FAIRY TAIL~妖精の錬金術士~   作:中野 真里茂

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チーム結成と初仕事

「いいとこ見つかったなぁ」

 

 マカオ救出から数日後、ルーシィはようやく決まった新居の風呂で温もっていた。体を温めて風呂から上がると髪を乾かし、バスタオルを体に巻き付ける。

 

「七万にしては間取りも広いし収納スペースも多いし、真っ白な壁、木の香り、ちょっとレトロな暖炉に竈まで! そして何より一番素敵なのはっ」

 

 ルーシィが目を輝かせながら、リビングへの扉を開く。

 

「よっ」

 

「こんにちは。ピコマスター」

 

「あたしの部屋ーーー!!」

 

 そこにはリビングのソファに深々と腰掛けながらスナック菓子を頬張るナツと魚を貪り、食べ終わった魚の骨をテーブルに捨てるハッピー。それにナツの横で綺麗な立ち姿で佇むホムちゃんがいた。

 

「何であんたたちがいるのよ!」

 

「まわっ」

 

 ナツとハッピーがルーシィの見事な回し蹴りで壁に打ち付けられる。

 

「だってミラから家決まったって聞いたから……」

 

「聞いたからって何!? 勝手に入ってきて言い訳?」

 

「ホムはマスターからの手紙を預かってきました」

 

「親しき仲にも礼儀ありって言葉知ってる!? 犯罪だからね!」

 

「しかし手紙を渡すためなら家に入っていいとマスターが言っていました」

 

ホムちゃんの純真無垢な瞳と首を傾げて本気でわかっていない姿を見て、手を出せないルーシィがプルプルと震えながら、頭に血を昇らせている。

 

「ホム、どうした~遅いじゃないか」

 

「あんたねぇ!!」

 

 ルーシィの家に入った途端、いきなり回し蹴りを受けたのだが一体これは何のキックなんだろう。特に悪いことを記憶は無いのだが。強いて言うならチャイムを鳴らさずに部屋に入ったことぐらいだろう。

 不意の攻撃に躱すことができずに、モロに顔面にくらい、玄関の扉にたたきつけられた。

 

「あんた、ホムちゃんに何教えてんのよ! 家に勝手に入って良いわけないでしょ!?」

 

「いいじゃん……ちゃんとホムちゃんの方を送り出したんだし……」

 

「そういう問題じゃないの!」

 

 ルーシィが何やら激怒しているが、気にせずに顔をさすりながら立ち上がる、パンパンとローブをはたくと鞄の中から一枚の紙を取り出してルーシィに見せた。

 

「今日来たのは、殴られるためじゃないんだ。この仕事をルーシィと行きたいと思って、ホムに手紙を持たせたんだが」

 

「あんたの持ってくる仕事なんてどうせまともなものじゃないでしょ」

 

「そう言うな。ある家に存在する本を取ってくるだけで20万J。どうだ」

 

「本を取ってくるだけ?」

 

「あぁそれだけだ」

 

「行く! 依頼書見せて!」

 

「え、あ、えーっと」

 

「何よ、もったいぶらないでよ!」

 

 ルーシィは手に握られていた依頼書を奪い取り、目を通す。あまり依頼書そのものは見せたくなかったのだが。行きたくないと言われたら他の女を誘わなくちゃいけなくなる。更にこの依頼をまだ見てない人限定で。

 

「エバルー公爵、とにかく女好きでスケベで変態! ただいま金髪のメイドさん募集中!……」

 

「よし。じゃ、行くぞ」

 

「嫌よ!?」

 

「ホムも金髪にして連れていく! ルーシィにだけ嫌な思いはさせない!報酬も3:1でいい!」

 

「行くわ」

 

「お前、現金なやつだな……」

 

 ルーシィとの交渉は金の力で無事に終わらせると、それまで空気と化していたナツが喋り出した。どうせ俺も行く、だろうが。

 

「それ、俺達が狙ってた仕事だぞ! 依頼版から取ってルーシィと行こうとしてたのに、朝見てもうないと思ったらおめぇが持ってたのか!」

 

「あんたもあたしを利用する気だったわけね……」

 

「悪いが今回は連れていけんぞ。割と距離もあるし、また乗り物で吐かれると困るからな」

 

「くっそーーー」

 

 ナツが暴れながら、ルーシィの家を出て行った。それに続いてハッピーも慌ててついていく。それを茫然と見送って、何事もなかったかのように話に戻る。今は20万Jにしか興味がないのだ。

 

「で、だ。ホムの髪を染めたら早速出発する。あと言ってなかったが、魔導士は仲のいい数人でチームを組む。一人じゃ厳しい依頼も数人なら楽になるだろ? 俺の場合は普段、俺とホム二人の三人チームだが、今日からルーシィも入れて四人チームで動きたい。どうだ?」

 

「いいじゃないそれ! 面白そう」

 

「よかった。断られたらどうしようって思ってた」

 

「断らないわよ。だってラランは強いしー、私を守ってくれるわよね?」

 

「俺は強くない。腕力だけならルーシィにだって負けるかもしれない。でも必ず守る。それがチームだ」

 

「も、もうなにかっこつけてんのよ!」

 

 ルーシィとの話が纏まる頃にはホムちゃんが見事な金髪に髪を染めて、戻ってきていた。アトリエからホム君も依頼に行く準備を整え、リュックを背負ってルーシィの家を訪れる。

 

「そういえばホムちゃんたちは何ができるの?」

 

「ホム達は普通に魔法が使える。どちらかといえばホムちゃんはサポート向き、ホム君は戦闘向きだが、どっちもそこまで変わらない。何かあったら頼りにするといい」

 

「うん。頼りにしてるね。二人とも!」

 

「「ピコマスターをお守りします」」

 

「その、ピコマスターって何?」

 

「マスターの下のマスターって意味。一番上はグランドマスター。俺がマスターでギルドメンバーは全員ピコマスターだ。と言っても貸し出したりはしないから、そこまで意味はないけどな。まぁ命令すればだいたいは動いてくれると考えとけばいい。さ、行くぞ」

 

 依頼先へ向かう馬車の中。今回はルーシィに加え、ホム二人が参戦。ホムちゃんは髪を金に染髪し、エバルーの好みを捉えた準備万端ぶりである。それにしても馬車というのは中々に揺れる乗り物だ。ナツじゃないが、久々の馬車に若干酔いそうである。

 

「言ってみれば、随分と簡単な仕事よねー」

 

「メイドを嫌がってた割には乗り気だな」

 

「当然! なんたってあたしの初仕事だからね! ビシっと決めるわよ」

 

「要は屋敷に入って本を一冊もってくればいいだけでしょ?」

 

「その屋敷の主はドスケベ親父だけどな」

 

「そうスケベ親父……こー見えて色気にはちょっと自信があるのよ。うふん」

 

 胸を強調したポーズを取る。ルーシィの向かい側に座っているのだが、正直何処を見ていいのかわからないし、視線が離れようとしない。ホム達はその姿を見ても眉一つ動かさず、黙ったままルーシィを見つめている。

 

「ちょっと何か言いなさいよ!」

 

「普通にエロくて目が離せない」

 

「ホムには理解できません」

 

「ふ、ふーん。やっぱり色気に溢れちゃうのも罪よね。あっホム君とホムちゃんはわからなくてもいいからね」

 

――シロツメの街――

 

「着いたーーーー」

 

「ホム、メンタルウォーターくれ。喉乾いた」

 

「かしこまりました、マスター」

 

 依頼先の街、シロツメの街に到着した。ホムから手渡された水をごくごくと飲み干して、杖を突きながら歩き始める。それを見たルーシィも遅れてついて来る。なんだかんだルーシィはまだ不安な単独行同を取ろうとしないし、しっかり付いてきてくれる。非常に助かることだ。他の奴等と仕事に行くとすぐ何かに釣られてどこかへ行ってしまうのが悩みの種だったんだ。

 

「まずは荷物を置きにホテルに行こう。その後は買い物をする」

 

「買い物……?」

 

「ホムはこのままでもメイドで通じるが、ルーシィの私服じゃやる気が見えないって門前払いされそうだからな、メイド服を買いに行く」

 

 ぎょっとした顔をしたルーシィだったが、そんなことは気にせずにホテルまで引き摺って行く。ホテルに荷物を置き、街へ買い物へ出かけた一行は街の衣料店を隅々まで探索し、ようやくメイド服の発見に成功した。ホムちゃんが見つけたメイド服をルーシィの元へ届け、さっそく着てみろとルーシィを試着室へ押し込む。

 

「どう? やっぱりあたしって何着ても似合っちゃわよね~」

 

「ホムもよく似合っていると思います」

 

「……いい乳だ」

 

「タウロスみたいなこと言わないで!!」

 

 なんやかんやでメイド服を着るときはノリノリで着てくれた。しかも普通に似合っていると思う。こんなメイドが応募してきたら普通は即採用すると思うんだがな。エバルーと言う男のことは何も知らないから一概には言えない。そのために色気のルーシィと幼さのホムの2パターンを用意したのだが。

 

 メイド服を購入して衣料店からしばらく移動した。街の郊外を歩いているとまさに豪邸というべき家が見えてくる。あれだと言って指をさすとルーシィはエバルーの家と勘違いしていた。ホムが依頼主の家であると指摘すると、たった一冊の本に20万Jも出すのだからこの程度の邸宅は持っていて当然かと納得している。

 玄関扉の前に立つとノックをして家主の返答を待つ。確か依頼主の名前はカービィ様だったはず。間違えないようしないと。

 

「『妖精の尻尾』の……」

 

「しっ!……静かに。すみませんが裏口からお願いします」

 

 自己紹介の言葉が遮られると、裏口から入るように促される。それほどまで周りにバレたくなく、この報酬の高さ、思ったよりも大きな裏がありそうだと感じた。

 

「さきほどはとんだ失礼を。私が依頼主のカービィ・メロン。こちらは私の妻です。まさか噂に名高い『妖精の尻尾』の魔導士さんが依頼を受けてくださるとは。お若いのに立派ですね。ではではこちらへどうぞ」

 

「いえいえ、我々のような新米ですが、必ず依頼は成功させますよ」

 

「で、こちらの方々は……」

 

「あたしも『妖精の尻尾』の魔導士です!」

 

「こっちの二人は自分の助手です」

 

「その服装は趣味か何か……いえいえ、いいんですがね」

 

「エバルーの調子を取ろうという浅い考えです」

 

「ちょっと帰りたくなってきた……」

 

 依頼主のカービィ邸に招き入れられるとそのまま客室に案内され、ルーシィとソファに腰掛ける。ホム達はその後ろで綺麗な姿勢で立っている。二人の向かい側のソファにカービィ、そして妻が座ると、少しの談笑した後、本題に入る。

 

「では、仕事の話をしましょう」

 

「はい」

 

「私の依頼はただひとつエバルー公爵の持つ、世界に一つしかない本『日の出(DAY BREAK)』の破棄または消失です」

 

「なるほど。それで『日の出(DAY BREAK)』」とはどのような本なんですか?」

 

「それ私も気になる! 20万も出す本って」

 

「おや? 値上がりしたのを知らなかったのですか。200万お支払いします。報酬は200万Jです。」

 

「にひゃっっ!?!?」

 

 カービィの口からその金額が発せられると、目が飛び出るほど驚いてしまった。驚きすぎて、ソファから落ち、報酬の等分を指で計算し始める。ホムにゆさゆさと揺すられ、正気に戻ると席に戻って一つ咳ばらいをする。

 

「ど、っどどうして、急に200万もの大金を?」

 

 声がどもりまくって自分でも引いた。しかしあまりの金額に精神状態が安定していない。200万の3分の1、約65万でも錬金術の発展に更なる投資が出来る。この仕事、何としてでもやり遂げて見せる。

 

「私はあの本の存在が許せない。それだけ出しても、あの本だけは破棄したいのです」

 

「……わかりました。必ず達成します。行こうルーシィ」

 

「あ、うん」

 

「では、失礼します」

 

 立ち上がってカービィ夫妻に一礼して、客室を出る。ルーシィがその後を追い、ホム達も深々と一礼して出ていく。200万Jもの大金に目が眩んだ目には燃え盛る闘志が漲っている。




登場した錬金術アイテム

メンタルウォーター
水に薬を混ぜたもの。飲むと魔力を一定量回復できる。瓶に入っているが、瓶も錬金術によって作り出したものなので飲み干せば消える。

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