め息を漏らすマルス。

 

「無駄ではないぜ...少なくとも...なっ!」

 

ノアは再び刀でマルスに斬りかかり、何度も弾かれる。

 

「無駄だと...言っているだろう!」

 

《鉱石創成魔法 "ハルパー"》

 

「ぐぁあああ!!!」

 

「ノア!」

 

ノアはマルスのハルパーに切り裂かれ、身体の至る箇所から出血し、その場に倒れる。

 

「来るな、ユノ!....大丈夫だ....こんなの、かすり傷だ。」

 

強がっているのか、それともホントに大丈夫なのかノアは何とか立ち上がりながらユノにそう言った。

 

(そろそろ...俺の魔力が尽きる....次で...決める!)

 

ノアは刀を構え、目を閉じて深呼吸するとそのままマルスに向かって突進していく。

 

「血迷ったか....」

 

「いいや、ここだ!」

 

ノアはスキップをするように一歩一歩、マルスに近付いていく。

 

 

「一歩音越え...二歩無間...三歩絶刀...!」

 

「なっ!?」

 

マルスの目には、ノアが見えたり、消えたりしている。

 

ノアは今、マルスの死角に入り徐々に近付いて行っている為、マルスの目には映ったり、消えたりしているのだ。

 

「無明...三段突き!」

 

一点集中 ノアの刀はマルスの鎧中心部目掛けて、突きを放ち、ノアはマルスの背後に背中を合わせるようにして立っていた。

 

「愚か者....俺のネメアの鎧を砕く事など...」

 

「知ってるか、魔導士?....どんな物体にも必ず核となる場所が存在する事を。」

 

「?....何を言って...」

 

その時、マルスの鎧からピシピシ、と音が響いた。

 

「なっ!?」

 

見るとマルスの造り出したネメアの鎧は、中心部から亀裂が入り、今にも砕けそうになっていた。

 

「無明三段突きは一点集中の技....だから、その鎧の一番薄い箇所...つまり、核となる中心部を狙って突きを放った。」

 

「な....に!?」

 

マルスの鎧は更にピシピシ、と音を響かせて亀裂が次々に増えていく。

 

「更に言うなら...あの技は本来、敵を殺す為の技なんだが...極力、力を抑えたから後ろに吹っ飛ぶ...防御は不可能だ。」

 

ピシッ、と音が止まると同時に、バキィン、と何かが割れる音と同時に鎧が砕け散る。

 

「ぐ....ぐぁあああ!!!」

 

ノアの宣言通り、マルスは後ろに吹っ飛び...魔宮の壁に激突して気絶した。

 

「全く、久々に使ったのに....これじゃ、締まらないな...全く。」

 

ノアの体は魔力を使いきり、その場に立っていられるのがやっとの状態であった。

 

「やれやれ...だ。」

 

ノアはその場に崩れるように倒れた。

 

「ノア!」

 

ユノ達が駆け寄るも、ノアの返事は無い。

 

果たして、ノアは目を覚ますのだろうか━━━━?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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