過去作3作をプレイしていると懐かしさだったり思い出だったりが込み上げてくる作品でしたね。
少しばかりの不満というか疑問はありますが、満足できました。
俺達はエルザを寝かせ、2~3人のチームに分かれて六魔将軍とその拠点捜索及びウェンディの救出に動き出した。
俺は何をしているかというと……
「エルザの容体はどうだ」
「さっきと変わらない……皆急いで……」
ルーシィと共にエルザの看病と護衛をすることになった。俺も捜索に行くと言ったのだがステルクとエスティが貴方はここにいろと何度も言ってくるので仕方なく従った形だ。
そしてもう一人
「お前は行かないのか? ヒビキ、だったか」
「女性二人をおいてはいけないよ。それに君のことも気になるしね」
「何か怪しいことでも?」
ヒビキは俺をじっと見つめる。特に怪しいことをした覚えはないが。
「君、いや君というのも失礼かな。貴方はアーランド王国の王子だろ? ステルクにエスティどちらもアーランド王国に仕えていたはずだ」
「それなりに伏せてた情報も筒抜けだな。もしかして皆知ってるのか?」
「いや僕しか知らないだろうね。これが僕の魔法、古文書。情報を司る魔法さ。あの2人について調べてみたらたまたまね。僕がここに残っている理由の一つはこの魔法を使って皆がウェンディちゃんを保護した時にこの場所を皆に伝える為さ」
「あんまり広めないでくれよ。色々と面倒になる」
「あぁ。勿論」
「でもお前の前に口封じしなきゃいけない奴らがいるみたいだな」
ヒビキと話している内に周囲をガサガサと動く音で取り囲まれる。姿を現す頃には俺達は既に包囲されていた。
恐らく六魔将軍傘下の闇ギルドだろう。
それにしても数が多い。ギルド一団体でいらっしゃいっているようだ。
「ヒビキ、お前戦えるのか?」
「いやぁぼくは戦闘はからっきしでね」
「ルーシィ。お前はエルザを守ってろ」
「う、うん!」
この作戦をステルクから聞いた時、少し好奇心が騒いだ。俺は参考書を読みペンを走らせ、様々な新たなアイテムを試作した。今日までに出来上がったもの、まだ試作段階のもの、また失敗したもの、どれも闇ギルド相手ならお咎めなしで試せるというものだ。
「実験台になってもらうぞ。闇ギルド」
「実験台ぃ? お前らはここで終わるんだよ!」
血気盛んな一人が巨大な斧を振りかぶって飛び掛かってくる。最初の試作品をバックから取り出す。
「悪を貫く正義の槍・リュミエールランス!」
戦う魔剣からアイデアを広げた自動戦闘槍のリュミエールランス。召喚された五つの光槍が自在に飛び回って魔導士たちを蹴散らしていく。そしてこの槍は攻撃だけが効果ではない。
「な、なんだ!? 見えねぇ! 目が見えねえ! クソ!」
リュミエールランスはヒットした相手の光を奪う。何も動かなければいいものを焦る彼らは無暗に手に持つ武器を振り回す。それは味方への攻撃となり、たちまち同士討ちが起こった。実はこれもリュミエールランスの効果。一時的にレベルを下げる。レベルとは彼等故人の能力を指す。力の強さや足の速さ、そして知能も。試作段階ではかなり高い水準を持ったリュミエールランスは十分実用圏内だろう。
「こんなものか。デュプリケイト・祝砲!」
召喚した祝砲、つまりは大砲による一尺玉の砲撃によって闇ギルドは瓦解した。倒れる魔導士の一人を無理矢理叩き起こし、ウェンディの場所、つまりは六魔将軍のアジトを吐かせようとした。
「知ってること全部話さないとこの爆弾口に突っ込むぞ」
「は、はい!」
洗いざらい喋ってもらった後、腹パンで気絶させた。
「西の廃村か。古代人の村がある辺りか。まぁ方角だけでもわかっただけ良いか。ヒビキ、情報を皆に転送してくれ」
「もうやってるよ。でもその必要もなかったみたいだ」
「ん?」
「皆も闇ギルドの襲撃に遭ったみたいだよ。返り討ちにして情報を得たらしい」
考えることもやることも同じか。場所が分かれば、皆のことだからすぐにウェンディを連れ戻してくれるだろう。
「ララン、エルザの顔色がちょっと悪くなってきてて……」
ルーシィから情報を貰い、エルザの様子を見てみると確かに最初よりも顔色が悪化して息も荒くなっている。時間との戦いだとは分かっていたが、ここまで毒の進行が速いとは。
「毒は治せないが、エルザの体力を回復させよう」
小瓶に入ったオレンジ色の液体である知恵熱シロップをバックから取り出し、エルザの口に含ませる。すぐに効果が現れ、エルザの呼吸は少しだけ穏やかになった。
「あっちょっとよくなったかも」
「一時的な効果だ。そこまで良い材料を使っているものでもないから。頼むぞ皆……」
一方その頃、ステルクとエスティは闇ギルドを返り討ちにして、西の廃村に向かっていた。
「私たちのいる場所からは廃村は遠いですね」
「そうね。私たちより他の皆の方が速いかも」
そうは言いつつも二人の足は西の方角へ向かっていた。二人が同じ任務に就くのは久しぶりであり、実にアーランドでロロナやラランと共に各地へ採取へ赴いた時以来である。
「王子は大きくなられたわね」
「えぇ……あの方も喜んでいることでしょう」
「そうね……王子にジオ様のことは?」
「いえ、やはり私の口からは言えず……」
「そう……この作戦が終わったら二人で言いに行きましょう。あれもちゃんと持ってきてね」
「私の心が弱いばかりに。ご迷惑をおかけします」
「いいのよ。それじゃ気を引き締めていきましょ」
「はい!」
エスティがステルクを先導して樹海を進んでいく。二人の進む森の先は深い闇に包まれていた。
「……あら、貴方たちは」
「おー!軍隊のおっさんとおばさん」
まもなくエスティの鉄拳がナツの呑気な頭を打ち砕いた。エスティ・エアハルト、36歳、独身。まだまだ若者には負けない元気なお姉さんである。
「で、この下にアジトがあるのね」
「多分な」
「ハッピー―!!! ウェンディーーー!」
崖の下に向かってナツが叫ぶ。シャルルが誰かいるかもしれないからやめろと呼びかけたが、次の瞬間、高速で何かが飛び掛かってきた。その何かに反応しきれず、崖から下を覗き込んでいたナツとグレイは後ろに吹っ飛ばされる。
「ふむ、六魔将軍の一人か。ナツ君、グレイ君。ここは私たちに任せてウェンディ君を助けに行け!」
「行かせるかよ」
突如飛来した何か。それは六魔将軍の一人レーサー。名前の通り高速のスピードを武器とした魔導士である。前に立つステルクを躱し、崖を下ろうとするナツとグレイを止めに入る。
「させん!」
ステルクは背の大剣を地面に突き刺すと剣から雷が流れ出し、レーサーの走る地面を崩壊させた。
「あなたの相手は私たちよ」
「……この俺の走りを止めたな」
ステルクは大剣を、エスティは二丁の十手を構える。何の変哲もない剣を構える二人を見たレーサーは二人が魔導士ではないことを悟った。
「ふん……魔導士ではない貴様らに俺が止められるとは恥だな」
「確かに私たちの肩書は魔導士ではない。だが魔導士とは何だ。魔法を使える者を魔導士と言うのか? ならば私たちも魔導士ということになるが」
ステルクはそう言うと手に持つ剣に雷を纏わせる。
「そうね。私たちが魔法を使えないっていつ分かったのかしら?」
エスティは二回軽くジャンプをすると三人に分身して見せた。
「まあいい。二人纏めて消してやる」
レーサーは持前のスピードを活かした突進攻撃を仕掛けてくる。確かに速いと冷静に躱すステルクは感じた。しかしこの程度のスピードならば付いていけないこともないとも同時に感じていた。
「ステルクくん、援護お願い! ハニースタップ!」
エスティがレーサーの隙を突いて同じく高速の攻撃を仕掛ける。レーサーに向かって一直線に突撃した。しかしエスティの十手がレーサーを捉えることはなく、木を足場に次々に移動するレーサーに躱されてしまう。
「そこだ!」
レーサーが足を止めた瞬間に上を取ったステルクが上空からレーサーに向かって回転切りを放つ。しかしまたしてもレーサーに一撃を与えることは出来ず、レーサーが足場としていた木の太い枝が真っ二つに切り裂かれるのみだった。
「先輩! 後ろです!」
「え!? きゃあ!」
ステルクの攻撃を躱したレーサーはそのままの勢いでエスティの背後を取り、その背中に向かって突進した。木にぶつかったエスティはレーサーに首を掴まれ投げ飛ばされる。
「グランドパイル!」
ステルクは再び地面に剣を突き刺し、地面を砕いた。レーサーが態勢を崩す間にエスティを救出し、レーサーとの距離を取る。
「大丈夫ですか」
「えぇ。ごめんね」
エスティはレーサーのスピードに驚きつつも恐怖を感じることは無かった。それはスピードを絶対とする彼の攻撃は確かに回避するのは難しいが、攻撃を受けても絶望的なダメージを喰らってはいない。レーサーの弱点は決定力に欠けること。
一撃でも食らえば致命傷を受けるような攻撃ではなく連撃で勝負するタイプならば、二人係で対すれば勝てない相手ではない。
「ステルク君、今度は貴方が前衛で行くわよ。私が援護するわ」
「はい! むっ?」
ステルクが上空を通過する物体に気づく。よく見るとそれはウェンディを救出し、ハッピーとシャルルの魔法を使って空からララン達の元へ向かうナツ達の姿だった。
「馬鹿な! ブレインがいたはずだろ! どうやって!?」
レーサーは遥か上空を飛ぶ二人を撃ち落とす勢いで、空に飛びあがる。ステルクもレーサーを止めるべく上空に飛ぶ。
「邪魔はさせんぞ!」
「クソ!」
レーサーよりも更に上を取ったステルクがレーサーを撃ち落とす。レーサーはステルクの攻撃を受けながらも華麗に着地した。
「二度も俺の走りを止めたな……」
「貴様が何度来ようと何度でも止めてやる。それが騎士としての務め」
―再び場所は移ってララン達が潜む拠点。
「あっ!」
ヒビキが古文書の魔法を使い、散っていった皆に連絡を取ろうとしていたところ、誰にも連絡が付かないという状況が続いていた。
そんなところでヒビキが驚いたような声を上げた。それはつまり誰かに連絡が付いたということに違いない。今ここで連絡がついてほしいのはステルクかエスティなんだが。ヒビキの反応を見るにそうではないようなのが分かる。
「ナツ君、グレイ君。今から僕たちの位置情報を送る。そこに向かってきてくれ」
どうやらウェンディの救出には成功したようだ。しかし依然としてエルザの状態は芳しくない。一刻を争う状況は凌げているがナツの到着を待ち遠しい。
ナツ達にしか連絡が届かないということは他のメンバー達は交戦中と考えるべきなのだろうか。六魔将軍がどれほどの手練れであろうとも魔導士ギルドの4つの連合にステルク、エスティを入れた六魔将軍の倍以上の人数を持ったこちらが不利になることは考えたくはない。
「ララン、何してるの?」
「ナツアジトの場所を探してる」
「それで?」
ルーシィがそれと言った俺の手に握られている物。それはダウジングロッドだ。鉄の棒が折り曲げられたL字型のシンプルなダウジングロッド。
普通はこれでお宝を探すのだが、今回はアジトを探すということでダウジングロッドの設定を変えている。いつもの設定では探知の対象を金属にしているのだが、今回は熱に反応するようにしている。人間の発する熱を頼りにアジトの場所を割り出そうという魂胆だ。
「ってもこの広い樹海じゃダウジングの範囲外だな」
「ですよね」
その時、周辺の草木がガサガサと音を立てて揺れた。俺達は敵襲かと身構えたが、ひょこっと身体を出したのはウェンディを救出したナツとグレイだった。
「お前ら!」
「どうなってんだぁ? 頭の中に急に地図が流れ込んできてよ」
「今は早くエルザを」
そうだと相槌を打ったナツは気を失っていたウェンディの肩を持ってゆさゆさと振って起こした。意識を戻し、一拍おいてはっとしたウェンディはごめんなさいと発してナツから距離を取った。
「?」
頭に疑問符が浮かんだが、今はそれよりエルザを治してくれ。と言おうとしたタイミングで全く同じことをナツが土下座して言った。オウム返しで毒と返したウェンディにはまだ状況が呑み込めていないようだったので手短に今の状況を話すと勿論やりますと拳を握ってくれた。
それから程なくして――
「終わりました。エルザさんの身体から毒は消えました」
「おっしゃあーー!」
エルザの顔は血色が戻り、苦しむ様子も見られない。確かに毒は消えているようだ。俺にもこのような魔法の力があればと少し思ってしまう。ちょっと羨ましい。
「よーーし! ララン、ハイタッチだ!」
ナツは一人一人とハイタッチしていく。ウェンディは少し照れながらもナツとハイタッチを交わした。
ウェンディ救出、そしてエルザの治療を同時に完了した俺達の士気は上昇し、打倒六魔将軍、ニルヴァーナの復活阻止に向けて、自信と希望を持ち始めていた。
この後、俺達に降りかかる闇の力はまだ成りを潜めていたに過ぎなかった。
感想、評価などお待ちしております