憐れな敵《ヴィラン》に魂の救済を   作:エキストラ

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ヒロアカの二次で入試から始まるって珍しいのでは?


Opening-オープニング-
立ち塞がった壁


 爆発音が轟く。喧騒が鳴り響く。金属片が辺りに散らばる。建物の瓦礫がそこかしこに散乱している。少年少女が我先にと機械へ向かっていく。機械は近くにいる人間に対して攻撃を行う。まさしく戦場のような空間が広がっていた。しかし、戦場のようであっても戦争ではない。これは実技試験。そう、雄英高校ヒーロー科の入学試験である。

 

 

 

 試験が始まってどのくらいの時間が経ったのだろうか。突然のスタートという合図に対して意味を咀嚼できず、遅れをとる事になった。

 何が何でも合格したかった。ヒーローになることは幼い頃からの夢だったのだ。そのための努力だって積み重ねてきた。そのために何もかも捨てたといっても過言ではない。自分なら雄英高校合格も間違いないと信じていた。自分こそがヒーローになるのだと信じ切っていた。しかし現実は、甘くなかった。

 遅れを取り返そうという焦りと、着実に仮想敵が減っているという緊張感、さらにはそんな環境下での戦闘による疲労、これらは時間すらわからなくなるほどに、自分を追い詰めている。

 そして、薄れていた感覚は時間だけではなかった。気付くまでに時間が掛かった。否、気付く事が遅かったのではない。背後から迫っている存在に対して全く察知する事は出来なかったのだ。

 その存在を理解した時には既に手遅れであった。振り返った時、事態は終わっていた。前方には0ポイントの大型仮想敵がこちらに向かってくる。あまりの大きさにまだ距離があるにも関わらず眼前に迫っているかのように感じられた。自分は落下してきた瓦礫に脚を挟まれ身動きが取れない。もう自分にはどうする事も出来ない。回避する事も、防御する事も、身を守る事は何一つとして出来なかった。

 ただ一つだけ、助けを求める事以外は。

 思わず溢れ出たその言葉は本心からだった。たとえこの場が試験であり、その後治療を受けられると頭では理解していても、その恐怖心は紛れもなく本物であった。

それは単なる弱音である。実際に救援を望んでいたわけではなかった。しかし抑える事は不可能だった。抑えきれなかった。感情と共に溢れ出てしまった。

 

「……誰か……救けて」

 

 いつの間にか視界がぼやけていた。眼が熱くなっていた。頬が湿っていた。もう諦めていた。しかし確かに聞こえた。自分の本心に、弱音に、応える声が。

 

「大丈夫ですよ。僕が救けます」

 

 

  ◇◇◇

 

 

 聞こえた。気づいた。ならば救ける。それを求められて、僕が応えられるなら動かない理由はない。声が届いたことからも距離はそう離れていない。地面には仮想敵の残骸や瓦礫が散らばっているが、それらを最小限避けて走る。助けを求めた声の元へと駆け付けた。そして安心させるために声をかける。

 

「大丈夫ですよ。僕が救けます」

 

 気付いていなかったのか、救ける、という言葉にこちらを向く。その表情には怯えだけでなく疲労の色が濃く見られる。脚を圧迫している瓦礫を持ち上げると重傷ではないが決して軽くはない怪我を負っていた。この負傷ではおそらく一人で移動することさえ辛いのではないか。この窮地を脱したとしても試験を続行できるとは思えない。安全な場所へと避難させる必要があるだろう。

 周囲にはもう受験者の姿はない。あの脅威を目の当たりにして急いで避難したのだろう。つまり他に助けが来ることはない。僕ももう少し離れていたら迷わずこの場から逃げていた。()()()()()()()声が届く範囲に僕はいた。ただそれだけの事である。

 今取ることの出来る選択肢は二つ。一つは負傷者を背負いこの場から急いで離脱する。もう一つは()()()()()()()()。前者の行為のほうが救助活動としては相応しいだろう。だが目の前の人物はそれを受け容れるだろうか。

 

「僕が背負います。急いであれから逃げましょう」

 

 段々と落ち着きを取り戻してきたらしい。その顔には恐怖は消え代わりに羞恥、怒りのようなものが浮かんでいる。

 

「……ふざけるな。誰が……借り……か」

 

 発声もままならないほどの疲労状態で主張している。その眼には強い意志が宿っていた。どうやら自らの安全よりも何よりもプライドを優先したいようだ。これはあくまで試験であり学校側も死人は出さないだろう、といった思考になったのかも知れない。

 このまま一緒に逃げようとしてもこの人はそれを拒絶するだろう。無理に連れて行こうとしても共倒れになる可能性が高い。

 

「わかりました。そこから動かないでください」

「何を……言って……?」

 

 全壊させることは出来ないとしても動きを止める。もしくは別の場所に誘導する。ただ機動力に自信はないため、誘導するにしても少しは破損させなければならない。まず全力で攻撃しその結果で行動を決める。

 

「個性発動」

 

 攻撃のために個性を発動させた。左腕が銀色の鉤爪のような形態へと変化する。あれを止めるにはまだ足りない。より強くより大きくなければならない。心を落ち着かせ集中する。この力は未だに十全に扱えるわけではない。最大解放時には細かいコントロールが効かなくなり、その力をぶつけることしか出来ない。しかし今はそれで十分。

 

「十字架(クロス)最大解放」

 

 イメージする。強靭で巨大な左腕を。

 叩きつける。他者を守るために、助けるために。

 

「十字架ノ墓(クロス・グレイヴ)!!」

 

 渾身の一撃を叩きつけた。巨大ギミックの半分ほどの大きさになった左腕による攻撃は、相手を壊すには足りなかった。しかし、受け止めることはさせない。

 

「はあああああっ!!!」

 

 壊すことは出来ずともバランスは崩させる。行動不能にしなくては意味がない。

 何のためにここいる。どうして逃げなかった。それは助けるためだろう。一度しか口にはしなかったけど、確かに聞いたんだ。だったら助けろよ。そのための僕だろう。

 とても長い時間拮抗しているように感じられたが、実際にはほんの一瞬の出来事だったのだろう。

 巨大ギミックは攻撃に耐えきれずバランスを崩して倒れた。

 それは格好いいものではなかったかも知れない。この救助中にポイントを獲得出来なかったことで試験には落ちてしまったかも知れない。

 それでも僕は満足していた。自分の個性で人を助ける事が出来るのだと証明されたのだから。

 

「僕はなるんだ、全てを救う存在に」

 

 

 

  これは僕が救済者になるまでの物語

 

 




続かない

とか言いつつ続けちゃいます
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