憐れな敵《ヴィラン》に魂の救済を   作:エキストラ

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ヒロインについての感想があったので考えてるんですけど、悩みますね。

クラスメイトの女子って「女の子でヒーロー」なんだから全員「ヒロイン」なんじゃね、という結論に至りました……。

そういうこっちゃないっすよね、はい。


後に起こる大事件の始まり
救助訓練改め敵連合USJ襲撃事件


「ここに飛ばされてくるなんて運がなかったな。てめーらはここで死ね」

 

 ヴィランに襲撃され、そのうちの1人の個性『ワープゲート』により生徒はUSJ内の各エリアに散り散りに飛ばされた。

 その結果、台風などの悪天候による自然災害時の訓練の為のエリア、暴風・大雨ゾーンでアレンと常闇は数人のヴィランに囲まれていた。二人の生徒は幾多ものヴィランの眼と雨風に晒されながらも平静を保っていた。

 

「さて、常闇はどうしますか? この人たちと戦うか、逃げるか。他のクラスメイトを探しに移動するか、先生との合流を目指すか」

「この空間なら俺の黒影(ダークシャドウ)は十全にその力を発揮できる。先生との合流を優先するが相対したヴィランは他の者の障害になる前に倒すつもりだ」

「なるほど……概ね賛成です――」

 

 行動方針を確認された常闇はアレンに自身の考えを伝え、話し合う。会話中もヴィランたちから目を離す事はしない。

 

「――がその前に、少し」

「何をする気だ?」

 

 アレンは常闇に答える事なく一歩、足を前に踏み出す。

 

「なんだ? もう相談は終わったのか。遺言くらいなら聞いてやるぜ?」

 

 ニヤニヤと嘲るようなヴィランたちだが、何故アレンたちの会話中に攻撃を仕掛けなかったのか。それはアレンが十字架(クロス)を発動させ牽制していたからに他ならない。しかし警戒しつつも、相手が高校生になったばかりの子どもと侮っているのか、余裕の笑みは崩さない。

 そこでアレンは口を開く。

 

「あなた達は、まだここに侵入しただけです。罪を重ねる前に投降するつもりはありませんか?」

「おいおい。何言ってんだよ、バカなのか? てめーら殺してそれで終――」

 

 最後まで聞かずにアレンは左腕をかかげ、そのまま下ろす。

 

十字架ノ墓(クロス・グレイヴ)

 

 誰もいない場所に十字架(クロス)を叩きつける。制御可能限界ギリギリで放たれたアレンの技は、道路を破りコンクリートのその下にある土までも抉り出した。その勢いで土砂が立ち上るが雨と強風によりたちまち流される。アレンの一撃を、その威力を見せつけられるヴィランたち。

 

「ご覧の通り軽く振っても、これです。僕の個性は殺傷性がとても高い。なので大怪我したくなかったら投降してください」

 

 80%の力で十字架を使用した事に感情が高ぶるもそれは内心に隠し、アレンは涼しい顔で嘘を交えて言い放った。

 

「ハッ。そんなんでオレたち全員倒せるとでも思ってんのか!?」

「いくらなんでも考えが甘いんじゃねーかぁ? ヒーロー志望のお子様がよぉ?」

 

 アレンと常闇を囲んでいるヴィランたちは結局、唯の1人として降伏する者はいなかった。

 それはアレンの見せた十字架ノ墓(クロス・グレイヴ)を使われても問題ない事を意味している。人数差の有利を疑っていないのか。若しくは――

 

「常闇、気を付けてください。降伏しないという事はさっきの攻撃を凌ぐ方法があると見て――……」

「何も考えてない愚者の可能性もある」

 

 ――そもそも降伏という行為を選択肢に入れてない場合である。複数の手を顔や腕など体中に付けている青年、死柄木弔が率いる敵連合は主犯格を除き、質より量を重視して集められた雑兵。もしこの段階で降伏を選ぶような人間であれば、この場に来る事はなかっただろう。

 ヴィランたちの戦闘態勢を解かない姿にアレンは覚悟を決める。

 

「わかりました。僕は説得を諦めます。なのでそちらも多少の怪我は諦めてください」

「警告はした。応えないのならば暫し眠っていてもらおう」

 

 アレンは発動中の十字架(クロス)を周囲のヴィランを威圧するように構える。常闇も個性を発動させ黒影(ダークシャドウ)を出現させる。

 

「同時に仕掛けんぞ!!」「行くぞ!!」「おらぁあ!!」「やっちまえぇ!!」「死ねや!!」

 

 ヴィランたちは掛け声とともに、各々の個性を発動させ一斉に襲いかかる。

 

十字架ノ墓(クロス・グレイヴ)!」

「薙ぎ払え、黒影(ダークシャドウ)!」

 

 アレンは左腕を右から左へ振り払う事で、常闇は黒影(ダークシャドウ)による攻撃でヴィランたちを吹き飛ばす。直撃したヴィランはその勢いで後ろで控えていたヴィラン諸共近くの建物に叩きつけられ意識を失う。

 

「……あっけないですね。あの自信は何だったんでしょう」

「数による優位性か己の実力を過信していたのだろう。……ここは片づけたが、下手な連携は互いの邪魔になりかねん。二手に別れるか、亜蓮?」

「いえ、目的地は同じですから一緒に行きましょう。戦うときは背中合わせでそれぞれ前方の敵にだけ集中する、とりあえずそうしませんか?」

「……いいだろう。この背中、お前に託すぞ。移動中は俺の黒影(ダークシャドウ)が後方を見張る」

 

 それからアレンと常闇は暴風・大雨ゾーンから出て相澤のところに行くために出口へ向かった。その道中、何度か2,3人のヴィランと数回遭遇したがどれも十字架(クロス)黒影(ダークシャドウ)の一撃で迎撃できる程度でしかなかった。連携が云々と話し合っていたのがまるで無意味なほどだった。

 

「……妙ですね。『オールマイトを殺す』なんて大それた事企んでる割に大して実力もない……」

「俺たち生徒を抑えるための数合わせと言ったところだろうな。おそらく本命は別にいるはずだ」

「だとすると、急いで合流した方がいいですね」

 

 改めて結論を出した二人は足を速め、暴風・大雨ゾーンを後にする。

 

 

 そして、目的地であるUSJの入口付近に辿り着いた。二人はそこで悍ましい光景を目にする。脳を露出させている改造人間――脳無が相澤を俯せに組み伏せていた。相澤の腕は皮膚が崩れている上に完全に骨ごと折られ、顔には地面に叩きつけられた様な傷を負い血を流している。

 あまりの衝撃的な光景に言葉を失っていた常闇は、ふと隣にいるアレンに目を向けた。

 同じく黙っていたアレンだが、そこにある感情は驚愕や恐怖ではなく純粋な――

 

「……何……してんだよ……!!」

 

 怒り。アレンはその感情に身を任せ思考を放棄した。駆け出して接近しながら左腕(クロス)を巨大化させ二人のヴィラン目掛けて全力で叩きつけた。十字架(クロス)は普段の発動状態とは異なり、淡いライトグリーンの光を纏っていた。その途轍もない威力に砂埃が立ち込める。もし仮にアレンが冷静であったならば相澤にも危険が及ぶこのような行動は取らなかっただろう。それほどまでに今のアレンは冷静さに欠けていた。

 アレンの突然の攻撃に驚く常闇。

 

「いきなり何を……! 先生は!」

「……いや、効いてない」

 

 瞬時に死柄木の前へ移動した脳無が片手で受け止めていた。その驚愕の結果により、皮肉にもアレンは少し落ち着きを取り戻した。

 

「おいおい。いきなり攻撃仕掛けてくるなんて、物騒だろ。これだからヒーローは……。自分たちの暴力は正当化するんだ」

 

 呆れたような口調で語りかける死柄木弔。顔を覆っている指の隙間からは嘲るように歪めた眼が覗いている。

 

「脳無にそんなのは効かないんだよ。なんせショック吸収を備えた対オールマイト用の怪人だ」

 

 そこで一度口を閉じ、一瞬思案した様子の死柄木。眼には狂気が映り込んでいる。そして、

 

「そうだ。そのオールマイトがいないんだ。自分の不在が生徒の死を招いたと知ったら、どんな顔をするんだろうな? 脳無、 そのガキ消せ」

 

 死柄木の命令とともに、脳無が跳ぶ。瞬時にアレンの前に移動しその勢いのままに右の拳を振るう。アレンの後方にいた常闇は余波を受けて後ずさる。

 

「そうそう。ガキは黙って殺されてれば……、あ?」

 

 死柄木が脳無の拳の先に目を向けると、そこには十字架(クロス)の前腕部で受け止め持ち堪えているアレンの姿があった。爪をスパイクのように地面に突き立て事で何とかその場で踏みとどまっていた。

 

「……っ!」

 

 個性を発動させている状態のアレンの左腕は怪力と音速を誇る。そんな十字架(クロス)でさえも脳無の攻撃にはギリギリでしか反応できなかった。

 

「……転換(コンバート)!」

 

 その言葉を唱えた瞬間、アレンの十字架(クロス)は淡い光を帯びながら変化した。それまでの鉤爪状だったものが、砲身へとその形状を変えた。左手があった部位は砲口となり、その周りには光り輝く花弁のようなものが放射状に広がっている。

 一連の流れを見ていた常闇は驚きで目を見開いた。

 アレンは十字架(クロス)の構えていた角度を変え、脳無の拳を左方へ逸らす。そして脳無の右肩に砲口を密着さけ渾身の力を込める。ギュイン、と高音が響くのと同時に砲口が輝きに染まる。

 

十字架ノ杭(クロス・バリング)!!」

 

 十字架(クロス)の砲口から放たれたエネルギーが脳無の身体を消し飛ばす。直撃した右肩は抉られ、上腕部から先が力なくダラリ、と下がる。呼吸が荒くなっているアレンは無理矢理口角を上げる。

 

「ショック吸収だろうと、こういうのは効くみたいですね」

「ああ。さすがは名門校の生徒だ。脳無にダメージを与えるなんてな。でも――」

 

 右肩が貫通し大怪我を負っている脳無。だが、その傷は時間が巻き戻されるかのように修復される。アレンはその脅威的な回復力を目の当たりにして呆然とする。自分の力が通用しない強者の存在に顔が強張っていく。額に一筋の汗が伝う。

 

「――無駄なんだよ。脳無はショック吸収()()じゃない、超再生もあるんだ。ガキが倒せるレベル超えてるよ」

 

 その時、死柄木の元に黒い靄とともに黒霧が現れる。

 

「死柄木弔。13号は行動不能にしたものの、散らし損ねた生徒の一人に逃げられました」

「……は? はぁー……何やってんだよ、黒霧。お前がワープゲートじゃなかったらぶっ殺してるぞ……。さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバー……。ああ……()()()ゲームオーバーだ」

 

 死柄木は苛立ちを感じ、両手で首を掻きむしる。だが、何か思いついたのか直ぐに手を止める。

 

「……脳無、そのガキ()()()()()()()。帰る前にこの手で壊してやろう」

 

 死柄木はアレンの腕を掴み持ち上げている脳無の元へ一歩また一歩とゆっくりとした足取りで近づいていく。その足取りはヴィランに脳無に捕らえられているアレンの恐怖心を煽っていた。

 

「その左腕、すごいよなあ。本気じゃないにしても脳無の攻撃に反応して受け止める事もできた。さぞご自慢の個性なんだろうなあ。それを失ったらどんな顔をするのかな、お前は? オールマイト、あいつは生徒のヒーローとしての未来が滅茶苦茶にされたのを知ったらどうするのかな?」

 

 アレンの十字架(クロス)へと左手を伸ばす死柄木。小指から薬指と一本ずつ順に触れていく。楽しくて仕方ないといった様子だが、手で覆われ隠されたその顔には屈折した感情が浮かんでいた。

 

「俺の意思次第でお前の左腕は崩壊する。そうなれば個性は消えヒーローとしての道も途絶える。なあ、どうだ?」

 

 自分では敵わないという敗北感、自分の個性を消されるかも知れない恐怖心、相澤に重傷を負わせた事への怒り、様々な感情がアレンの中で渦巻いていた。全身が、表情が強張っていた。しかし、

 

「……たとえこの左腕を失ったとしても、ヒーローになれないとしても、僕は人を救う事をやめない。だから僕の未来が変わる事は何一つない」

 

 そう言い放ったアレンの眼には覚悟が宿っていた。これだけは譲れないという意地が表れていた。

 

「なんだよ、シラけるな。……まあいいや、オールマイトのヒーローとしての矜持は壊せるだろうし」

 

 期待外れだ、と死柄木の左手の親指、五指の最後の一本が触れる。――……しかし、アレンの左腕には何の変化も訪れない。

 

「――本っ当かっこいいな、イレイザーヘッド……!」

 

 死柄木の個性『崩壊』は発動しなかった。相澤は身動きこそ取れないもののその()で生徒のを救った。相澤の個性『抹消』は凝視している間、視た者の個性を抹消する事ができる。

 

「けども、あと何秒だ、限界が来て瞬きするのは? その時が来たらこいつの左腕は崩れるぞ? プロの矜持を見してくれよ、イレイザーヘッドォ……!」

 

 ヴィランとの戦闘時の度重なる使用、個性が通じない脳無からの多大なダメージ、元々患っているドライアイ、様々な要因が合わさり今の相澤の個性使用可能時間は短くなっている。死柄木の個性を抹消していられるのも僅か数秒。

 

「まだ保つのか……。頑張るねぇ、さすが――」

 

 死柄木の挑発の最中、閉じられていたUSJの扉が吹っ飛んだ。そして現れた、平和の象徴オールマイトが。

 

「もう大丈夫。私が来た!!」

「――――……コンティニューだ」

 

アレンが窮地を脱する切っ掛けとなる人物が登場する。




常闇と個性が使えなかったであろう口田の二人で対処できてたし、口田の代わりにアレンだったらかなり早くヴィラン倒せるよねって考えです。

ちなみに主人公の派手な活躍は体育祭からです。
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