ブラッククローバー ~武器魔法の使い手   作:晴月

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ページ31 ピンチはチャンス

「···ぐ···くそっ···!」

 

白い鎧を身にまとったノアがその場に蹲る。

 

その眼前には、3人の男女が此方を見据えている。

 

ノアの背後には、既にボロボロなアスタとゴーシュの二人。

 

そして、隣には自身の刀が折れた『黒の暴牛』の団長 ヤミが立っている。

 

何故こうなっているかというと、今から数時間前に遡る。

 

―――――――――――――

 

フィンラルの誘いを断り、部屋へと戻ったノアだったが、

 

「あ···!」

 

と声を上げ、この後ミモザと“お礼”という名目上、出掛ける約束をしていたことを思い出したノアは直ぐに入浴し、着替えてミモザの待つであろう街へと歩いていった。

 

そしてそこからお互いにデートをし、互いに想いを伝え合いそうして付き合うこととなった。

 

――――――――――――

 

「はい、到着だ···じゃあ、俺はこれで」

 

ヴァーミリオン邸までミモザを送り届け、そのままアジトへと帰宅しようとしたノアだったが、

 

「!···あの、ミモザさん?」

 

ミモザがノアの服の裾を摘み、動けないでいた。

 

「···ス」

 

「ん?···ごめん···今なんて言った···?」

 

「で、ですから···その···///」

 

その言葉を口にしようとしてミモザは赤面する。彼女にとって言うのが恥ずかしい内容のことなのだろうとノアは少なからず察した。

 

「まぁ、いいか···そうだミモザ、次のデートは何時にする?」

 

「えっ!?···あ、そうですね···また休暇が合った日にでもと思うのですが···///」

 

また赤面してしまい、両手の指をもじもじさせてしまい、俯くミモザ。

 

「···分かった。次の休暇が何時になるか分からないけど、その時にまたデートしよう。今度は何処に行きたい?」

 

「そ、それは···ですね···///」

 

ミモザが「う、」と口にした瞬間、突如としてノアの右手側に空間魔法が展開される。

 

「この魔法···フィンラル先輩···!?」

 

「うん、そうだよ。」

 

ノアが名前を口にした瞬間、フィンラルが魔法の中から姿を現す。やはり、魔法を発動したのはノアが所属する魔法騎士団

『黒の暴牛』団 団員の一人である空間魔法の使い手 フィンラル・ルーラケイスであった。

 

「んで、何の用ですか?こっちは今、色々と立て込んでるんですけど···?」

 

と、デートの余韻に浸る時間を邪魔されたノアは、ジト目でフィンラルに対して、遠回しな嫌味を口にする。

 

「そんなに邪険にしないでよ···!···ってそうじゃ無かった!大変なんだよ、一大事なんだよ!」

 

「···まさかとは思いますけど、合コンの人数が足りなくて解散の流れになってきてるから急遽参加してくれ。···って話ならお断りしますね。」

 

「違っ···確かに解散には成りかけたけどそうじゃなくって····!」

 

(なりかけたのか···)

 

「実は···」

 

次にフィンラルの口から語られた話は少し信じがたい話であった。

 

――――――――――――

 

「成程。町から子ども達が居なくなったと同時に季節外れの雪が降ってきたから調査していた所、『白夜の魔眼』らしき組織の仕業だと判明したから増援に行って欲しい···と、」

 

「そうそう、そういう事。」

 

「ふぅ〜む」

 

少し考える素振りをして思案する。

 

(子ども達を攫った理由がイマイチ理解出来ないが、何かしらの理由があっての行動なのだろう···それに季節外れの『雪』···か、さっきミモザとデートしたときに見た『雪』が恐らくそれだろうな···。)

 

「まぁ、事情は分かりました。それで、今から行けばいいんですか?」

 

「あぁ、うん。来てくれる?」

 

「···仕方ないですから。ミモザ、また今度ね」

 

「あっ、はい。」

 

「······」

 

少し淋しげに俯くミモザを見て、ノアは少し思案する。

 

「あっ、美女」

 

「えっ!?何処何処何処!?」

 

ノアの嘘にあっさりと騙されるフィンラル。ノアに背中を向ける形で四方を見回す。そんな彼を尻目に、ノアはミモザに近寄る。

 

「あの、ノアさ···」

 

ノアを呼ぼうとした瞬間、ミモザはノアとキスをしていた。

 

「······!!?」

 

キスを終えると、ノアはミモザの耳元で一言、

 

「して欲しそうだったからしてみた。」

 

と、言ってわざとらしく舌を見せる。

 

「······///」

 

そんなノアの行動に、ミモザは何も言えずに赤面してその場で立ち尽くす。

 

「何してるんですかフィンラル先輩。ほら、早く行きますよ」

 

「ノアくん!美女、美女は何処に!!?」

 

「どうやら見間違いだったみたいです。」

 

「そんなぁ~」

 

「それよりもほら、早く行きますよ。」

 

「わ!?ち、ちょっと!?」

 

そそくさとゲートを潜っていくノア。それを追いかけるフィンラル。

 

二人を見送る形になってしまったミモザは、暫くその場から動けなかったそうな。

 

―――――――――――――

 

そして、二人はとある洞窟の中へと転移する。

 

「着いたよ···って!?何だコレ···!?来る場所間違えた!?」

 

フィンラルが先行し、ノアが後に続いてゲートを潜ると其処にはゴーシュと、『黒の暴牛』団の団長ヤミとアスタそして、

 

「あれは···!」

 

アスタとヤミに向かって光魔法を発動している人物が其処にいた。

 

(マズイ···!)

 

ノアは直ぐ様魔導書を開き、ゴーシュも同様に自身の魔導書を開き、鏡を出す。そして、

 

「えっ···!?」

 

ノアの隣からゴーシュが突如として消える。

 

するとゴーシュは闇魔法で防御に徹していたヤミの前へと瞬間移動していた。

 

《鏡魔法 “フル・リフレクション”》

 

ゴーシュの前に超巨大な鏡が現れ、男の光魔法を跳ね返した。

 

 

(···彼は―――)

 

突然のことで、“男”は反応が遅れ、自身の放った魔法を直撃で食らってしまう。

 

『!』

 

「どれだけデカかろうが強力だろうが、”鏡“は“光”を反射する···!!」

 

「うおお!生きてたァァ!?···遂にやった···!?でも何が···!?ゴーシュ先輩――――!?」

 

「…見えなかったが…光の速さだ…避けようがねぇんだろ············?ざまぁみやがれ···!」

 

助けられたアスタは眼の前でなにが起こったか理解できず、それによって混乱しているのか彼の口から出る言葉は支離滅裂である。

 

「ゴーシュ、よく戻ってきたな!!そしてオイシイとこ持ってきやがってテメー!」

 

そう言ってヤミはゴーシュの頭を嬉しそうに撫でる。

 

「そーかそーか!じゃあ最終的には俺の手柄だな!」

 

「最後に関してはヤミ団長何もしてないっスよ!」

 

目茶苦茶な理屈で自分の手柄と言い張るヤミにアスタが異を唱えるも、

 

「うるせぇガリガリ君倒したくらいで調子に乗るなよ小僧」

 

ヤミからのアイアンクローで強制的に口止めされるアスタ。

 

「というか···その理屈なら、今さっき来たばっかの俺とか全然何もしてないんですけど···!?」

 

「お?そういやそうだな····というか今来たの、お前···?」

 

「えぇ、フィンラル先輩に招集されて···」

 

ノアが漸く口を開いた事でヤミもノアが来ていたことに気付き、そんな事を言われてしまう。

 

「まぁまぁノアくんは兎も角として、みーんな頑張りましたよ!」

 

と、何とか締めようとしたフィンラルだったが、

 

『テメー以外はな』

 

「ちょちょちょ!全部俺の空間魔法ありきでしょ〜!?」

 

と、此処ぞとばかりにいじられてしまうフィンラル。

 

「というか、さっき倒した奴拘束しないでいいんですか?」

 

『あ』

 

ノアが助言した途端、ノア意外の全員が忘れてたようで一言口にして”男”を一瞥する。

 

「流石にテメー自身の最大魔法は堪えたよーだな俺意外にも天敵属性いたみたいねドンマイで〜す」

 

と、言われた側からすれば腹立つ言い方をして男を見下ろすヤミ

 

「············」

 

「!」

 

すると男はヤミに目もくれずゴーシュを見た。

 

「············君を···傷付けるわけにはいかなかった······」

 

「···は?何言ってやがる···?」

 

言われたゴーシュは訳が分からず疑問符を浮かべる。

 

「あれ?知り合いだったの?」

 

「な訳ないじゃないスかこんなヤロー」

 

「···いずれ······わかるよ·········」

 

男の言葉にノアは思案する。

 

(何故、ゴーシュ先輩を見てそう言ったんだこいつは···?)

 

眼の前の男がまるで懐かしい人物を見るような目でゴーシュを見ていたことをノアは見逃さなかった。

 

(···まぁ、尋問してもらった後で情報を貰えれば分かることか····。)

 

と一応は納得するのだった。

 

「全然分かんないけど···ま、テメーは騎士団本部に連れてって組織のこと全部話してもらいます。···これで···熱血真面目大王も浮かばれるだろ···

 

「「いやまだ死んでないです(っス)よ!!?」」

 

さらっとフエゴレオンを死んだことにしたヤミにアスタとノアはツッコミを入れたが、ヤミは直ぐ様自身の魔導書の頁を捲る。

 

「それじゃまえ―――と···闇拘束魔法···!」

 

拘束魔法を発動しようとしたヤミだったが、突然新たな気配を感じ取り、直ぐ様警戒の姿勢を取る。

 

そして一番大きな瓦礫の岩の上に3人(・・)ほどの人物が空間魔法を介して現れた。

 

「あの空間魔法は······!」

 

「何だ···!?あいつ等」

 

アスタ達も3人に気付いたようで警戒し、アスタは先程自身が倒した空間魔法使いを一瞥する。

 

「·········!?あいつは伸びてるのに、何で···!?」

 

空間魔法使いが気絶しているにも関わらず空間魔法を使ってこの場に現れた。つまりは3人の中に一人空間魔法の使い手がいるということになる。

 

「うわちゃ〜〜大変なことになってるよ···メンドくさがりなウチでも」

 

「マブダチは助けないとな」

 

3人の内の一人が気怠そうにあくびをしてぼそっとそう呟いたと思った瞬間、いつの間にかヤミの眼前へと移動していた。

 

「!」

 

「へぇ~〜〜〜〜〜変わった柄だな〜〜〜〜まぁどうでもいいけど」

 

すると男はヤミの魔導書に触れる。

 

「――――チッ」

 

(油断した···こいつも光速移動を···!?)

 

《闇魔法“闇纏(やみまとい)・無明斬り”》!!

 

直ぐ様バックステップしながら自身の刀に闇魔法の魔力を付与し、斬撃を飛ばすヤミ。

 

男は左方向へとバックステップで回避するも斬撃を右腕に受け、斬られてしまう。

 

「っっ痛ってぇ〜〜〜〜〜〜!!クソめんどいな〜〜〜もぉっっ!」

 

「ま、こんくらいならすぐ治せるからいいか」

 

そう言って男は傷口に左手を翳す。

 

《光魔法”癒しの光粒“》

 

「―――――···!?何であの魔法を······!?」

 

アスタは、先程ヤミが倒した男と同じ属性の魔法を使うところを見て驚いた。

 

(成程···漸く見えてきた、やはり先程倒した男が『白夜の魔眼』のリーダー···使う魔法は《光魔法》だろうな···本来、魔導書の属性ってのは被らないように一種類ずつだから···アスタが驚くのも無理はない。)

 

と、ノアが状況を俯瞰して整理する。

 

「···来てくれたんだね···すまない···私一人の力では及ばなかった···君達がいればもう安心だ···」

 

『白夜の魔眼』のリーダーを守るようにして先程の男と筋骨隆々の男が彼を背にして立ちはだかる。そしてもう一人が傷ついた彼を魔法で癒やす。

 

《炎回復魔法“不死鳥の羽衣”》

 

「リヒトくん···なーんでも一人で抱えたらメンドーだよ?」

 

「よくも我が友を···!!許さねぇぇ八つ裂きにしてやる···!!」

 

「リヒト···痛い···?傷付けたヤツが憎い······」

 

それぞれ顔の一部に入れ墨のような模様が付けられており、此方に敵対心、怒り、憎しみを向けている。

 

「な···何だコイツ等···また新手か···!?」

 

「紹介しよう···彼等は白夜の魔眼でも最強の三人···こと戦闘においては私より上の存在···三魔眼(サードアイ)』だよ····!!

 

「·········!!アイツより上······!?は···ハッタリでしょ···!」

 

リヒトと呼ばれた男の言葉にフィンラルは冷や汗を流しながらそう口にした。

 

(あのリヒトと呼ばれた男···どうやら相当強かったらしいな···それよりも遥かに強いのか···厄介だな···)

 

と再びノアが思案する。

 

「ハッタリなんてメンドーなことしねーよ···」

 

そう言うと男は近付いてくる。

 

「そいじゃ証明しよーかメンドーだけど」

 

「!?」

 

「な···!!」

 

すると男は、先程ヤミが使っていた魔法と同じように、刀を顕現させる。

 

「君達の王国はクローバーを象徴としているね···クローバーの葉には君達に似つかわしくない耳触りの良い言葉が秘められている···即ち『誠実』『希望』『愛』···彼等にはその対となる名を冠してもらった」

 

そう言うと、リヒトが刀を構えた男に視線を移す。

 

「『不実』のライア」

 

《模倣魔法”闇纏・無明斬り“》

 

「!!」

 

ライアと呼ばれた男が先程のヤミと同じ魔法を発動し、ヤミ達へと斬撃を飛ばす。

 

「テメー人の魔法パクんじゃねぇ!!著作権の侵害で訴えるぞ――――!!」

 

直ぐ様同じ魔法で相殺するヤミ。

 

「ヤミさん」

 

こんなときでも通常営業のヤミにフィンラルは呆れてしまう。

 

するとヤミ目掛けて筋肉質な男が魔法を発動して迫ってくる。

 

(マズイ···!)

 

その様子から嫌な想像をしてしまったノアが自身の魔導書を開き、直ぐ様ファントムソードでバスターソードをヤミの眼前へと飛ばす。

 

「『絶望』のヴェット」

 

《獣魔法“ベアクロウ”》

 

《無属性武器”バスターソード“》

 

「なにぃ···!?」

 

「そう簡単に···ウチの大将殺らせる訳無いだろ···!」

 

バスターソードを投げたノアを、ヴェットが睨みつける。

 

どうやらバスターソードは壊れず、少し傷が付けられただけのようだ。

 

「ナイスだノア···!···!」「!」

 

すると今度は巨大な炎の塊がノア達目掛けて飛んでくる。

 

「憎い···許さない···」

 

「『憎悪』のファナ」

 

「殺してやる···」

 

《精霊魔法”サラマンダーの吐息“》

 

右肩に、小さな羽根の生えたトカゲのような見た目をした精霊《サラマンダー》を操る少女。ファナは憎しみを込めた一撃をこちらへと放った。

 

だが、ヤミは闇魔法で防御、ノアは直ぐ様バスターソードを戻してから炎魔の剣を召喚し、魔法を吸収した為、其処までのダメージには至らなかった。

 

(ユノのシルフと同じ精霊魔法か···厄介だな···)

 

「ヒステリックな女はモテねーぞ?」

 

(まだ未発達みてーだが···四大属性の火の精霊って···マジか)

 

すると今まで冷静だったリヒトが、突然思い出したかのようにノアへと視線を移した。

 

「貴様···!!何故その魔導書を···!」

 

「え?なに、俺···?」

 

突然目をつけられたノアはなんのことだが分からず疑問符を浮かべる。

 

「何故貴様が彼の···我が親友 アラム(・・・)の魔導書を持っている···!!!!」

 

「アラム···?誰のことだ···?」

 

突然怒りをむき出しにしたリヒトの放った名前に聞き覚えがないアスタが首を傾げる。

 

「!···成程、だからあの時(・・・)俺を見てあんな表情(・・・・・)を浮かべてたのか···納得したよ。」

 

と、なにかに気付いたノアが笑みを浮かべる。

 

「え!?何、どういう事?」

 

状況が理解出来ないアスタはノアやリヒトを何度も見回し続けるが彼等はそんな事お構いなしに互いを見やる。

 

「俺のこの魔導書が、そのアラムという人物がかつて使っていた魔導書だったんだな···だとしても、今は俺の魔導書だ!文句あるか!極悪人(テロリスト)!!!!

 

「貴様···!!!」

 

「リヒト、此処は我が···!」

 

今にもノアに襲い掛かろうとしたリヒトをヴェットが静止し、少し落ち着きを取り戻す。

 

「···分かった、任せよう。」

 

「よりにもよってコイツが相手か···!」

 

右手に炎魔の剣を持ち、構えを取る。すると、

 

「うおっ···と···!?」

 

ヴェットの背後から、先程放たれた巨大な火炎弾が再びノアを襲った。

 

しかし、咄嗟に炎魔の剣で斬り捨てた為、ダメージを受けずに済んだ。

 

「リヒト···怒ってる···!···なら、私も許さない···憎い···憎い···!」

 

「おいおい···まじかよ···!」

 

ヴェットだけでなく、よりにもよってファナまでノアに敵意を向けており、ノアはこれからヴェットとファナの二人を相手に戦わなくてはならなくなった。

 

「···やるしかないか···!」

 

そう言うと、ノアは自身の魔導書から一振りの剣を取り出す。

 

《”星“属性武器“オニオンソード”》

 

黄色い刀身に青い線のような模様が入った剣を右手に、炎魔の剣を左手に構える。すると、

 

「ほお···!面白い···!」

 

「二人に増えた···?···関係無い···リヒトの邪魔をするなら···消えてもらう···!」

 

ノアが二人に分身し、それぞれヴェットとファナに向き合う。

 

「そっちが二人で来るってんならこっちも二人になるしかないだろうがよ」

 

 

そう言ってノア(本体)はヴェットに、ノア(分身体)はファナへと向かっていく。

 

「面白い···!」

 

《獣魔法 ライノセラスアーマー》

 

コレにに対してヴェットは、自身の身体を覆う様にして発動した魔法の鎧を装着し、ノアへと突進していく。

 

(まずい···!)

 

慌てて回避しようとするが間に合わず、咄嗟にガードする体制に移るも、

 

「ガッ···!」

 

突進してくるヴェットの勢いを殺しきれず、そのまま撥ねられてしまう。体感としては、まるで車に撥ねられた時と同じ衝撃を受けた為、ノアは勢いを殺す事など出来ないのだ。

 

「···っ、やるな···だが···!」

 

直ぐ様全ての剣を魔導書に戻し、取り出したのは、修羅王の刃と呼ばれる斧であった。

 

「!···貴様、まさかそれは····!」

 

その斧を見た瞬間、ヴェットは驚いた様子を見せた。

 

「ジェイスの時といい···お前ら、やっぱ知ってんだな···この力、“ファントムソード”の事を···!」

 

「貴様···”ファントムソード“まで···!其処まで友を愚弄するか····!人間如きが···!」

 

とうとうリヒトがキレてしまい、ノアに対して、まるで被害者目線で怒っているかのような言い分でノアを睨みつける。

 

「ハァ〜···あのさぁ、アラム···だったか?この魔導書の前の持ち主、そいつもう死んでるんだろ(・・・・・・・・・)?」

 

呆れた様子でノアはリヒトの言葉に異を唱える。

 

「そうだ!お前達人間のせいで···!我らがエルフの盟友を···!」

 

あまりにも怒りの感情が強いのか、口調が少し変化してきている。

 

「だったら、こいつは俺が継承したことになるだろ。」

 

「継承···だと···?」

 

「ああ、そうだ····俺も育ててくれた教会の神父から聞いた話だけどな···魔導書ってのは前の持ち主が亡くなった後、また別の誰かへと受け継がれていくらしい···まさかとは思うが、知らなかったのか?」

 

「!」

 

どうやら、リヒトにとっては知らなかった情報のようで明らかに動揺していた。

 

「それなのに、テメェときたら···まるで墓を暴いたみたいにキレやがって···それに何被害者面してんだよ、お前らどう考えたって加害者側のテロリスト共だろうがよ···お前らに怒る権利なんてある訳ねぇだろ!!!!」

 

リヒトのあまりにも自分勝手な言い分にとうとうノアもキレてしまったようだ。

 

「黙れ!!!貴様ら下賤な人間如きが我が友を語るな!」

 

「ああ言えばこう言うな····そんな物言いしてたから人間に滅ぼされたんじゃないのか?なぁ、下等種族のエルフさん達よぉ!!!!」

 

「貴様ァ!!!!」

 

「言いたいことはそれだけだ···っと!」

 

遂にノアに対してリヒトがキレたが、それよりも先にヴェットが動き、ノアへと突進してくる。

 

「リヒトを侮辱するのならば容赦はしない」

 

「向こうだって散々こっちを馬鹿にしたんだ、これくらい言い返さないとフェアじゃないだろうが」

 

そう言ってノアは頭上で斧をブンブンと振り回す。

 

「その力で我の鎧を砕けると思うなよ···下等生物が···!」

 

「そんな事···やってみなきゃ分からねぇだろうが···!」

 

ヴェットの突進してきたタイミングに合わせてジャンプし、一回転して頭上から斧を振り下ろす。

 

「···!」

 

斧の刃がアーマーに触れた瞬間に亀裂が走り、ライノセラスアーマーはそのまま砕け散った。

 

「よし!」

 

思わずガッツポーズをしたノアだったが、直ぐに次の問題に直面することになる。

 

「ほぉ···少しはやるようだな」

 

「舐めてもらっちゃ困るね···こちとら魔法騎士団の一人なんだ、これくらいやって見せないとな···!」

 

一方、ファナと戦っていたノア(分身体)は次々と繰り出されるサラマンダーの火炎弾を炎魔の剣で吸収しつつ、オニオンソードで斬撃を飛ばして攻撃を繰り返していたが、全て回避され互いに膠着状態となっていた。

 

(キリが···ないな···)

 

このまま戦いが長引けば、オニオンソードの魔力で作られた自分の身体が魔力切れで消失し、そうなった時に直ぐ様本体へと襲い掛かるであろう事は分身体であるノア自身も理解していた。

 

(仕方ない···!)

 

少し思案した後、ノアはオニオンソードと炎魔の剣を魔導書に戻すと、また別の剣を取り出す。

 

《”龍”属性武器 ”帝具“ 『悪鬼纏身』インクルシオ》

 

直刃の片手剣で、特徴としては柄に千切れた鎖がついている剣だ。何処に龍属性要素があるかというと、

 

(何だ···あの”剣“は···!?)

 

リヒトはノアが取り出した剣 インクルシオに言い表せない恐怖を感じ取っていた。

 

するとノアは剣を地面に突き刺すと、大きく息を吸い込み、

 

「インクルシオォォォ!!!!!」

 

と、武器の名を大きく叫んだ。

 

するとノアの背後にはガイナ立ちをした白い巨大な鎧が現れ、ノアの身体に合ったサイズになると彼を包むようにして顕現する。

 

「···よし···!」

 

そこには、先程の鎧を身に纏ったノアがいた。

 

「······」

 

ファナはそんなノアに興味など感じないようで、無言でサラマンダーに攻撃を命じる。

 

「!」

 

ノアが反応したときには既に彼の眼前まで火炎弾が迫ってきていた。

 

「先ずは一人···!」

 

これで一人片付いた。そう思ったファナだったが、

 

「おいおい、釣れないねぇお嬢さん。」

 

「!···嘘」

 

「いやいやホントだよ。まぁ、さっきのは間一髪って所だったけどね」

 

 

声の主は言わずもがなノアであろう。しかし、声はするも姿が見えず状態である為、ファナは自身の周囲を見回しつつ警戒を続ける。

 

「どこ···!?」

 

「教える理由ないだろ、あんたは敵なんだから」

ノアがそう言った瞬間、ファナは自身の右側から攻撃を受けてしまう。

 

「···!?」

 

見えていないにも関わらずダメージがある。一体どうやってノアは自身に攻撃を当てることができたのだろうか?とファナは思うが、分からない様子。

 

「何が起きたか分からないって顔だな」

 

「!?」

 

何処からともなくノアの声が聞こえる。

 

「まぁ、無理もないよな。俺の姿が“見えないから”だよなぁ!」

 

「くっ···!」

 

そして、何が起こっているか理解出来ないファナは、そのままガードするような体制になるが、ノアの猛攻は止まらない。

 

「うおっ!?」 「くっ···!」

 

ヴェットとファナは、互いにノアからの猛攻になす術無く、されるがままとなっていた。

 

そして、戦いの終わりが近付こうとしていた。

 

「「終わりだ···!」」

 

「しまった···!」 「····!」

 

ヴェット達が気付いた時には、ノアが使用している武器達が五芒星を描くように二人を囲んでいた。

 

そして、ノア達は互いに走り出し、五芒星を描くように二人に斬撃を叩き込む。

 

「ぐああっ!」 「きゃああ!」

流星連撃斬(スターダスト・ビーティング)!!!」

 

「これで···終わりだ――――!!!」

 

最後の一撃が決まる。その瞬間、

 

「「は···!?」」

 

あと少しで倒せたという所で、一筋の光がノア(分身体)を貫いた。

 

光の根源を辿ると、リヒトが自身の魔法を発動していた。

 

「我が友の魔導書、返してもらおう。」

 

「くっそ、多対三かよ!?」

 

その後、何とか奮迅するも、相手は三人もいる為なす術なく一方的にやられてしまい、ヤミの近くに吹き飛ばされてしまう。

 

―――――――――――――――

 

そして、最初に記述した通り全員ボロボロになっていた。

 

「くっそ···動け···!」

 

ノアは何とか身体に力を込めようとするも、動かない。

 

「ぐ···!!」(レベルが違い過ぎる······!!)

 

「ヤミ団長オレも···!!」

 

「そこ出んじゃねー!!!」

 

アスタがヤミを心配してか自分も戦おうとするがヤミに制止される。

 

「まさか俺の心配してんのか?100年はえーな···そこで見てろ」

 

ヤミはリヒト達を睨むと一言、

 

「俺が今此処で限界を超えるのを···!!」

 

「···無駄だよ···彼らは一人一人が魔法騎士団団長より強い···!!」

 

「――ヤミ団···」

 

アスタの呼びかけと同時に、ヤミ達の眼前に突如として現れた空間魔法。そしてそこから飛び出す“茨”・”水銀“そして“斬撃”の攻撃。恐らくは魔法だろうとその場にいた全員が察した。

 

「···え···!!?」

 

そしてそこには、

 

「団長より強いって···??試してやろうかぁ···!?」

 

「···あ〜〜〜〜〜〜あ···もう少しで俺の何かが覚醒しそうだったのに···何してくれてんのこの腐れ縁団長共」

 

「その(ざま)でよくそのような言葉が口から出るな···貴様はいつか私が処刑してやるから首を洗って待っていろ異邦人」

 

「何だテメー変な前髪しやがって」

 

「面白そーな戦い(こと)やってんじゃねーかヤミィィ、ちょっと混ぜろや···!!」

 

三人の魔法騎士団団長が救援へとやってきたのだった。

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