FAIRY TAIL~妖精の錬金術士~   作:中野 真里茂

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超駆け足ですがニルヴァーナ編入ります


ニルヴァーナ

「王子、こちらが今回の報酬です」

 

「あぁ、ありがたく頂くよ」

 

 俺達はアカリファからクロッカスへ戻り、先の鍛錬場で報酬を貰った。この時は彼等との再会を喜び、俺達は無事にギルドへ帰還した。

 

 しかしその数日後、俺はステルクに呼び出され、再びクロッカスへ向かっていた。俺を呼び出すのは気が引けたらしいが、自分も職務を全うしなければならないと板挟みになった結果、とてつもない長文の手紙を送りつけてきた。俺は単身クロッカスへ向かい、ステルクの元へ向かった。

 

「で、どうしたんだ」

 

「どうしてもお耳に入れておきたいことが」

 

 会議室で二人きり。ステルクの顔はいつも以上に怖くなっている。これはどうやら深刻なことのようだ。アカリファで魔導士を尋問している時に何か聞き出したのだろうか。

 

「アカリファの一件、実は六魔将軍が関連しているとの事で」

 

 六魔将軍は三大闇ギルドの一つとして名を馳せ、同じく三大闇ギルドの一角を担い合う冥府の門、悪魔の心臓と共にバラム同盟を組む一大組織だ。

 ステルクの話によると最近乱発している闇ギルドの強盗騒動は全て六魔将軍傘下の闇ギルドによる物だという。

 そして全てのギルドの動機が六魔将軍への上納金の金額アップによる金銭問題であったらしい。

 このことからステルクは近く六魔将軍に大きな動きがあるのではないかと読んでいるらしい。これは既に王への報告が済んでおり、今後は評議員、各ギルド間との連携、承諾を取り、六魔将軍討伐へ動きだす見込みそうだ。

 

「今回、評議員からの連絡では六魔将軍討伐に際し、複数のギルドから精鋭を派遣し討伐を目指すとのことです。招集ギルドは化猫の宿、青い天馬、蛇姫の鱗、そして妖精の尻尾を予定しています」

 

「俺達もか」

 

「えぇ。そして国からも派遣します。私とエスティですが」

 

「エスティはヒスイ姫の教育係だろ」

 

「え……姫の教育係は二年前の姫が15歳になった時に終了していますが。今は闇ギルドの諜報員として働いていますよ」

 

「あいつ……俺まで騙してたのか」

 

「先輩らしいですね。詳細はまた後程お知らせいたします。その頃には奴等の目的も判明すると思われますので」

 

「俺の知らないところで……」

 

 関わりの持てないところで自分のことがどんどんと決まっていく置いてけぼり感に僅かばかりのショックを感じながらもステルクの話に耳を傾けていた。

 

「それではこれからの連絡はギルドマスターの方から行われますので」

 

「もういいのか?」

 

「はい。御足労頂きありがとうございました」

 

 その日はそれでクロッカスを後にした。

 

 ステルクの話では六魔将軍は名前の通り六人で構成される闇ギルドらしい。

 

 たった六人しかいないギルドとも取れるが、逆に言えばたった六人でバラム同盟の一角に食い込むほどの実力者の集まったギルドとも言える。

 

 六人相手に俺達は四つのギルドと国の連合で挑まなきゃいけない辺りでその強力さが伺える。

 

 そういえば以前対峙したエリゴール率いる鉄の森も六魔将軍の参加ギルドなんだとか。

 

「それにしてもうちのギルドが他のギルドと協力なんて出来るのかねぇ……」

 

 敵を倒す以前の問題を危惧しながらも、マスターからの発表を待つ日々が一週間ほど続いた。

 

 そして遂にマスターからギルドへの招集命令が下された。

 

「ワシ等はギルド間で同盟を組み、六魔将軍を討つこととなった」

 

 ステルクの言っていたように定例会でも六魔将軍の話が挙げられ、ギルド間連合による討伐が正式決定したのだと言う。

 

 そして、マスターから今回の討伐派遣隊メンバーが発表される。

 

 ナツ、グレイ、エルザ、ルーシィ。そして俺。妖精の尻尾からの派遣は五名。他四つのギルドからも精鋭が派遣されるとのことだ。

 

 俺達は早速準備を始め、集合場所である青い天馬マスターボブの別荘へ急行した。

 

「ここか」

 

 神殿のような造りだが、至る所にハートマークが散りばめられている。趣味のいいところとは言えないが別荘には最適の立地だ。

 

 そして俺達は別荘の中に入ると早速洗礼を受ける。

 

 いきなり照明が落ちたかと思えば、スポットライトが光る。そこにはポーズを決めた三人の影。

 

「妖精の尻尾の皆さん、お待ちしておりました。我等青い天馬より選出されしトライメンズ」

 

「百夜のヒビキ」

 

「聖夜のイヴ」

 

「空夜のレン」

 

 青い天馬の誇るイケメン三人衆トライメンズ。確かにイケメンだ。

 

 それに比べてこっちのギルドは、馬車酔いのナツ、パンイチのグレイ。ダメだな。

 

 トライメンズはささっとエルザを取り囲むと口から流れ出る褒め言葉であれよあれよ椅子に座らせ接待を始める。レンが続いてルーシィも椅子に座らせる。

 

 そこからは二人に対して可愛いだの、ドリンクを出しながら別にお前の為に作ったわけじゃないだのとホストまがいの口撃をかましていた。

 

「君たち、その辺にしておきたまえ」

 

 トライメンズとはまた違うダンディーで渋みのある甘い声が階段の上から聞こえてくる。トライメンズは一夜様

と名前を呼んだ。

 

 トライメンズすら凌ぐイケメンとはどんな人物かと少しだけ気になった。

 

「会いたかったよ。マイハニー。貴方の為の一夜でぇす」

 

 その溢れんばかりのきらめきオーラを纏いながら、階段を下りてきたのは、四頭身で低身長。小太りで顔は八角形。エルザのことをハニーというからにはエルザの恋人か何かかと思って彼女の方を見てみると、それはまぁ青く引き攣った顔で一夜を見ていた。

 

「全力で否定する」

 

「エルザこいつ何者なんだ」

 

「凄い魔導士ではあるんだがな。私も苦手だ」

 

 エルザもたじろぐ一夜という男。キモいと言ってしまえば終わりだが、名前ぐらいは覚えておこう。

 

 がやがやとし始めるとグレイが苛立ちを隠しきれなくなる。喧嘩を吹っ掛けるような口ぶりでトライメンズを挑発すると、トライメンズもその喧嘩を買うように身を乗り出した。

 

 喧嘩と聞いて黙ってないのがナツ。急に元気になったかと思えばトライメンズに食って掛かる。俺はそれを止めようと手を伸ばすが、それよりも先にエルザが動いていた。

 

 一夜に匂いを嗅がれたエルザはその寒気から脊髄反射の速さで一夜を殴り飛ばしてしまう。

 

 玄関扉の方へ飛んでいく一夜は丁度開いていた扉から入ってきた者に頭を鷲掴みにされる。

 

「これは随分ご丁寧な挨拶だな。貴様らは蛇姫の鱗上等か?」

 

「リオン!?」

 

「グレイ!?」

 

 一夜の頭を氷漬けにした魔導士は俺達がガルナ島で出会ったリオンだった。突然の再会にリオンもグレイも驚いている。

 

 リオンは一夜を投げ返すと、先にやったのはそっちだろと不敵に微笑む。

 

 大将を傷つけられたトライメンズも黙っておらず、険悪なムードが流れる。

 

 その時、玄関から続く長いレッドカーペットがもこもこと動き始め、ルーシィを襲った。

 

「人形撃・絨毯人形!」

 

 ルーシィには魔法の使い手が誰か分かっているようだった。その正体はリオンと同じくガルナ島でルーシィと対峙したシェリー。愛の為に生まれ変わったという彼女は盛り盛りのメイクでセクシーな衣装を身に纏っている。

 

 三ギルド睨み合いの構図となったこの場において、これから六魔将軍討伐に向けて協力し合うという目的は到底果たせそうには無かった。

 

「やめい!」

 

 そこへ一喝を入れるように現れたのは俺も名前を知る超有名魔導士だった。リオン、シェリーらと同じ蛇姫の鱗所属、ジュラ・ネェキス。通称岩鉄のジュラ。蛇姫の鱗の絶対的エースにして聖十大魔導にの一人だ。

 

 ジュラの登場によって場は沈静化した。三つのギルドが集い残るは化猫の宿とステルク、エスティを待つのみだ。一夜の話によると化猫の宿の派遣は一人だと言うが。

 

「きゃぁ!」

  

 走りながら別荘に入ってきたはいいが、途中でこけてしまったのは背丈も小さい可憐なお子様だった。

 

 まさかこの子が化猫の宿の派遣隊なのか?

 

「あ、あの遅れてごめんなさい。化猫の宿から来ました。ウェンディです。よろしくお願いします!」

 

 確かに化猫の宿の魔導士なようだ。こんな小さな女の子一人を派遣するとは化猫の宿はどういう神経をしているんだ。

 

「あら一人じゃないわよ」

 

 ウェンディの後ろから現れたのは白い猫。ハッピーと同じように人語を喋る猫。性別は女の子のようで、既にハッピーは心を奪われているようだ。名前はシャルルというらしい。

 

 結局ウェンディもトライメンズに捕まり、接待用のソファに座らされていた。

 

「各ギルドの諸君。御足労頂き誠に感謝する」

 

 ウェンディに遅れること数分。ステルクとエスティが到着した。

 

「この討伐隊を指揮するステルケンブルク・クラナッハだ」

 

 俺はステルクの強さを重々知っている。だが他ギルドの魔導士からすれば、魔法も使えない一介の騎士が魔導士を指揮するのは納得いかないようで。

 

「おいおい、俺達の指揮? 戦力にならない奴に命令されて動く気にはなれねえな」

 

「同感だ。我等を指揮するというなら実力を示してもらおうか」

 

 食って掛かったのはグレイとリオン。ステルクはその怖い顔を崩すことなく、背負った剣を抜いた。宥めるエスティだったが、こういう奴等には示してやらねば聞きませんと二人に向かって剣を向けた。

 

「二人同時でいい」

 

「へっ! 国の兵士だか騎士だか知らねえけど調子に乗られちゃ困るぜ」

 

「魔導士には魔導士のやり方があるのでな」

 

「喧嘩なら俺も混ざるぞ!」

 

 どこからか飛んできたナツも含めて三対一の決闘が始まった。グレイ、ナツ、リオンが一斉にステルクに飛び掛かる。しかし勝負は一瞬でついてしまった。

 

「ふん。魔導士というのはこの程度か。では私たちの作戦に従ってもらうぞ」

 

「嘘だろ……」

 

「馬鹿な……」

 

「強えー」

 

 ステルクは三人をあっと言う間に地面に這いつくばらせた。三人だけではなくその場にいた魔導士全員が愕然とステルクを見つめる。

 

 魔導士はこの世で最も強い力を持つと言われている。その魔導士、しかも国指折りのギルドの三人相手に一介の騎士が剣一つでねじ伏せるというのは信じられない光景だったのだ。

 

 ステルクは剣を背中に仕舞うと何事もなかったかのように話し始める。

 

「我々が討伐する六魔将軍の狙いは古代魔法ニルヴァーナ。諸君はご存知か?」

 

 魔導士たちは顔を見合わせるが、その魔法を知る者は誰一人としていなかった。

 

「それもそのはずだ。ここから北に行くとワース樹海が広がっている。そこに古代人が封印したと言われる既に存在しない魔法なのだ。だが六魔将軍はその封印を解き、ニルヴァーナを手に入れようとしている。ニルヴァーナがどんな魔法かは依然として不明だが、彼等が手に入れようとするからには危険な魔法に違いない。我々はそれを阻止する為、六魔将軍を討つ」

 

 ステルクの話が終わると代わってエスティが前に出る。

 

「私はエスティ・エアハルト。闇ギルドの諜報員をしています。六魔将軍のメンバーを紹介するわ。まず毒蛇を操るコブラ。速度の操作系魔法を使うレーサー。天眼のホットアイ。心を覗く女エンジェル。情報は少ないけれど名前だけ、ミッドナイト。そして司令官のブレイン。個々が一ギルドに匹敵する力を持っているわ。私たちは決して一人で戦おうとはせず、数的有利を取らなければいけない」

 

「我々の作戦は六魔将軍との直接戦闘ではない。ニルヴァーナ探索の為にこの樹海に拠点を設けているはずだ。租君に与える任務は六魔将軍全員をその拠点に集めること」

 

 そこには当然どうやって、そして集めてどうするのかという疑問が放たれる。どうやっては結局殴ってという原始的解決に至るのだが。集めた後はどうするのか、それを説明するのは一夜だった。

 

「我々青い天馬が大陸に誇る魔道爆撃艇クリスティーナで拠点もろとも葬り去る!」

 

 ビシッと決めた一夜だったが、やはりどこか残念な感じがする。

 

 この作戦で重要なのは各ギルドの連係。誰かが突っ走って突撃しては六魔将軍の思うように動いてしまうだろう。

 

「よっしゃー! 燃えてきたぞ! 六人纏めて相手してやる!」

 

 と思った矢先ナツが別荘を飛び出していった。それに続いてグレイやエルザ、半べそをかきながらもルーシィが続いて行った。

 

 グレイには負けられないとリオンとシェリーも続き、トライメンズも後を追う。

 

 あわあわと慌てふためいていたウェンディもシャルルに手を引かれて、別荘を出る。それにハッピーも続いた。

 

「どいつもこいつも魔導士ってのは協力ってことを知らねえのか! ステルク! エスティ!」

 

「はい!」

 

「お守りします!」

 

 別荘に一夜とジュラを残し、俺達も最後方からナツ達を追うように別荘を出た。

 

「あいつら足早すぎだろ。どこいった?」

 

「無暗に走り回って体力を使うのは愚策です。慎重に行きましょう」

 

「先輩に賛成です。私たちは私たちで行動しましょう」

 

 二人の助言もあって俺達は無理にナツ達に追いつくことを諦め、まずは拠点を探す方針に切り替えた。

 

 しかしそのすぐ直後、樹海の中から悲鳴が聞こえてきた。

 

「王子、今の声は……」

 

「ルーシィだ。声の方に向かうぞ!」

 

 声のした方角へ向かうと、そこには衝撃の光景が待ち受けていた。ナツやグレイ、エルザまでもが倒れ、こちらの魔導士は全滅。そして六魔将軍は全員が終結し、中央に構える人物が今にも止めの一撃を放たんとしていた。

 

「やべえ! 魔除けネット!」

 

 巨大な網がナツ達の上に覆い被さり、魔法の直撃を防いだ。ネットは魔法との衝突により消失したが、彼らはどうやら無事なようだ。

 

「六魔将軍は!?」

 

 当の六魔将軍は魔除けネットと魔法の衝突が生じさせた爆発煙の間に姿を消していた。

 

「とにかく傷の回復だ。ヒーリング・ベル」

 

「あんた治癒の魔法が使えるの!?」

 

 ベルを鳴らし、皆の傷を癒していく。そこへ食って掛かってきたのはシャルルだった。

 

「魔法じゃねえけど治癒は出来る。見た目の傷だけだけどな。あれ、そういえばウェンディは?」

 

 下を向くシャルルに話を聞くと、ウェンディは六魔将軍に天空の巫女と呼ばれ、何らかの利用価値を見出され連れ去られてしまった。手を伸ばした先にいたハッピーも一緒らしい。

 

 天空の巫女、その言葉が何を示しているのかはまだ分からないが、彼らにとって特別な存在であることに変わりは無いだろう。

 

「ララン!毒って治せない? エルザが!」

 

 ルーシィに声を掛けられ、エルザを見ると、ヒーリング・ベルが効いていないようだった。なんでもコブラの操る毒蛇に腕を咬まれ、既に毒が回っているらしい。

 

「今、シェペルホルンは持ってねえ……今から作るにしても時間がかかりすぎる」 

 

「切り落とせ!」

 

 エルザはこのままでは戦えないと剣を一本落とし、腕を切り落とす様に伝えた。その剣をステルクが拾うと躊躇なく振りかぶった。

 

「彼女は重要な戦力です。今死んでもらう訳にはいかない」

 

「ちょ、ちょっと待てステルク! 他にも方法が」

 

 俺のようにここで腕を切り落とすのは早計だと言う派閥とジュラを初めとしてエルザの決意ならば従うまでという派閥が対立する。

 

 それに関係なくステルクは剣を振り下ろしてしまう。

 

「おい」

 

 それを止めたのはグレイだった。剣を氷漬けにし、ステルクの攻撃を寸でのところで止めた。

 

「君には彼女の命より腕の方が大事か?」

 

「騎士のあんたにゃ分かんねえだろうけど、仲間の腕はそんな軽いもんじゃねえ。他に方法があるかもしれねえだろ」

 

 ステルクはため息をついて渋々剣を置く。しかし時間は刻一刻と過ぎ去っており、遂にエルザは毒に耐え切れず後ろに倒れてしまった。

 

 そこへ助け舟を出したのはシャルルだった。

 

「ウェンディなら助けられるわ」

 

 どういうことだと全員がシャルルの話に耳を傾ける。ウェンディは治癒の魔法を使い、解毒も出来ると言う。魔法界では治癒は失われた魔法。それをあんな少女が使いこなすとは到底信じられないが今はシャルルを信用する他に道は無かった。

 

 そしてシャルルは続ける。 

 

「ウェンディは天空の滅竜魔導士。天竜のウェンディ」

 

 三人目のドラゴンスレイヤーともなれば少し驚きが薄れてくる。だがそれならば治癒魔法を使えるのも納得だ。

 

 今、俺達のするべきことは決まった。全ギルドの方向性が一つに定まったのだ。

 

「いがみ合ってる場合じゃないな」

 

「諸君。まずはエルザ君救出の為、ウェンディ君の奪還を目指す! 行くぞ!」

 

「「「「オォ!!」」」」

 

 俺達は円を描き、中央に手を寄せ、ステルクの掛け声とともに俺達は今日初めて結束した。

 

 この13人でまずはウェンディの救出に向けて動き出した




登場した錬金アイテム

魔除けネット

一度だけ魔法を無効化する防御アイテム。特殊な蜘蛛の糸と薬泉の湧き水から錬金される為強度と性能は十分。



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