隣国、ダイヤモンド王国 との間に出現した
「ノア!おい、しっかりしろノア!」
ユノが身体を揺さぶるが、ノアは苦しそうな表情を見せるだけで目を覚ます気配は感じられない。
「ユノさん、ここは私が...」
《植物回復魔法 "夢癒の花籠"》
ミモザが魔導書を開いて魔法を発動し、ノアを回復させる。
「...!...これは...!」
ミモザはノアの状態を把握して驚く。
「どうしたミモザ?」
ミモザの驚いた表情を見てクラウスが訪ねる。
「今、彼には魔力がありません...恐らく、先程の攻撃で使い果たしてしまったのではないかと...」
「なんだと!?」
ミモザの言葉を聞き、クラウスはノアを一瞥した。
(この男...下民の癖になんて強力な魔法を...いや、待てよ?)
クラウスはノアの言葉を思い出していた。
(内と外を入れ換える"魔術"......"固有結界"だ。)
(確かにあの男は"魔法"ではなく"魔術"と言った....ということは、魔法のように何度も発動することが出来ないのか!?)
クラウスの読みは当たっていた。
ノアの発動した固有結界....《
(そんな技を...わざわざ私達を助ける為に...どうやら、間違っていたのは、私の方だったらしい。)
ノアの行動に対してクラウスは、自身の愚かな考え方を変えるべきだと悟った。そして、今後一切ノアやアスタを馬鹿にすることはしないようにと、改めるのであった。
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「それで、ノアがミモザの治療を受けているのね。」
「ええ...私を助けた後、ダイヤモンドの魔導士と戦って気絶してしまったんです。」
その後、ラックを助けたアスタとノエルが宝物殿まで駆けつけてノアの倒れている理由を訪ねている。
「全く、相変わらず無茶するのね。」
「相変わらず?」
「ええ...この男、任務ではアスタと一緒に先人切って突っ込んでいくしね。」
やれやれといった様子で呆れ果てた様子のノエル。
それを見てミモザは微笑ましいモノを見たように穏やかな笑みを見せるのだった。
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「これでよし...!」
ノアが倒したマルスを回収し、クラウスは自身の拘束魔法で拘束する。
(それにしても、まさか...『黒の暴牛』に助けられる事になろうとは......)
ミモザの治療を受けているノアと体力回復の為、薬草を食べているアスタを一瞥した。
「この拘束魔法大丈夫か?」
「大丈夫に決まっているだろうが!手負いの者に解かれる程脆くないわ!」
「まぁそうカリカリしなさんな。」
「先にこの場所に辿り着き勝負に勝ったのは我々だが、特別にお前らも宝物殿に入る事を許そう━━━!」
クラウスはアスタとノエルに対し、一緒に宝物殿に入ってもいいと遠回しに伝える。
「何でそんなにえらそーなんだこのメガネはぁぁ!!......どーもありがとうございますコノヤロー!!」
この場面。ノアが見ていたら、『あれ?そもそも勝負なんてしてたっけ?』などと突っ込んでいただろう。
「.........」
だが、現在のノアはマルスを倒す為に自身の内にあった魔力を全て使い果たし、倒れてしまっている。
目覚めるかどうかは、ミモザの治療が終わるまで誰にも分からない。
「いざ宝物殿へ━━━━!!」
アスタが勢いよく扉を開けようとした時、アスタ達は気付いてしまった。
((どうやって入るんだろう.........))
扉を開ける方法が無い事に。
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「どうすんだよ!?」
「落ち着け、恐らく何処かに暗号か何かが━━━...」
「頑張れ!考えろ!メガネ!」
「やかましいわ!」
アスタとクラウスが漫才をしているとラックが扉に近付き、触れてみる。
「この扉魔法で出来てるみたいだからアスタ、斬っちゃいなよ。」
「は?...魔法を、斬る?」
ラックから飛び出した予想外の発言にクラウスは戸惑いを見せる。
「うらぁぁ━━━━!!」
ラックの言葉を信じ、剣を振って扉を破壊する。
「な.....何故、魔力の全く無い下民が....!?」
「魔力の無効化...それがアスタの能力なのよ。」
「...無効化...だと............!?」
ノエルの言葉に、クラウスは何かの間違いではないのか?と思ったが、今はそれよりも宝物殿に入る事を優先すべきと判断し、頭の片隅に放置した。
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「すげええ~~~~~~~お宝の山だぁぁぁぁ!!!」
中に入るとそこには辺り一面に金塊や宝剣、他にも様々な装飾品などが散らばっていた。
「うん?....ここは?」
「お、ノアが起きた。」
ユノに担がれていたノアが目を覚ます。
「宝物殿の中だぜノア。」
「宝物殿.....ああ、そうか。」
混乱していたが、アスタの言葉に周りを見回してから自分のいる場所を理解した。
「取り敢えず.....ユノ降ろして。」
「ああ、大丈夫か?」
ユノがノアの事を心配して訪ねる。
「ああ、大丈夫...もうあらかた回復したからな。」
ユノの背中から降りて宝物殿内を散策する。
(にしてもこの財宝の数は....多すぎる気もするが...)
中に散らばっている財宝類を見て、そんな事を考えていたが、もしかしたら自分も何か新しい魔法を手に入れられるのではないか?
と考え、ワクワクしながらアスタ達と一緒になって中を見て回るのだった。
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「ん?...なんだ?」
中を歩いていると、ノアの魔導書が突如として淡い光を放ち始めた。
「....新しい魔法....なのか?」
ページを開いてみると光は壁に向かって、突き刺すようにして何かをノアに教えている。
「壁しかないんだけど...?」
光の当たっている壁を叩いてみたり、押してみたが、何の変哲もないただの壁なので、ノアは何かの間違いじゃないのか?
と思い、その場から離れた。
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「.....」
一方、ユノもアスタやノアと同様にクローバー王国に持ち帰る物品を探していた。
するとある巻物がユノの目に止まった。
(何だ...?この文字━━━...見た事がないな...)
開いてみたが、中には何が書かれているのか分からず首を傾げたユノだったが、
「...!?」
突如として巻物が光を放ち始め、そしてそこに書かれていた文字が消えていた。
(文字が...消えた━━━━...?)
「何だったのだ?今の光は」
「............さぁ...」
ユノ自身も何が起きたか分からず、ただ首を傾げるだけであった。
「あだだ...あだだだだだ!何引っ張ってんだネロぉぉ~~~」
一方、アスタはネロに髪を咥えて引っ張られて何処かへと連れていこうとしていた。
「?此処がどうかしたのか?」
連れてこられたのはノアの時と同様、何の変哲もない壁。
ただ一つだけ普通の壁と異なっているのは、何かの"装置"のようなものが中心に付いている事である。
これは、ノアの魔導書から発した光が示していた壁と同じ物に見えた。
「ただの壁じゃねぇかだだだだだ!」
ネロは「何処を見ている、もっとよく見ろ。」と言わんばかりにアスタに向かってキツツキのように嘴を突き刺す。
「何かオモシロイの無いかな~~」
ラックが宝の山に立って周りを見回している。
「!」
すると、何かを感じ取ったラック
「皆逃げ━━━━...」
ラックが言い切る前に、巨大な鉱石の巨人が宝物殿に侵入してきた。
《鉱石創成魔法 "タイタンの重鎧"》
巨人の正体は、ノアが倒し、クラウスが拘束したマルスであった。
マルスは宝物殿に侵入すると同時に、アスタとノア、ノエル、ミモザ以外の全員を自身の魔法で拘束した。
(━━━ば...馬鹿な...!!この短時間に...どうやって復活したというのだ━━━━!?)
クラウスはマルスの速い復活に戸惑いを見せたが、直ぐにその理由にも気がついた。
《炎回復魔法 "
(炎魔法...だと......!?馬鹿な━━━...魔力の属性は一人一つの筈............!!)
クラウスの言うとおり、魔法を使う魔導士には火・風・水・地の所謂、四大元素のいずれかの『
魔力が元から無いアスタや複数の属性の武器を魔法として使用するノアは例外としても、そんな魔導士は普通存在しえないものなのだ。
(その法則を無視して奴は二種類の魔力を持っている...!!しかも明らかに攻撃魔法の使い手だったのに回復魔法だと!?あり得ない━━━━!!....まさか、これが...ダイヤモンド王国の実験の成果...なのか...!?)
アスタ達と対峙したマルスは、頭の中に流れるイメージが何なのかを探っていた。
(マルスはきっとすごい戦士になるね)
(ごめんねマルス...こうするしかないの━━...)
思い浮かぶのは、一人の少女の姿。
ズキズキと痛みを訴える頭に、マルスは動けないでいた。
それを
「その炎...私が消すわ!!」
ノエルが杖をマルスに向かって構える。
「!」
しかしマルスの反応の方が早く、ノエルはマルスの巨大な腕で後方に吹っ飛ばされる。
「ノエルさん━━...!」
慌ててミモザが駆け寄る。
ノエルは胸部から大量に出血し、ノエル自身はマルスの攻撃の衝撃により気絶してしまう。
「ノエル━━━━!!!!」
アスタが魔導書から剣を取り出し、マルスに向かっていく。
「テンメェェェェ!!!」
「何だ?...お前は....」
《鉱石創成魔法 "レーヴァテイン"》
マルスは向かってくるアスタに対し、巨大な剣 レーヴァテインを頭上に振り下ろす。
「なんの!」
振り下ろされた剣をアスタは自身の剣で真っ二つにする。
「何だと...!?」
マルスは、立ち向かってくるアスタに今までに感じた事の無い得体の知れない感情に囚われる。
「何だ...あの下民の力は...!?」
「魔力の無効化....それがアスタの能力だ。」
ミモザの魔法 "姫癒の花衣"での治療を手伝っていたノアがクラウスの疑問に答える。
「...無効化...だと............!?」
(何だその下民に似つかわしくない力は....)
「ただの
自身の勝手な解釈で納得するクラウスにノアは、イラッとしたが直ぐに気持ちを切り替えて、
「あんたがなんと思おうが、あいつの能力が幸運かどうかは...見てれば分かる。」
ノアはアスタを仲間としてそしてライバルとして認めている。だからこそ、信じているのだ...必ず勝ってくれることを。
(ホントはアイツに加勢してやりたい所だが....まだ戦えるだけの魔力が回復しきれてねぇ...)
ノアはアスタに加勢出来ない悔しさを圧し殺して、ひたすらノエルを死なせない為に、ミモザに協力して治療を行う。
「どうだろうか?」
「今はまだなんとも言えないです。」
「その魔法...使用者の魔力が多ければ回復する時間は速いのか?」
「ええ、それなりには...。」
「なら...!」
ノアはミモザの手に自分の手を重ねた。
「え...あの...?」
突然の事にミモザは驚いて戸惑ってしまう。
「悪いが、説明してる暇は無いんだ....ノエルを助けるためだと思って、今は我慢してくれ。」
「は、はい。」
ノアのノエルを助けたいという気持ちが籠った言葉に、ミモザはそれ以上...何も言えなくなった。
「今から、周囲の魔を集めて、ミモザ...君に渡す。」
「え...!?」
「行くぞ......!」
するとノアに周りに散らばっていた魔が集まり始め、それがノアの手からミモザの中へと流れていく。
(なんて優しい力.....これが...この人の....)
ミモザの中でノアへの評価は益々上がっていく。
(でも今は、)
直ぐ様思考を途絶し、ノエルの傷を再び癒し始める。
その時ミモザは、過去の事を思い出していた。
まだ小さかった頃にノエルに助けて貰った事、自身が周囲に認められ、対してノエルが揶揄されていた事を、
「私なら...諦めていたかもしれません............王族の皆は...努力を馬鹿にします...それは生まれながらに力が無い者のする事...王族のする事ではないと━━━━...けど...努力できる貴女を...私は尊敬しています...!!死んじゃ駄目ですわ...ノエルさん...!!」
「!!」
ミモザの言葉を聞き、ノアはミモザの手を強く握った。
「え!?....あの.....?」
突然の出来事にミモザはどぎまぎしてしまう。
「努力は力の無い者がする事...か....それは違うな。」
「違うのですか?」
ミモザの問いかけにノアは頷く。
「誰しも、最初から強い訳じゃないんだ....だからこそ、人は努力し、それを積み重ねていく....努力は力の無い者がする事?....そんなセリフは、努力をしたことが無い奴が言うことだ....努力しないで強くなれる奴なんて何処にも居るわけが無いのに....貴族ってのは....」
明らかに貴族を侮蔑して悪態をつく。
「だけど....ノエルとミモザ、君達は別だ。」
「別....?」
「貴族は努力する事を良しとしない...だけど君達は、努力する事を否定しなかった....だからこそ、俺は君たちに好感が持てる....」
「......」
「ありがとう.....努力する事を認めてくれて。」
ニコッ、とノアはミモザに笑いかけた。
その表情に何故かミモザはドキッ、と自分の心が揺れ動いた。
(な...なんですの...今の感じ....?)
「ミモザ...?」
「うひゃう!?」
「うひゃう....?」
突然ノアに声を掛けられて変な叫びをあげるミモザに驚いたが、魔の供給は引き続けて継続する。
「あ、ごめんなさい.....」
「あぁいや、今のは俺が悪いな。」
まぁ、とにかく、と前置きをしてから、
「それよりも今は、ノエルの治療に専念しよう。」
「ええ。」
━━━━━━━━━━━━━━━
「ハァ....ハァ....ハァ....」
息も絶え絶えでマルスに立ち向かうアスタ。
「なんだ....お前は....」
「俺は...生まれつき魔力の無い人間だ。」
アスタはマルスを睨み付けながら自身の事を語る。
「ハッ!....やはり運に恵まれただけの下民では...」
クラウスの言葉はそこで途切れた。
「だから証明する....魔力が無くても魔法帝になれることを...!」
アスタの身体に刻まれた様々な傷痕を見て、言葉を失ったからだ。
(なんだ...あの傷痕は...!?...こいつ、一体どれだけの鍛練を...)
「お前を倒して、俺はまた一歩、魔法帝への道を駆け上がる!」
アスタがマルスに向かっていく。
「お前の攻撃パターンは分かった。」
《鉱石創成魔法 "ハルパー"》
(あの魔法は.....!)
「アスタ!お前の剣じゃ対処しきれない!...兎に角避けろ!」
一度対峙したノアがアスタに指示を出す。
「んなもん....やってみなけりゃ分かんねぇよ!!」
剣を振り回して、マルスのハルパーを凪ぎ払っていく。
しかし、アスタの剣は大剣
対してマルスのハルパーは複数の巨大な投げナイフの様なもの。
どちらが速いかと聞かれれば、マルスのハルパーの方が早い事は明らかである。
(速い...!!)
「ぐあぁぁぁぁぁ!!!」
「アスタ!」
アスタはハルパーを全て凪ぎ払う事が出来ず、後方の壁に叩き付けられ、そのまま壁を破壊して中へと侵入する。
「......ぐ...く......!」
アスタの使っていた剣は、地面に突き刺さりアスタはそれよりも後方に叩き付けられる。
(...剣が......!つーか...俺の剣のデカさと重さじゃあの魔法は捌ききれねー...!!)
アスタは既に満身創痍であったが、次に狙われるのはノエル達である事を考えると、ここで倒れる訳にはいかないと何とかしてもう一度戦う為に起き上がる。
(アイツ...!ノアの時と違って、戦い方を変えそれに合わせた魔法を.........!!)
「早くしねーと...ノエル達が...!...どーすりゃ━━━━━━...!」
どうすればマルスに太刀打ち出来るのか、そう考えていると目の前を何かが横切った。
「...ネロ......?」
ネロはアスタの後方に突き刺さった"剣"の柄に止まった。
「この...剣は....?」
大剣を魔導書に戻し、剣に恐る恐る近付く。
「これで....ノエル達を守れるのか?」
疑問に感じながらも、アスタは剣を握りしめていた。
━━━━━━━━━━━━━
「クソッ!」
アスタが壁の中へと入った後、今度はノアが剣を取り出してマルスに立ち向かう。
「駄目よ....ノア、あんた....まだ魔力が....」
「ノエルさん...!?」
「大丈夫だ....さっき、魔を吸収して俺も少しは戦えるまでに回復したから。」
そう言ってマルスに立ち向かう姿勢を見せる。
(とは言ったものの、流石にコイツの相手はまだ出来ない....出来るとしても、精々時間稼ぎくらいだ。)
ノアの魔力は確かに回復はした。だが、まだ満足に戦える程ではない。
彼の言うとおり、今はアスタが戻って来るまで時間を稼ぐしかマルスに勝つ手段が無い。
「....ここまでの逆境ほど、燃えるものはないな」
マルスに再び立ち向かうノア。
だが、
「お前の能力は分かった。」
《鉱石創成魔法 "タロスの人形群"》
「な....!?」
マルスは一度に魔法で複数体の分身を作り出す。
(流石に今の俺じゃ....厳しすぎる....!!!)
「くっ....そおおおお!!!」
ノアは自身の半径300m以内に注意を払い、次々と近付いてくる分身を倒していく。
だが、ここまで連戦だった為か次第に疲れが見え始め、そして遂に、
「!...しまった!」
振るっていた剣を手放してしまう。
「終わりだ....!」
「!!!」
マルス本体が、鎧の拳をノアに向かって打ち込む。
「ぐうう....!」
咄嗟に両腕でガードするも、アスタ同様に壁に叩き付けられてそのまま壁の中へと入っていった。
皮肉にも、その壁は先程ノア自身の魔導書が示した場所であった。
━━━━━━━━━━━━━
「く...っそ...!」
(やっぱり、まだ完全に回復しきってないからか....戦いにすらならねぇ..!)
「せめて、魔力が完全に回復していたら....」
その時、ノアの魔導書が再び光を放ち始めた。
「この光は....さっきの...?」
(まさか、此処って...さっきの壁か?)
立ち上がって、奥へと進む。
そこには、大きな棺のようなものが鎮座しており、表面には剣を抱えた人が彫られていた。
「これは...棺か?」
人型のレリーフに触れる。
「この棺は....一体...?」
ふと、レリーフが抱えている剣が気になり、触れてみる。
すると、剣は淡く光を放ち始めてノアの身体に吸い込まれるように入っていった。
「え....今...!?...え!?」
慌てて剣が入っていった身体に触れるものの、傷痕らしきものや出血は見られない。
「気のせい....ではないよな?」
ノアが安堵した時、身体から先程の剣が出現し、ノアの周りを回り始めた。
「この剣は....?」
ハッ、となり急いで魔導書のページを捲る。
《武器魔法 "ファントムソード"》
「一ノ剣 "賢王の剣"」
新たに追加されたページには、そう書かれていた。
「!.....ぐっ!....何だ?....この映像は....!?」
突如として激しい頭痛がノアを襲う。
ノアの頭の中にある映像が流れ込んでいるのだ。
「この剣の...使い方か?」
(なら、試してみるのもいいかもしれない。)
そう考え、入ってきた穴へと顔を向けるのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━
ノアが飛ばされてからその後、
マルスは次に、ミモザ達に狙いを定めた。
「死ね...!」
マルスは大量に召喚したハルパーをミモザ達に向けて、飛ばす。
しかし、
「!!」
アスタがミモザ達を庇うようにマルスに向かい、ハルパーを剣で凪ぎ払う。
その剣は、先程ネロが止まっていた剣であった。
(何だ...!?あの剣は━━━━...!!)
再び立ちはだかったアスタの持つ剣に何処か違和感に近いものを感じ取ったマルス。
「お前の相手は...俺だぁぁぁ!!!!」
アスタはマルスに向かって突進していく。
マルスは近付かれまいとしてハルパーをアスタに向かって投擲する。
「━━━━...!!」
しかし、アスタはそれを全て、剣で破壊する。
そして、マルスの"タイタンの重鎧"に一撃を与える。
「━━━━!!!」
斬られたマルスの身体に纏っていた、"タイタンの重鎧"それと同時に発動していた炎回復魔法の勢いを、一度だけ弱めた。
慌てたマルスはアスタを吹っ飛ばし、攻撃を中断させる。
(攻撃魔法は捌けるようになったけど...あの炎の回復魔法がある限りこの剣じゃ止めは刺せねぇ...!)
どうすれば倒せるのか考えていると、
「━━━...なにやってるのよ...バカスタ......」
「!ノエルさん...!」
「ノエル...!」
意識を取り戻したノエルがアスタに声を掛ける。
「...アンタは...王族の私が...認めてあげた下民よ......あんな奴...さっさと倒しちゃいなさいよ...アスタ...!!」
それは、ノエルからの激励の言葉であった。
アスタ、アンタを信じている。
ノエルからのそういった思いの籠った言葉だった。
すると、アスタの剣の中央部にある黒い部分にに青い光が集まり始めた。
「どけ...そいつらを消してやる...!!」
再びマルスがミモザ達を殺す為に向かってくる。
「そんな事させるかァァ!!」
再び立ち向かうアスタ。
「俺には魔力が無い...!!だけど俺には━━━━━」
「仲間がいる!!!!」
剣を振ると、青い斬撃が大きくなり、マルスに向かって飛んでいく。
(何だ...コレ━━━━━...!?)
(どういう事だ━━━━...!?奴には魔力が無いはず......!!)
(水の魔力の斬撃...!!これは......ノエルの魔力を...借りた━━━━━...!?何なんだあの剣は━━━━...!!?)
「こんなもの━━━!!」
マルスが斬撃を押し返そうとするも、斬撃の威力はマルスの想像を越えており、喰らってしまう。
「どうだ....見たか」
やってやったぞとばかりに、マルスに向かって言葉を放つ。
だが、
「!......」
「アスタ...?」
見ると、アスタの腹部にはマルスのハルパーの欠片が突き刺さり、貫通していた。
「しく...った...」
「アスタ━━━━!!!」
アスタはその場で倒れ、動かなかった。
そしてマルスが立ち上がり、アスタを見据えて
「お前みたいに甘い奴が...俺に勝っては駄目なんだ...!」
脅迫観念にも見えるほどのマルスの言葉にノエルは怯えてしまう。
マルスはレーヴァテインを発動し、アスタに振り下ろそうとしたその時、
マルスの近くに剣が飛んでくる。
「何だ?....この剣....は...!!!」
マルスは気付いた。今、この場に居ない...自分が吹っ飛ばした人物の事を、
そして遂に、現れる。
「そこまでだ、デカブツ....!」
飛ばされた剣を掴み、先程マルスに吹っ飛ばされた人物である、
ノアはマルスを睨み付けていた。