(何でだ...!?誰よりもとてつもない魔力があるんだぞ.........!?自分の魔法を研究し尽くし...磨き上げて...準備してきたんだ.........!!今日この時の為に...何年も...何年も............!!なのに何でだよ..........!!!)
ラデスは目の前で起こっている事実に対して悔しさを露にする。
「おおおおおおお」
「━━━━......!!」
遂にレオも泥水の魔法を使う屍体を撃破する。
「敵の
「よぉぉしよくやった!!それでこそこの国を牽引する王族だ!!」
「はいっっ!!」
レオが屍体を撃破した事を喜ばしく思い、称賛を送るフエゴレオン。それに対して敬礼で返すレオと釣られて敬礼を返すノエル。
「...バカな...バカな......」
対してラデスは目の前の事実を受け入れきれないようで、動揺している。
「俺の魔力は王族にも劣ってねぇんだ!!オレは━━━━━━━」
再度、魔法を発動させようとしたところで、
《炎拘束魔法
フエゴレオンの発動した拘束魔法に捕えられてしまう。
「━━━━~~~~~...放しやがれぇぇぇぇ!!俺はまだ━━━━...」
「お前にはまだまだ聞きたい事が山程あるぞ...!」
拘束を解くようにラデスが暴れ、そんな彼に対して距離を詰めていくフエゴレオン。
「その前に魔導書を回収させてもらう。」
「!」
"魔導書を回収する" その一言にラデスが過剰に反応を示した。
「止めろぉ~~~~~~~~!!」
「これだな...!」(この魔導書は━━━━...)
「俺の魔導書に触るなァァ」
手に取った瞬間フエゴレオンは気付いた。回収した魔導書が明らかに薄い事を...
(何だ...!?この魔導書は━━━━...ページが一枚しかない............!?)
「見るな...!!見るんじゃねぇぇぇぇ!!!」
魔導書を開かれ、中を確認された途端ラデスは焦りを見せた。
(コイツ...たった一つの魔法しか使えないのか...!?)
「...俺を...蔑んだ目で見るんじゃねぇぇぇ!!」
「━━...誰がそんな目で見るかよ...!」
「!」
そんなラデスにアスタが口を開いた。
「...違うやり方で...認めさせられなかったのかよ...」
「...」
「そんなすげぇ魔力があるのに...そんな這い上がって来る力があるのに...もったいねぇ............!!」
「............」
ラデスに対して同情した様子で言葉を発したアスタにラデスはなにも言えなかった。
アスタはラデスの"認めさせる"という気持ちを痛い程理解している。
同じ
それでも彼らと同じ《魔法帝になる》という夢を叶える為に、自分に出来る限りの努力をしてきたアスタだからこそラデスの気持ちがよく理解できた。
それを知っているからかフエゴレオンはフッ、と笑みを浮かべた。
「逆境をも越えられるお前に足りなかった物...それは正しき心だ...!罪を償え...!」
ラデスにとって万事休すの状況、そんな時彼の耳に一人の言葉が聞こえてきた。
(━━━もう...気が済んだだろう。団長を倒すなどということは...やはりお前一人の力では無理だったんだ...魔力量が多くても勝てない事がある...キャサリンも油断してやられた...それに、ジェイスも倒された...俺の魔力もそろそろ限界が近い...勝手な行動は終わりだ...今からは予定通り行かせてもらう。
「.........?」(声......?)
その声は、アスタの耳にも届いていた。
「最低でもあと一人...空間魔法の使い手が王都に侵入して来ているはず...そいつは何処にいる...!?もう逃げたのか...?それとも...お前の目的は復讐だとしても...
フエゴレオンがラデスを問い詰め始めるとラデスは急に笑いだした。
「...本当の狙いはなぁ...」
ラデスは顔を上げ、フエゴレオンを睨み付けた。
「あんただよ...!!フエゴレオン・ヴァーミリオン」
「何...!?」
その時、何処かから魔導書のページ捲る音がした。
「!」
無論アスタはその音を拾っており、音のした方角を見ていた。
するとフエゴレオンの足元に黒い影のような物が出現した。
(これは...空間魔法!!...いいだろう、虎穴に入らずんば...だ━━━━━━)
「兄上━━━━━!!!」
フエゴレオンは襲撃犯の素性を知るため、危険だと理解していたが敵の待つ場所へと飛び込んでいった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「...!何だ━━━━━...ここは.........!?」
フエゴレオンが辿り着いた場所はまるで結界の中にいるようなそんな場所であった。
「!」
そこにもう一人、誰かが立っていた。
「お前は━━━...!!」
フエゴレオンが動揺を見せた事から彼にとって、面識のある人物なのだろう。
一体、フエゴレオンが遭遇した人物とは━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「貴様ァァァァァ!!!兄上をどこへやったァ━━━━━!!!」
フエゴレオンが別の場所へと飛ばされた事で、レオは先程まで近くにいたラデスに詰め寄った。
対するラデスは、ただ笑うのみ。
「何が可笑しい!?」
「レオポルド!!そいつは空間魔法の使い手じゃないわ!」(今のピンポイントな空間魔法...術者が近くにいないと到底出来ないはず...!一体何処に━━━...!?)
対してノエルは冷静に状況分析を行い、誰の仕業かを探っていた。
「え」
するとアスタが大剣を手にし、積み上がった屍体の山に向かって走っていく。
「そこだァァ━━━━━━━!!!」
アスタが屍体の山を弾き飛ばすと、その中から一人、空間魔法の使い手が現れ、建物の屋根へと移動していた。
「............!」(あの中に紛れて...!?)
「よく見破ったな......魔法で化ければ魔力で気付かれると思い、わざわざ小汚ない格好に変装したというのに...獣のような奴だな...だがもう...終わったようだ...」
すると、別の空間から何かがドサッ、とアスタ達の前に落ちてきた。
「..................あ......」
そこには...右腕をもがれ、大量に出血し、今にも絶命寸前のフエゴレオンが倒れていた。
「兄上ぇええええええええええ!!!!!」
「うぁあああああああああああ!!!!」
レオとノエルは急いでフエゴレオンへと駆け寄っていく。
「う......!!」
対するアスタはラデスの操る屍体の呪弾による出血で動けないでいた。
「...あんなに...あんなに強え人が.........そんな...馬鹿な.........!!」
アスタもノエルやレオと同様、少なからず動揺していた。
「...............腕が......!!」
「兄上..........」(...兄上...兄上...!!)
レオの頭には懐かしき兄 フエゴレオンとの思い出が流れていた。
「............嘘だ......兄上が負けるはずなど無い......兄上が......こんな..................................!!」
「!」(フエゴレオン団長の
ノエルは自身の衣服の一部を破き、フエゴレオンの失った右腕から流れてくる血を止める為に使う。
(...こんな時にミモザがいれば━━━━━...!!)
ノエルの言う通り、この場に回復魔法の使い手であるミモザがいれば難なくフエゴレオンを救えるのだろう。しかし、今は別の場所に飛ばされてしまったため、救援は望めない。
「.........!!マズイ...!
「嘘だ......兄上......」
ノエルはレオに手伝いを求めるが、対するレオは兄が負傷したことにより動揺して取り乱しており、動けないでいた。
「さっきはよくも嘗めた口利いてくれたなぁ...!」
「!!」
(魔力の塊を━━━...)「レオポルド!!」
「............」
ラデスは倒れたフエゴレオンを一瞥し、先程言われた言葉を反芻する。
「...正しき心だぁ......!?俺はいつだって自分の心に
「目的は果たした...他の騎士団員が来る前に行くぞ...ラデス...」
空間魔法で逃げようとするラデス。
「...待ち...やがれ......!!」
それを逃がすまいとアスタが追いかける。
「.........!アスタとか言ったな...テメェはそのうち絶対殺して俺のオモチャにしてやる...!!楽しみに待ってろクソガキィ━━!!」
慌てて走り出すアスタだが、これまでかなりの量の血を流しているからか、動きが鈍い。
「............」(この距離は...間に合わねぇ━━━━...)
「アスタ...!もう無理よ!」(その出血でこれ以上動いたら━━━━━...)
まだだ!!!
ノエルはアスタの身を案じ、そう言うが、アスタは諦めたりはしない。
(紅蓮の団長が教えてくれたじゃねーか、冷静に...考えろ.........!!どうやったらアイツを止められる...!?あの空間魔法を.........あ!?)
その時、アスタは自身の魔法の能力を思い出した。
(俺のこの剣は━━━━
「何━━━━━━...」
ラデスを運ぼうとした空間魔法は、アスタの召喚した剣が突き立てられることによって破壊された。
「うおおああああ!!!」
アスタは逃走を阻止しようとラデスに斬りかかる。
「...ぐ...」
しかし、出血した箇所の痛みにより、狙いが反れ、ラデスの頬に傷をつけることになる。
「ぎゃああああ!!いてぇぇ━━━!!何しやがるこのクソがああああ」
「マズイな...」
ラデスが斬りつけられたことで逃げることが困難になったと男は感じ、再びラデスの足元に魔法を発動させる。しかし、
「人をあれだけ傷付けて...何言ってやがる━━━!!!」
ラデスが痛みを訴えた事に対してアスタは怒り、地面に剣を突き立て、魔法を破壊する。
「これが...痛みだ!!!お前が笑いながら罪の無い人に与えたモノだ━━!!」
アスタは更にラデスを殴り、痛みを与える。ラデスが王都に住む人たちにそうしたように、
「.........やめろ.........傷負って血ぃ流すなんてのは弱者の証なんだよ━━━━━!!!魔力で劣る奴は魔力で勝る者にいいようにやられてりゃいいんだ...特にお前のような魔力の無いクズはなアアアアアア!!!」
距離を詰めたアスタに抵抗するため、魔力で攻撃しようとするラデスだが、
「それをさせねー為に俺がいる!!!そして...魔力の無い奴でも最強になれるって...俺が魔法帝になって証明してやる!!!」
頭突きでカウンターを入れ、ラデスにそう言い放った。
「━━━━━━━~~~~~~~~~......ヴァルトス!!何とかしろォ━━━━━!!」
「出来たらもうしている...反魔法...思った以上に厄介だ...」
「....................!?」(魔力を溜めて...)
ヴァルトスはアスタを攻撃するために、魔法をアスタの背後から放とうとする。
「アスタ...危ない━━━」
「遅い...」
発動しそうになったその時、
「!!」
ヴァルトス目掛け、炎の渦が飛んでくる。
「━━━━......」
放ったのは、レオであった。
「.........俺が...取り乱してどうする......!?どんな時でも冷静に............ですよね...!?兄上━━━...!!」
レオは先程とは一変し、ラデス達と戦う為に魔法を放ったのだろう。しかし、まだ動揺している様子...
「...どうしたものか...」(ラデスをまだ失うわけには...)
「.........クソがああ━━━━」
アスタとレオに行く手を阻まれ、もはや逃げ道がなくなったラデスとヴァルトス。
そんな時、
『情けない...』
「!」
「.........!!」
『
気が付くと、アスタ達の周りを取り囲むようにして、ラデス達の仲間の魔導士達が立っていた。
(......何て......突き刺さるような冷たい魔力━━━━...!!)
(新手...!?五人も......!!)
「............」(呪力だとかのせいでかすり傷なのに血が止まらねー...これ以上血を失うのは...ヤバい.........)
囲まれたアスタ達は先程ラデス達を追い詰めた時と立場が逆転してしまっていた。
「......チッ...!!だがまぁこれで...形勢逆転だなぁぁ...!!」
ラデスが勝ち誇ったようにそう言うや否や、
「...へ...へへへ...」
アスタは、大剣と片手剣を呪弾によって受けた傷に当てて効力を消した。
「━━━━......!!」
「━━━━...これで...俺はまだ戦えます...!!見ていて下さい...!!」
「............」(コイツ...自分自身に刃を当てて呪力を━━━!!)
反魔法の剣で効力を欠き消した事にラデスは動揺した。
「━━━━━━━こちとら...生まれたときから逆境なんだよ...!!」
アスタは魔導士達に向かって、剣を突き付ける。
「何人来ようが...何が起きようが全部はね除けてやらあ!!!」
アスタが覚悟を見せたその時、
「よく言ったアスタ!!」
その瞬間、アスタ達の頭上から一人の男が剣を地面に突き立て、降り立った。
「ノア!」
その人物の正体はノアだった。
「待たせたなアスタ、助太刀するぞ。」
ノアはアスタ、レオと並ぶ形で魔導士達に向き直る。
「ふはは...たかが雑魚が一人増えただけではないか。」
魔導士の一人がノアを揶揄してそう笑う。
「そうかな?」
敵である魔導士の言葉にノアは剣を構え、ファントムソードを展開し、距離を測る。
「覚悟しろよ...侵略者共━━━━━!!!!!」
帰還したノアとアスタ達...再び、戦いが始まる。