FAIRY TAIL~妖精の錬金術士~   作:中野 真里茂

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一か月近く投稿できず、申し訳ありませんでした。

いつのまにか目標だったお気に入り数100件も超えていました。ありがとうございます。

これからもぼちぼちと頑張っていきます。


罪を償うということ

 ホムから伝えられたカレン・リリカの墓標は近くの森を抜けて、一面の滝に囲まれた崖の先に一つだけ建立されている墓であるという。彼女の所属ギルドは青い天馬だったため、墓の場所もそこから間もない場所である。妖精の尻尾からは多少の距離があったが行けない距離ではない。短時間で行けて、ロキが死に場所に選ぶならそこだろう。

 

「このあたりか……」

 

 その場所に辿り着くために、森林を掻き分けて突き進む。目的地が見えると人影が見えた。ロキで間違いないだろう。彼はこの時を待っていたのかもしれない。カレン・リリカが死んだときからこの瞬間を。すべての罪を清算できるこの日を待ちわびていたのかもしれない。

 

「ララン!?」

 

「ロキ、お前を星霊界へ戻すアイテムを作った。これで生命力を回復できるはずだ」

 

墓標の前に立っていたのはやはりロキだった。目の下のクマは酷く、顔も青ざめている。立っているのがやっとの状態なのはあきらかだった。

 

「馬鹿な!? 星霊界に定められた掟は絶対だ。人間の力でどうこうできるものじゃない!」

 

「そうだな。元々いた星霊界へ戻すのは不可能だ。だから疑似的な星霊界を作った。そこへ入れば消滅することはないはずだ」

 

「そんなことが可能なのか……流石は錬金術、とでも言っておこうか。でも僕には必要のない物だ。僕は罪を償うために消滅する」

 

 ロキの意思は頑なだった。どうやっても星霊石を受け取ってもらえそうにない。まだ彼に余裕がある間に使用しないとどうなるか分からない。今使っても成功するかどうか分からないのだ。使うのが速いに越したことはない。強引にでもロキにはこれを使ってもらう。

 

「悪いな。無理やりにでも使わせてもらうぞ!」

 

 星霊石を受け取るのを渋るロキに痺れを切らし、手に持った星霊石を無理矢理ロキの心臓部に押し付ける。するとロキの身体に呼応した星霊石が光を放ち始める。

 

「これは……」

 

「星霊石がロキを疑似星霊界へ移動させる!」

 

「うぅ……!!」

 

 しかし星霊石の光はロキを包み込んだと同時に砕け散ってしまった。ロキは依然として先程同様苦しんだままだ。バラバラになった星霊石の欠片を握りしめると、星霊石によるロキの救出が失敗したことに気がついた。

 

「ロキ!」

 

 唯一の手が失敗した。そのことに動揺は隠せない。どうすることも出来ずあたふたと慌てふためく姿はさぞ滑稽なことだろう。更にはまだ星霊石によるロキの回復が失敗したことを受け入れられずにいる。錬金術が失敗するなどあり得ない、そんな気持ちがどこかにあったのだ。その気持ちが失敗した今になって底から溢れ出してきた。

 

「そんな……俺の錬金術が……星霊石が……」

 

 心にあるのはロキを救えなかった悲しみよりも我が錬金術が失敗した悔しさだった。ただ握りしめた星霊石の欠片を見て、心が亡くなったように何も考えられなくなっている。何も出来ないまま目の前で仲間が死にゆく。形は違えど15年前の事が脳内でフラッシュバックする。逃げ惑うことしか出来なかった15年前、そして救うために立ち上がった今、どちらでも仲間を失うことになってしまうのか。そんな絶望が心に芽生えた。そこで耳を劈くようなロキの苦しむ声でまた現実に引き戻された。途方に暮れる中で後方から草木を掻き分ける音がした。

 

「ロキ! あれ...ラランも」

 

「ルーシィ!?」

 

現れたのはルーシィだった。南十字座の星霊クルックスからロキに関する話を聞き、この場所を突き止めたという。苦しむロキを見てすぐさま駆け寄るが、ルーシィにも解決策はなく、絶望的な状況に変化は訪れなかった。

 

「クル爺は詳しいことは教えてくれなかった。何があったのよ、ロキ」

 

もはや立つことすら厳しくなったのか墓標の横に尻餅をつくように座り込んで、ルーシィにも過去に起こったことを話した。ロキの話が進む度にルーシィの顔は険しくなっていく。話が終わる頃には殴り掛かりそうな顔になっていた。

 

「そんな顔をしないでくれよ。せっかくの美しい顔が台無しだ」

 

「だっておかしいじゃない! ロキがカレンを殺めたのだってアリエスを守るため! 不慮の事故よ!それでロキが星霊界から追放なんておかしい!」

 

ルーシィの言うことも最もだ。しかしそれは人の感情によるものであり、星霊界では通用しない。それこそ星霊界を束ねる絶対君主が法を変えない限りロキの運命は変わらない。

 

「ぐっ……ついに来たか」

限界を迎えたロキの体が半透明になり始めた。本格的な消滅が始まったのだ。未だにこちら側からロキを復活させる方法はない。それでもルーシィは諦めずにロキに魔力を分け与えていた。ロキはルーシィの為を思い、引き剥がそうとするが、しがみついて離れようとしない。

 

「開け!獅子宮の扉! 開いて!」

 

 ルーシィは必死に叫ぶが、星霊界の扉は開かない。もう全てを諦めているロキは優しくルーシィに辞めるように宥めるが、ルーシィは聞く耳を持たない。

 

「目の前で消えてく仲間を放っておけるわけないでしょ!」

 

 ルーシィは更に大量の魔力を放出し、獅子宮の扉を開こうとする。何度も何度も弾かれながら、決して諦めない姿は美しいとは言えない。しかし、自然と手がルーシィの肩に伸びていた。

 

「ルーシィ、俺の魔力も使ってくれ。獅子宮の扉を開けるのはルーシィだけだ」

 

「ララン! ロキ、絶対助けてあげる! 星霊界の扉なんてあたしが無理やり開けて見せる!」

 

 大量の魔力が渦巻く三人の周りには火花が飛び散り、三人の位置を中心として突風が巻き起こっている。

 

「二人ともやめてくれ! 開かないんだ! 契約に逆らった星霊は星霊界には戻れない! それに君たちは星霊と同化し始めている。ここのままじゃ君たちまで一緒に消えてしまう!」

 

 ロキも必死だった。既にカレンを裏切り、間接的に殺めてしまった。その罪に加えて、自分を助けようとする2人の仲間の命まで奪ってしまうなんてことは許されることではない。

 

「これ以上、僕に罪を与えないでくれー!」

 

「何が罪よ! そんなルール、あたしが変えてやるんだから!」

 

 ルーシィが叫んだその時だった。突風と火花が一瞬にして消え去り、ロキから弾かれるように強制的に引きはがされてしまった。さらに空に浮かびあがた流星が躍り、滝の水が空へ打ちあがっていく。そして現れたのは髭の長い巨人だった。ロキはその姿を見て震えあがる。

 

「まさか……星霊王!?」

 

「星霊の王ってことは一番上ってことか……」

 

 星霊王は腕を組み、こちらを見つめたまま、喋り始めた。

 

「古き友……人間との盟約において、我等、鍵を持つ者を殺めることを禁ずる。直接では無いにせよ間接にこれを行った獅子宮のレオ、貴様は星霊界に帰ることを禁ずる」

 

 星霊界のトップ、存在だけで圧倒的だ。あまりの迫力に気圧されそうだが、ぐっと踏み込んで立ち上がる。しかしそれよりも速くルーシィが立ち上がり、星霊王に臆することなく噛みついていった。

 

「ちょっと! それじゃあんまりじゃない!」

 

「古き友、人間の娘よ。その法だけは変えられぬ」

 

 法を定めるは君主である星霊王。ルーシィが法を変えると口走ったからこの場に姿を現したのか。真相は定かではないが、王自らが直々に姿を現すとなれば、それほどに重要なことになっているのだろう。

 

「ロキは三年も苦しんだのよ。アリエスの為に! 仕方なかったことじゃない!」

 

「余も古き友の願いには胸を痛める。が……」

 

「何言ってんの!。古い友達なんかじゃない。今目の前にいる友達のことを言ってんのよ。ちゃんと聞きなさい髭親父!」

 

「髭……?」

 

 流石にそれは不味いのではないかと思った。星霊王を怒らせては願いを認めてもらうにも厳しくなるだろう。ただ、ルーシィは星霊王へ怒りをぶつけ続ける。

 

「これは不幸な事故でしょ。ロキに何の罪があるっていうのよ。無罪以外は認めない。このあたしが認めない!」

 

「もういいルーシィ。僕は誰かに許してもらいたいんじゃない。罪を償いたいんだ。このまま消えていきたいんだー!!」

 

「そんなのダメ――――!!」

 

 ルーシィの叫びに呼応するように大量の魔力が放出される。

 

「あんたが消えてもカレンが戻ってくるわけじゃない。新しい悲しみが増えるだけよ!罪なんかじゃない。仲間を想う気持ちは罪なんかじゃない!」

 

 ルーシィの魔力では同時に呼び出せる星霊は一体だけだ。一体ずつ呼び出したとしても二体、三体が限界のはずだ。それが今、目の前に広がっている光景は何だ。アクエリアス、タウロス、キャンサー、バルゴ、サジタリウス、リラ、クルックス、ホロロギウム、プルー、所持している星霊が全て現界している。

 

「あんたが消えたら、あたしが、アリエスが、ここにいる皆が新しい悲しみを背負うだけ。そんなの罪を償う事にはならない!」

 

「おっと……」

 

 ルーシィはそこまで言うと、ふっと力が抜けたように倒れこんでしまう。姿を現していた星霊も消えてしまった。ルーシィを支えるためにすぐさま駆け寄り、肩を支えたが、意識を失っているわけでもなく、魔力欠乏だけで済んでいる。魔力が尽きてもなおルーシィは、星霊王に食い下がる。

 

「今、姿を見せてくれた、あたしの友達も皆同じ気持ち。あんたも星霊ならロキやアリエスの気持ちがわかるでしょ!」

 

「ううむ。古き友にそこまで言われては間違っているのは法かもしれんな。同胞アリエスの為に罪を犯したレオ、そのレオを救おうとした古き友。その美しき絆に免じ、この件を例外とし、レオ、貴様に星霊界への帰還を許可する」

 

「いいとこあるじゃない。髭親父」

 

「免罪だ。星の導きに感謝せよ」

 

 星霊王はにかっと笑うと星の元へ消え去った。ロキは自分が許されたことが許せず、星霊王に泣きつく。姿の無い星霊王の声だけがロキへ一つの使命を与えた。

 

「それでもまだ罪を償いたいと願うならば、その友の力となって生きることを命ずる。それだけの価値のある友であろう。命をかけて守るがいい」

 

 それだけを言い残して星霊王は完全に消え去った。その瞬間から時間が動き出したように滝の水が宙から降り注ぎ、周囲の景色が元通りに戻っていった。そして獅子宮の扉が開き、ロキ、もといレオは星霊界へ戻っていった。ルーシィの手には獅子宮の鍵が握られた。

 

「はぁ結局敵わなかったな」

 

「ララン。ロキを救えたのは貴方のおかげよ。魔力を貸してくれなかったらほんとに死んでたかも。ありがと」

 

「あ、あぁ。どうも」

 

「でもラランは何をしようとしてたの?」

 

「それはいいんだよもう。ロキは助かったんだから。帰ろ帰ろー」

 

「あ、ちょっと! 教えてよー!」

 

 砕け散った星霊石の欠片は全て集めた。今回は失敗したが、成功は失敗の元。次はもっと洗練させて、星霊を使役できるまでに仕上げる。そのためにはまず失敗作の研究が必要だ。仲間を守るためにも夢を叶えるためにも。

 

 

 で、翌日のこと。ロキは星霊界に戻ったことでエネルギーを回復。まだまだ万全ではないが、ギルドに挨拶をしたいと今までのロキの姿でギルドに顔を出していた。

 

「星霊だぁ?」

 

 ロキをあらゆる角度から観察しているのはナツ。グレイも全く気が付かなかったと首を傾げていた。そこで一つの疑問を持ったナツがロキに詰め寄る。

 

「ちょっと待て。お前牛でも馬でもねーじゃねーか!」

 

「バルゴだって人の姿だろ」

 

「確かに。でもあいつはゴリラにもなれるんだぞ」

 

「ロキは獅子宮だからライオンだな」

 

 ライオンという言葉にナツもハッピーも驚く。ハッピーは同じネコ科のロキに羨ましいとすり寄っていく。星霊であることが明らかになったものの、これからどうしていくのかは誰も聞かされていなかったためグレイがそのことを質問した。

 

「今まで通りとはいかないね。ルーシィがオーナーになってくれたから、これからはルーシィのピンチに颯爽と駆けつける。さしずめ白馬の王子様ってとこかな」

 

 ロキはそういう訳で、とルーシィをお姫様抱っこでこれからの二人の今後を話し合おうと連れて行こうとした。ルーシィが降ろせと言い、ロキを強制閉門で星霊界に帰しかけたが、ロキがちょっと待ってとルーシィを止める。

 

「何これ」

 

 ロキがポケットから取り出したのは数枚のチケット。受け取って字を見てみると有名観光地アカネビーチのリゾートホテルの宿泊チケットだった。ロキ曰くガールフレンド達と行くつもりだったが今回のこともあり、現世に長くいることも無くなったため、もう不要だと言うことだ。こちらとしては受け取らない選択はない。ありがたく受け取った。ホム達も喜ぶ事だろう。

 

「もうエルザには渡しておいた。楽しんでおいで」

 

 それだけ伝えるとロキは星霊界に帰っていった。すると麦わら帽子にハイビスカス柄のTシャツ、ホットパンツ、更には浮き輪まで装着し完全装備のエルザが姿を現した。いつも通りの大量の荷物も引きずっている。

 

「貴様ら、置いていくぞ」

 

「気はえーーよ!!」

 

 アカネビーチ、楽しみだ。早速準備を整えるためにアトリエに戻り、ホム達を連れて、皆と共にアカネビーチに出発した

 

 

 

 




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