……次の更新は、早くても半年くらい先?
…………。
予め長めに宣言しておくことで多少更新の間隔が空いても、むしろ早かったじゃん、となってしまう効果を狙った合理的虚偽……。
すみません
USJ内の水難ゾーン付近で3人のヴィラン、死柄木と黒霧、そして脳無と一人のヒーロー、オールマイトが向かい合っている。
オールマイトの近くにいた生徒らがその場から離れると同時に、オールマイトもまた動き出した。接近しつつ腕を引いて身体の捻りを加えた拳を脳無へ突き出す。
対して脳無は何の構えを取ることもなく、腹部でオールマイトの拳を受け止めた。脳無は両腕を広げて掴みかかろうとするが、オールマイトは一歩後ろに下がり仰け反るような体勢で回避。そして、オールマイトはそのまま脳無の腕を掴み抑える。
オールマイトはここに来るまでに制限ギリギリの約3時間の活動をした事で、マッスルフォームを維持する事が困難な状態である。脳無が天敵である事を差し引いても苦戦していた。
「なるほどッ……! ショック吸収にこのパワーとスピード、私を殺すというのもハッタリではないようだね!」
「ああ、そいつの身体能力はあんたに匹敵する。耐久力でいえばショック吸収の分、上回ってるよ。なんせ殴る蹴るが効かないからね。ダメージを与えたかったら、肉をゆっくり抉り取るとかオススメするよ」
「……おいおい。いくらなんでもそれは、……誘導が、あからさま過じゃないか?」
オールマイトは脳無を抑えつつも死柄木や黒霧を常に視界から外れないようにしていた。黒霧や死柄木から何をされても対応できるように。
「やっぱり警戒されるよな……。ガキどもから俺たちの個性を聞かされてたし……はあ」
死柄木はオールマイトと脳無の戦闘に口を出しつつ計画通りに進まない事を察する。そして避難している相澤や蛙吹、峰田たちの後方で後ろ髪を引かれている緑谷を指差して、命令を出す。
「黒霧、さっき俺を殴ったあのガキ拉致ってこい。人質にする」
「ええ。わかりました。今ならば、可能ですね」
この場において黒霧を抑える事の出来るヒーローはただの一人もいない。13号は既に黒霧との戦闘で負傷し少し離れた場所から動く事が出来ない。イレイザーヘッド、相澤は複数のヴィランとの連戦で体力を削られ、脳無により一人ではまともに動けない程の重傷。そして今、オールマイトは脳無と戦闘が拮抗状態に陥っている。
黒霧は黒い靄を緑谷たちへと伸ばす。オールマイトが阻止する為に動こうとするが、脳無がそれを許さない。オールマイトの動きを阻害する為だけに立ち回りになる。
「……くっ! 早く、避難するんだ!」
オールマイトの声も虚しく、黒霧は緑谷へと迫る。
「ふっ、もう遅いですよ」
迫ってくるヴィランに緑谷は対抗策が思い浮かばず、立ち竦む。
黒霧が緑谷を捉えるまで残り僅かというその時、
「退け! 邪魔だ、デク!!」
爆豪が声を張り上げながら両の掌を爆発させて飛び出した。そのまま黒霧の背後から右手で首を掴み、地面に押し付けるように抑え込む。
「お前、靄で覆えない箇所があるんだろ。物理無効人生なら『危ない』なんて発想はねえ筈だからなあ!」
「かっちゃん……!!!」
思いもよらぬ救援に驚く緑谷。だがクラスの上位、どころかプロでも通用する程の個性やタフネス、戦闘力を持つ爆豪が自力でヴィランを突破しこの場に戻ってくるのは必然であった。
そして援軍は爆豪一人ではない。オールマイトと取っ組み合っていた脳無は突如、足元から冷気に覆われ一瞬の内に下半身が凍りつく。
「お前らに平和の象徴はやらせねえよ」
脳無の足元から延びる氷の先には轟焦凍の姿があった。彼の個性「半冷半燃」によって右半身から発する事の出来る冷気がもたらす氷結の拘束である。脳無が身動きを取れなくなった事で距離を取るオールマイト。
さらに現れる最後の援軍、切島は個性「硬化」を腕に発動させつつ死柄木に奇襲を仕掛ける。
度重なる生徒の登場に周囲を警戒していた死柄木は、切島の攻撃を回避した。
「くっそ! 良いとこねえ!」
唯一、攻撃を避けられた切島は悔しさを言葉にしつつ黒霧を抑えている爆豪らの元へと移動する。
そこへアレン、常闇の2名と轟も合流。
「常闇は相澤先生たちと一緒に避難してくれませんか? まだ他にヴィランが潜んでいるかも知れませんから、護衛も兼ねて」
アレンは常闇に避難の付き添いを頼んだ。全方位に隙がなく攻撃の範囲や威力を調整しやすい
「御意」
常闇は短く返答し、すぐさま避難中の蛙吹らに同行する為に移動した。
「妙な真似すんじゃねえぞ。少しでも動いたら――」
「……私は何もしませんよ。……
爆豪が首に当てた右手で小さな爆破を繰り返しながら、脅迫とも言える行為している中、黒霧が口を挟む。
「ああ? てめえ、何言ってん――……!!」
突如、黒霧の顔から一本の腕が現れる。伸びきった指先は真っ直ぐに爆豪の顔へと迫っていく。爆豪は持ち前の反射神経で直撃を回避するも、
「大丈夫か!? 爆豪少年!」
「――……何ともねえよ」
そんな動揺している様子のヒーローを見て死柄木が話しかける。
「何驚いてんだよ。仲間が
その横では、黒霧の靄から全身を出し新たなヴィランが姿を現した。大きなフードと仮面で顔を覆い、外套を身に纏っている。
「本来ならあなたは、オールマイトを殺す時の駄目押しで出てきて欲しかったのですが……」
「あんたが、捕まったのが悪い。油断してたんだろ? 侮り過ぎだったんだよ、あいつら雄英生を。なまじ強個性を持ってるから、慢心しちゃったんでしょう? んん?」
ここぞとばかりに、外套のヴィランは黒霧を責め立てた。その口調からは怒っているではなく、揶揄って楽しんでいる事が窺える。またその声は加工しているのか男性にも女性にも聞こえるような声色になっている。
一頻り、揶揄った後外套のヴィランは死柄木に問いかける。
「それで、弔、どうすんの? このままオールマイト殺るまで続ける? それとも撤退する?」
「……当然、続けるさ。おい、脳無さっさと動け」
死柄木の言葉と同時に、脳無は自身を凍結している氷を自らの下半身ごと拳で叩き割る。当然、支えのなくなった脳無の身体は地面に落下するが、尋常でない再生能力を発揮したちまち元通りになった。
「生徒らの加勢がなければ、我々4人で充分でしょう」
「おいおい、ふざけてる? 黒霧。それはヒーローに対する認識がまるでなってない。今ここでオールマイトを殺るのに生徒の加勢なんて問題にならない」
そう言うと、外套のヴィランはオールマイトの方を向き、軽やかに芝居掛かった口調で話しかける。
「やあ、オールマイト。ご存知かと思いますが、この度我々、ヴィラン連合が此方に襲撃したのはあなたを殺す為です。生徒が目的ではありません。……とはいえそれは、危害を加えない事とイコールではない。怪我させたくなければ、手を出さないようにちゃんと言い聞かせてくださいね」
そんな脅迫に対して轟が真っ先に反論する。
「そんなの『生徒の加勢があるとオールマイトを殺せない』って言ってるようなもんじゃねーか。わざわざ数の有利を手放す訳ないだろ」
「数の有利? いやいや、そんな簡単な状況じゃないよ。そもそもお互い勝利条件が全く違う。此方は『どれだけ被害を出してもオールマイトを殺す事』に対して、其方は『生徒に被害を出す事なくヴィラン全員を捕獲または退却させる事』だ。……ん? 『ヴィランに侵入された時点で雄英は負けた』とも言えるか? まあ、いいか。話しを戻そう。もし生徒1人でも再起不能の怪我を負えばその瞬間、お前らはゲームオーバー。だったら戦わせないのが賢い選択だろ。さらに言えば、自衛の為でもなく生徒に戦闘させるなんて教師の風上にも置けない。まして生徒に手伝ってもらわないとヴィラン退治すら出来ないなんて、そんなのNo. 1ヒーローと言えるのか? ふふっ……。君たちが加勢するのなら私はオールマイトよりも君たちを優先して殺しにいく。結果、殺せなかったとして手足の一本でも潰せたらそれで良い。生徒を、罪のない子どもを、守りきれなかったオールマイトは、教師としてもヒーローとしても『死ぬ』事になる。弔は不満かも知れないが、私はそれでも構わない。……さあ、どうする?」
淡々と語られたヴィランの作戦に言葉を失う生徒たち。それは今まで経験したことのない悪意だった。相手の善意を、誇りを、守りたいものを、壊したいだけだという自分勝手な思考だった。
「君たちの相手をするのは、私だけだ。生徒に手は出させない」
「……そっか、つまんないな。……それじゃあ頑張れ、弔と黒霧! あと脳無! 私はやる気なくしたから、ここで
「……ちっ、……脳無!」
死柄木の呼び掛けとともにオールマイトへ突進する脳無。オールマイトも脳無に殴りかかり互いの距離がゼロになった時、突きのラッシュの応酬になる。
そんな激しい戦闘が行われている中、外套のヴィランが生徒に釘を刺す。
「あっ、あんな事話した後だけど、生徒諸君は避難せずに、そこから一歩も動かないでね。もし動けば人質にした生徒を殺すから」
「人質がいるという証拠は?」
「ないよ。情報は何もあげない」
「……人質いるというのは嘘でしょう? 本当に人質がいるなら、顔や声を出したほうがより効果的だ。情報を明かさないという――」
「……あのさあ、白髪頭くん。ヒーローの巣窟である
人質の存在を否定したアレンに対して外套のヴィランは人質の有無をぼかしつつ罵倒する。
「それにしても、脳無相手に真正面からの殴り合いなんて何を狙っているのやら」
「ショック吸収って言っただろ。馬鹿なのか」
ヴィランたちの蔑みの言葉を余所に、脳無との殴り合いを続けるオールマイト。しかし、その状況は変化する。徐々にオールマイトが押し始め、僅かに優勢になる。2人の攻防は周囲に突風を巻き起こし、ヴィランも生徒も関係なく全ての人間がその場に止まる事で精一杯でありその戦闘に参加するなど考えられない程である。
「ショック『無効』ではなくショック『吸収』なんだろう! ならば吸収できる限度があるんじゃないか!? その限度を超える為に、私は私の限界を超えればいい!! ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの。ヴィランよ、こんな言葉を知ってるか!!」
――――PLUS ULTRA!!!!
オールマイトの全力を、限界を超えた、天候をも変える程の一撃が脳無に直撃する。
「やはり、衰えた。全盛期なら5発も撃てば十分だったのに、
砂埃の中に佇むオールマイトは残っている3人のヴィランを睨みつけた。その鋭い眼光に、威圧感に思わず後ずさる。
「さてとヴィラン、お互い早めに決着つけたいね」
「
「衰えた? ウソだろ、完全に気圧されたよ。よくも俺の脳無を、チートが!
「どうした? 来ないのか? クリアとか何とか言ってたが、出来るものならしてみろよ」
「っ……!」
信じられないといった様子で狼狽える外套のヴィランと死柄木。黒霧はそんな2人を落ち着かせるようにゆったりとした口調で話しかける。
「お二人とも、冷静に。確かに脳無はやられてしまいましたが、ダメージは確実に表れている。我々3人でも十分に殺せるはずです」
黒霧の言葉通り、オールマイトは限界を迎えていた。『平和の象徴』としての姿、マッスルフォームを維持するのもやっとの動く事すらままならない程の状態であった。
「そうだな。……そうだよ、そうだ。やるっきゃないぜ、目の前にラスボスがいるんだもの」
オールマイトに向かって走り出す死柄木と外套のヴィラン。
そこへ1人の生徒が飛び出した。この場でただ一人、オールマイトの限界を正しく把握していた少年、緑谷である。折れていなかったほうの脚に『個性』を発動させ、全力で飛び出していた。
爆豪が見つけた黒霧の弱点に狙いを定め、拳を強く握り、殴りかかる。
しかし、緑谷の接近を察知した死柄木は黒霧の『個性』に腕を通して五指を緑谷へと伸ばす。
死柄木の五指が緑谷の顔に触れる寸前、ヴィランの足元の地面に光弾が撃ち込まれた。その威力によって死柄木は体勢を崩し倒れこみ、勢い余った緑谷は地面を転がる。
「……君たち、人質はどうなってもいいの?」
外套のヴィランは呆れたような、驚いたような表情で尋ねる。
「人質なんて、いないんだろ。いるんならオールマイトを殺す為に使うはずだ……」
「はあ、天下の雄英生だもんな。冷静になればそりゃバレるか……」
緑谷の返答に外套のヴィランは自嘲気味に呟いた。
「――さて、ここからは生徒たちも参戦かな……」
「ちっ、ちゃんと抑えとけよ、
「
死柄木にプルトンと呼ばれたヴィランの弁明中、死柄木に銃弾が撃ち込まれる。弾道の先の門には飯田と何人もの雄英教師、即ちプロヒーローの姿があった。
「A組クラス委員長、飯田天哉、ただいま戻りました!!」
USJ内に残っていたヴィランも駆けつけたプロヒーローにより次々と制圧されていく。
死柄木とプルトンは数発の銃弾を受けつつも黒霧を盾にする事でやり過ごす。
「これ、もう絶対無理じゃん。帰ろうぜ……?」
プルトンは戦力差が圧倒的になった事で死柄木と黒霧に撤退を促す。
「……くそっ」
死柄木とプルトンを黒霧の『個性』が包み込み、そして黒霧自身をも覆い隠し徐々に小さくなりやがて始めから存在していなかったかのようにいなくなった。が、辺りの惨状がその現実を主張している。
主犯格である死柄木とプルトン、黒霧の3人はUSJから姿を消した。
こうして敵連合の雄英襲撃事件は幕を下ろした。
――――しかし、これは後に起こる事件の始まりに過ぎない。
因みに、相澤先生は原作より軽傷です。オールマイトは原作より若干怪我は少ないですが疲れてます。13号は原作と同じです。