「寒っ」
季節は冬 外はチラチラと雪が降りそうなほど寒くなっている。
この日、ノアはミモザと王都で待ち合わせをしていた。
そう、いわゆるデートである。
因みにデートの約束を取り付けたのはミモザである。無自覚天然タラシのノアにそんな事が出来るとはとても思えないからである。
「なんか今馬鹿にされた気がする。」
おっと、これは失礼···さて、何故二人がデートをすることになったのか話していこうと思う。
――――――――――――
数日前のこと···
「あの···ノアさん。」
「ん?何だミモザ?」
『白夜の魔眼』に攫われたノアとアスタ。彼らが魔法帝と共に帰還して来た数日後、ミモザはノアに近付き、話し掛けてきた。
「数日前の事ですが···」
「?」
その時はミモザが何を言ってるのか分からなかったが、ノアは直ぐに気付いた。
「あぁ、叙勲式の事か···」
「はい。」
ミモザは静かに頷き、アスタがミモザの返答を待っていると
「その···私のこと···庇ってくれてありがとうございます···!」
ミモザは申し訳なさそうにノアに頭を下げた。
「···」
ノアは何故そんなことをされるのか、分からなかった為疑問符を頭に浮かべていた。
「気にするな···あの時はミモザの頑張りが無為にされてしまう。それだけは駄目だと思ったからそうしただけだ。」
と、言い放つノア。
しかし、
「いいえ!それでは私の気が済みませんわ!」
「!?」
突然大声を出してノアを否定したミモザに、ノアは驚愕し、絶句してしまう。
「す、済みません···突然大きな声を出して···」
「いや小さい小さい。なんでさっきと反比例して声小さくなってんの···」
ハァ、とため息を漏らしノアは空を見上げる。
(思えば、今まで生きてきてお礼を言われたのなんて···アイツらだけだったな。)
アイツらとは、アスタ達を含めた子供達のことである。
(人から感謝されるのって···やっぱり良いな。)
人の暖かさに触れ、胸の辺りが熱くなるのを感じたノアはフッ、と笑みを浮かべてからミモザを一瞥する。
「!?···///」
ミモザはノアに見つめられ、驚いたあとに頬を紅潮させモジモジしだす。
「?」
ミモザのその行動の意味が分からなかったが、取り敢えずミモザが照れていることだけは理解したノア。
「···分かった。」
「···!」
ノアがそう言うと、ミモザの表情はパアアッと次第に明るくなっていった。
「ミモザが俺に恩義を感じているのは分かった···でも今回俺は『白夜の魔眼』に攫われて心配をかけた。」
「い、いえ···それは···」
ノアに非は無い事はミモザも理解していた。あの時、ノアは『白夜の魔眼』の一人と交戦し、その後気絶はしたがその後直ぐにアスタ達の元へと駆けつけた為、疲労が重なり···その結果、アスタと共に攫われてしまうという失態を犯してしまった。その事でノアはミモザに対しても騎士団全員に対して責任を感じていた。
「だから···心配させたお詫びにミモザの頼みを一つ聞くよ。」
「え···」
突然の提案にミモザは一瞬、時が止まったような気がした。
「あ〜と言っても何でもって訳にはいかない···俺の出来る範囲での話だ。」
そう言うと、ミモザは少し考え、
「な、なら···次の休暇は私に付き合ってくださいまし!」
「え?」
ノアに対してそう強く言い放ったが、直ぐに自分が何を言ったのか理解し、ノアから顔を背けた。
(わ、私ったら何を言ってますの――!?)
今の誘い文句は完全にデートのお誘いである。それに気付いたミモザは自身の顔が次第に赤く、熱くなるのを感じていた。
(今の言い方だと、流石のノアさんもデートのお誘いだと気付いてしまうのでは···)
「あぁ、いいぞ。」
「え」
あっさりと承諾したノアにミモザは戸惑ってしまった。
「···もしかして、嫌だったか?」
「い、いえいえ!!是非、お願い致しますわ!!」
「お、おう···宜しく頼む···?」
ミモザの圧に押され、そう言うノアと裏でヨシッ、と拳を握るミモザ。ミモザは完全にキャラ崩壊している。
(買い物くらいなら何時でも付き合うんだけどなぁ···)
とその時ノアは思った。どうやらデートのお誘いだとは気付いていない様子。
彼がミモザの想いに気付くのは一体何時になるのだろうか···
――――――――――――
時は戻り、王都 中央区
都市の中心にある噴水の前でノアがミモザを待っていた。
(予定時刻よりも早く来ちゃったな···)
彼は予定時刻よりも30分も早く辿り着き、この寒空の下···ミモザを待っていた。
その時、彼に近付いて来る足音が一つ。
(来たか。)
どうやら、待ち人が来たのだとノアは思い、足音の方へと振り向く。
「予定時刻よりも早いなミモ···ザ···」
そこに居たのは···
「お、お待たせ···致しましたわ。」
軽く化粧をし、髪を後ろに束ね、リボンを付けており笑みを浮かべ、こちらを見つめているミモザがそこに居た。
「あら?ノアさん早いですわね。」
「·········」
「ノアさん?」
「あ、あぁ···ミモザも早いな。」
どうやらノアはミモザの普段とは異なる装いにドキドキしているようだ。
(どうした俺!?なんで何時もよりドキドキしてるんだ!?)
普段よりも綺麗なミモザにドキドキしっぱなしのノア。ミモザは嬉しそうにノアを見て笑みを浮かべる。
「ノアさん、行きましょう。」
「え?あ、あぁ···」
ミモザに手を惹かれ、ノアは彼女に着いていく。一方のミモザはというと、
( (恐らくですが、ノアさんは私の気持ちにまだ気付いておりませんものね。)
正解ですミモザさん。
((でしたら、今日のデートで少しは私の事を意識してもらいたいですわ。)
ミモザはノアに少しでも意識してもらおうと今日は張り切って普段はあまりしない化粧をし、髪型も変えて今日のデートに望んで来ているようだ。
因みに、ミモザがノアの事を好きだと気付いた話は直ぐにでも出すのでもう少しだけお待ちください。
一方のノアも、ミモザを意識してしまい普段よりも緊張してしまっている。
こんなんでホントに関係が進展するのだろうか?(素)
――――――――――――――
「こちらですわ。」
ミモザに連れられて来たのはとある雑貨屋。
「へぇ、色んな物が売ってるんだな···」
なんとか平静を装おうとしているが、声が震えてますよノアさん。
「もしかして、こういったお店は、お嫌いでしたか?」
「い、いやいやいや!雑貨は好きだよホント、ホントに···!」
ミモザを意識し、ドキドキしっぱなしのノア。
( (ノアさん、私の事···意識してくださってるのね···嬉しいですわ///)
それを見てミモザは意識してくれてるのだと頬が綻ぶ思いであった。
「さ、さて何が売ってるのかな〜」
何とか誤魔化そうとして店内へと入っていくノア。
「あっ、ノアさん···待ってくださいまし。」
そんなノアをミモザは追いかける。
「ん?」
そんな時、ノアの目にある商品が飛び込んでくる。
「これは···」
それは、ハートを2つに割ったような形をしたネックレスであった。
( (コレ···いいんじゃないか?)
ノアはちょうど時期が近いクリスマスのプレゼントを考えていたところであった。と言っても送る相手など教会の子供達以外にはミモザしかいないのだが···
「?どうかされましたかノアさん?」
「いや、別になんでもないよ!?」
何とか誤魔化そうとして、ミモザにそう言い放った。
「?」
ミモザはなんのことだか分からなかったが、ノアに意識してもらえるようにと考えることにした。
――――――――――――――
その後も色々と見て回り、気が付いた頃には日も沈み始めていた。
「もうこんな時間か···」
「そうですわね。」
二人もそろそろこの時間が終わるのだと感じ始めていた。
「そろそろ帰らないとな···っと、その前に···」
「?」
ノアはミモザに、先程の雑貨屋で見つけたネックレスを手渡した。
「クリスマスプレゼントだ。気に入ってくれたら···その、嬉しい。」
普段よりも語彙が少なくなったノアだが、ミモザはそんな事に気付かず。ただただノアのプレゼントが嬉しくて堪らなかった。
「あ、ありがとうございます。」
「もう一個、ペアになってるのも買ったから···これは、いつかミモザに好きな人が出来たらあげてくれ。」
「え···!?」
ノアのその言葉に、ミモザはショックを受けた。
「な、何故···そのような事を···!?」
「いや、だって俺は下民でミモザは貴族だ。もしもの話、ミモザが俺を意識してくれてるのだとしても俺はミモザには釣り合わない。だから、それはミモザと釣り合う人にあげてくれ。」
どうやら、ノアもなんとなくミモザの事を好きになっているらしい。が、自分とミモザでは立場が違うのだと諦めようとしているようだ。
「じゃあ、俺はこれで···」
そう言ってノアはアジトへと帰ろうと踵を返したところで、
「···え?」
ノアの裾をミモザが掴んでいた。
「どうして···そんなことを言われるんですか···?」
「ミ、ミモザ···?」
「私が好きなのは、ノアさんただ一人です!他の人なんて考えられません!私はノアさんだからいいんです!」
「······」
こんな事を不意に言われてしまい、ノアは赤面してしまう。
「でも、俺は···下」
下民だから.そう言おうとしたが、
「関係ありませんわ!···私はノアさんだけが···ノアさんだからいいんです!」
周囲には人は居らず、二人きりだった為、誰にも聞かれずに済んだ。
流石に雰囲気ブチ壊したくないからね。(作者目線)
「···」
女の子に此処まで言わせたにも関わらず、ノアは恥ずかしさのあまりに顔を、背けてしまう。
「本当に、俺でいいのか?」
恐る恐るノアはミモザを見て、そう訊ねる。
「はい!私は魔宮で魔力を分けて下さったあの時からノアさんが好きなんです。」
「···///」
何時もならミモザが照れるのだが今日は珍しくノアが赤面してしまう。
「分かった。なら、俺ももう我慢しない。」
「え?」
ノアはミモザの肩を掴み、面と向き合う形になる。
「ミモザ。」
「はい。」
「俺は···お前が好きだ。」
「···///」
「俺と、付き合って欲しい。」
ノアの告白に対してミモザは、
「···はい、私で宜しければ。///」
赤面しながらOKを出し、ノアと付き合う事にしたミモザ。
「そうか···ありがとう。」
ノアが嬉しそうに笑みを浮かべると、ミモザは赤面し、顔を背けてしまう。
「や、やっぱり恥ずかしいですわ///」
「?どうして?俺達、付き合うことになったんだからこれぐらいの距離は当たり前じゃない?」
「で、ですが、」
「まぁいいや···さてもうそろそろ暗くなる騎士団のアジトまで送るよ。」
そう言って、『金色の夜明け』まで送ろうとしたところ、
「その前に、ノアさん。」
「?何?」
「コレ、付けてくれませんか?」
ミモザはノアにプレゼントされたネックレスを両手に抱え上目遣いでノアを見つめていた。
「···分かった。」
そう言ってノアは、ミモザからネックレスを受け取り、真正面からミモザにネックレスを付け始めた。
(···ち、近いですわ///ですが、これは当たり前の事。なんですのよね。)
「ほら、付け終わったぞ。」
ミモザがそんな事を考えている間に、ノアはネックレスを付け終えたようだ。
「さて、残りは俺が···」
そう言って自分でネックレスをつけようとした時、
「あの、私に付けさせてくれませんか?」
「?···別に良いよ。」
ミモザの要求を聞き、ノアは彼女の頼みを聞き入れた。
「では···」
そう言うと、ミモザはノアと同様に顔前からネックレスを付け始めた。
(む、胸が···柔らかい···そして息が苦しい···)
ミモザの大きな胸が、ノアの顔を覆い隠すようにしてしまっていた為、ノアは息苦しさを感じていた反面、もっとこの感覚を味わっていたいと思った。
「はい、付けましたわ。」
「···ありがとう、ミモザ。」
「いえ、それよりも私と付き合って下さりありがとうございます。」
「···」
「···」
「フ」
「フフ」
『アハハハハ!!』
二人は互いのやり取りがなんだか可笑しくなってしまい、つい笑ってしまった。
やっと互いの気持ちを言い合ったノアとミモザ。
二人はこれからも付き合い続け、幸せになるのだろうと互いに思い合うのだった。
―――――――――――――
「さて、読者の皆さん。楽しんでくれたか?主人公のノアだ。」
「ヒロインを務めさせて頂いておりますミモザですわ。」
「今日はクリスマス・イブという事で作品を投稿させてもらったらしいが、皆···楽しんでくれたか?」
「皆様も、今日はクリスマス・イブという事で是非、楽しんで下さったと思いますわ。」
「今はコロナウイルスが世界中で蔓延してるみたいだが、俺達二人はいつかコロナウイルスが世界から無くなる事、皆がこの危機を乗り越えられる事を願ってるぞ。」
「皆様も、身体に気をつけて毎日を過ごしてくださいませ。」
「さて、今日はこれでお別れとさせてもらうぞ。」
「では、ノアさん。」
「あぁ。」
『せーの、メリークリスマス!!!』