FAIRY TAIL~妖精の錬金術士~   作:中野 真里茂

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前書きなどを書くというのがあまり得意ではないので、何を書けばいいのか悩んでいます


発動 神秘のアンク

「で、何でラランとルーシィがいるんだ?」

 

 ルーシィと共に無事にナツとハッピーに追いつき、マカオが消息を絶ったハコベ山に向かう馬車の中で話し込んでいる。相変わらずナツは乗り物に弱く、寝そべったまま息も絶え絶えである。

 

「ハコベ山の素材を採取するためだ」

 

「そんな自分本位な理由なの……」

 

「じゃあルーシィは?」

 

「私はせっかくだから何か『妖精の尻尾』の役に立つようなことしたいなーなんて」

 

 恐らく新人としてギルドの役に立って名声向上、株価上昇を狙っているのだろう。ハッピーもそのように思っていそうな顔でルーシィをじっと見つめている。それにしてもルーシィは氷点下も下回りそうな気温で寒くないのか。

 

「マカオさん探すの終わったら住むとこ見つけないとなぁ」

 

「おいらとナツの家に住んでもいいよ」

 

「本気で言ってたら髭抜くわよ、猫ちゃん」

 

「あい……」

 

「俺のアトリエに住んでもいいぞ。ホムという執事兼家政婦付きだ。いい条件だろ」

 

「代価は?」

 

「錬金術士になる」

 

「却下」

 

「ちっ」

 

 錬金術士になることを断られるのは慣れているので、もうそんなにショックは受けやしないが、有望な錬金術士候補がまた一人消えるのは悲しいことだ。体内に魔力があるだけで錬金術の才能に溢れていると言うのに。

 それから乗り物酔いで会話もままならないナツ以外で笑い話をすること数分、馬車が大きく揺れて停車した。馬車が止まると同時に乗り物酔いの解けたナツが飛び上がって外に出る。ルーシィ、ハッピーの後ろに続いて最後尾で外に出てみると、一面猛吹雪に見舞われており、馬車の運転手によるとこれ以上は馬車では進めないらしい。全員が馬車から降りると運転手はそそくさと街にもどってしまった。

 

「さて行くか」

 

「こんな寒い中行けないわよ! 開け、時計座の扉 ホロロギウム!」

 

 ルーシィが震えながら精霊を呼び出すと、大きな時計型の精霊が現れる。ルーシィは時計の中に閉じこもると、そこから出てこなくなってしまった。ルーシィの声をホロロギウムが代弁する。

 

「『私、ここにいる』と申しております」

 

「何しに来たんだよ」

 

「『何しに来たと言えば、マカオさんはこんなところに何の依頼に来たのよ!』と申しております」

 

「あれ、ルーシィは知らなかったのか。凶悪モンスター〝バルカン〟の討伐だ」

 

「『あたし帰りたい』と申しております」

 

「はいどうぞと申しております」

 

 ナツはルーシィをホロロギウム口調で切り捨てると、雪山の中へずかずかと歩いて入っていく。ナツに付いて行っても良かったが、流石にルーシィを一人で放ってはおけないと思い、その場に残った。震える彼女を見ながら数分が経った。こっちも寒いのでそろそろ出てきてくれるか、その時計に入れてくれるとありがたいんだが。

 

「出てきてくれと申しております」

 

「『寒いからやだ』と申しております」

 

「暖かくなる服をやるから出てこいと申しております」

 

 一連の流れを終えて、ルーシィがホロロギウムの扉を少しだけ開けた。そこにポーチから取り出した服を無理やりねじ込む。服が完全に時計に入りきるとすぐさまバタンっと指を挟まれそうな勢いで扉を閉められた。その場で着替えを待つことほんの少し。ルーシィは手渡された太陽を模した柄の入ったオレンジ色の服で、ホロロギウムを精霊界に戻して、外に出てきた。

 

「ありがとう。とってもあったかいし、オシャレねこれ」

 

 先ほどまでとの態度の違いには触れないでおくが、ルーシィが出てきてくれたのはこっちも動けるようになるので好都合だ。彼女のような新人魔導士をバルカンの巣食うこの山に置き去りにしたら本当に死にかねない。

 

「それは太陽のクローク、着用者を温かさで包む。さらに体力魔力も増強、攻撃、防御、素早さも上がる優れものだ。やるよ俺はもう使わないし」

 

「え! いいの!? じゃあ遠慮なく……ララン! 後ろ!!」

 

「ん? バルカン!」

 

 ルーシィが指さした方向を振り返ると巨大な猿のモンスター、バルカンが雪煙を上げてこちらに走ってきていた。ルーシィの前に出て、臨戦態勢で杖を構えるが、バルカンは横をすり抜けルーシィの元に走り去る。

 

「こいつ……」

 

「人間の女だ。うほほーー」

 

「喋れるのか。知能の高いモンスターだな」

 

 バルカンに向かって杖を振りかざすがバルカンのスピードは想像以上に速く、杖は空を切ってしまう。バルカンに杖で猛攻を仕掛けるも悉く躱されいなされ大ダメージを与えることができない。

 

「オンナーー!!」

 

「しまった……!?」

 

 一瞬の隙を突かれてバルカンはルーシィを捕まえ、山奥へ逃げ去っていく。少しは追いかけたが猛吹雪で先が見通せず、すぐに見失ってしまった。

 

「おーいララン!」

 

「ナツ、ルーシィが攫われた。追うぞ。お前の鼻が頼りだ」

 

「任せろ!」

 

 鼻が頼りだと言われて一切の疑問を持たないナツもどうかと思うが、実際に鼻が頼りなのだから仕方ない。

 ナツはくんくんと辺りを嗅ぎまわりながら雪山を歩いていく。炎の魔法を使うナツは体が暖かくていいかもしれないが普通の人間であるこの体にはこの猛吹雪は堪える。なんとかかんとか吹雪に負けず、ナツを見失わないように付いていくのが精一杯だ。

 

「ララン! いたぞ! うおおおおやっと追いついたーー!!」

 

「ルーシィ! 大丈夫か!?」

 

「ララン! ナツ!」

 

 ナツの鼻は見事に匂いを嗅ぎ分け、ルーシィに追いつく。そこでは既にルーシィが金牛宮の星霊タウロスを召喚し、バルカンと渡り合っていた。

 タウロスと言えば黄道十二門の鍵の一つ、ハルジオンでのアクエリアスといい本当に新人魔導士か疑いたくなるような鍵の揃いようだ。そもそも星霊魔導士が少ない分、師弟間、親子間で鍵の授受があるから一概には言えないが。

 とは言いつつも、やはりルーシィ自身の絶対魔力量が足りないのかタウロスは押され気味でバルカンの優勢は続いている。そして遂にタウロスがバルカンに投げ飛ばされるとタウロスは自身の武器である大斧を手放してしまう。バルカンはその斧を拾い上げ、こちらに切りかかってきた。

 

「この山で爆弾はまずいな。神秘のアンク」

 

 ポーチから青い石で作られた十字架のアイテム、神秘のアンクを取り出し、胸の前にかざす。すると神秘のアンクが光を放ち身体に宿る。

 

「パワー百倍だ!」

 

「うほっっっ!?!?」

 

 真上から振り下ろされる斧を受け止め払いのけて、バルカンの腹に強烈なパンチを浴びせる。バルカンはそのまま吹っ飛び、氷の壁に打ち付けられた。しかしすぐさま飛び上がり、再び飛び掛かってくる。

 

「こんくらいじゃダメか」

 

「うほーーーー!!!」

 

 バルカンのパンチに顔をモロに捉えられる。先ほどのお返しのように吹き飛ばされ、氷壁に打ち付けられた。身体に激痛が走る。

 モンスターとの戦闘なんて暫くぶりだし、ましてやダメージを受けるなんてことは前にいつ起こったかすら覚えていない。そんな人間が氷壁に打ち付けられて痛くないはずがない。

 

「痛ってぇ……神秘のアンク……二つ目だ。このアンクは防御をあげる。さらに三つ目。速さを上げる」

 

 神秘のアンクを二つ取り出し、胸の前にかざす。光が全身を巡り、エネルギーが漲る。身体に力を込めると、自分を中心として風が吹き出す。たじろくバルカンに対し、拳を構え、バルカンの視界から一瞬にして消え去えるほどの高速移動をする。

 

「動くなよ」

 

「うほっ!?」

 

 次の瞬間、既にバルカンの背後に回り込んで、後頭部に強力なパンチを叩き込む。バルカンはその一撃ノックアウト。その場に倒れこんだ。纏っていた光が消え去ると、神秘のアンクの効果が切れたことにより、一気に汗が噴き出して息が苦しくなる。

 

「ドーピングはやっぱするもんじゃない。疲労が段違いだ」

 

 息を整えていると、突然バルカンが光を放ち始め、全員が顔を覆うと次の瞬間、煙を上げて、バルカンはマカオに変化した。するとハッピーが気づいたように言う。

 

「バルカンに接収されてたんだ!」

 

「接収?」

 

「体を乗っ取る魔法だよ」

 

「とりあえずマカオの治療だ! 見せろ!」

 

 いの一番にマカオを抱き上げ、鞄から出した絨毯の上に寝かせると、薬を取り出す。しかし、予想以上の出血量に手が震え始める。

 

「思ったより出血量が多いし、出血が止まらねぇ。くそ、ナツ! 火で火傷させて傷口を塞げ!」

 

 ナツが素早く手に火を灯し、マカオの傷口に当てる。マカオは悲鳴を上げるが体を抑えつけて、無理やり続けさせる。今にも気を失い、死んでしまいそうなマカオにナツが呼びかける。

 

「死ぬんじゃねぇぞ! ロメオが待ってんだ!」

 

「な、情けねぇ。19匹は倒……したんだ……20匹目に接収されて、うぐっ」

 

「傷口が開く! 喋るなマカオ!」

 

 必死に暴れるマカオの体を抑えつけながら叫ぶ。

 

「な、なんとか傷口は塞いだ。ルーシィ、薬を塗るの手伝ってくれ」

 

「うん!」

 

「すまないマカオ、俺が強い薬をストックしておかなかったから……応急手当もいいところだ」

 

 マカオに薬を塗り終わると、彼の呼吸はだんだんと整っていき、眠ってしまった。一瞬死んでしまったかと焦ったが、心臓は動いており、生きていることを確認する。ルーシィのこんなところさっさ帰ろっと言う発言に全員が賛成すると、ポーチからトラベルゲートを取り出す。

 

「あ、それ、船の中にあったやつ」

 

「トラベルゲートな。この輪っかが二つあってこれに入ればもう一つの方に移動できる。移動先は俺の家だ」

 

「ものすごい便利アイテムじゃない。お兄さ~ん、おひとつ私にもちょうだい?」

 

「やだ、これ一つしかないし。欲しいなら自分で作れ」

 

 ルーシィが谷間を強調しながら迫ってくるが、見向きもせず断る。そもそもトラベルゲートは高等アイテムなんだから何個も作りたくはない。ケチだ何だといちゃもんをつけてくるルーシィだったが、ナツと一緒にマカオを両肩から持ち上げてトラベルゲートに入れる様子を見て、置いていくなと付いてくる。

 

「俺はこの輪を回収しなきゃいけないから最後に入らなきゃいけない。ルーシィ先に行ってくれ」

 

「う、うん。これに入ればいいんだよね」

 

「そうだ」

 

 ルーシィは説明されたものの二つの場所が通じていると言われても半信半疑だったが、ハコベ山に行く前に履かされた靴の効果も絶大だったことを思い出し、輪に向かって飛び込んだ。

 

「わっ!? あ、ラランの家」

 

「よし、速くロメオのところに行くぞ」

 

「すまねぇな。ナツ、ララン、そしてルーシィちゃん」

 

 先に入ったルーシィが尻もちついている間にマカオ、ナツと家に到着する。その間にマカオも目を覚ましていた。アトリエを出て、ギルドに向かう途中に息子のロメオはいた。ロメオの顔は曇っていたが、マカオの顔が見えるとたちまち太陽のような笑顔に変わる。

 

「じゃ、あとは親子水入らずでな」

 

「ナツ兄ー! ハッピー! ララン兄ー!ありがとーー!!」

 

「それとル-シィ姉もありがとーーー!」

 

 マカオ、ロメオ親子に見送られて三人はそれぞれの帰路についた。




登場した錬金術アイテム

太陽のクローク
正確には『太陽のクローク』の元である繊維『スケイルクロイス』を作成。太陽のクロークはラランの知人が作っている。体力、魔力など様々な能力を上げてくれる防具。着用者の身体を温める効果もある。

神秘のアンク
淡い青色の石で出来た十字架のアシストアイテム。攻撃力、防御力、速度をあげることが出来る。ただし、神秘のアンク一つであげることが出来るのはどれか一つのみで、全て上げるためには三つの神秘のアンクが必要。本人の体力は上がらないので使用後は疲労も大きい

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