ガルナ島、村の資材置き場に戻って来た一行。しかし資材置き場にいたはずの村人は一人もおらず、蛻の殻と化していた。一行は全てのテントを回ったがやはり資材が積まれているばかりで人の姿は無かった。どうしたものかと集まっていると一人の村人が大変だと叫びながら駆け寄ってくる。村人は村まで急いで来るように一行に伝えると足早に去ってしまった。一行は顔を見合わせて、村へ急いだ。
「これは……」
村の様子は見違えていた。リオンの配下による毒毒ゼリーによって消滅させられた村は全て復元されていた。村人たちの家も、村長の息子の墓も。まるで時が戻ったみたいだ、とナツが言うとハッとラランが気づく。あの仮面の女、ザルティである。時を戻す魔法、時のアークを使って村の時間を戻したのだろうと考えた。しかし彼女の性格で何故このようなことをするのか疑問が残った
(あいつはあれぐらいで改心するような奴には見えなかったがな……)
しかし、問題は終わっていなかった。零帝を下し、デリオラを倒し、月の雫の影響も取り除いた。それでも村の人々の悪魔の呪いは解けていない。村長は村を元に戻してくれたことを感謝しつつもそのことについて追及した。
「いつになったら月を破壊してくれるのですかな」
「月を破壊するのは容易い」
「……とんでもないこと言ってるぞ」
「え、月を壊すのって簡単なの?」
「なわけねえ。無理に決まってるだろ」
エルザがルーシィに迫る村長を宥めながら言う。そしてエルザは確認したいことがあると村人全員を門の前に集めるように村長に願い出た。そして村長の呼びかけによって門の前に村長を含める村人全員が集まった。
「整理しておこう」
エルザは村人たちに見解を求める口調で語り始める。
「君たちは紫の月が出てから、そのような姿になってしまった。間違いないか?」
「正確にはあの月が出ている間だけこのような姿に……」
村長が答える。それを聞いてエルザは頷くとさらに続ける。
「話をまとめるとそれは三年前からということになる」
「確か……それくらい経つかも……」
「あ、あぁ」
今度は一人の村人が答え、その周りの人々も同意する。エルザは門の前を歩きながら話を続ける
「しかし、この島では三年間毎日『
エルザのあまりにも女性らしい可愛げな声が響いた瞬間、エルザの姿は消えた。リオン達の襲撃に備え、ルーシィが用意した落とし穴が時間の巻き戻しにより復活していたのである。エルザはそれにかかってしまったのである。ナツとグレイはエルザの上げた声にあまりにも可愛らしいと驚き、落とし穴を作ったルーシィは耳を塞ぎ私のせいじゃないと連呼している。個人的には落とし穴に落ちたエルザが間抜けに思えて笑いが止まらず、口を抑えるのに必死だ。そして当のエルザは何事もなかったかのように落とし穴から這い上がり話の続きを始める。
「つまり、この島で一番怪しい場所ではないか。わからんな。何故調査しなかったのだ」
エルザの問いに村長が少々どもりながら苦しそうに答える。村人たちも顔を見合わせてどう答えたものかと困惑していた。
「そ、それは村の言い伝えであの遺跡には決して近づいてはならんと……」
「でもそんなこと言ってる場合じゃなかったですよね? 犠牲者も出ているしギルドの報酬額を見ても」
ルーシィが核心を突く意見を村長に述べると、村長はさらに顔色を悪くした。エルザは村長の目をじっと見つめて、本当のことを話してくれないかと願い出る。村長もここまで言われてはもう隠すのは無理だと判断したのか、諦めて本当のことを話し始める。
「そ、それがワシらにもよくわからんのです。正直、あの遺跡を調査しようとしたことは何回もありました。皆は慣れない武器を持ち、ワシはもみあげをばっちり整え、何度も遺跡に向かいました。しかし近づけないのです。遺跡に向かって歩いても、気がつけば村の門。ワシ等はあの遺跡に近づけないのです」
「俺達は中にまで入れたぞ。ふつーに」
ナツがそう言うと、村長をフォローするように村人たちが主張を始める。
「信じてもらえないでしょうから言いませんでしたが本当なんです!」
「遺跡には何度も行こうとした。でも辿り着いた村人には一人もいねえんだ」
エルザはそれを聞くと、やはりかと一言だけ呟き、鎧を黄金に輝く巨人の鎧へと換装した。
「ナツ、これから月を破壊する」
「うぉおおおおおおお!!」
「えぇえええええええええ!?!?!?」
エルザの月破壊宣言にナツだけは目を輝かせて喜んだ。その他の全員は目を白くして大声を上げる。
「月を壊して、皆を元の姿に戻そう」
エルザがそう宣言すると村人からは賞賛の声が上がった。
「月を壊すったって、どうやるんだよ」
「何をするつもりなんだろ」
傍観組は不安そうな目をしてエルザを見つめていた。エルザは更に闇を退ける破邪の槍を換装する。それを見たナツは、それを投げて月を破壊するのかとまとも目を輝かせているが傍観組からは届くわけがないだろと言う冷静な突っ込みが入れられていた。
「いや、それだけでは月までは届かないだろう。だからナツ、お前の火力でブーストさせたい。私が槍を投げる時、石突の部分を思いっきり殴るんだ」
「よっしゃぁぁぁ!」
「何であの二人はあんなノリノリなんだ……?」
「まさか本当に月を破壊したりしないよね……」
ルーシィとグレイは二人の行動に危機を感じて、身体を震わせている。だが、そんな震えすらもこの身には起こらなかった。無言でただ見守る。しかし、もしも本当に月を破壊してしまった場合のギルドにかかる負担や費用を一生懸命考えて頭がショートしているだけである。そんなことは知る由もないエルザとナツは月を破壊するため、出来るだけ高いところへ移動しようとする。ナツは遺跡の方が高いからいいのではないかと提案したが、エルザは遺跡には村人は入れないし、ここで良いと村で一番高い櫓に登った。
「では行くぞ!」
エルザは槍の投擲モーションに入る。そしてタイミングを計ってナツに呼びかけ、ナツは石突に向かって全力で炎を纏った拳を叩きつけた。その衝撃で櫓の屋根は爆散したが、破邪の槍はナツの炎で更なる推進力を得て月に向かって一直線に伸びていく。
「届けえええええ!」
槍はそのまま進み続けて遂には月に突き刺さった。そして空にひびが入り、月が破壊された。と思ったが、紫色の月の後ろから黄色の綺麗な月が出現した。
「割れたのは月じゃない。空が割れた……?」
すると村の人々の姿が光り輝き始める。元の姿に戻ると信じていた村人たちは歓喜の渦に飲まれて大喜びしていたが、光が治まっても村人の姿は悪魔の姿のままだ。
「元に戻らねえのか……」
「そうか……先入観にしてやられた」
「どういうこと?ララン」
降り注ぐ空の結晶を見ながら言うと、不思議に思ったルーシィとグレイが近づいてくる。全ての謎の真相を二人に説明する。触りだけ話したところで最初に謎の仕組みに気づいたエルザが櫓から降りて、話を引き継ぐ。
「ナツとルーシィが受けた依頼は月を破壊し、この村の人たちを悪魔の姿から人間の姿に戻すこと、だな?」
「う、うん」
「俺達は最初から彼等が人間だという先入観に囚われていたんだ」
「そういうことだ。ララン。気づくのが遅かったな。邪気の膜は彼らの姿ではなく、記憶を侵していたんだ。夜になると悪魔になってしまうという間違った記憶だ」
つまり、とルーシィとグレイが顔を合わせると、エルザは言う。
「そういうことだ。彼らは最初から悪魔だったのだ」
「えええええ!!!」
ルーシィとハッピーは膝から崩れ落ち、グレイは村人の一人に本当かと尋ねる。村人は記憶がごっちゃになっていて混乱しているが恐らく本当だと答える。そして答え合わせをしてみる。
「そうか。彼らの能力は人間に変身すること。しかし月の雫によって記憶障害を起こしたことによって人間の姿を本来の姿と思い込んでいたのか。そして恐らく、月の雫は人間には効かない。リオン達は現に何も変化していなかった。闇の種族の悪魔である彼らは聖なる光を蓄えた物である遺跡には近づけないのも頷ける」
その解答にエルザはその通りだと答え、全ての謎が解明した。すると村の外から一人の男の声が聞こえる。
「流石だ。貴方たちに任せてよかった。ありがとう魔導士さん」
その男もまた悪魔の姿をしており、この村の人物であった。この島には後から来たから彼のことは知らないし、よくわかっていなかったがナツやルーシィ、グレイにハッピーは驚いている。ルーシィに至っては幽霊だとハッピーと抱き合っている。彼の正体はナツ達がガルナ島に渡る際、誰も船を出してくれる人物がいない中、船を出してくれた人物であるという。しかし彼は船上で突然姿を消し、海の中にもいなかった。ナツ達は彼を幽霊だと思っていたのである。そして村長が涙を浮かべて彼に寄っていく。
「ボ、ボボ……」
彼は村長の亡き息子だったのである。記憶障害を只一人だけ克服してしまった彼は村を一時的に離れていたと説明する。理由は自分たちのことを人間だと思い込んでいる村人たちが怖い勝ったからだと言う。そこでグレイがあの時、船の上から消えたろ、と質問するとボボは再び一瞬でその場から消える。しかし上を見上げてみれば、ボボは背中から羽を生やして空に浮かんでいた。そして遂に感情を抑えられなくなった村長は、自らも翼を生やしてボボに抱き着いた。感動の再会だと村人も翼を生やして空を飛び、二人の周りを飛び回った。
「悪魔の島か……」
「ま、見た目は悪魔でも心は天使みたいだな」
その後、村長の計らいにより、悪魔の宴が開かれることになった。村を救った英雄として賓客として招かれたため、喜んで宴に参加した。悪魔たちも話してみれば、悪い者などおらず、皆と楽しく話し、宴を楽しんでいる。
「悪魔の料理も美味いな。研究対象だ」
皆が悪魔の料理を食べている後ろでグレイは一人で佇んでいる。そこへ数人の村人が近寄って行った。
「お怪我はもう大丈夫ですか?」
悪魔の姿で話しかけられたグレイは、一瞬戸惑ったが人間の姿を見せるとグレイも思い出したかのように、あの時の、と言う。すると周りにいた女性がグレイを取り囲む。
「私たち、村にいらした時からグレイさんのこと、素敵だなあって噂してたんですよ」
「そうそう。クールでかっこいいなぁって」
「でもやっぱり人間の姿の方がいいですか?」
「い、いや、そんなことねえと思うぞ。それはそれでイケてるんじゃねぇか?」
グレイがそう答えると女性たちは大喜びし、グレイの腕を掴んで、悪魔のふりふりダンスへ連れて行ってしまった。それを見ていたルーシィはグレイってああいう子たちにモテるタイプだったのねと微笑んでいた。そしてルーシィの横にいた村長がグレイの言葉を聞いてこの島のことについて喋り始める。
「グレイ様の言う通りです。我々はこの姿を引け目に感じるあまり、他の島との交流をしてこなかった……」
ボボも続いて言う。
「そのためにガルナ島は呪われているという噂が広まってしまったんだ」
「港の人たちがこの島を怖がっていたのはそういうことだったのね」
「しかし、これからは他の土地の人たちとも親しく付き合っていこうと思います。お互いに助け合えるように」
「うむ、こうして話してみれば外見など関係なく分かり合えるのだからな」
悪魔でも人間でも話せば分かり合えることを村長も知り、この島は変わっていくだろうとエルザたちは感じていた。和やかな雰囲気で宴は進んでいたが、招かれざる客が2人、村を訪れる。
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