アスタ、ユノ、そしてノアが約束を交わしてから半年が過ぎたある日。
三人は魔法騎士団への入団を目指して試験会場へと出向いていた。
「やっぱいろんな人がいるな。」
ノアはひとりそう呟いた。
「それはそうだろ。ここにいる全員が魔法騎士団に入団したいと思って来てるんだ。」
「それもそうか。」
ユノはノアの独り言にそう答え、二人は並ぶように会場へと入っていく。
すると周りからザワザワと何かを話している声が聞こえる。
「オイ。あいつだ...!!最果ての町で四つ葉の魔導書に選ばれたっていう──」
「四つ葉ァ!?...マジかよ。」
「あれ?そういやあいつの隣に要るのは誰だ?」
「さあな。」
どうやら周りの人達はユノの事を話しているようだ。
「随分人気者だなユノ。」
「別に。」
「まぁ。それはさておき、さっきから周りの人にたかってる鳥が気になるな。」
ノアが気にしている鳥は試験会場では最早名物となったアンチドリという名前の鳥だ。この鳥は魔力が低い人程たかられるという珍しい習性?を持っている鳥だ。
しかし、ユノとノアの周りにはアンチドリが一匹もいない。どうやら二人は相当魔力が高い事がこの時点で明らかとなった。
さて、アンチドリが魔力の低い者に反応するなら元々魔力が全く無いアスタだとどうなるか。
「へっへっへっ。オレ等の誰かが魔法帝になる...その伝説の始まりだなユノ、ノア─!!」
ユノとノアの二人が声がした方に顔を向けるとそこには、
「半年間のオレの修行の成果─見せてやるからなだだだだだ」
ものの見事にアンチドリにたかられていた。それも一匹だけでなくおおよそ数十匹程だった。
まぁアスタなら当然こうなるだろう。とノアは一人心の中でそう呟くのだった。
─────────
そこからいろいろあったが、あえて飛ばされてもらう。
アスタが受験生と間違えて『黒の暴牛』の団長の
ヤミ・スケヒロとぶつかってしまい、一悶着あったり。色々な内容の試験を突破したりした。ノアとユノは当然簡単に全ての試験をクリアしたが、アスタは魔力が無いために試験の結果は酷いものだった。
そして最後の試験。実戦となった時。
アスタはセッケと戦い、簡単に勝利した。ユノも貴族出身の男と戦い、見事勝利してみせた。そしてノアの番がやって来た。
ノアの相手はユノと同じ貴族の男だった。
「なぁ。一つ聞いてもいいか?」
「なんだよ下民風情が偉そうに。」
男はノアを馬鹿にしながらそう言った。
「それだよ。その下民って呼び方。ただ生まれた場所が違うだけでどうしてそう馬鹿にできる。例えあんたの魔力よりも俺の魔力量が多いとしても何故其処まで俺等最果て出身を馬鹿にできる?」
「うるせぇ!!ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ下民風情が!」
風創成魔法 砂塵の大竜巻
男は魔法で風を作りだし、ノアにぶつける。
が、ノアは自分の魔導書から新しい"剣"を出す。
その瞬間。周りにいた人達はノアが竜巻に呑み込まれたと錯覚した。だが、
竜巻はある一転に収束していく。
「な!?俺の魔法を集めた....だと!?」
「いいぜ。お前がその気ならこっちも全力全開でいくぞ!!」
武器魔法
「奥義!
ノアは剣に集めた竜巻をそのまま男に撃ち放った。男は会場の壁に叩きつけられそのまま気絶した。
「俺はお前と違って魔法帝目指してるんだ。邪魔すんじゃねぇよ!」
そう言って会場の隅の方に引っ込む。しかし、
(やっちまったー!!あの技は隠しておこうと思ったのになんで使ったんだ俺の馬鹿!!)
ひとりで"奥義"を使ったことで項垂れていた。
それもその筈。先程ノアが放った技はノアが魔導書を貰う前から考えていた奥義の一つ。それも隠し玉だったのだ。それをつい頭にきて使ってしまったのだから最早取り返しがつかない。後の祭りである。
(団長達の反応は?)
ノアは気になって団長達の反応を確認する。やはりどこの団長達も自分の団に欲しいと言わんばかりにノアを見ていた。
(ん?あの団長。)
ノアが暫く見ているとふと、ある団長の反応が気になった。
(なんでそんなに"驚いて"いるんだ?)
その団長は、まるで自分が長年待ち続けた人を見つけたかのような反応をしていた。
(.....よく分からないが取り敢えずはあの人には注意しないとな。)
ノアはその団長には気を付けようとその時思った。
──────────
そして試験が全て終わり。結果が発表された。
それぞれ色んな人達が様々な団長達に選ばれ、その団へ入団していく中で、やはり脱落者は出てしまうもので選ばれなかった者もちらほらと出ていた。そしてノアの番となった。
「次...163番」
(俺か。)
呼ばれたノアは前に進む。果たしてどこの団長が手を挙げるのかを目を瞑って待っていると、
「え─...」
周りがざわつき始め、ノアが目を開けると、
「え?マジで。」
なんと全団の団長達が挙手していた。
さて困ったのはノア本人だ。先程のノアの奥義を見てからか団長達全員が自分の見る目を変えているのは明らか。
この中からどこを選ぼうか迷っていると、ふと『黒の暴牛』の団長と目が合った。
(ふ─そうだな。そうしよう。)
「『黒の暴牛』団でお願いします...!!」
ノアがそう言った瞬間。ヤミはニヤリと笑った。
『な!?あいつ蹴りやがったー!!!』
周りにいた人達は更にざわついた。それもその筈。
ノア程の優秀な魔法の使い手ともなると引く手あまたの筈なのに、ノア自身はこの国でも評価最悪の『黒の暴牛』へと進んだのだから当然の反応と言えば当然なのだ。
「さてと次はユノの番だな。まぁあいつなら俺と同じで引く手あまただろうよ。」
ひとりそう呟き、試験が終わるまでの間。会場の隅の方で待機していた
そして次はユノの番となった。
「次...164番」
呼ばれて前へと出るユノ。すると、またもや周りにいた人達はざわついた。
「二人目の全団...挙手─!!?」
なんとノアだけでなくユノまで引く手あまたとなった。
ノアは『黒の暴牛』を選んだが、ユノは何処に入団するのか。
(まぁ、ユノのことだから魔法帝に一番近い騎士団を選ぶだろう。)
隅の方で見ていたノアはそうボソリと呟いた。
そしてユノは、
「『金色の夜明け』団でお願いします...!!」
やはりといったところか魔法帝に一番近い『金色の夜明け』団を選んだ。
そして最後の受験生。アスタの番となった。
「次...165番」
アスタが前へと出て選ばれる前に目を瞑る。しかし暫く待っても何処の団も手を挙げない。
「そりゃそーだわな。」
すると、『黒の暴牛』の団長 ヤミが立ち上がった。
「たとえ高い戦闘能力持ってよーがそれが得体の知れねぇ力じゃ誰も手ぇ出さねーわ。」
「...なんやかんやで...結局魔法騎士に求められるのは」
すると、ヤミの周りの空気が一変した。
「魔力だ。」
周りにいた受験生達はヤミの膨大な量の魔力を感じとり、震え上がった。
ヤミが会場に降りた。
「魔力の無いオマエなんざ誰も欲しがらねー...これが現実だ....!」
ヤミはアスタの前に立ちはだかるように立つ。
「オマエさっき...魔法帝目指してるとか言ってたな...?...つまり...九騎士団長を越えるってことだよな?今オレの目の前でもまだ──魔力の無い分際で魔法帝になるとほざけるか...?」
アスタはただ目の前のヤミに怯えたが、少ししてから口を開く。
「─ここで魔法騎士団に入れなくても...何度コケても誰に何を言われようとオレはいつか魔法帝になってみせます.........!」
そう言ったアスタを見て、周りの受験生達は馬鹿にしたが、ユノとノアだけは少し微笑んだ。
「ワハハハハハ!!」
すると突然、ヤミが突然笑いだした。
「オマエ...面白い!!
「.........え?」
ヤミの勧誘にアスタは目が点になってしまう。
「ちなみにオマエに拒否権は無い。」
(ええええええ!?)
「そしていつか─魔法帝になってみせろ。」
それはアスタからしたら、初めて自分の事を認めて貰えたのだから嬉しかったに違いない。
「───......はいッッ!!!」
──────────
「さてと、集合までまだ時間があるな。どうしようか。うん?」
ノアが会場内をウロウロしているとアスタの対戦相手のセッケと名乗った男がアスタが入っていったトイレの個室を眺めていた。
(あいつ....何する気だ?.......まさか!)
セッケは自分の魔導書から呪詛魔法を発動してアスタに呪詛を掛けようとしていた。
が、
突如、セッケの首筋にノアが剣を突き立てる。
「何してんだ?まさかとは思うが、腹いせのつもりか?」
ノアはニコニコとした顔(目が笑ってない)でセッケに詰め寄る。
「フッハ!ちょっと驚かそーとしただけさ!別れる前にアイサツしようと思ってね!どっちが出世するか勝負しよーぜって───...」
それを聞いてノアは冷たい目をセッケに向けて答えた。
「なら失せろ───アスタにはオマエじゃ足りない...!!」
セッケはノアの表情に怯えたのかそそくさとその場を後にした。
「さて、アスタが出てくる前にヤミ団長のとこ行くか。ん?」
ノアがトイレから出てくるとユノがトイレの前で立ち尽くしていた。
ノアはユノにすれ違う直前に、
「悪いなユノ。これは貸しにしてくれ。」
そう言ってヤミの元へと急いだ。
「あいつ─吹っ切れたな。」
ユノは何処か嬉しそうな様子でそう呟いた。
───────────
「お待たせしました。皆さん。」
ノアはアスタよりも早く『黒の暴牛』のメンバー達と合流していた。
「いや、そこまで時間が経ってないから大丈夫だよ。」
ノアと会話をしているのが、『黒の暴牛』唯一の空間魔法の使い手、フィンラル・ルーラケイスだ。
「あと来てないのはアスタだけか。」
ノアがふとヤミを見ると、
「..........」
明らかに不機嫌そうだった。
「あの、これ大丈夫なんですか?」ヒソヒソ
「ま、まぁ大丈夫だよ。」ヒソヒソ
それから暫くして漸くアスタがやって来た。
「あれ?なんでノアが居るんだ?」
「お前、俺が『黒の暴牛』選んだの見てなかったのか?」ハァ
ノアはため息を吐いて呆れる。
「そんな事より、アスタ。」
ヤミがアスタを睨み付ける。
「オレを待たせるとはいい度胸だな...!!どんだけ長げぇ○○○してんだテメー」
「いやホンっっトすんごいの出たんスよ!もうこ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んな極大な...」
「いや何言ってんだお前。」
その後、ヤミがアスタをアイアンクローの刑に処し、フィンラルが発動した魔法で『黒の暴牛』のアジトへと移動する。
─────
アスタとノアはアジトに着いた。
((ここが...『黒の暴牛』のアジト))
先ず、アスタが扉を開こうと近づくが、中から爆発が起こり、アスタを吹き飛ばした。
「アスタ!」
ノアが吹っ飛んだアスタを尻目に扉があった場所を確認すると、二人の男性が言い合いながら魔法を使って喧嘩をしていた。
あるものは下着姿で周りに酒瓶が転がっており、またあるものは我関せずといった様子で食事をしており、またあるものは鼻血を出しながら鏡越しに誰かと話していた。
「何だこれ...。」
ノアは魔法騎士団らしくない団員達の光景に呆然とした。
「ようこそ最低最悪の魔法騎士団『黒の暴牛』へ 」
ヤミが自分の騎士団を紹介するが、ノアはその光景を見てもしかして俺、選択を間違えたか? と思ってしまうのだった。
主人公のプロフィールです。
ノア・レイダス
主人公。
年齢:15歳
身長:178㎝
誕生日:10月4日(アスタとユノと同じで教会に拾われた為同じ日)
星座:天秤座
血液型:A型
好きなモノ:星空、動物
見た目
銀髪のセミロング。顔は女性寄りの中性的な顔立ちをしている。