アスタとノエルは、王都へと来ていた。
「う...おおおおお...!!すっっげぇぇぇぇぇぇ」
「ちょっと...!恥ずかしいから騒がないでくれる!?」
王と魔法帝が住む王宮を前にして騒ぐアスタと、それを嗜めるノエル。
(アスタと...二人きり...)
そんな事を考えて顔を赤くしているノエルだったが、
(とか、考えてるんだろうなぁ....生憎、俺もいるから二人きりではないんだがな。)
と、ノエルの考えを読んで心の中でツッコミを入れるノアが二人の後ろから見ていた。
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数時間前、アジトにて...
「....」
「........」
アスタはガツガツと食べ、ノアも負けじとガツガツ食べている。
「おう目ぇ覚めたか小僧共、今回もよくやったな━毎度クソボロだけど。」
「あざす!!」
「...うす。」
元気よく返事するアスタと一言だけ返して直ぐ様食事に戻るノア
どちらも対称的な返答である。
「テメーらそろそろ歩けるよーになったろ騎士団本部が報告を聞きたいそーだから行って来いや。」
「「えッ!?」」
まさか騎士団本部から召集されると思っていなかったアスタとノアは驚きのあまりハモってしまう。
「騎士団本部!?」
(強い奴いっぱいいそ~♪戦っても...いいかな...?)
近くを通りかかったラックが騎士団本部の言葉に反応し、そんな事を考えたが、
「ラックは何か問題起こしそーだからダメです。」
ヤミの言葉にショックを受けて真っ白になるが、
「代わりに戦闘任務入れたからマグナと行って来い。」
「任務!」
次にヤミの口から出た言葉にラックの体色が戻り、瞳が輝き始める。
「一緒に頑張ろうね!マグナ!」
「えッッ!!?気持ち悪!?お前本当にラックか!?」
マグナも普段のラックとは言動が異なり、グレイの変身なのでは?と疑う程のものであった。
「はいはぁーい!!じゃあ私が代わりに行きまーす!!」
今度はチャーミーが名乗りを挙げる。
その本心は、
(王貴界にはどんな美味しいものがまっているんだろう...)
といった感じで、食べ物のことしか考えていなかった。
しかし、
「いやいやお前が行っていいワケねーだろ毎日食ってるだけなんだから。」
ヤミの正論に対してラック同様、ショックを隠しきれなかった。
しかし、ヤミの発言も最もである。何せ、チャーミーが任務に行った姿を団員の誰も見たことがないからだ。
これでは騎士団本部のある王貴界に行かせるとラック同様、何かしらの問題を起こしてしまう可能性がある。そう考えての発言である。
その後、チャーミーは行方を眩ませるもそのうち帰ってくるだろうと誰も気に留めなかった。
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そして現在、
「すげーな~~~家が一個いっこデケーぞ!」
「そう?」
子供みたいにはしゃぐアスタと少し離れた所から付いていくノエル。
そして、その二人の邪魔をしないようにと更に二人から距離を取った後ろから付いていくノアとこれまたかなり変わった三人組が出来ていた。
「お」
するとアスタが目の前の何かに気付く。
「ん?」
目の前には、以前の
「やあやあ金色の皆さんじゃないですか!」
「おお!一週間ぶりだなアスタ!怪我はもう大丈夫なのか!?」
一週間ぶりに再開したアスタの心配をするクラウスに対してアスタは、
「おう!いっぱい寝ていっぱい食べたからな!」
と返答する。
「「子供か」」
それに対してノアとユノがツッコミを入れるといったこれまたシュールな絵面になっていた。
(そういやまだミモザにお礼言ってないな。)
その事を思い出したノアがミモザにお礼の言葉を伝えようとミモザを見る。
「....!?.......」サッ
ミモザはノアをチラリと一瞥すると、即座に頬を紅潮させて目を反らした。
「?」
何故ミモザがそんな顔をしているのかノアには分からなかったが、取り敢えず自分が助かったのは、ミモザの回復魔法のお陰だと伝えなければと思い、ミモザに近付いていく。
「え~と....魔宮の時はありがとう...お陰で助かったよ。」
「...」ビクッ!
「それで、今度お礼でも...」
「..........」たっ
ノアが言い切る前にミモザはノアから逃げていってしまう。
「....あれ?」
「?...ミモザ、何でノアから逃げたんだ?」
「さあ?」
その様子を見ていたアスタとノアは顔を合わせて意味が分からないといった様子で首を傾げた。
「どうしたのよミモザ?」
さすがにミモザの反応が気になったノエルはミモザに聞いてみようと近付く。
「...どうしましょう...ノエルさん...!あの...私...ノアさんを見てると胸が苦しくなって...あの日からノアさんのことばかり考えていて...私...どうしてしまったんでしょうか...!?」
「え...?」
ミモザの反応にどう答えればいいのか分からず、戸惑いを隠しきれないノエル。
間違いなくミモザはノアに対して"恋してる"反応なのだが、一体ノアの何処に惹かれたのかノエルは気になり、尋ねてみることにした。
「...何でノア?」
「それは...かっこよくて、背が高くて、髪も綺麗ですし...」
聞けば聞くほど、ミモザのノアに対する惚気が溢れだし、どうすれば止まるのだろうか?とノエルも困ってしまう。
「そういえば、ノエルさんもアスタさんのこと好きなのではないですか?」
「えッ!?...いやいやいや!!あんな下民で馬鹿でうるさいチビなんて━━━━...」
「でもノエルさん、先程アスタさんを見る目が、私がノアさんを見ている時に似ていましたわ。」
「いやいやいやあんな筋肉バカ...」(ってアレ?何で私こんな必死なの...いやいやいや!!私はあんなやったぞなんとも~~~~~)
(ハッ...私ったらまたノアさんのことを.....////)
ミモザとノエル、二人の乙女は自分の恋心を受容...あるいは否定するなど葛藤し、唸りをあげている。
「?...何をうめいておるのだ?」
その様子を見ていたクラウスは、何がなんだか分からない様子であった。
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そして暫く歩いて待ち合わせして場所に到着したノア達、
「確かこの辺りのはず━━━━━...」
辺りを見回して待ち合わせしている人物を探すクラウス。
「こっちだよ~~~~~~~!」
「!」
声がした方向に振り向くとそこには、
「やぁやぁ、いらっしゃい...若者達よ」
髪を短く切っており、勲章が幾つか付いたローブを纏った男性がノア達を見ていた。
「こっ...これは...まさか貴方様直々に━━━...」
男性を見るや即座にクラウスは男性にひれ伏した。
「誰だ?この派手なオッサン?」
アスタは誰だか分からないといった様子でいきなり失礼な発言をする。さすがにクラウスも失礼だと思い、大声で...
「馬鹿者ォォ~~~~~!!!この方は現魔法帝 ユリウス・ノヴァクロノ様だァァ━━━━━!!!」
「えええええ━━━━━━!!!」(((この人が今の...魔法帝...!!!)))
アスタ達も男性の正体を知ると驚きを隠せない様子だった。
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魔法騎士団本部内
「よくぞ手に入れたね!この魔法が恐らくあの魔宮の最重要遺物だ!」
ユノの魔導書のページを見てそう答える。
そのページには、魔宮でマルスを倒したあの"風属性魔法"が載っている。
「!...読めるんですか...?」
「何となくね!」
ユリウスが何となくでユノも読めないページの文字を読めることに驚きを隠せないユノ。
「ねえねえ!この魔法使ってみせてくれないかい!?頼むよ!」
次の瞬間、ユリウスはまるで新しいオモチャを与えられた子供の様に目を輝かせながら魔法を発動してとユノに頼み始めた。
(このハシャギぶり...魔法帝は無類の魔法マニアという噂は本当だったのか...!)
噂の真偽が明らかになり、少し引いている様子のクラウス。
「...すみません...魔宮で一度発動したんだと思うんですが...あの時以来使えなくて━━━...」
「えっ!?...そうか~~~いや━━残念。」
ユノが使えないとユリウスに伝えると、分かりやすく落ち込んだ。
「............」 (四大属性の内、風の精霊"シルフ"この時代では彼を選んだんだね。)
「今言えるのは...この魔法は君と共に成長しいずれとてつもない力になるということ...大切にするんだよ。」
そう言って魔導書をユノに返す。
「次は...!」
次にユリウスはノアを見て近付いてくる。
「君はどんな魔法を...?」
「あ...え~と...ですね。」
キラキラと少年のような瞳を向けられてたじろぐノアだが、直ぐに新たな力 "ファントムソード"を展開する。
「この"力"ですね。」
「おおおおお!!!」
それを見た途端、ユリウスの反応が変化する。
「それをどう使うんだい...?!」
ワクワクしながら早く使ってみせてと言わんばかりにノアを見る。
「そうですね....!....」(アレならいいかな?)
ノアの視線の先には一本の木。
「では、失礼して...!」
ノアは木に向かって剣を投げると同時にその場から姿を消し、剣が木に刺さった瞬間、剣を掴んで木に移動していた。
「こんな感じ...です。」
「凄い凄い!その力は瞬間移動が出来るのかい!?」
「ええ、場合によっては相手に奇襲を掛けたり、敵から距離を取ることも可能です。」
「凄いね!...うん、その力はいずれ君を遥かな高みに連れていってくれるはずだ...だから、頑張ってね。」
「はい、ありがとうございます。」
続いて、
「魔法帝っっ!!俺の魔導書にも変な文章出たんス!」
見てくださいと言わんばかりにページを開いて見せるアスタ。
「............これは...!」
それを見たユリウスは、
「まっったく読めない...!文献でも見たことがないね。」
頭を悩ませながら分からないと返答した。
するとアスタはそのページから剣を取り出してユリウスに見せた。
「こんなん出ますッ!!」
「おぉっ!二本目の反魔法の剣だねっ!」
再び、嬉しそうにはしゃぎ出すユリウス。
自分が新しい剣を出せたことでユノに勝ち誇ったような顔をするアスタ。それを見ていたノアは、
(そんな事で勝ち誇っても対して凄くないんだけどなぁ...)
と思うも、口には出さなかった。
「反魔法の力...さ...触ってもいいかい?」
キラキラとしたフォントを放出しながらもユリウスは、剣を指差した手に震えを見せている。
「どうぞ!!」
対してアスタは、まるで大名に武器を献上する鍛冶屋の如く跪いて剣を渡した。
「って重ッッ!!」
「大丈夫ですか魔法帝ぃぃぃ!!」
アスタの剣が予想よりも重かった為、ユリウスは危うく剣を落としてしまいそうになっていた。
「よくこんなの振り回せるね............!」
その瞬間、ユリウスは何かに気が付いた。
(魔力を...吸われる...!?)
「...成る程...」
反魔法の力の理由に納得したのか、ユリウスは出さなかった口角を吊り上げた。
「ありがとう返すよ...これは私の手には負えない。」
「へへぇ~~」
「この剣は魔力が無い君だから持てるんだね!」
「俺が魔力無いの何で知ってるんですか!?」
「さ~て何でだろうね~~~~」
正解は魔法で変装してアスタを見ていたから...なんて言える訳もないのでユリウスは言葉を濁した。
「まぁ兎に角素晴らしい活躍だったよ!お疲れ様!」
「...あああ...あののっっ...ちょちょちょちょっといいですか!?」
ユリウスが労いの言葉をノア達に掛けた所で、アスタが声を震わせながらユリウスに尋ねた。
「?何だい?」
「.........」
少し黙って呼吸を整えるとアスタは、ユノ、ノアと一緒にある事を尋ねていた。...それは、
『どうやったら...魔法帝になれるんですか!?』
一瞬、ユリウスの時が止まった様になったが直ぐに反応を返してくれた。
「そうか、君達は魔法帝を目指してるんだね騎士団員足るものそうでないとね!」
笑いながらノア達を見てそう言った。
「お前達そんな事直接聞くのは魔法帝に失礼だろ!!いいか魔法帝とは気高い心を持ち民の信頼厚き者が━━━...」
「いや...」
クラウスの言葉を遮った魔法帝の言葉は次の通りである。
「実績だよ」
その言葉にノア達は黙って聞いている。
「プライドだけでは人を守れないし信頼は実績の後についてくるものだ..."魔法帝"に求められるものはただ一つ..."最強"と言わしめる実績だ...実績を出せひたすらに実績を積むこと...それが全てだ...それが出来ない者は頂点に立つことなど出来はしない...!」
最後までユリウスの言葉を聞いて、ノア達は身体の震えが止まらなかったが、拳を握りしめて、
『望むところです...!!』
そう返した。
(いい目の新人を持ったね...ウィリアム、ヤミ。)
三人の熱い眼差しを見て、二人の魔導士の名前を出すユリウス。
これからのノア達の活躍を見てみたいとさえ思った。
「さてと!実は今日『星』取得数が特に多い騎士団員達を集めて戦功叙勲式をするんだ君達も是非参加してってくれ!」
『え...!』
そしてユリウスの後に続いていくとそこには大きな扉が、
それを開けるとそこには...
「...さて...」
複数の魔法騎士団の団員達が並んで此方を見ている。
「君達は彼らより実績を出せるかな...?」