FAIRY TAIL~妖精の錬金術士~   作:中野 真里茂

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ギルドとアトリエ

「やっと着いた」

 

「わぁ~大きいね」

 

「ようこそ『妖精の尻尾』へ」

 

 ハルジオンの街から電車で移動し、魔導士ギルド『妖精の尻尾』が居を構えるマグノリアに帰ってきた。そしてギルドに加入するためやってきたルーシィ。街の最奥部にあり、他の建物と比べても一際大きく居を構えるギルドに唖然とするルーシィだったが、そんなことは意にも介さないナツは奥へ進んでいく。

 

「ただいまーーー!!」

 

「ただいま戻りました」

 

 ナツが勢いよくギルドの門を蹴破って中へ入ると、それに続いて中へ入る。最後尾からルーシィが中へ入る頃にはナツの足はギルドの門から人の顔へと向かっていた。

 

「てめぇ! 火竜の情報、嘘じゃねぇか!!」

 

 ナツが火竜の情報を聞いた男はナツの蹴りに吹き飛ばされ、それから周りのやじ馬もヒートアップ。あれよあれよという間にギルド中が理由のない喧嘩を始め、すったもんだの大騒ぎ。それには加わらず、ギルド内に設けられたバーカウンターに腰を下ろす。

 

「今回も疲れたよミラちゃん。やはり錬金術士に戦いは向いてないね。家の中で釜をかき混ぜてるのが一番さ」

 

「またそんなこと言って。でも顔は前よりずっと楽しいそうよ」

 

 今、話しているのは『妖精の尻尾』の看板娘であるミラジェーン。魔導士雑誌の最王手、月刊ソーサラーでモデルも務める国中で有名な女性である。銀色の美しい髪にスタイル抜群、清楚で可愛らしい笑顔、どれをとってもパーフェクトだ。

 

「そうそう、今日は新しい家族を連れてきたんだ」

 

「家族?」

 

「ルーシィ!」

 

「へ? あたし?」

 

 ルーシィは皆の喧嘩模様を突っ立ったまま、茫然と見ており、呼びかけられてようやく目を覚ましたような素っ頓狂な声を上げて、こちらへ駆けてくる。

 

「ルーシィ、彼女はミラジェーン。まぁ知ってるだろ。彼女がギルドの紋章を押してくれるんだ」

 

「どこに押すかはもう決まってる?」

 

 ミラがニコッと笑ってルーシィに投げかけると、ルーシィは本物のミラを見て茫然としている。その夢のような瞬間を打ち壊したのは何処からともなく飛んできた酒瓶。ミラの頭に直撃し、ミラはその場に倒れた。ルーシィは心配したが、ミラはこんな喧嘩も楽しいでしょ? と余裕の表情を見せている。

 

「全くここの魔導士たちは血の気が多すぎる。俺はアトリエに帰るよ」

 

「あ、ララン! 危ない!」

 

 席を立つと、またしても頭めがけて酒瓶が飛んでくる。ルーシィはそれにいち早く気づき、飛びついてくれたが、あえなく酒瓶は頭を捉えた。

 

「こんのガキ共がぁーーーー!」

 

 頭から血を流しながらも、頭に当たった酒瓶を放り投げ、肩からかけているポーチをポンポンと二度叩いた。

 

「デュプリケイト……風操り車……」

 

「魔法!?」

 

 魔法を唱えた瞬間にギルドのボルテージは最高潮に達し、他のメンバーも一斉に魔法を唱え始める。さすがミラもこれはまずいと冷や汗をかいたその時。巨大な足音が響き渡る。

 

「やめんかバカタレ!!!」

 

「でかーーーー!!!」

 

「あら、いらしたんですかマスター」

 

 現れたのはギルドの天井まで届くかというような巨大な影の姿のマスター、マカロフ。マカロフの怒声がギルド中に響き渡るとメンバー全員の動きがピタッと止まる。しかし例外が一人だけいた。

 

「だーはっはっは!! 皆してビビりやがって! この勝負はオレのっ」

 

 ナツである。しかしそのナツもセリフを最後まで言うことができずに足で踏まれてノックダウン。その場はそこで一段落した。マスターは大きな音を立てながら歩き、ルーシィを見つける。恐怖で一歩も動けないルーシィにマカロフが問いかける。

 

「む、新入りかね?」

 

「は、はい……」

 

「ふんぬぅぅぅぅ」

 

 マスターが唸りだすと顔は更に畏怖すべきものへ変化し、ルーシィの感じる恐怖も更に増えて涙をうっすらと浮かべながら口は震えていた。

 

「よろしくね」

 

 マスターはみるみるうちに縮小していき、ルーシィの膝辺りまでの身長しかない老人の姿に戻った。この姿こそ『妖精の尻尾』マスター、マカロフの本来の姿である。マカロフはジャンプで二階のロッジにまで到達し、全員の注目を集めた。

 

「貴様ら、またやってくれたのぅ。見よ、この評議会から送られてきた文書の量を」

 

 マカロフが手に余る大量の文書を皆に見せ、内容を読み上げていく。

 

「まずはグレイ。密輸組織を検挙したまではいいが、その後、街を素っ裸でふらつき、挙句の果てに干してある下着を盗んで逃走」

 

「次にエルフマン。要人警護の任務中に要人に暴行!」

 

「カナ・アルベローナ。経費と偽って某酒場で呑むこと大樽15個、しかも請求先が評議会」

 

「ロキ。評議員レイジ老師の孫娘に手を出す、某タレント事務所からも損害賠償の請求が来ておる」

 

「そしてナツ。デボン盗賊一家壊滅するも民家七軒も壊滅。チューリィ村の歴史ある時計台崩壊。フリージアの教会全焼。ルビナス城一部損壊。ナズナ渓谷観測所崩壊により機能停止。ハルジオンの港半壊」

 

「最後にララバンティーノ・ランミュート。掘削依頼の鉱山を爆破し鉱山半壊。雑草除去の依頼では草の根すら残さず砂漠化。依頼の先々で勝手に素材を採取しすぎて住民からの苦情も来ている。さらにはナツとのハルジオン半壊じゃ」

 

 マカロフが文書を読み上げるたびに、その怒りの震えは大きくなる。メンバーもそれを感じ取ったのか下を向いて暗い表情をしている者が多数である。しかしマカロフは対照的に不敵に笑う

 

「だが、こんな評議員などクソくらえじゃ」

 

 マカロフは手から出した炎で文書を燃やすとポイっと捨てる。そこに犬のようにナツが走り食いついた。またマカロフは続ける。

 

「理を超える力はすべての理の中より生まれる、魔法は奇跡の力などではない。我々の内にある気の流れと自然界に流れる気の波長が合わさり、初めて具現化されるのじゃ。それは精神力と集中力を使う。いや、己が魂すべてを注ぎ込むことが魔法なのじゃ。上から覗いてる目ん玉気にしてたら魔道は進めん。評議員の馬鹿どもを恐れるな。己の信じた道を進めい!!! それが『妖精の尻尾』の魔導士じゃ!!!」

 

 マカロフの大演説でギルドメンバーの活気が戻る。メンバーには笑顔の花が狂い咲いた。その調子のまま時間は流れ、やがて夜になった。

 

「これでいいのね? はいこれであなたも『妖精の尻尾』の一員よ」

 

 ルーシィが右手の甲にギルドの紋章を押してもらっていた。早速ルーシィは見せびらかす様にナツとラランに手の甲を見せる。

 

「ナツー! ララン! 見て見てー。マーク入れてもらっちゃったー」

 

「よかったなルイージ」

 

「ルーシィよ!」

 

「これで俺達は今日から家族だ、な、ルイーダ」

 

「だからルーシィ!!」

 

 ナツとラランがルーシィを名前で弄っているところを見て、他の男性メンバーが目をハートにしながらつぶやく。

 

「お前らあんな可愛い娘どこで見つけてきたんだよ」

 

「いいなぁー俺のチームに入ってくんねぇかなー」

 

 そんなことには耳も貸さないナツは立ち上がり、どこかへ歩き出す。

 

「ナツ、どこ行くんだよ?」

 

「仕事、金ねーし」

 

 ナツが依頼版を見ているとバーカウンターに座っていたマカロフに一人の少年が話しかけている様子が見えた。

 

「父ちゃんまだ帰ってこないの?」

 

 少年の名前はロメオ。クエストに出かけた父マカオが一週間しても依頼先から帰ってこないことを心配し、マカロフに声をかけた。が、マカロフはこのギルドには自分のケツも拭けない魔導士はいないと一蹴。更には帰ってミルクでも飲んでろとまで言い捨てた。悔しさで震えたロメオはマカロフに顔面パンチを食らわせて泣いて帰っていった。その一部始終を見ていたナツは依頼版から取った依頼の紙を再び依頼版にめり込ませ、ギルドから歩いて出て行く。ギルドがざわつく中、ルーシィが話しかけてきた。

 

「ねぇララン? どうしちゃったの、あいつ」

 

「ナツも親がいないのは同じなんだ。どこかダブったのかもしれないよ。しかもナツはドラゴンに育てられてる」

 

「ドラゴン!? そんなの信じられるわけ……」

 

「まぁ信じられない話だが、小さいころにドラゴンに拾われて魔法から言葉、文化、いろんなこと教わったんだってさ。でもいきなりドラゴンは姿を消した。もうわかるだろ? それが火竜イグニール」

 

「そっか……」

 

「俺達、『妖精の尻尾』の魔導士は大小あるけど、みんな何か抱えてるんだよ、いろいろな」

 

「……」

 

「じゃ、行くか」

 

「え、どこに?」

 

「ナツに付いていくのさ。速くして、最初に俺ん家行くから」

 

 ルーシィを連れてギルドを出ると、慣れた足取りで自分の家に向かう。ルーシィは初めてのマグノリアの街に辺りを見回したり見上げたりしながら、見失わないように付いてくる。

 

「着いたよ。ここが俺の家。そして王国唯一の錬金術士ララバンティーノ・ランミュートのアトリエさ」

 

「錬金術士? 魔導士じゃなくて?」

 

「まぁまぁその話は中に入って話そう」

 

「う、うん……」

 

 扉を開けて中に入ると、既に部屋は明かりに照らされていて、紫色の髪にスーツとドレスを身に纏い、顔のよく似ている少年と少女が出迎えた。

 

「「おかえりなさいませマスター」」

 

「ただいま、ホム」

 

「え、家族? ラランの子ども?」

 

 ルーシィが丁寧に深々とお辞儀をしているホムを上から横から、下からも観察する。その様子を見て呆れ顔で返答した。

 

「子どもにマスターなんて呼ばせないだろ。まあ子どもみたいなものではあるけど。彼らはホムンクルスのホム。俺の助手さ」

 

「マスター、この方はどなたですか?」

 

 ホムが聞く。その声調はどこか人間のそれとは違い、たどたどしさを感じさせる。

 

「こいつはルーシィ。新しいピコマスターだよ」

 

「「ようこそピコマスター」」

 

「わわっ。えっ!? ピコマスター?」

 

「まぁまぁ座って座って」

 

 ホム達にお茶を出す様に命令すると、ルーシィを椅子に座らせる。ホムはお茶とパイを出し終わると部屋の釜の前に行き、釜をかき混ぜ始めた。ルーシィの向かいに座って、話を促す。

 

「で、聞きたいことは?」

 

「えっと……あの子たちは?」

 

「二人はホムンクルスのホム」

 

「ホムンクルス?」

 

「簡単に言えば人造人間だよ。昔から一緒にいるんだ」

 

「えぇっ!? 人造人間!? そんなことって……」

 

「可能だ。錬金術ならな。ちなみに名前は二人ともホムだ。呼び分けは男はホム君、女はホムちゃん」

 

「錬金術……ラランは魔導士じゃなくて錬金術士なの?」

 

「そうだ。俺は錬金術士。魔導士と名乗ってはいるが魔法と錬金術は全く違うもの、同じにされるのは気にくわないけど現状、錬金術士は肩身が狭い。だから魔導士に身を寄せているんだよ」

 

「じゃあ魔法は使えないの?」

 

「ほぼ使えない。錬金術は魔法ではない、と俺は思っているから。似たようなものではあるけど。ナツみたいに手から炎は出せないし、ルーシィみたいに鍵を使って精霊を呼び出すことは出来ない。瞬時に効果を発現する魔法のようなものは使えないよ。ただ、魔法のようなものは使える。さっきポーチを叩いてアイテムを出した。あれもその1つ」

 

「錬金術はどんなものなの?」

 

「そうだな。魔法は自分の魔力を使って無から有を生み出すが、錬金術は魔力を使わない代わりに有から有しか生み出せない。ただし、生み出したものを保存しておけるし、アイテムを使用する時にもほとんどの物は魔力は使わない。例えば今、飲んでいる紅茶に食べているパイ、全て錬金術で俺が作ったものだ。」

 

「えっ!? 錬金術って食べ物も作れるの?」

 

「もちろん。食べ物、薬、爆弾。ほとんどのものを作れる」

 

「へぇ~便利なんだね」

 

「そうだ! 便利だ。この世で魔法を使えるのは全人口の1/10と言われているが、錬金術は誰だって出来る。だがこの錬金術の寂れよう。だから俺は錬金術を普及させるために活動している。ルーシィもどうだ? 世界一の錬金術士の弟子にならないか?」

 

「もしかしてそれ狙いで連れてきたの? あたしは星霊魔法一筋なんだから他を当たって。ごめんね」

 

「ふーー。全く残念。この話は終わりだ。さっさとナツを追うぞ」

 

「切り替え早っ!!」

 

 ラランはがっかりした様子で立ち上がりコンテナに向かう。コンテナの中にはラランが錬金術で作成した道具や採取した素材が綺麗に並べられている。これらから数個を取り出してポーチに入れる。するといつのまにか隣に来ていたルーシィがコンテナの中を覗き込む。

 

「わぁーこれ綺麗。ねぇこれなんて言うの?」

 

「ん? ドナークリスタルか。それ一個で並の中型モンスターくらいなら一撃で沈められるぞ」

 

「えっ!? そんな怖いものなの!?」

 

「一個やるよ。いつでも作れるし」

 

「私でも使える?」

 

「さっきも言ったように使うのに魔力は使わない。適当に投げれば子供だって使える」

 

 ルーシィが喋りながら準備をしていると、ホムちゃんが後ろから近づいてくる。ホムちゃんに肩をちょんちょんと叩かれると、笑顔で振り向いて応える。

 

「マスター、出来上がりました」

 

「あぁお疲れ。これから出かけるから、二人はミラのところに持っていって依頼を終わらせたら休んでいてくれ」

 

「承知しました。マスター」

 

 そう伝えるとホム達は出来上がった錬成品を抱えてギルドに出かけて行った。それを見送ると立てかけていた杖を持ち、準備を整える。

 

「さて、そろそろ行こう」

 

「でもどうやってナツを追うの?」

 

「これを使う。地下見の水晶。これによって様々な場所を映し出すことができる。この時間ならこの辺りか。ほらいた。さぁ追うぞ」

 

「って言ってもこれだけ離れてたら……」

 

「ん? あぁそうか。しまった。まだあったかな」

 

 頭をポリポリと掻いて、再びコンテナを開けて探す。すぐに探し物を見つけるとコンテナを閉めてルーシィの元に戻る。

 

「ほれ、この靴を履いて」

 

 探していたのは翼の生えた奇抜なスタイルの靴。それを見せられ、しかも履けと言われたルーシィはすすっと後ずさりするが、それは許さない、ずずいっと距離を詰める。

 

「これを履けば、移動スピードが格段に上がる。歩いて三日の距離は一日半になる。半分になるんだぞ!」

 

「そんなすごい靴には見えないけど……」

 

「その靴の上からでも履ける。まずは試しだ」

 

「う~恥ずかしいぃ……」

 

 渋々ルーシィは靴を履く。するとルーシィはすぐさま靴の効果を実感したようで、恐らくはふわっと体が浮くような感覚で体が今までの何倍も軽く感じているだろう。ルーシィは数回足をばたつかせて足取りの軽さを確かめている。

 

「すごい、こんなに効果があるなんて……」

 

「どうだ。不可能を可能に変える錬金術の真髄だ。さぁナツを追うぞ!」

 

「うん!」

 




登場した錬金術アイテム


風操り車
一見、ただの風車。品質の低いものは扇風機ほどの威力しか発揮しないが、最高級クラスになれば、嵐をも上回る強風を発生させる攻撃アイテム。属性は風

ドナークリスタル
中に雷マークが仕込まれた結晶状の攻撃アイテム。対象に当てれば激しい雷が対象を襲う。ラランが所持する攻撃アイテムでも上位クラス。属性は雷

地下見の水晶
自分がいる地点を中心として一定の距離を見渡すことの出来るアイテム。見ることが出来るだけで人物の追跡などは不可能。

旅人の靴
靴に羽の生えた靴。奇抜なデザインではあるが、既に履いている靴の上から着用可能で徒歩による移動時間を大幅に削減する探索用アイテム。遠距離の移動には必須

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