FAIRY TAIL~妖精の錬金術士~   作:中野 真里茂

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幽鬼の支配者

 宴の最中に村に現れたのは零帝リオンの仲間のユウカとシェリーだった。村を破壊した彼らに村の雰囲気はピリピリとしたものに一変した。

 

 彼らはともかく彼らのトップだったリオンとは既に和解した。その仲間である彼らと戦う理由はない。彼らには話し合いでここを退いてもらおうと席を立ったが、それより先にエルザが2人の前に出て、声をかけた。

 

「何の用だ」

 

「零帝リオンはお前たちにやられて動けそうにないのでな」

 

「私たちが借りを返しに来たのです」

 

 ルーシィは既にリオンとは和解したと伝えるがユウカはそれとこれとは別と和睦を受け入れず、シェリーと共に戦闘態勢を取る。村人達を守るためエルザが前に出て二人に相対する。しかし村人達もこれ以上迷惑はかけられないと武器を手に取るが、それでも村人たちの気持ちだけを汲み取るとエルザは村人達を留めてユウカ達と戦う意思を見せた。

 

 こうなってしまった以上エルザを見守るしかない。負ける―などということは微塵も考えていないが、あの2人がどういう意図でここに来たのかが読めない。ユウカの言葉を聞く限り、戦闘後のリオンとは既に会って話しているはず。それでもここに来たのは本当にこの村への攻撃が目的なのか、それともまた別の意図があるのか。

 

「気を付けてエルザ。そっちの女は木や岩を操るわよ!」

 

「そっちの変な眉毛は魔法を中和しやがるぞ!」

 

「なるほど、ならば技を出す前に片付けるだけのこと!」

 

 エルザはそう言うと目にも止まらぬ速さで二人との間合いを詰め、シェリーを蹴りでユウカは肘鉄でそれぞれ一撃で吹き飛ばした。すると二人はすぐに立ち上がり、敵意がないことを告げ笑って見せた。

 

「こんなことで償いになるとは思わんがな。せめてものケジメのつもりだ」

 

「零帝様から話は聞きました。皆様のおかげで私たちもデリオラへの憎しみから解き放たれましたわ」

 

 二人はリオンとのつながりの経緯を話した。零帝リオン率いる彼らは全員がデリオラに家族を、故郷を奪われた者たちであり、今度こそデリオラを倒さんとするリオンについてきたのだと言う。しかしデリオラへの憎しみに囚われるあまり、村の人々を傷つけ、自分たちもデリオラと同じになってしまうところだったと告白した。

 

「よーーーーし! お前らも一緒に飯食おう!」

 

 しんみりとした空気を大声で破壊したのはナツだ。小さいことを気にしないナツは二人のことをよくわかっていない様子だったが、既に敵ではないと宴に強制招待したのである。村人たちも反省した二人を歓迎し、悪魔の宴は翌朝まで続いた。

 

 悪魔の料理をシェリーやユウカにも勧め、確かに見た目としては人間の目からすれば色合い的に不味そうに見えるが食べれば美味いとカロリーを気にするシェリーも量を気にせず食べていた。敵だった彼らも和解できた。ここにはいないがいずれはリオンともこうして一つの宴で共に料理を食べることが出来る日が来るだろうと感じ、ふとグレイに目をやると、どこか儚げに綺麗な満月を見上げて微笑んでいる。きっと同じことを考えていたのかもしれない――

 

 翌朝、ナツが炎を食べているとユウカとシェリーの姿が見えないことに気づいた。ハッピーがもう食べられないから帰ったと答えると残念そうにしていた。そして遂に村を後にする時が来た。村人たちは全員ララン達を見送るために集まっている。

 

「な、なんと報酬は受け取れない? にょ?」

 

「あぁ気持ちだけで結構だ。今回の件はギルド側で正式に受理されたものではない。一部の馬鹿どもが先走って遂行した仕事だ」

 

「それでも我々が救われたことに変わりはありません。これはギルドへの報酬ではなく、友人へのお礼という形で受け取ってくれませぬか」

 

 エルザと村長が話しているのは700万Jという破格の報酬のことについてだ。エルザとしては受け取れないスタンスだが、村を救ってくれた村長としては何としても受け取ってほしいというスタンスで話し合っていた。友人という形を出され、断り辛くなったエルザは副賞の精霊の鍵だけを受け取るという折衷案を出して話はまとまった。エルザ以外は700万Jを受け取れなかったことを大変残念に思っていたが、例外として鍵を貰えたルーシィだけは嬉しそうにしていた。

 

 そこで、ある提案をした。700万Jを受け取れない代わりに大きな釜を作り、錬金術をこの村で行ってほしいという提案だ。彼らは魔法は出来ないと最初は拒んだものの、これは魔法ではなく、体内に魔力がなくとも誰でも出来ることを伝えると、恩人の頼みならと快く受け入れてくれた。そこで直接教授することは出来ないが、指南書と参考書、素材を渡した。このガルナ島で錬金術が広まれば、これから他の地域や種族と交流を持つことになる時、一つの特産品となる物を作れるだろう。この島の発展に繋がってくれれば何よりだ。

 

「ではハルジオンまで送っていきますよ」

 

「いや、船の準備ならできている」

 

 妖精の尻尾一行も村人達も船についての心当たりはなく、それを知っているのはエルザとラランだけだった。波止場まで全員が移動するとそこには巨大で禍々しい海賊船が泊っていた。

 

「姉さーーーん! 兄貴ーーー!」

 

「海賊船!?」

 

「まさか強奪したの!?」

 

「いや、強奪はしてない。ここに来る時に色々あったんだよ……」

 

「何やら気が合ってな」

 

「舎弟の皆さんも乗ってください!」

 

 海賊たちに促され、乗り込むと船は出向した。悪魔の島、ガルナ島からは妖精の尻尾一行に感謝を伝える声が飛び、お返しにと村人たちの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。ただ一人船酔いで動けないナツを除いて。

 

 長い船旅の後、ようやくマグノリアの街に戻って来た一行は、ギルドに向かって歩いていた。話は700万Jを逃したことから唯一ルーシィが受け取った黄道十二門の鍵のことに移り、今回貰った人馬宮のサジタリウスのイメージを語り合っていた。

 

「呑気に喋ってるけど、三人はギルドに帰ったらマスターから処分が下るの忘れてないか?」

 

「え!? それってお咎めなしになったんじゃ」

 

「そんなわけないだろう。お前たちの行動を認めたのはあくまで私の現場判断だ。罰は罰として受けてもらわねばならん」

 

 エルザの言葉に崩れ落ちる三人だったが、エルザは三人を引き摺るようにギルドへ歩いていく。しかしギルドに近づくにつれて、街の人たちがひそひそと小さい声で一行を見ながら話して始める。

 

「やけに見られてるけど誰か何かやらかしたか?」

 

「あっ、ララン君!」

 

 そんな中、一人の女性が近づいてくる。常連の店の女店主であるティファナさんである。その顔は浮かばれず気まずそうにしている。

 

 このようなティファナさんは見たことがない。どんな時でも柔和な笑顔で癒してくれる人だ。そんな人がこんな顔をするなんてよっぽどのことがあったのだろう。

 

「ティファナさん。どうしたんですか。街の人たちも俺達に嫌に注目してますし」

 

「そう、やっぱりまだ知らなかったのね。実はねギルドが……襲われたの。直に見た方が早いと思うわ。マカロフさんも皆の帰りを待ってるはずよ」

 

「ギルドが……?」

 

 話を聞いてギルドに急いだ。ギルドの目の前につくとその異変は明らかだった。巨大な鉄柱がギルドに何本も突き刺さり、半壊状態になっていた。それを見て唖然としていた一行にミラが声をかけた。ミラは皆をギルドの地下に案内する。するとそこには普段は倉庫になっている場所が仮設酒場になっており、マスターもそこにいた。しかしこんな状況とは思えないほど陽気に酔っぱらっている。

 

「ただいま戻りました」

 

「よぅ。おかえり!」

 

「マスター。今の状況がわかっておいでですか!?」

 

「まぁ落ち着きなさいよ。ファントムだぁ? 誰もいないギルドを襲って何が嬉しい。不意打ちしか出来ん奴らに構うことはない」

 

「襲われたのは夜中らしいの」

 

 ナツはギルドを襲ったギルド『幽鬼の支配者(ファントム・ロード)』を潰さなければ気が済まないと壁を殴って壊すが、それもマスターは気にせずトイレへ走って行ってしまった。去り際にこの話はこれで終わりと無理に終わらせてしまった。

 

 どうしようもなくなったララン達はそれぞれ解散となった。

 

 居ても立ってもいられず、外に出てしばらく破壊されたギルドを眺めていた。妖精の尻尾に来て早十年ほど。ギルドがこれだけ大きな傷を負ったのは初めての経験だ。まるで自分が傷つけられたかのような気持ちに陥った。悲観に暮れていると横から酔いを醒ますために外の風を浴びに来たマスターがいた。

 

「手痛くやられたな……」

 

「マスター……このギルドは俺の家です。何度でも、どれだけやられても直しますよ」

 

「いつもすまんな、ララン」

 

 錬金術による木材を用いた修理ができる為、ギルドの修理役をしており、ギルドのメンバーが喧嘩をしてギルド内部を破壊する度にせこせこと修理をしている。しかも今回はあれだけ大きく破壊されている分、時間がかかるのは必至だがギルドをこれだけ破壊されて黙っているわけにはいかなかった。

 

「じゃ、俺は修理のこともあるしアトリエに帰ります」

 

 マスターに一礼してギルドからトラベルゲートでアトリエに戻った。

 

 少し時は戻って、マスターに話をはぐらかされて帰路についたルーシィ。精霊のプルーと共に家を目指して歩いている。

 

「何か大変なことになっちゃったな~。妖精の尻尾と幽鬼の支配者は仲悪いって有名だしね~」

 

「ぷる~~」

 

「あたしも妖精の尻尾と幽鬼の支配者どっちに入ろうか迷ってたのよね~あっちもこっちと変わらないくらいぶっ飛んでるって言うし。でも今は妖精の尻尾に入って良かった。だって妖精の尻尾は最高オおおおおおおおお!?!?」

 

 ルーシィが自分の部屋に入ると、優雅にティータイムを楽しむエルザと既に上半身裸のグレイ、筋トレをしているナツとハッピーがいた。

 

「何でこんなにいるのよ!」

 

 ルーシィは数が多いと持っていたバックをナツに投げつけた。そこでエルザとグレイがこうなった経緯を説明する。

 

「ファントムが攻めてきた以上、我々の住所も調べられているはずだ」

 

「一人いるよりはどこかに集まった方がいいってミラちゃんがな」

 

「今日は皆あっちこっちでお泊り会だよ!」

 

 ハッピーがそう言うとルーシィはラランの姿がないことに首をかしげる。そのことをエルザに聞くとエルザは理由を説明する。

 

「あいつは今頃家でギルドの修復のために錬金をしているところだろう。あいつの家にはホムたちもいることだ。安心だろう」

 

「うーん。でも心配だなぁ」

 

 ルーシィが心配している頃、当の本人、ラランのアトリエではギルドの修復のため三つの釜をフル稼働でホム2人とラランが一生懸命に木材を錬金していた。

 

「ホム! 今何個!?」

 

「5個です」

 

「ホムも5個です」

 

「良いペースだ。そのまま頼むぞ」

 

 三人は愛しのギルドを直すために懸命に釜をかき混ぜ、三人が作業を終える頃には既に日は登り、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。さすがに疲れと眠気を感じベッドに入った。

 

 それから数時間、外の騒がしさに目を覚ます。布団を払いのけ、体を起こして窓を開けると、町民たちが一斉に移動している様子が見えた。不思議に思っていつものローブを羽織り、ホム達と共に外へ出た。町民についていくこと数分、辿り着いたのは街の高台にある大木だった。そこには大勢の民衆が駆けつけており、前に進めない程ごった返している。

 

「すまない。これは何の騒ぎだ」

 

「あ、ラランのあんちゃん。妖精の尻尾の魔導士さんが……」

 

「何?」

 

 それを聞いて民衆を押しのけて前の方へ進んでいく。そしてようやく木の様子が見えるところまで出ると既にナツやエルザ、ルーシィがそこにいた。

 

 香る血の臭い、鉄の臭いは耐え難いものだ。頭に駆け巡るその真実を見たくないという命令を振り払い、現実と向き合うべく視線を上へ向ける。

 

 目に飛び込んできたのは、木に磔にされたレヴィ、ジェット、ドロイのチームシャドウギアの姿だった―

 

 痛々しいほどに傷つけられたその姿に歯が潰れるほど強く噛みしめた。怒りに任せて地面を殴りつける。拳に広がる痛みとは裏腹に怒りは膨れ上がるばかりだ。

 

「おい、誰だこんなことをしやがったのは」

 

「ララン……これも多分ファントムの仕業だ」

 

 唖然としていると、民衆が道を開けた後ろから怒りに満ちた表情のマカロフが歩いてくる。

 

「ボロ酒場までなら我慢できたんじゃがのう。ガキをやられて黙ってる親はいねぇんだよ! 戦争じゃ!!」

 

 マカロフは怒りで杖を握りつぶす。その迫力にルーシィは恐怖で涙を浮かべる。怒りに満ちる妖精の尻尾はレヴィ達を木から降ろすとすぐさま病院へ運び、すぐさま幽鬼の支配者に戦争を仕掛けるべく準備を始めた。

 




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