ノア達が『白夜の魔眼』達を退けた後、魔法帝は王都襲撃を反クローバー王国のテロリストによるものと断定し、今後も断固たる意志で戦っていくと表明した。
このことから、魔法帝は王権派に被害の責任を追及されたが、それでも民衆からの支持は大きく魔法騎士団への活躍の期待が高まった。
敵侵入の原因は王都の魔法障壁を張る一部魔道士達の失踪にあった 敵に消されたか···もしくは寝返ったか―――――
この事実は公にはされなかったが魔法帝は確信せざるを得なかった···
(信じたくはないが···王都の魔道士に裏切り者がいる···!!)
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???
「クソがぁぁ!!!」
アスタに殴られ、傷を付けられたラデスは逃げ延びた別のアジトで荒れていた。
「痛ぇ···痛ぇぞ······!!傷が痛え〜〜〜〜···!!」
恨み言を吐きながら、ラデスは殴られた頬を押さえて怒りを顕にする。
「あのアスタとかいうクソガキ·········絶対ぶっ殺してやる············!!最強の屍体軍団を集めてやるぞォ···!!」
「あの反魔法の子アスタっていうんだ〜〜〜」
そこに現れたのはアスタとノアを解剖しようとした女 サリーであった。
「殺しちゃダメだからね〜〜〜ラデス〜〜〜〜〜〜ボクは生きたあの子をイジくり回したいんだから〜〜〜〜それとボクが治してあげたんだからもう傷が痛む訳無いじゃん〜〜〜」
「うるせぇ!!なんか傷が疼きやがるんだよぉ!!」
「聞こえなあ〜〜〜〜〜〜〜い早く会いたいな〜〜〜アスタ…それまでは〜〜〜〜」
そう呟くと、サリーは自身の研究室に入り、巨大な培養液で満たされた2つの水槽に向かう。
「ゲルで包んだ時にちょっと手に入れたサンプルで〜〜〜〜〜研究研究〜〜〜〜〜♪」
この様子から察するに彼女は研究者なのだろう。それも、マッドな方の····
「ゲオルクとキャサリン、ジェイドを助けられなかった···」
『白夜の魔眼』の指導者である人物がそう嘆く。
「···あの三人も我が強いですが···ジェイドは兎も角として、貴方様のことを崇拝しております···我々の情報を吐いたりはしないでしょう···」
「そういう心配をしているんじゃない···生きてさえいてくれれば、必ず救い出す············!」
そう言って右の袖を捲り上げ、腕を顕にする。その腕はまるで老人のように細く、萎びていた。
(躱したと思ったが···あの時微かに攻撃を受けていたようだ···時間の流れを早める魔法···それも急激に···!魔法帝···やはりとてつもない力だ···)
魔法帝の事をそう評価し、袖を戻す。
(だが···もっと力を蓄え···必ず斃す···!)
「クローバー王国への復讐を成し遂げ、我々だけの新しい国を創る為に···!!」
そう話す人物の眼前には、彼?を指導者と崇拝する者達が集まっていた。
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所変わって王城、尋問室にて、
捕らえられたゲオルク、キャサリンに魔法を掛けて『白夜の魔眼』の情報を手に入れようとしていた。
しかし、
「············!!駄目です···!
「掛かってなくても言う訳無いでしょ···あの方は闇の中の光···!私達の神なのよ···!!」
「あの方だけは私達を見捨てなかった······私達もあの方を裏切る事は決して無い··!」
捕らえた二人は『白夜の魔眼』のリーダーに対して恩義があるのだろう。その後も二人は口を割ることは無かった。
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「――分かったのは···
そう言って一呼吸置いて、一言
「彼が起きれば···もしかしたら何か分かるかも知れない····待つとしよう···獅子王の目覚めを」
「引き続き、手掛かりを探してくれ。」
側近に指示を出した魔法帝は来たるべき『白夜の魔眼』との戦いを決意するのだった。
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所変わって王貴界
報告を終えたノア、アスタ、ノエルは『黒の暴牛』のアジトへと帰還するため、帰路に着こうとしていたのだが···
「迷っったぁぁぁ〜〜〜〜!!広っ!!王都広っっっ!!」
完全に迷っていた。
「道を確認もせずズンズン進んでいったからじゃないのか?」
と、ノアがボソッと呟いた。
「まぁまぁ···とりあえずコレ、食べてみ。」
と、二人にシュークリームのようなパイを手渡すチャーミー。
「私も貰ってあげてもいいわよ。」
と、ツンデレ全開のノエル。
パイを貰って食べながら道を歩いていく四人。
「てゆーか何でチャーミーパイセンがいるんスか?」
と、当然の疑問をチャーミーにぶつけるアスタ。
「美味しいモノある所に我あり。」
と返答するチャーミー。
「いやそれ、答えになってないんですが···」
と、ツッコむノア。
「そういや、なんかゴキゲンっスね。」
と、アスタが尋ねると
「運命の出会いがあったのさ······坊やにはちょっと早いかもね。」
と、うっとりしながらチャーミーは嬉しそうに答えるのだった。
「あ···!そういや、チャーミー先輩ってどうやって王貴界に入ったんです?」
と、気になっていたことをノアが尋ねた。
するとチャーミーは自身の魔導書を開くと、
「こうやって」
と言って、自身を綿に包んでそのまま縮み、アスタのフードの中へ入っていった。
「マジでか。」
と、答えたアスタは唖然とし、ノエルは、
(この人の魔法、実は凄いんじゃ······?)
と何かに気付き始めていた。
そしてノアは、
(綿を生成する魔法か···敵の拘束とかに使えそうだな···応用を効かせれば色々と便利な魔法になりそうだ···)
と、そんな事を考えていた。
「ん?···あれは···!」
何かに気付いたアスタは、眼の前の高台を歩いていく三人組に声を掛けた。
「ん?アスタ達ではないか」
三人組はユノ達『金色の夜明け』組であった。
「ノアさーん。」
と、一人ノアに手を振るミモザ。それに対し、右手で手を振って返すノア。
「怪我はもう大丈夫なのか!?···って前も同じ事聞いたな!!」
と、嬉しそうなクラウス。
「ユノー!お前しれっと敵を倒したらしいじゃねーかバカヤロー!」
「······」
そんなアスタの言葉を意に介さないユノ。
「オイユノおおお!!テメーちゃんと挨拶しろコノヤロー!!一人倒したからって調子乗んなよ〜!挨拶はこの世の基本だぞ!」
と無言でこちらを見つめているユノに対してまくしたてるアスタ。
そんなユノを見て、救食の王子!?や、アスタと知り合いだと知ったチャーミーが二人を驚いた様子で見続けている。
するとユノは、面倒くせぇと言わんばかりにため息を吐き、魔導書を開いた。
「ん?」「ん?」
そんなユノの行動に疑問符を浮かべるクラウスとアスタ達。
すると突然、巨大な大鷲の形になった風魔法がアスタ達目掛けて飛んでくる。
「え?」「は?」
「なあッッ!!?」
あまりの衝撃にノエルとノアは動けず、驚いていたアスタだけ、なんとか反応して自身の魔法の一つである、大剣で大鷲を一突きして消滅させることができたのだった。
そしてそれを放った当の本人はと言うと、
「···あれ?やりすぎた?」
と、この反応。
どうやらここまでの威力にするつもりはなかったようだが、アスタが反応出来なければ全員ただでは済まなかったであろう事態だ。
「お前、いきなり何やってるんだユノー!!」
これには流石にクラウスも注意をするし、ミモザは絶句してしまっている。
「···バカかアイツは〜〜〜〜オレ達を殺す気なのかああ〜〜···!?···ん?」
するとアスタが斬った風が一文へと変化する。
《じゃあね
「············」
わざわざ魔法使ってまですることではないし、何ならアスタをチビと完全に煽っている。
「テメー今すぐ勝負だクラァ〜〜〜!!魔法で文字見せる為にわざわざあんなん撃ってくるんじゃねー!って無視して帰んなァアア」
そんなアスタに目もくれずやりきった様子でスタスタと歩いていくユノであった。
「無視が一番酷いんだぞォォォ!?」
そんな二人を見てノアは一言
「やれやれ。」
と、呆れるしかなかった。
―――――――――――――
(ユノのヤツ···魔法の威力が格段に上がっていた············!この短期間に一体何があったのだ···!?)
と、急激なユノの成長に驚くクラウス。
そして、
(ノアさん···!次お会いする時は私も並んで戦えるように強くなって来ますわ···!!その時は···その時は···/////)
と、ノアの隣に立ちたいと強く決意したミモザ。
そして、
―――――――――――――
「へっ···!勝負は3人共···もっともっと強くなってからだな···!」
(負けねぇぞユノ············!お前が強くなれば俺達ももっと強くなれる―――――!!)
と、ユノへの決意を新たにし、アスタは一人燃えるのだった。
――――――――――――――
「いやぁ~任務疲れた疲れた!!だがしかぁーし!!活躍認められて『星』貰っちゃったもんね〜〜〜〜〜!!この調子で俺が黒の暴牛引っ張ってちゃうぜコノヤロォォォ!!」
と、意気揚々で帰ってきたマグナと、
「そうだねマグナ!!僕達の合体技『ビリビリマグナタイフーン』で突き進もう!!」
と、マグナを使った魔法を思い出しながら笑顔でマグナに返答するラック。
「その技はもう二度とやんないで!!」
と、怯えた様子で答えるのマグナ。どうやらトラウマになってるらしい。
「おかえりなさいっス!!マグナ先輩!!ラック!!」
と、まるで舎弟のような返事をするアスタ。
「お!アスタ、お前も帰ってたか。大変だったな!だがこれからは俺の時代だぜ――――」
と、続けて何かを言おうとした時、
あ、そうそうとアスタが話を切り替え、
「オレ、王都のいざこざでの活躍が認められて···臨時の戦功叙勲で三等下級魔法騎士になりました。」
と、嬉しそうにアスタは報告した。
「ええええええ!!!!」
と、驚いたマグナだったが、
「···って三等下級魔法騎士って何だ···?」
と、首を傾げる。
「さあ?」
と、ラックも同じ反応。
「えっ!?知らないで驚いてたのか···この人···!?」
と、ツッコむノア。
「お前ら···そんな事も知らずに騎士団員やってたのか···」
と、呆れながらヤミは語り始めた。
「魔法騎士団の階級だ。因みにお前らは入団から何も変わってねーから五等下級魔法騎士のままな。アスタに敬語使えよ。」
(ええええええ···!!!?)
「」
と、話すと驚いていた。
「因みにチャーミーとノアは一等下級魔法騎士になったぞ。」
と、更に衝撃の事実を突き付けられる。
「跪け格下共。」
と、偉そうに笑いながら話すチャーミーと、
「まぁ、そういうことなんで···」
と言いながら満面の笑みを浮かべるノア。
「ええええええ!!!!!!?」
これにはマグナだけでなくアスタも驚きを隠せなかった。
「賊を捕えたのが評価に繋がったようだな···チャーミーの方はリンチしようとしてたみてーだけど。」
と、ヤミが詳細を語る。
当の本人達はというと、
チャーミーは変な踊りを踊り始め、ノアは右手でガッツポーズをしながら嬉しさを噛み締めていた。
「まぁとにかく、よくやったな小僧共。」
「··········」
と、アスタとノアに称賛を送るが、アスタはどこか浮かない顔だ。
「···でも···フエゴレオン団長が·········」
と口にした瞬間、ノアもアスタの気持ちを理解した。
(あぁ···そういうことか···)
現在の彼のことを思うと、素直に喜ぶことが出来ない。
そうアスタとノアは考えたが、
「あ?フエゴレオン?お前ごときが誰の心配してんだバカヤロー。あの熱血真面目大王がそう簡単に死ぬかよ、何か更にパワーアップして戻ってくるんじゃねーの?」
と、アスタの不安をヤミなりに一蹴し、激励したのだろう。
それを聞いてアスタの顔から陰りが消え去り、
「そうっスよね!!」
と、いつもの元気なアスタへと戻った。
「よっしゃァァァァそいじゃオレも更に修行して更なるパワーアップだ――――――!!」
と、意気込んた瞬間。
「いや、お前ら休め。無理し過ぎ、死ぬぞ。」
と、コレをバッサリ。
(いや大体団長がやらせてたんでしょーが!!)
と心のなかでツッコむアスタだったが、その通りだった為何も言わなかった。
(休み···か、取り敢えずまた王貴界ブラブラしてみようかな?)
と、ノアは考えていたがアスタは、
「休み···」
と、今まで修行に明け暮れてた身のため、突然休暇を言い渡されても何をすればいいのか分からず、宇○猫のように固まってしまう。
と、その時。
「休みもらったのアスタくん!ノアくん!それじゃあ――――」
と、眼前に空間魔法が展開され、中からフィンラルがでてくる。
「合コン行こうよ!!」
と、突然誘われた。
「いや、お前は働けよ。」
至極当然のツッコミがヤミから飛び出たが、どこ吹く風のフィンラル。
(((ご···合コン!!?)))
と、驚いたが
「あ、俺パスで。」
とノアは即座に拒否し、軽くショックを受けるフィンラルを尻目に、一度部屋へと戻っていくのだった。