FAIRY TAIL~妖精の錬金術士~   作:中野 真里茂

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夢への道

「おいおい遅刻だぜ? ララン」

 

「ちょっとミスフェアリーテイルコンテストが気になっただけだ」

 

「まぁいい。今ちょうどエバが行ったところだ」

 

 ファンタジア当日、ラクサス、フリード、ビッグスロー、そして俺はファンタジアの準備ではなく、ラクサスの隠れ家にてギルドの様子をラクリマで監視していた。先程見に行ったように今のギルドは賞金50万ジュエルという超高額報酬のミスフェアリーテイルコンテストが行われている。そこに俺達は仕掛けるという算段だ。ラクリマを覗けば、レヴィの出番を半ば奪うようにエバーグリーンが登場し、レヴィを石に変化させてしまった。これが彼女の眼の魔法。目を合わせた者を石にしてしまう。恐ろしいものだ。

 

「さぁ行こうぜ。新しい妖精の尻尾の幕開けだ」

 

 俺達はラクサスの雷に乗って、ギルドのステージに降り立った。ミスフェアリーテイルコンテストに出場した全ての女性は既に全員が石に変化させられており、ギルドメンバー全員が呆気に取られていた。

 

「よォ。妖精の尻尾の野郎ども……祭りはこれからだぜ」

 

「ラクサス!」

 

 一番驚いていたのはマスターだった。それもそうだろう。実の孫がこうして反乱にも等しい行為を働いているのだから。

 

「フリードにビッグスローも!? ラクサス親衛隊。雷神衆だ!」

 

「ララン……まさか貴様もラクサスに付いたのか!」

 

「マスター。俺には俺の野望があります。これだけは譲れない。ラクサスはそれを叶えてくれる」

 

 激怒するマスターは女性たちを元に戻せと叫ぶ。しかし、ラクサスは石像を自らの身体に引き寄せると。石像を人質にすると言い放った。そしてこちらの定めたルールを破る度に石像を壊していくと。その発言にマスターはそれを聞いてもはや悲しそうな表情も見せなかった。見える感情は怒り。俺達に対する明確な敵意だ。俺がどんなことをしているのかは分かっているつもりだ。恩を仇で返すような真似であること、今更謝って済むものではない。もはや引き下がれないところまで来ている。

 

「冗談で済む遊びとそうはいかぬものがあるぞ。ラクサス」

 

「勿論俺は本気だよ」

 

「ここらで妖精の尻尾最強は誰なのかハッキリさせようじゃないか」

 

「っつう遊びだよ」

 

「ルールは簡単。最後まで残った者が勝者。バトルオブフェアリーテイル!!」

 

 ラクサスが高らかに宣言したと同時にギルドの机が一つ、宙に放りだされた。その下にはナツの姿があり、拳を突き上げている。ナツは強い。無限の可能性を秘めている。だがナツですらラクサスには勝てない。その予想通り、ラクサスに殴りかかったナツは一撃にして黒焦げにされてしまった。

 

「俺達は5人。そっちは100人近く。制限時間は3時間。俺達は街のどこかにいる。見つけた瞬間からバトル開始だ」

 

「ララン……貴様ら……ふざけおってぇ!!」

 

 マスターが魔法を発動させ、巨大化していく。しかし俺達が焦ることは無い。ラクサスが指先から光を発し、ギルド全体に目晦ましを仕掛けると、その間に町中に散り散りに移動した。そしてラクサスの声だけがギルドにこだました。

 

「バトル・オブ・フェアリーテイル開始だ!」

 

 俺もギルドを出て街に紛れ込んだ。すると間もなく魔法のぶつかり合う音が聞こえてきた。これはギルドメンバーたちと雷神衆の戦う音ではない。フリードの魔法。術式にかかったメンバーたちが同士討ちをしあう音だ。フリードの魔法、術式は設置型の魔法。仕掛けるには時間がかかり、直接戦闘には向かないが、罠として使うには最適の魔法だ。5人対100人といったような口ぶりで話したが、そんな気はさらさら無い。同士討ちで出来る限り数を減らしてもらって、俺達に辿り着いた時には既に満身創痍。そこを叩く。それが作戦だ。

 

「ん?」

 

「ララン、君が敵に回るとは驚いたよ……」

 

「アルザック……もう傷だらけだな。誰と戦った?」

 

「ジェットとドロイだよ。戦いたくはなかったがビスカを助ける為なら仕方なかった。だから僕は君も倒す」

 

 最初の挑戦者はアルザック。俺達の作戦に嵌り、既に魔力を消耗している。もはやアイテムを使うまでもないだろう。

 

「銃弾魔法。台風弾!」

 

「弱いな……」

 

「そ、そんな……」

 

 あまりにも弱弱しい魔法だ。防ぐまでもない。全力の魔法ならばこうはいかないだろう。立っているだけで精一杯の人間の魔法はこうも無力だ。

 

「安心しろ。ビスカは助ける。だから暫く眠っていろ。オーラブリッツ!」

 

「ぐあぁっ!!」

 

「残り45人……」

 

 あまり魔力を消費しないように打ったつもりだったが今のアルザックには強すぎたか。魔法の直撃を受けたアルザックは後ろに倒れ、気を失ってしまった。

 

「悪いな。俺も本意ではない。ヒーリングベル」

 

 ヒーリングベルでアルザックの傷を回復する。魔力や意識は戻らないが、身体に受けた傷は全て回復させた。こうして潰しあうのはあまり好きではない。こうして向かってくる者、また街を歩き倒れた者を見つければこうして傷を癒していくつもりだ。

 

「アルザックが倒したのはジェットとドロイだったか。この辺にまだいるだろう」

 

 俺はアルザックを楽な体制に寝かせ、次の場所へ向かう。その途中やはりアルザックに倒されたジェットとドロイを見つけた。二人とも意識があったが、怪我が酷い。フリードの術式が解ける条件は余程厳しかったらしい。

 

「ヒーリングベル」

 

「ララン、お前なんで……俺達に倒されても良いのかよ?」

 

「魔力は回復させてない。傷を治しているだけだ。こうして戦うとはいえ、仲間だからな」

 

 傷を治した後、二人は痛みが引いて安心したのか気を失ってしまった。街の各地で戦いの音が響いている。ラクサスはこうしてギルドのメンバーを傷つけることによってマスターの降伏を引きずり出そうとしている。そしてそれと同時にマスターの座を譲る旨を言わせるのだ。ラクサスは己が求める強く、誰にも舐められないギルドを新たなマスターとして作り直す。

 

「雷神衆も戦い始めたか……」

 

 ラクサスから雷神衆と俺に渡されたラクリマに反応が入る。エバーグリーンがエルフマンとビッグスローがグレイと、そしてフリードがリーダスとそれぞれ戦闘を始めた。

 

「フリードの位置がやけに街の端だな……リーダスめポーリュシカ先生のところに石の魔法を解く薬でも貰いに行くつもりだったか」

 

 そして続々と通信が入る。エバーグリーンがエルフマンを撃破。残り41人。フリードがリーダスを撃破。残り40人。ビッグスローの続報はまだない。流石にグレイ相手では苦戦を強いられているか。街に仕掛けてあるフリードの術式を利用すれば勝てない相手ではないはずだ。

 

「来たか……」

 

 これでおおよそ半分が脱落した。そろそろマスターも降伏を認める頃だ。思念体をギルドへ送ろう。ギルドへ思念体を現すと既にラクサスの思念体がいた。そして残されたマスターと何故かナツ、ハッピーもいる。

 

「お揃いのようで」

 

「ララン……貴様……」

 

「よぉ、お前からも何とか言ってやってくれや。さっさと降参してくれってな」

 

「あぁ。お言葉ですがマスター。もはやそちらに勝ち目はない。速く降参した方がよろしいかと思います。エルザはこうして石化状態。ナツは何故か参加できず、エルフマンも敗れた。残るグレイもビッグスローには分が悪い」

 

「グレイを見くびるなよ……ララン、ラクサス……」

 

 グレイのことは見くびってなどいない。グレイは確かに強い。だがそれ以上にビッグスローが強い。更に地の利はこちらにある以上どうやってもグレイはビッグスローには勝てない。地の利を使うことが卑怯だとは言うまい。

 

「ラクサス、どうやってラランを味方につけた? このような事に賛同するような奴ではない!」

 

「どうやって? そりゃあんたが一番わかってんだろ。あんたがラランを縛ってきたんだからよ」

 

「マスターは錬金術を公に認めてはくれませんでした。それは魔法界の為だ。聖十大魔導という役職に就きながら錬金術を認めることは出来ない。そんなことは大人になるにつれて分かっていきました。ギルドのメンバーに勧めても誰も会得しようとはせず、ただ恩恵を受けるだけだった。錬金術を学ばないようにマスターの手が回っていたことに気づいたのはもう五年ほど前です。小さな街の錬金術士でも良いと思っていた。人の役に立てればと。でも俺は諦められなかった! 錬金術を広め、錬金術のギルドを作り、そして錬金術の大国としてアーランドを再興することを!」

 

「だから俺はその手助けをしてやるって言っただけさ。まずはギルドの奴らに錬金術を学ばせる。街の奴らにもだ。それでこいつはこちらに付いたってこった」

 

「ぬうう……まさかとは思っておったが……降参じゃ……もうやめてくれ、ラクサス、ララン」

 

 マスターの顔から怒りが消えた。この言葉を引き出すことが第一段階。そしてここからが更に難しく重要な部分になる。

 

「ダメだなぁ。天下の妖精の尻尾のマスターがこんなことで負けを認めちゃあ。どうしても投了したければ、マスターの座を俺に譲ってもらおうか」

 

「ゲーム終了まであと一時間半あります。どうかよくお考えを。いい返事を期待しています」

 

 こうして俺達の思念体はギルドを後にした。そしてまた街の中へ意識が戻る。俺達が話している間にもギルドメンバーたちの同士討ち、また雷神衆の活躍によって残る人数は一桁にまで減っていた。歩く中で怪我人を幾度も見つけたのでその都度回復を行っていたが、そろそろ自分に使う用が無くなりそうな勢いだ。

 

「あと四人か」

 

「見つけたぜ!」

 

「こんなところにいやがったか!」

 

 現れたのはマカオとワカバのおじさんコンビ。流石に二人係となると面倒だな。だがこのあたりにフリードの術式はない。どうにか倒すしかないか。

 

「紫の炎!」

 

「煙魔法!」

 

 マカオの紫の炎は風や水では消えない。ワカバの煙魔法は形が不定形で煙への攻撃は意味をなさない。どちらにせよ風操り車やレヘルン、フラムの類は使えないな。それとたたかう魔剣も使っている余裕がない。炎に気を取られれば煙が、煙に気を取られれば炎が襲い掛かってくる。二人とも中距離型の魔導士だ。俺と同タイプだけに距離感を詰めることが出来ない。

 

「ドナーストーン!」

 

「あぶねぇ!」

 

 放り投げた二つのドナーストーンはマカオは炎で弾き、ワカバは自ら避けて見せた。おじさん侮るなかれ。まだまだ現役だ。だが少し連携が乱れた。この隙を見逃すはずがない。雷神衆がな。

 

「ベイビー! ラインフォーメーション!」

 

「ワカバ!」

 

 路地の上空から狙い撃った刃状の光線が煙を切り裂き、ワカバを打ち抜いた。そして動揺したマカオを見逃す俺ではない。杖を構え、その先をマカオへ向ける。

 

「オーラブリッツ!」

 

 虹色のエネルギー弾がマカオへ直撃。あえなく戦闘不能となった。すぐさまヒーリングベルで二人を回復させ、ワカバを撃ち落としたビッグスローと合流した。

 

「悪い。助かった」

 

「なんてことねえよ。俺達の仲だろ?」

 

「お前と喋ったことあんまねえよ」

 

「まぁいいってことよ。これで街にいるのは全員か?」

 

「あぁ。ギルドにいるナツ、そして数には一応入ってるガジルだけだ。ラクリマもそうなってる」

 

 ビッグスローと共にラクサスの元へ向かう。それにしてもビッグスローの奴でかいな。俺もあまり小さくないはずなんだが。とどうでもいいことを考えながら歩いているとビッグスローがラクリマを見て何かに気づいた。

 

「残りはナツとガジルだけって言ったよな。じゃああと二人は誰だ?」

 

 ビッグスローが見せてきたラクリマには4の数字が見えた。残り人数は4人。おかしい。先ほど確認した時は確かに二人になっていた。人数が増えた? どうやって? 戦闘不能になっていないメンバーはマスターを除いてナツ、ガジル。後は石になった女性たち。外に出ているメンバー。

 

「……石になっている誰かが復活した。もしくは外にいる誰かが街に入ったのどっちかだな」

 

「どっちかって言ったってよ。エバはまだやられてねえし、誰かが来たってことしかありえねえだろ」

 

 増えたのは二人。もし仮にホム達が戦力に数えられていないとしたら、ルーシィとロロナが加算されて4人になって計算が合う。いや馬鹿な。二人が出向いた場所にはあらかじめ時間流の種を埋めておいた。ファンタジア直前までは帰って来れないはずだ。しかしロロナがそれを見破り突破していたら? 可能性はある。確認しに行くべきだ。

 

「ビッグスロー。外から誰が来たのか見に行く。お前はラクサスの所に行け」

 

「ちょっ、おい! どいつもこいつも勝手な奴だな!」

 

 戸惑うビッグスローを置いて、街の門の方へ駆けだした。ギルドへ続く大通り、ここを真っすぐに行けば門へ着く。まだ人数が増えてからそう時間は経っていない。まだこの通りから見える範囲にいるはずだ。人の流れを断ち切って門へ向かう。すると突然、街の人の姿が消えた。そして目の前に見知らぬ男が立っている。

 

「……」

 

「誰だ……いや、お前が残る4人の参加者であることに間違いはない。そしてギルドのメンバーで俺が顔を知らない。姿も見たことが無いのは一人しかいない」

 

「……」

 

「ミストガンか」




登場した錬金アイテム

時間流の種

埋めた場所周辺の時の流れを歪める種。成長するに連れて時間の乱れは大きくなる。上手くコントロールすると、大地の時間を進め、植物の成長を一瞬で大きく進めることが出来る。


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