ゼロのネクロマンサー   作:結城マサヒト

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使い魔召喚


―――どうして、私には魔法の才能が無いんだろう。

 

認めたくなんかない、当然だ。

周りからなんと言われようと、魔法の才能が無いなんて認めた事はない。

この学院の誰よりも、必死に勉強をした自信がある。

理論を修め、スペルだってほとんどの物を暗記した。

でも結果は……一属性の魔法である"ドット"はおろか、メイジなら誰でも使える、基本の"コモン・マジック"ですらほとんど成功しない。

それどころか失敗したら通常ではおこりえない爆発を起こしてしまう未熟者。

 

その上、神聖にして絶対のもの、生涯のパートナーたりえる存在を呼び出す春の使い魔召喚の儀。その儀式に用いる≪サモン・サーヴァント≫を既に2桁以上失敗している。

 

 

「ゼロのルイズ!いつまで待たせるんだ!」

「どうせ何回やっても同じだろ!もう諦めろ!」

「もう失敗回数が10回は軽く越えてるじゃない!」

 

 

―――うるさいわね。

そう強く念じて自らの弱気を心の奥に押し込める。

たとえ心の中では僅かとはいえ認めていても、自らが諦めるわけにはいかない。

そんな事をすれば、ヴァリエール家の恥を上塗りしてしまうし、なにより私の心が折れてしまう。

 

 

「コルベール先生!お願いします!!もう一度やらせてください!」

 

祈るような気持ちで振り返り、やや離れたところで見守る男性教諭にそう訴えた。 

毛根の後退が顕著に現れる男性教諭、コルベールはうーんと唸る。

本来の儀式終了予定時刻は大幅に過ぎており、次の予定を押しているのだ。生徒達の不満の声も大きくなっている。

しかし、コルベールは眼前のピンク髪の生徒が、恵まれない素質に挫けず、誰よりもひたむきに努力している事を知っていた。

 

 

「わかりました、ならもう一度頑張ってみなさい。ただし、予定も押しているので次が最後です。次でダメなら日を改めるように。」

 

「…はい!ありがとうございます!」

 

なんとか教師(コルベール)の許可を取り、正面へ向き直って呼吸を整える。

――例え、どんな弱い使い魔でも構わない。ワイバーンやドラゴンのような生物ではなくていい。ただ、私だけの使い魔を、どうか―――――

祈りを込めつつ、再び詠唱を声に乗せた。

 

 

 

 

「―――――っ……!」

 

詠唱を唱え終わると、ドン!という爆発音と共に、白煙があがる。

周囲からは、「またか」「またゼロがやったわね」という言葉が耳に入る。

でも、私は僅かな期待を込めて煙を見つめる。

今回の≪サモン・サーヴァント≫については、爆発は今回が初めてだからだ。

失敗なんじゃないかという気持ちは、心の奥へと押し込めて。

見つめていると、白煙が徐々に晴れてゆき―――

 

 

仰向けで倒れている、平民らしき男の姿があった。

 

 

「おいおい!ようやく召喚出来たと思ったら、平民を召喚したぜ!」

「流石ゼロのルイズだ!」

「しかもあれ、さっきの爆発で死にかけてるんじゃない?さっきから動かないけど。」

 

 

使い魔が平民――という事実に意識が止まっていたけれど、死にかけと聞いて慌てて様子を見るが、確かに動いていない。

 

「ちょっとあんた!大丈夫!?」

 

慌ててかけよって体を揺すってみると、僅かに呻き声が聞こえ、少しほっとする。

早く治療させないと――と考えていると、いつの間にか教師(コルベール)がすぐ隣に来ており、素早く怪我の様子を確認していく。

 

 

「――ふむ、あの爆発に巻き込まれたにしては外傷が見当たらない。しかし……何故体がやや透明がかって見えるのだ?」

 

そう言われてやや冷静に見てみると、確かにどこか薄い気がして、まるで消えかかっているといった印象を受ける。

 

「……もしかして、≪サモン・サーヴァント≫で喚んだ事が関係しているんでしょうか……?」

 

「うーむ……そうかもしれないね。なにしろ前例が無い事だ。人間を召喚した弊害かもしれない。」

 

コルベール先生がうんうんと呻り、ふと思い出したように口を開く。

 

「ああ、ミス・ヴァリエール、彼に≪コントラクト・サーヴァント≫を。召喚が安定していない事が原因なら、それで治るかもしれない。」

 

 

「え……?でも、ミスタ・コルベール、彼は平民の人間ですよ!?」

 

「しかし、決まりだよミス・ヴァリエール。2年生に進級する際、君達は『使い魔』を召喚する。それによって現れた『使い魔』で、今後の属性を固定し、専門課程へ進むんだ。そして何より、1度呼び出した『使い魔』は変更する事が出来ない。何故なら神聖な儀式で、伝統だからだ。」

 

人間を、しかも平民を『使い魔』に……?何でも良いとは思ったが、これは無いんじゃないだろうか。これは例外になるんじゃないの!?と思ってコルベール先生に文句を言おうとするが、コルベール先生に、「やっと成功したんだろう?」という意思も含まれているように感じ、口を噤む。

 

 

「……わかりました。」

 

ようやく成功した『使い魔』なのだ。ほんの少し、いや多少、かなり心情的にも外聞的にも問題があるとはいえ、このまま消えてしまって、次の『使い魔』が呼び出せなければもっと問題だ。それに、勝手に呼び出して放置してもし消えてしまってはという後ろめたさもある。

どうせ『契約』するなら、相手の意識が無い間の方がまだやり易いだろうと考え、詠唱を行う。

 

 

「……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 

詠唱を終え、杖を目の前の男の額に乗せる。そして唇を男に重ねてから、ゆっくりと離す。

 

 

「……終わりました。」

 

「ふむ、≪コントラクト・サーヴァント≫はきちんと出来たね。」

 

 

「相手がただの平民だから『契約』出来たんだろ」

「高位の幻獣だったらそうはいかないだろうな」

 

 

コルベール先生は嬉しそうに言ってくれるが、何人かの生徒は囃したてるように言ってくる。

 

「うるさいわね!わたしだってたまには上手くいくわよ!」

「ほんとうにたまによね、ゼロのルイズ。」

 

反論に嘲笑を重ねる生徒へ言い返そうとしていると、『使い魔』となった男から先ほどより少し大きな呻き声があがり、慌てて振り返る。

 

「……先生!また呻いていますが、大丈夫なんでしょうか?」

 

「落ち着きなさい、おそらくこれは『使い魔のルーン』が刻まれているだけだろう」

 

そう聞いて使い魔の体を見渡すと、確かに左手にルーンが浮かび上がって来ている。

 

「ふむ?珍しいルーンだな。……おっと、じゃあ皆、教室へ戻るぞ。ミス・ヴァリエールは使い魔を医務室にでも運んで……いや、私が運んでおこう。皆は教室へ戻っているように!!」

 

しばらくルーンを見ながら考え込んでいたコルベール先生であるが、授業時間がもうほとんど無い事を思い出したようで、号令をかける。

……私に運ばせなかったのは、≪レビテーション≫をまともに使えない事を思い出したんだろう。

 

 

「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」

「その平民、あんたの使い魔にお似合いよ!」

 

口々にそう言って周りの生徒たちも、城のような石造りの建物に飛び去っていく。

 

 

「―――はぁ、うまくいかないなぁ……。せめて、私の使い魔も幻獣クラスとは言わないけど、せめて何か特技でもあればいいのに……」

 

残されたルイズも、ため息をつきながら建物へととぼとぼ歩いていった―――

 

 




なんだこの真面目な文章は、たまげたなぁ……。
オリ主が出ないとコメディ風にならなかった不思議。
ストックは無いので書き終わったら順次投稿していきます。(これも今書いた)
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