FAIRY TAIL~妖精の錬金術士~   作:中野 真里茂

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悪魔の島 ガルナ島

「勘弁してくれ。あんな島に何しに行く気でぇ……」

 

「いいから舵を取れ」

 

「ひっ」

 

 マスターからナツの奪還命令が下されて数時間、既にガルナ島へ向かう船上にいた。しかしその船は通常の船ではなく海賊船。エルザは海賊団を制圧し、船長だけを舵を取らせるために倒さず、無理やりガルナ島に向かわせている。その証拠に船の甲板には海賊団クルーたちが多く倒れている。エルザは常に鬼の形相で舵を取る船長を見張っている間、何故か倒れたクルーたちの介抱をすることになった。

 

「あの島は呪いの島だ。噂じゃ人が悪魔になっちまうって……」

 

「興味がない。我々は掟を破った者を仕置に行く、それだけだ」

 

「ってわけで死にたくなきゃ、そのまま舵を取っててくれ。ガルナ島に着いたら解放する」

 

「うぅ……」

 

「ララン、ガルナ島までまだ時間がかかる。船室に釜があった。そこでアイテムのストックを増やしておけ」

 

「そうだな。ガルナ島に着いたら教えてくれ」

 

「わかった」

 

 船に揺られながら錬金すること長時間、元からかなり多くのストックがあったおかげでS級に挑める程度のアイテムストックが出来てはいるものの、あって困ることはない追加物資を作るべく錬金を行っていた。そこへガルナ島へもうすぐ到着することを伝えにエルザが船室に入ってくる。

 

「ララン。もうすぐだ。甲板へ来い」

 

「わかった。これを終わらせたら行く」

 

 そう返事をすると早急に錬金を終わらせ、甲板へ出た。そこからは正に呪いの島と形容するのが相応しい禍々しい雰囲気を醸し出す島が見えた。そしてふと前方を見るとルーシィが敵の魔導士と思われる女性と対峙している。大きな波が現れたのを見るとルーシィがアクエリアスを召喚したのだと察する。その後キャットファイトの末、ルーシィが勝利したが、敵の使い魔と思われる巨大ネズミがルーシィを押し潰そうと空へ舞い上がった。

 

「エルザ!」

 

「分かっている!」

 

 エルザは船が陸まで近くなったため、船頭から一気に飛び上がり、換装した剣で巨大ネズミを切り伏せた。ルーシィは助けてくれた相手がエルザだと気づくと一瞬、希望の光のように見つめたが、エルザの冷たい視線を見ると、ルーシィはサーっと血の気を引かせた。その後、船を降りて、海賊たちに薬を渡して解放して見送り、ルーシィの所に向かった。

 

「ララン……!」

 

「俺達がここに来た理由はわかってるよな」

 

「あ、いや、その、連れ戻しに……」

 

「そうだ」

 

「で、でも! この島が今大変なの! 氷漬けの悪魔を復活させようとしてる奴等がいたり、村の人たちがその影響で苦しめられてたり、とにかく大変なの! あたしたち、なんとかこの島の人を救いたいの……」

 

「どうする、エルザ」

 

「興味がないな」

 

「だそうだ。悪く思うな」

 

 手から縄が放つと、縄が一人でに動き、ルーシィとちょうど戻ってきたところをエルザに捕まえられたハッピーを縛り上げた。尻尾を掴まれたハッピーはルーシィ同様に縄で縛られた。

 

「じゃ、じゃあせめて最後まで仕事を!」

 

「仕事? 違うな。貴様らはマスターを裏切った。ただで済むと思うなよ」

 

 真剣に懇願するルーシィにも、エルザの姿勢は変わらない。縛られたルーシィの喉に剣を突き付けると威圧するように睨みつける。エルザの目はとても冷淡で同じギルドの仲間を見るとは思えない残酷な目だった。その目を見たルーシィは恐怖で涙を浮かべて、報酬に目が眩み、S級クエストに来てしまったこと、ギルドの掟を破ってしまったことを激しく後悔した。その様子を見ていたラランは下手をすればルーシィを切ってしまいそうだと感じ、弟子の命を助けるために素手でエルザの剣を下げる。こちらにもルーシィに対する目と同じ目を向けたエルザだったが、それにも負けない目を見て、一つ息をつくと剣を仕舞った。

 

「俺の弟子だ。傷をつけるのは止めてくれ」

 

「……ナツ達がいる場所へ案内しろ」

 

 ルーシィとハッピーを縛っている縄の先端を持ち、村まで案内される。しばらく歩くと酷い有様の村が現れる。ルーシィの説明では、敵の毒により村のほとんどが溶かされ、ナツの攻撃によって村人の命は助かったとのことだった。ハッピーがエルザに命令され、空から辺りを見回すと村から少し離れたところに村のものと同じテントがあるのを見つける。そこへ向かった一同は村の人々からそこが村の資材置き場であることを説明され、村があの有様であるため、村日は全員ここに避難していることを告げられた。またここに意識不明のグレイが運ばれ、眠っていることが判明。資材置き場の空いたテントの一つに入ると、簡易的な椅子に座って、ルーシィも縛ったまま地面に座らせる。そこでルーシィと呼びだした村人からここまでの事情を聞いた。

 

「なるほど。じゃあグレイは負傷で別テントで治療後に意識不明のまま。命に別状はないんだな。で、ナツは行方知れずと」

 

「すまないが、グレイが目を覚ましたらここに来るように伝えてくれ」

 

「は、はい。わかりました」

 

 エルザと共にグレイの訪問を待つこと数時間、テントの入り口が開いた。そこには体に包帯を巻いたグレイがいた。グレイはエルザがこの島を訪れていたことに驚いたが、同時に目的も察する。グレイは真剣な面持ちでエルザとの話し合いに臨んだ。

 

「ルーシィから大体の事情は聞いた。お前はナツ達を止める側ではなかったのか? 呆れて物も言えんぞ」

 

「ナツは?」

 

「それはこちらが聞きたい」

 

 エルザはルーシィに向けたような冷たい視線をグレイにも向ける。依然として行方知れずのナツの情報をラランがまとめて説明を始める。

 

「昨日、零帝と呼ばれる人物の手先が村を襲撃。ナツが魔法で毒を弾き飛ばしたところまでは聞いた。そこからは皆バラけて戦闘。零帝含めて確認できた敵は四人、一人はルーシィが撃破、グレイは零帝は敗北、ナツは残りの一人か二人と交戦してるはずだ。他に何か情報は?」

 

「あぁ、零帝の名前はリオン。あいつだけは俺が……」

 

「ナツは敵に勝利後、この場所がわからなくてフラフラしている可能性が高い。ララン、グレイ、ナツを探しに行くぞ。見つかり次第、トラベルゲートでギルドへ戻る」

 

「何言ってんだエルザ。事情を聞いたなら、今この島で何が起こってんのかも聞いてんだろ」

 

「それが何か。私たちはギルドの掟を破った者を連れ戻しに来た。残るはナツ一人。それ以外の事には一切の興味がない」

 

「この島の人たちの姿を見たんじゃねーのかよ。それを放っておけって言うのか!?」

 

「待てグレイ、諦めろ。一旦ギルドに戻って、この依頼は他のS級魔導士に任せればいい」

 

 一触即発の空気が流れるエルザとグレイの間に割って入る。この場では中立というよりもマスターの命令を優先した方が良いだろう。エルザの側に立ってグレイを説得しようと試みる。個人的には依頼を先に片付けてしまうことが結果的に早くことが終わると考えたが、この場では一度ナツの奪還に失敗している自分よりもエルザの方が立場的にも上だと考え、エルザの思ったままになるように話を誘導する。

 

「見損なったぞお前ら」

 

「貴様までギルドの掟を破るつもりか。ただでは済まさんぞ」

 

 エルザは剣の切っ先をグレイの首に当てる。しかしグレイは全く臆することなくエルザの剣を素手で握りしめた。当然のことながらグレイの手からは血が流れ、剣を伝って地面にポタポタと滴っている。グレイのこの依頼に対する決心は異様な程に強い。ルーシィから聞いた零帝とグレイの確執は思った以上に深く、心の底に根付いているのだと気づいた。

 

「勝手にしやがれ。これは俺が選んだ道だ。やんなきゃなんねぇことなんだ!!」

 

 グレイはそう言うと剣から手を離す。エルザも血を払うように剣を下ろした。

 

「最後までやらせてもらう。斬りたきゃ斬れよ」

 

 グレイはそれだけ言い残して、テントを後にした。残されたエルザは歯軋りをさせながら、剣を握りしめる。ルーシィはその様子が怖すぎて一言も発することが出来なかった。ナツらがギルドの掟を破ったことで怒り狂い、仲間に剣を向けたりするなど普段のエルザからは考えられない行動が続いていたが、ラランもそのエルザを止められなかった責任を感じていた。しかしグレイの行動がエルザを正気に戻した。

 

「ララン」

 

「……わかった」

 

 エルザは名前だけを呼ぶとその後、ルーシィとハッピーの方に体を向けた。それによって何をしてほしいのかを察したからだ。ルーシィ達を縛っていた縄を解き、再び縄を鞄に仕舞った。解放された2人は驚いた様子でエルザを見つめる。エルザの目は先ほどまでの冷酷な目ではなく、ルーシィのよく知る、強く気高いエルザの目だった。それに安心すると、ほっと一息つく。

 

「行くぞ。このままでは話にならん。まずは仕事を片付けてからだ」

 

 その言葉を聞いたルーシィとハッピーはようやく話が通じたと笑顔を見せた。しかしエルザから罰は受けてもらうと釘を刺され、また笑顔はすぐに消えてしまう。

 エルザ共にルーシィとハッピーを引き連れ、村の資材置き場を出発した。すぐにグレイと合流し、昨日、潜入したという遺跡に向かう。その途中の森の中腹で、遺跡が見えるとルーシィが首を傾ける。

 

「あれ……遺跡が傾いて……る?」

 

「ナツだな。あんなでたらめなことするのはアイツしかいねぇ。狙ったのか偶然か、でもこれでデリオラに月の光は当たらねぇ」

 

「デリオラ、グレイの師匠が命と引き換えに氷漬けにしたゼレフ書の悪魔……か」

 

「待て、誰かいる!」

 

 森を抜けようと歩いているとエルザが全員を止める。その直後、大勢の顔を布で覆った祈祷師のような恰好をした敵集団が現れた。その数は一人では手に負えない程であり、全員が行く手を遮られる。

 

「グレイ、行け。因縁の相手がいるんだろ。こいつら片付けたら俺達も行く」

 

 グレイを先に行かせようと鞄に手をやる。エルザも剣を換装、ルーシィも鍵を手に取った。グレイは皆の想いを受け取り、遺跡に向かって走った。

 

「じゃ、さっさと片付けるか」

 

「あぁ」

 

「あたしはあんまり戦いたくないんだけど……」

 

 それから十数分、数は多いが個々の能力は乏しかった敵集団は3人の前に全滅した。すると大地が揺れるような大きな音が鳴り響いた。エルザやラランは何の音だと周囲を見回すが、特に大きな変化は見受けられない。ルーシィは遺跡の方向を見ると音の正体に気づいた。それを見たルーシィは目を丸くし、震えながらその方向を指さす。続いてルーシィ以外が指さされた方向を向いた。

 

「そんな……傾いた遺跡が……元に戻ってる……」

 

「……まさか」

 

 元に戻った遺跡を見ながら手を震わせた。傾いた遺跡を元に戻すための方法に心当たりがあるのだ。まさかと感じて歯を食いしばると、エルザ、ルーシィを置いて遺跡に走った。それを見た2人も追いかけるように走り出した。

 

「どうしたのよララン、急に走り出して」

 

「遺跡を元に戻したんじゃない……」

 

「え……?」

 

「遺跡を元に戻したんじゃない! 時間を戻したんだ! あれをやった奴はな!」

 

「なんだと!?」

 

 走りながら二人に説明する。その表情は明らかに期待に満ちている、まるで遺跡を元に戻した人物が味方かのような。ルーシィは見たことのない不思議な表情にこんな表情をするんだと嬉しさがあった半面、自分にはこんな表情を見せてくれていないと落胆する反面もあった。

 

「敵の一派だろうが、錬金術士の可能性がある。というか可能性が高い。そうでなければ失われた魔法(ロストマジック)に属する魔法を使う魔導士。でも時間操作魔法は危険性、副作用により歴史から抹消された魔法のはずだ」

 

「時間を動かすのは錬金術でも難しいの?」

 

「あぁ。特に過去への時間遡行はな。失われた魔法使いか、かなりの熟練錬金術士か。どちらにせよ強敵だな」

 

「2人が危険だ。急ぐぞ」

 

 3人は遺跡へ急ぐ。やっとの思いで遺跡に到着すると、怪物の大きな音が聞こえた。怪物の唸り声ともとれる、しかし声とは形容しがたい大きな音である。そして3人の視線の先に月の雫(ムーン・ドリップ)の光の線が穴に注ぎ込んでいるのが見える。その穴の下にはぜレフ書の悪魔、グレイの師匠ウルが命と引き換えに氷漬けにしたデリオラが鎮座しているはずである

 

「例のデリオラとかいう魔物か?」

 

「まさか復活しちゃった訳ーー!?」

 

 そう言っているうちにも再び唸り声が聞こえる。それを聞いてエルザは儀式そのものを中止させ、デリオラの復活を阻止するために遺跡の中へ入っていく。それにルーシィとハッピーが続いた。しかし例の時を操る人物が気にかかり、別に動き出した。

 




登場した錬金アイテム

生きているナワ
生きている工具集の一つ、他にもスコップ、ノコギリなどがある。生きているナワは命令することで一人で動いてくれる縄。生きている工具集のおかげで肉体労働は大助かりである

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