ブラッククローバー ~武器魔法の使い手   作:晴月

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「コレは君達がこれから越えねばならないほんの一部ですらない。」

 

そう魔法帝に告げられたノアとアスタ。二人はこれから魔法帝の実力を見られるのだと思うと興奮を抑えることが出来ずにいた。

 

((これが魔法帝···!!俺が、俺達が越えるべき王国最強の魔道士―――――‼))

 

「立てるかい?」

 

魔法帝は蹲る二人に手を差し伸べ、手助けを申し出る。

 

「お気遣いありがとうございます···俺は、大丈夫です。」

 

そう言ってノアはゆっくりと立ち上がる。

 

「君は?」

 

今度はアスタに手を差し伸べる。しかし、アスタもゆっくりとではあるが、自力で立ち上がり始める。

 

「どうやら、手助けはいらなかったみたいだね。」

 

そう言うと、今度は捕らえた『白夜の魔眼』達に向き直る。

 

「君達中々面白い魔法だったね〜···驚いたよ――さて···そんな君達に聞きたいことがあるんだけど···」

 

すると、突然魔法帝の雰囲気が一変する。

 

「この石板と宝石は何だい···?」

 

そこにはまるで何かを表したような形に掘られており、その中の円の中心にはそれぞれ異なった宝石が埋め込まれていた。

 

「―――······」

 

しかし、『白夜の魔眼』達は何も答えない···いや、答えたくないのだろう。全員が冷や汗を流し、沈黙を貫いていることからそれほど知られてはならない重要な情報なのだろう。

 

「こんな文字も紋様も見た事がない···君達はコレを使って何をしようとしていたんだい?」

 

しかし、ノアにはその石板に掘られた紋様に見覚えがあった。

 

(あの“紋様”は···!)

 

ノアは即座に自分の魔導書を開き、特定のページを見つけては注視する。

 

そこには何も描かれていない真っ白なページとその右端に石板と同じ“紋様”が描かれていた。

 

(コレと同じ“紋様”···ということは、これが発動した時、このページに関する何かが起きるということか···)

 

と、ノアは一人そのように推理する。

 

「···まぁ、聞いたところでその魔法の中では何も出来ないけどね···あとはクローバー王国でゆっくり聞くとしよう」

 

そう言って魔法帝はゆっくり、またゆっくりと歩みを進めて近付いていく。

 

「――――――······!」 (何か···来る―――!?)

 

すると魔法帝は自身の背後から何者かの気配を察知した。

 

次の瞬間、石板の後ろから強烈な光が溢れ、輝き始めてしまいアスタとノアは目を開けていることが困難になってしまう。

 

その光の中心には、魔導書を開いた何者かの姿がシルエットとして浮かび上がっていた。

 

「·········」(何だこの光っ!!!)

 

「·········」(誰かいる···まさかアレが『白夜の魔眼』のボスか···!?)

 

 

光が消えると、そこには何も残っていなかった。まるでそれまで誰か居た痕跡を掻き消すように···

 

(消えた···!?)

 

「やられたね···お仲間を連れてかれたみたいだ、私よりも速い光の魔法――···敵の頭かな······面白···いや、手強そうだ」

 

先程とは態度を一変させている魔法帝、どうやらかなり動揺している様子だ。

 

「だけど···一人は逃さなかったよ」

 

しかし、捕虜を一人捕らえている点で見れば互いに痛み分けといった感じだ。

 

この光景にアスタは突然目の前で起きた光景が未だ信じられないようで唖然としていた。

 

『!···やっと繋がった···!どこにいるんですか!?魔法帝!』

 

その時、魔法帝の元に通信魔法の映像が現れる。

 

「やぁやぁマルクスくん。済まないね少々立て込んでて通信魔法を遮断させてもらってたよ。」

 

『大体いつもそうでしょうがアナタは!!···こっちは本当に大変な事が―――···』

 

マルクスと呼ばれた部下が話を続けようとした所、

 

「王都が襲撃されたんだろ?」『え!?』

 

「で、無事撃退出来たんだろう?」『えぇ!?』

 

まるでそうなることが分かっていたかのような口ぶりで会話する魔法帝。

 

(この人、未来視でもしたのか···?)

 

そう思わずにはいられないノアだった。

 

『そうなんですが·········取り敢えず医療棟に来て下さい!』

 

慌てふためいていた声が、落ち着いた様子でそう返答する。

 

そして、その時ノアは思い出す。

 

(そうだ···!フエゴレオン団長···!)

 

――――――――――――

 

一方、王都 医療棟では右腕を失い、出血多量で搬送されたフエゴレオンとその弟 レオポルドンが回復魔道士達によって集中治療を受けていた。 王都に残されたノエル達は二人の回復を、棟の外でただ待つことしか出来ずにいた。

 

「魔法障壁を強化し、通信魔法も回復し···騎士団を増員した···もう大丈夫だろう。」

 

そう言われてもノエル達は二人の回復を願わずにはいられなかった。

 

「フエゴレオンさん······レオさん···」

 

「!···この魔力は――――···!?」

 

すると、何者かの魔力を感じ取った直後、全員の背後に捕虜を連れ、アスタを抱えた魔法帝が現れ、その直後に魔法帝の近くに空から剣が落ち、即座にノアが現れる。

 

「やぁ、みんな···ご苦労様」

 

「ま···魔法帝···!?···と···敵!?それに···アスタ――――!?」

 

「や···やぁみなさんお揃いで」

 

「無事だったのかぁあああああ」

 

突然現れた魔法帝とアスタにクラウスは驚きつつ、アスタも突然王都に戻ってこれた事で少し動揺していた。

 

「いやぁ~ホント終わったかと思ったね」

 

「無茶ばっかりしてるからよ!少しは懲りたかしら、バカスタ···!」 (良かった〜···)

 

ヘラヘラしているアスタを嗜めるノエルだが、内心心配していたようで心から安堵していた。

 

「アスタああああ···!!!」

 

そんなノエルを弾き飛ばし、いの一番に駆け寄るクラウス。

 

「よくぞ···!よくぞ生きて戻って来たな!!死んだものとばかり···本当に良かった···!!」

 

「〜〜〜〜······ 」

 

泣きながら駆け寄るクラウスに若干戸惑いつつも感謝を述べるアスタと弾き飛ばされ、怒りを覚えるが何も言わず黙っているノエル。

 

「······」

 

そんな三人の様子を少し離れた所で見ていたノアだったが、

 

「ノアさぁぁぁぁぁん!」

 

「へ?···うおっ!?」

 

突如として現れたミモザに抱き締められ、少し幸せを感じたノアだったが人前ということもあり、羞恥を感じてしまう。

 

「本当に···本当に心配しましたわ〜〜〜!!」

 

「う、うん。それはいいんだけどさ···人前で、それも女性が男に抱き着くのは···流石にどうかと思うんだけど···」

 

とノアが言うと、ミモザは顔を紅潮させてノアから身体を放す。

 

「あっっ···!すっ、すみませんっっ」

 

「い、いや···いいんだ···」

 

ノアは、少し残念に思いながらも安堵した。

 

―――――――――――――

 

「――――···そうか···フエゴレオンほどの者が···いつ目覚めるとも分からない状態とは――――······これは私の誤算だった············」

 

騎士団長達から事情を聞き、自身の失態を悔やむ魔法帝。

 

「···いえ···我々の未熟さ故です···」

 

『碧の野薔薇』団 団長 シャーロットは悔しげに魔法帝へと答える。

 

「···魔法帝···確認したところ···フエゴレオンが身に着けていたペンダントが無くなっていたそうです···それが、奴らの狙いだったのでしょうか···?奴らは一体···何者でしょうか···?」

 

シャーロットの報告を聞き、思案する魔法帝。

 

「···フム···話を聞くに、王国に恨みを持つ者達のテロリスト集団のようだが···そんな単純な話では無いようだ···」

 

(あの石板に埋め込まれていた宝石···フエゴレオンのペンダントもその一つだったという事か···いくつかまだ空きがあったが、あれが全て揃うと何が起きる············?···フエゴレオンが狙われたのはその宝石を所持していたからという可能性もあるが···彼の強さ・思想が奴らの目的の邪魔になる可能性が高かったのかもしれないね···幾つかの不穏分子を秘密裏に調査していて、今回初めて足取りを掴めて探したのだが···あそこまで強大な力でとてつもない事を企てているとは···王都を離れるべきではなかったか···)

 

そこまで思案し、気持ちを切り替えて次の指示を騎士団長達に伝える。

 

「詳しくは後で捕虜に聞くとしよう···何れにせよ···」

 

そう言って騎士団長達に面と向き合う。

 

「魔法騎士団に求められる事は一つ···王国の平和だ。その為には我々は全てを掛けて戦い続けよう。」

 

そう伝えた直後、

 

「············私は先に失礼する···」

 

「ノゼル兄様···!」

 

『銀翼の大鷲』団 団長 ノゼルは弟妹を連れ、先にアジトへと帰還する。

 

(何だアイツ···今一致団結の流れだろーが、空気を読め空気をををを···!!!)

 

「······」

 

それをアスタは自分勝手な行いだと心の中で非難し、魔法帝はそんなノゼルの心情を理解したのか、無言で見つめ続けていた。

 

―――――――――――

 

魔法帝達からかなり離れた所で、ノゼルは思案する。

 

(情けない···何たる体たらく!!次はないぞノゼル···!!)

 

自身の不甲斐なさに憤り、なんとか感情を押し殺しながらも帰路へと歩みを進める。

 

「そして···」

 

ノゼルは子供の頃、フエゴレオンと互いに競い合い、研鑽を続けていた頃を思い出す。

 

「貴様をあのようにした輩は、この私が必ず葬る···!」

 

――――――――――――――

 

「敵は、眠れる獅子ならぬ鷹を起こしてしまったかな?」

 

「?」

 

やはり、魔法帝はノゼルの心情を理解しており、アスタは何のことだか理解していないようだ。

 

「我々ももっと強くなります···!!」

 

シャーロットの一言で、周りの騎士団達に火がついた。

 

「――――···最も、強くなるのは···俺だ·········!!」

 

「!」

 

声は医療棟から出てきたレオポルドのものであった。

 

「レオポルドさん···!安静にしてないと···!!」

 

ミモザが心配して寄っていくが、レオはそれを静止する。

 

「――――···アスタ!ノア!お互い生きてて何よりだった!!···同じ死線を潜り抜けた我がライバル達として···お前達ももっと強くなるのだ――――!!」

 

「「······」」

 

「―――――·········そして············」

 

その時、レオは幼かった頃のことを思い出す。

 

―――――――――――――

 

「――――···兄上!その額のしるしは何なのですか?」

 

「ん?これはな···自分に打ち勝ち、王となる覚悟が出来た者のみが付けるヴァーミリオン家に伝わる自分への誓いの印なのだ!」

 

「おお···!格好良いぃ―――!」

―――――――――――――――――

 

『フエゴレオン様は本当に立派になられましたな···もしかすると···国王と魔法帝、両方の座を手にする真の王になるやもしれませぬぞ···!』

 

(凄い!···凄い!本当に凄いぞ俺の兄上は、兄上の弟として恥じぬ存在になるように俺も精進するぞ···!!)

 

―――――――――――――――――

 

(違う···憧れではなく―――――···)

 

「···これは···誓いの印だ·········!」

 

するとレオは自身の親指から火を放ち、それを自身の額に押し付ける。所謂焼印である。

 

(兄上も越える男になる···!!)

 

「次の魔法帝になるのはこの俺だ!!!」

 

「――――···おう!よく分からんけど···ライバルとして不足は無いみてーだな···!」

 

そう言うとアスタは一言、

 

「で、お前誰?」

 

と、気の抜けたような返答をし、レオとノアが転けそうになる。

 

「アスタ、レオだ···!レオポルド・ヴァーミリオン。」

 

「おお、レオっていうのか。」

 

ここですかさずノアがフォローを入れ、アスタも納得する。

 

「そうだ!俺の名はレオポルド・ヴァーミリオン···親しみを込めてレオと呼べ!」

 

「な、なんて馴れ馴れしい奴···!」

 

「お前に言われたくないわァァァ···!!!」

 

その光景を見ていた他の面々はまるで微笑ましいものを見ているかのように笑っていた。

 

「やれやれ、あの二人は似た者同士だな···」

 

と、皆から少し離れた場所でノアが一言溢す。

 

「あ、あの···ノアさん。」

 

「ん?」

 

するとミモザがノアに近付いて来ており、何やら恥ずかしそうに顔を紅潮さて、モジモジしていた。

 

「どしたミモザ?···何か用か?」

 

そんなミモザの気持ちを知らず、ノアはミモザに近づく。

 

「あの、叙勲式での···」

 

「あぁ···」

 

その一言で、ミモザがノアに何を言いたいか理解した。

 

「気にするな···アレは酷いと思ったからな···助言のつもりで一言言ったらついカッとなってやったことだ。」

 

と、感謝を述べる程の事でもないと言い切ったノアだったが、

 

「それでも···!それでも、私は殿方にそのようなことをされたことが無いのです···ですから···」

 

と、弱々しく俯きながらそう返答する。

 

「だとしたら、そいつらはミモザの魅力を何も分かってない連中ってことになるな。」

 

「···え?」

 

何を言われたのか一瞬、理解出来なかった。

 

「だってそうだろ、ミモザはこんなにも魅力的なのに···それを理解出来ない男連中なんて見る目のない奴らばっかりじゃないか。」

 

「みっ!?····み、みみ···魅力的···!?」

 

ノアにそう言われ、自然と顔が赤くなっていくのを感じるミモザ。

 

「そうだな···先ずは、」

 

そんなミモザの様子に気付かす、ノアは続ける。

 

「可愛い。」

 

「!!···///」

 

「綺麗だし魔法での治療も完璧だし···」

 

「あ、あの···もうその辺りで···」

 

そろそろ恥ずかしさで気絶しそうなミモザに気付かないままノアは更に続ける。

 

「俺のことを下民だからと差別しない所···これが一番だな。」

 

「え···?」

 

それまで恥ずかしさで気絶してしまいそうなミモザだったが、それを聞いた途端、そんなことを忘れてしまった。

 

「俺さ···ハージ村っていうホントに国の端の方の村出身だから···貴族とかは自分たちよりも魔力が多い俺のことを、やれ下民だからと見下しがちなんだけど···それなのにミモザは、貴族でありながら俺の事を下民だからとかそういうことで見下したりしないからさ···素直に尊敬してるんだよ。」

 

「······」

 

初めてノアの素直な気持ちを聞いてミモザは嬉しく思った。そんな風に思っていてくれた事に対して···自分は、何が出来るのか分からないけれど···それでも、

 

「ありがとうございます···私の事を、そんなふうに言ってくださって。」

 

そう言うとミモザは笑った。笑うというよりも微笑みを返したと言い換えた方が正しいかもしれない。

 

「···やっぱり、ミモザはそうやって微笑んでる時が一番可愛いと思うよ。」

 

「か!?···かかかか···可愛い···!?」

 

「うん。可愛い。」

 

そう言ってノアも笑顔で返す。

 

が、

 

「きゅう」

 

ミモザは自身のキャパを超えてしまったのか気絶してしまった。

 

「ミ、ミモザ!?どうした!?」

 

そんなことを知らず、ノアは慌てて抱き寄せる。

 

「大丈夫か!?」

 

「はっ!···きゅう···」

 

一度覚醒するもノアの顔が近過ぎて再び気絶してしまう。

 

「なんで!?」

 

――――――――――

 

「······なにこれ···?」

 

今、ノエルの眼前には2つの光景がある。

 

一つはアスタとレオの言い争っている光景。

 

そしてもう一つが気絶したミモザを抱きかかえながら心配しているノアの姿。

 

ハッキリ言ってカオスな光景であった。

 

「どうしたらいいのよ···」

 

こんなカオスな状況で、ノエルはどうすればいいのか分からずその場で頭を抱える。

 

そんな様子を微笑ましい思っているのか、医療棟で意識不明の重体であるフエゴレオンが何故か微笑んだそうな····

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