「···アスタが···ノアが···連れて行かれるなんて···!二人を助けないと············!!」
突然の出来事に動揺を隠せないでいるノエル。今正に二人の仲間が連れ去られたのだ。動揺もするだろう。
「························!!ノエル···!無理だ···残念だが移動先の魔力を探る事は出来ない······!」
魔法騎士団 『金色の夜明け』団に所属している魔法騎士 クラウスは厳しいようだが、そう事実をハッキリと伝える。
「···でもだからって―――···!」
“諦められない” そう言おうとした所で、
「ダメだ」
『銀翼の大鷲』団 団長 ノゼルが淡々とそう告げた。
「今は王都の護りを固めるのが先決だ···敵があれだけとは限らない――――――あのような者達に割ける時間も魔力も無い。」
「························」
冷たいようだがノゼルの言い分は正しかった。魔法騎士団である自分達は王都を守る事こそ最優先事項である。仲間を捜索するのはその後からもしくは諦めろとノエルに現実を嫌でも理解させる。
「――――――···!」
その時、ミモザがフエゴレオンを治療していることを思い出し、急いでミモザの元へと戻るノエルと彼女を追いかけるクラウス達。
「ミモザ!!フエゴレオン団長を···!!」
ミモザの元へと戻ると、既に何人もの団長達が彼女を中心として集まってきており、ミモザの治療の行く末を見守っていた。
「············」(そんな···フエゴレオンさん程の人が············こんな――――――······!!レオポルドさんも·········!ああ···ノアさん···アスタさん·········!どうかご無事で居て下さい······!!)
右腕を失い、今にも死んでしまいそうなフエゴレオンと、ノア達と共闘し、満身創痍となったレオを治療するミモザ。
「私の魔法では応急処置が限界です···!医療棟に連れて行ってもっと高レベルの医療魔法術を施さないと·········このままでは···!」
その言葉を聞いていた魔法士達は途端にザワザワ、と騒ぎ始めた。
「ケッ、団長ともあろう者が···ざまぁ無いなァァ···!ヴァーミリオン家も堕ちたもんだ···同じ王族として恥ずかしいね···!」
その中でもノエルの兄ソリドは、奮戦しその末に傷ついたフエゴレオンを嘲った。
「ソリド兄様···!···何て事を························!」
自分達と共に戦い、助力してくれたフエゴレオンに対して侮辱するソリドに、ノエルは怒りを覚えた。その時、ノエルとソリドの眼前をノゼルが横切った。
「我々は魔法騎士···!勝たなければ存在する意味は無い······」
「·······················ノゼル兄様············!」
やはりノゼルもソリドと同意見なのかと絶望しかけたノエル。
「そうだぜ!!これで『紅蓮の獅子王』団も形無し――――」
「だがソリド···戦いの場に居なかった我々はそれ以下だ···これ以上被害が拡がる事の無いよう護りを固めろ···!」
「························はい···!」
長兄ノゼルの叱責され、ソリドはそれだけ口にすると沈黙するのだった。
「そうだ!!通信魔法を妨害する魔法が散布されて指揮系統が混乱している···············!!お陰で王貴界外からの援軍も来れなかった···!まだ油断出来ん―――――!!」
「·····················アスタ···ノア················!」
周りが警備を強固な物にするべく動き始めたその時、ノエルはひとり、攫われたノアとアスタの身を案じるのだった。
――――――――――――――――――
一方その頃、
「ラデス···!お前の勝手な行動で多大な迷惑を被ったぞ···!
王都を襲った『白夜の魔眼』達は打ち捨てられた砦へと飛んできていた。
「何が一人で団長と戦いたいだ!王都を荒らしたいだ!自惚れが――――···!目的を達成するだけならこんなに手間取る事も無かったのだ···!」
ローブを纏い、フードで顔を隠している男にラデスは叱責されていた。
「うるせぇ!!被害が出たのはオレのオモチャだ!!お前らには関係ねぇだろうが!!」
(ん···)
そのやり取りにより、意識を取り戻したノア。
すぐにでも目を開けたかったが、此処は気絶しているフリをして出来る限り情報収集に徹した方が得策と考え、そのまま話に耳を傾けることにした。
「でも〜〜〜〜キャサリンとジェイスはやられてまだ王都でのびてるっぽいよ〜〜〜〜〜」
ローブを身に纏っている他の一人の魔導士がラデスにそう話しかけた。
「知るかあんなババアとオッサン!!目的のモノは手に入れたからいいだろうが!」
ラデスの心無い言い分に、ヴァルトスは半分呆れていた。
(目的のモノ···?奴らが王都を襲撃したのはそれが目的か···!しかし、それはあのラデスと呼ばれた男が独断で起こしたモノ····本来はフエゴレオン団長のみを狙って襲撃する手筈···だったと、)
そこまで冷静に分析し、目的は何だったのかを再び考える。
「ところで···
(なるほど、あのローブの名前はサリーか···名前の感じからして女だな···)
「え〜〜〜〜〜ヤダよ〜〜〜〜〜
「·········う······」
此処で漸く、アスタが意識を取り戻した。
(!···アスタ、意識を取り戻したか···だが、今はそれよりも···!)
その事にノアはいち早く気付くも、意識を取り戻していることがバレないように気絶しているフリを続ける。
(·········どこだ···此処···?何だコレ···??)
アスタは先程覚醒したばかりの為か、状況を理解できずにいた。
「あの場所に行けるのは
(えっ)
(
アスタは殺されるかもしれないことに驚き、ノアは冷静な状態で再び話を聞き続ける。
「そうだ!オレに殺させろ!ソイツらはオレのオモチャにする···!」
「ラデスはちょっと黙っててよ〜〜〜〜」
(やべぇ···俺···敵に捕まっちまってんのか············!?)
「あ、目 覚ましたんだね〜〜〜〜君からもお願いしてよ〜〜〜〜〜」
(お···女······!?)
サリーと呼ばれた魔導士は覚醒したアスタに気付くと、フードを下ろしてアスタとノアを見据える。
(不味い···この状況···非常に不味い···!)
今現在、ノアとアスタはサリーに捕らえられ、あわよくば
「ねぇ〜〜〜〜〜〜僕からもちゃんとお願いするから〜〜〜〜〜〜ねぇ〜〜〜〜〜」
「···どうなっても私は知らんぞ。」
サリーの駄々に呆れ果てた仲間の一人は呆れ果て、そう呟く。
「俺によこせ!!」
一方のラデスは恨みを晴らしたい一心で、サリーに詰め寄る。
そんな風に『白夜の魔眼』達が廃墟の奥へ奥へと歩みを進める。
すると、
「やぁ···待ってたよ」
そこで待ち構えていたのは、現魔法帝 ユリウスであった。
「「···え」」
その光景に、アスタと気絶したフリを忘れてノアが反応を見せた。
「王都はどうだったかな···?」
『白夜の魔眼』達は驚いたことだろう。何故王都の城にいる筈のこの男が、我々の拠点で待ち構えているのか···と。
「殺――――」
一人がユリウスを殺そうと魔導書を開く。しかしその瞬間に、ユリウスは眼前にいた魔眼メンバーの二人の間に音も無く移動し、一瞬のうちに
「―――――――···!!」
「何············!?」
「ば···馬鹿な······!?」
一瞬のことであった。周りは何が起こったか理解が出来ない。
「死んでもらったよ···流石にこの人数は厳しいからね·········
「くっ······」
直ぐ様他の魔導士が魔法を発動させて植物を召喚するも、
「!」
ユリウスが左手を向けるとその箇所に風穴を開け、即座に無力化する。
「え!?···え!?」
サリーは何が起こったのか状況を理解できずに困惑し、
「···う···うわあああああ!!!」
ラデスは恐怖のあまり怯えて声を荒らげてしまう。
「―――君達···王都を襲って来たんだろう···?」
『···』
「まさか···
ユリウスは立て続けにそう言い放った。
「············」(なんという力···これが···魔法帝―――···!!マズイ············もう魔力が············!)
唯一逃走手段の魔法を持つヴァルトスも逃げるだけの魔力が残って居らず、これからどうされるのか分からない状況に冷や汗をかいた。
「とはいえ、君達中々の手練のようだね···骨が折れそうだ···どうだろう···一人だけ生かしてあげるから投降しないかい?早い者勝ちだよどうかな?」
淡々と笑顔でそう言い放つが、要は死刑宣告だ。
「―――――···」
「ナメるな――――――!!!」
『白夜の魔眼』達が次々に攻撃するも、ユリウスは目にも止まらぬ速さで回避し、かすりもせずに避けきる。
「――――――···」(な···何だコイツの動きは·········!!速過ぎて目で追えん···!!)
「···仕方ない、この人数だったらいけるかな···?」
「!」
《時間拘束魔法 “クロノ スタシス”》
そう言うとユリウスは拘束魔法で残りの魔眼達を捕らえた。
(―――···な······んだ··················!?これ···は············)
(身動きが···とれな············)
「全員拘束出来たね、思いの外弱ってたかな···?···まぁいい、無限に続く一瞬の時を味わうといいよ」
「どわっ」
「よっ···と」
サリーが拘束されたことで、アスタとノアを拘束していた魔法が解除され、アスタとノアは開放された。
「あ···やぁアスタくん、ノアくん君達とは何だか縁があるみたいだね〜〜〜〜〜」
アスタとノアはユリウスに声を掛けられるが、それよりも周囲の様子を確認し、恐怖する。
(あんな強かった奴らを全員一瞬で············!!···これが···魔法帝の力············!!これが············)
(流石、伊達に魔法帝と名乗ってる訳では無いって事だな···)
「目指しているんだろう?魔法帝なら、目を逸らさずしっかり見ておくんだ···これは君が、君達がこれから越えねばならないほんの一部ですらない」
(俺が追いかけてる···最強の男···!!)