ノアの看病
『白夜の魔眼』襲撃事件から数日が経ったある日の朝
「あ~頭、痛い....。」
この物語の主人公 ノアは風邪を引いてしまったようで、現在自室で休んでいた。
この日は丁度休暇だった為、任務に支障をきたすことは無かった。
「やっぱ原因は...あれかな?」
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昨日のこと。
「よし、早速だが始めてくれ。」
「......」
ノアは、ノエルの魔力コントロールの修行に付き合っていた。
現在は、ノエルの魔法 《海竜の巣》を拘束魔法に転換出来ないだろうか?...というノアの提案で、《海竜の巣》を発動し、ノアの拘束を行っていた。
しかし、
「...ダメ、やっぱり出来ないわ。」
「う~ん...結構いい線いってたと思ったんだがなぁ...」
ノア曰く、
かれこれもう2時間は経過していた。
「やはり相手に
そうやってノアはブツブツと独り言を呟いてノエルの魔力コントロールに付き合うのだった。
だがその時、
「あっ!?」
ノエルの集中力が途切れてしまい、《海竜の巣》の中にいたノアに水が溢れてしまう。
「......」
「ちょっとノア、大丈夫...!?」
「ああ...まぁ、取り敢えずは...」
全身ずぶ濡れになってしまったノア。
「ノエル、今日のトレーニングは終了だ...練習内容はまた考えておく...それじゃ、また後で。」
これ以上続けてもノエルの集中力は途切れたままだと判断したノアはトレーニングを此処で切り上げるのだった。
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その数時間後、ノアはマグナとペアを組んで任務へと来ていた。
「ふ....ふあっくしゅん!!!」
「どうしたノア、風邪でも引いたか?」
ノアのくしゃみに対してからかうマグナ。
「別に、何でもないですよ。」
マグナのからかいを軽く流し、任務へと来ていたノアとマグナ。
その日は難なく任務を完了させ、アジトへと戻った訳だが....
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「それで、次の日の今日...遂に熱をだしてしまった訳か...」
思い出して直ぐ、自己嫌悪するノア。
「迂闊だった.....昔から風邪引かないから、これぐらい大丈夫だと思ったけど...普通、着替えたりしないと風邪引くよな....」
ハァ、と深いため息を溢して天井を仰ぐ。
(今日一日....安静か、全く、嫌な休暇の過ごし方だ....)
そんなことを考えていたが、暫くすると眠りにつくのだった。
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「......んァ?」
部屋の中から物音が聞こえる。
その音でノアは目を覚まし、部屋を見渡す。
「お、起きた!?」
「......」
物音を正体を知ったノアはジト目になり、呆れた様な表情になる。
「何やってんの......ノエル。」
物音の正体はノエルであった。
「べ、別に....私のせいであんたに迷惑かけたからとか...そんなんじゃないからね!」
「.........」
何というツンデレ、でもそれは俺ではなくアスタに対して言うべきでは?
と思ったが、今は黙っておく事にした。
「ハァ.....あのな、ノエル...これに関しては俺に非があるんだから別にお前が責任感じる必要はない筈だ....それと、そのツンデレは俺でなくアスタに対してしてやれ。」
「な.....////」
ノアがそう言った瞬間、ノエルの顔は一瞬にして真っ赤になってしまう。
「ななな、何で私があんな馬鹿スタと....」
「いや、隠してるつもりかもだけど...俺にはバレてるからな?」
そう言うと更に顔を真っ赤にしてしまい、
「べ、別に...そんなんじゃないから!...そんなんじゃないから~~~~!!!」
「あ、オイ!....行っちまった.....さて、」
周囲を見渡すと其処には散乱した洗面器やタオルなどの道具類。
「片付けないとだけど...動けないし....」
ノエルの相手をしただけで余計に熱が上がってしまったのか全身に痛みと悪寒を感じている。
「......寝るか。」
今は気にせず、兎に角休もう。それだけ考え、再び眠りにつくのだった。
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『何故だ!』
『何故お前だけが生き残った!』
『お前さえ...お前さえ死んでいれば、アイツは!!』
誰だ?
『お前がアイツの代わりに死ねば良かったんだ!!!』
何故、俺にそんなことを言う。
『お前は生きてる価値すらない。』
明らかに自分に降り注がれる呪詛の声。
謂れの無い誹謗中傷の雨あられ。
ノアはそれを暗闇の中で聞き続ける。
『恥さらし!』
『死ね!』
止めろ...
『落ちこぼれ!』
止めろ......
『お前なんて....』
止めろ.........
『お前なんて、消えてしまえ!!!』
止めろ!!!!!!!
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「ハッ!」
目が覚めるともう夕方。どうやら目が覚めたらしい。
「何だったんだ....あの夢。」
夢の内容を事細かに覚えているらしく、思い出すだけで気分が悪くなる。
(取り敢えず、水でも飲むか....)
そう思い、ベッドから身を乗り出すと、
ムニュ、と何か柔らかいモノを掴んだ。
「ムニュ?」
聞き覚えの無い擬音に首をかしげ、音のした方に目を向けると、
「んうう...」
二つの大きな双丘が其処にはあり、何故かミモザがいた。
「.........は?」
突然の出来事に思考停止するノア。
何故、自分のベッドで寝ているのか?等々色々と言いたいことはあったが、最初に出てきた言葉は...
「か...風邪が移るだろうが!!!」
だった。
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「それで、何してるんですか...ミモザさん?」
ジト目になりながらミモザを起こし、理由を尋ねることにしたノア。
「...何って....人肌でノアさんを暖めていたんですのよ。」
悪びれるどころか、恥ずかしがる素振りすら見せないミモザ。
あれぇ~俺が間違ってるのかな?と思ったが、それよりも気になった事が一つ。
「...そういや何で『黒の暴牛』のアジトの場所、知ってるんだ?」
「『黒の暴牛』のローブを纏った男性に教えて貰いましたわ。」
「...因みに、その人の特徴は?」
ミモザにアジトの場所を教えた人物が気になって訪ねてみた。
「そうですわね...茶髪で私に対して「お茶しよう」と申されておりましたわ。」
(ひとりしかいねぇ....)
ミモザの言葉で誰が教えたのか直ぐに分かった。
(あの女好き....)
教えた人物がフィンラルだと分かった途端、お礼をしようとした考えが一気に無に帰した。
だが、それよりも今は、
「?」
ミモザに対して言いたいことができたノア。
「...いいか、ミモザ...お前は男性に対してこういうことをしては駄目だ。」
互いにベッドの上で正座しているノアとミモザ。
「...何故ですの?」
「何故って....そりゃ....その...」
男の理性が焼き切れるから、なんて言えないノア。
「...兎に角、今後はこういうことをしては駄目だ。」
「...そうですか?ですが、私は子供の頃よくお母様にこうして貰いましたわ。」
菩薩のごとき笑顔でそう言うが、
「それは...同性であり、親族という条件が当てはまって初めて成立する事なんだよ。」
そう言うも、
「でも、私がしてあげたいと思ったことですし...それに、」
「それに?」
「私、ノアさんになら全てを差し上げても良いと思ってますわ。」
「...../////」
突然そんなことを言われてしまったノアは赤面し、固まってしまう。
素なのかそれとも天然なのか分からないミモザの発言にドキドキし、体温の上昇を感じるノア。
「他の男に、そういうこと...言わない方が良いぞ。」
「ええ、私ノアさんにしか言いませんわ。」
「......」
笑顔でノアに微笑みかける姿は、ノアにとって、何よりの治療薬
だと思った。
後日、ミモザのお陰か風邪は完治し、ノアは益々ミモザに感謝しないとな と思うのだった。